Hospitalist 8巻2号 (2020年6月)

特集 ホスピタリストのための画像診断—①胸部・縦隔編

  • 文献概要を表示

画像診断は現代医療の基盤であり,何科の医師にとってもある程度の画像診断の素養を身に着けることは,避けて通れない。しかし,画像診断はそれだけで「放射線医学」という分野が成立する深淵な学問である。放射線科医のなかでも,ジェネラリストとして全身の画像診断専門家になるには,年余の専門研修と,何万例という経験の蓄積が必要となる。画像が本業ではないホスピタリストの先生方が画像診断を学ぶ際に,放射線科医と同じ学び方を求めるのは非現実的であり,新たなアプローチが必要とされよう。

 ではホスピタリストが,真に身に着けておくべき画像の知識は何だろうか。放射線医学の教科書には,放射線科医ができるだけ多くの鑑別診断を学ぶことができるように,非常に多くの疾患が網羅されている。しかし,内科の臨床においては,多くの画像所見や鑑別診断を知っていることが勘所とはいえない領域が多いだろう。むしろ,頻度の高い疾患,臨床的に重要性の高い疾患について,up to dateな治療方針をふまえた,一歩深い知識をもつことが強く求められる。

  • 文献概要を表示

胸部単純X線写真の読影に関するすべての範囲を網羅しようすると膨大な量となる。このため本稿では,特に日常臨床で問題となる以下の4項目,すなわち,①見落としのない読影手順,②病変局在に気づく手掛かりとなるサイン,③胸部異常陰影におけるCTの依頼基準,④胸水の量の推定,に焦点を絞って解説を行い,元呼吸器外科医で,現在は放射線診断医である筆者が身につけてきた胸部単純X線写真の読影方法を紹介する。

  • 文献概要を表示

胸腔内には,大部分を占める両肺とその間の空間である縦隔がある。縦隔には心臓,食道,大血管,気管,気管支,リンパ節などが存在する。本稿では,10mmごとの胸部造影CT軸位断像(縦隔条件,肺野条件)を示し,あわせて主要な解剖学的構造について名称を提示する。また,リンパ節の解剖をわかりやすく示すため,あえて多発リンパ節腫大のある症例を提示している。

  • 文献概要を表示

胸部病変の画像検査では胸部単純X線写真が基本であるが,胸部CTは,X線写真と比較すると断層画像で重なりがなく,コントラストが明瞭なために,病変を検出しやすい。

 CTの読影には決まった手順はないが,見落としを防ぐためには,毎回の読影手順を自ら定めて評価することが重要である。

  • 文献概要を表示

ひとくちに「造影CT」といっても,選択すべき撮像プロトコルは状況に応じて異なる。診療に寄与する適切な造影CTを行うには,事前に撮像目的を施設の放射線科医ないし放射線技師に十分に伝えておく必要がある。本稿では,造影が必要な胸部CTと造影プロトコルについて概説する。

【各論(胸部疾患)】

  • 文献概要を表示

嚥下性肺疾患について

嚥下性肺疾患は,誤嚥物の性状,量,分布などにより,①誤嚥性(嚥下性)肺炎(通常型),②人工呼吸器関連肺炎,③Mendelson症候群,④びまん性嚥下性細気管支炎diffuse aspiration bronchiolitis(DAB)の4つに分類されている(図2)1)。第三者によって確認できるような顕性誤嚥よりも,就寝中ないしは仰臥中における口腔内容物の少量持続的な誤嚥(不顕性誤嚥)によることが多い。嚥下性肺疾患は,食事摂取とは無関係に発症するため,絶食中あるいは胃瘻留置中であっても生じ得る。

 誤嚥性肺炎(通常型)は肺の急性炎症で,市中肺炎によることもあれば介護施設で起こることもある。口腔内細菌(グラム陽性球菌,グラム陰性桿菌,嫌気性菌)の誤嚥が原因となる。画像では,下肺背側優位の気道に沿った分布の多発する結節や浸潤影といった急性気管支肺炎の形をとることが多い2)*1(表1)。肺膿瘍や空洞形成が生じることや,肺炎随伴性胸水や膿胸をきたすこともある。

  • 文献概要を表示

間質性肺炎をテーマとした原稿依頼に際し,臨床の場からは特発性器質化肺炎が悩ましいとの編集担当医師からのコメントが添えられていたが,特発性器質化肺炎はプライマリ・ケアの現場で診断するよりも,精査のうえ,他疾患を除外したうえで診断される疾患であること,間質性肺炎のなかでは,特発性肺線維症idiopathic pulmonary fibrosis(IPF)がより予後不良かつ重要であり,初期診療の時点で見逃してほしくないものであることから,本稿ではIPFを取り上げることとした。

