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脂溶性ピロカルピン吸水軟膏の理論とその圓形脱毛症に對する效果
池永 實
1
,
佐藤 直子
1
,
鳴海 淳郎
1
1東京遞信病院皮膚科
pp.18-20
発行日 1953年1月1日
Published Date 1953/1/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1491200888
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副交感神經末梢刺戟劑であるピロカルピンは鹽酸ピロカルピンの水溶液として臨床上.検査の目的にも.治療上にも可成り廣範圍に應用されている。又,水溶性の鹽酸ピロカルピンを外用して治療の目的に供したのは1930年A.Milkoが最初で,これを毛生液として使用した。その後わが國では1932年呉内科の山縣氏は鞏皮症の治療に用いている。その他種々の疾患にも塗布劑として應用された。
扨,圓形脱毛症の發生機轉は諸説があつて,未だ一定した理論は見出されていないが,近年内分泌障碍によるとの考えが漸く擡頭するに至つた。しかし畢竟する所本症は局所毛髪の榮養障碍に重大な原因があるものと老えられる。Lévy-Fran-kel(1920)は皮膚顕微鏡で本症の毛細管のあり方を追及し,圓形脱毛巣に於ては毛細管像は全く消失しているか,或は非常に減少していることを獲見し,圓形脱毛症で確認し得る唯一の所見はAngiospasmusであるとしている。この所見はSaiton及びSézaryも認める所である。毛細管攣縮及びこれにつゞく脱毛という機轉は,多分に自律神經系の病的緊張と關聯するものであり,昭和12年小川直秀氏によつて行われた實驗によつても,圓形脆毛症患者には自律神經緊張異常のものが大多数をしめることを明かにし,これを修正する目的でAcetyl-cholin皮内注射による療法を開始された。その效果については,われわれはこれをある程度是認する立場にある。
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