  • 文献概要を表示

過敏性肺炎hypersensitivity pneumonitis(HP)は,抗原に長期間曝露されることで感作が成立し,細気管支から肺胞壁におけるⅢ型およびⅣ型のアレルギー反応により発症する。

過敏性肺炎は以前,急性,亜急性,慢性の3病型に分類されていたが,これは予後を反映した分類ではなく,また実臨床において急性と亜急性の区別が明確でないとの点から,近年の研究成果もふまえ,急性過敏性肺炎と慢性過敏性肺炎に大別されることが多い。こうした過敏性肺炎の診断において,画像診断の果たす役割は非常に大きい。

 本稿では急性過敏性肺炎に焦点をあて,主なCT画像所見とその診断過程で是非念頭におきたい,CT画像所見が類似する疾患について概説する。さらに発展的な内容として,まれではあるが,特殊な陰影パターンを呈する過敏性肺炎について最後に述べる。

  • 文献概要を表示

肺結節の画像診断

肺結節の画像診断においては,長らく胸部X線写真が検出に用いられてきたが,National Lung Screening Trial(NLST)1)やThe Dutch-Belgian lung-cancer screening trial2)*1などにより,低線量CT肺癌検診の有用性が明らかになるにつれ,日常臨床のみならず,人間ドックなどの検診においてもCTの活用が進んだ。その結果として,肺腺癌におけるnotch,spiculaや胸膜嵌入像,肺過誤腫における肺結節内の脂肪濃度などの伝統的なCTによる肺結節の鑑別診断には限界があることも示唆されるようになっている。したがって,いくつかの特徴的画像所見を有する結節を除き,現在,肺結節はCT所見によってすりガラス結節ground-glass nodule(GGN),部分充実結節part-solid noduleと充実結節solid noduleに分類されている。さらに,GGNとpart-solid noduleを合わせてsub-solid noduleともいわれている。そして,結節のタイプ,数および長径によりマネジメント法が異なることが示唆されている。

  • 文献概要を表示

縦隔と胸膜を主座とする腫瘍にはさまざまなものがある。これらすべてを解説することは誌面上難しいため,本稿では日常診療で重要となる胸膜腫瘍として,悪性胸膜中皮腫とこれに関連する石綿関連疾患に絞り,その画像の特徴について解説する。

【各論(循環器疾患)】

  • 文献概要を表示

狭心症の診断に心筋虚血の評価は不可欠である。心筋虚血の広がりと重症度を評価することは,その後の治療方針や予後に影響する。症状から狭心症が疑われる症例において負荷検査が安全・適切に行われるには,簡便性,侵襲性,検査効率を考慮しながら,①負荷検査が可能かどうか全身状態を評価し,②同様の症状を呈する非心臓疾患・非冠動脈疾患がないか検索する必要がある。本稿では,心不全と慢性冠動脈疾患のガイドラインに沿って,診断アルゴリズムにおける非観血的な画像診断の役割について概説する。

  • 文献概要を表示

虚血性心疾患か非虚血性心疾患か

本症例のように局所壁運動異常と左室駆出率低下がある症例の鑑別では,年齢やリスク因子も考慮し,まず冠動脈疾患を除外する。

 左冠動脈前下行枝に高度狭窄や閉塞を生じて心筋障害をきたした場合,左室心尖部から心中部前壁でまず壁運動が低下し,近位部病変でないかぎり,基部前壁の壁運動は比較的保たれる。左冠動脈回旋枝域の梗塞では,まず基部から中部レベルにかけて側壁の壁運動の低下が見られる。右冠動脈域梗塞では基部から中部レベルにかけて下壁の壁運動が低下する。これら責任血管の支配領域における局所壁運動異常が対応するのが,虚血性心疾患の特徴である。

  • 文献概要を表示

本稿では,頻度の高い胸部心血管の先天異常について概説する。まずはCTで偶然発見される頻度の高い血管奇形や,撮影技術の発展・普及に伴い,年々症例数が増加している冠動脈CTにより発見される冠動脈起始異常について述べる。日常臨床でも遭遇する異常血管や,今後も確実に患者数が増加する成人先天性心疾患の基本的な知識を身につけておくことで,臨床での対応力や他科とのコミュニケーション力を高めることができると思われる。

  • 文献概要を表示

動脈硬化を背景とした大動脈瘤や大動脈解離は頻繁に遭遇するcommon diseaseである。もっとも,動脈硬化以外にもさまざまな病態が大動脈疾患の原因となり得る。特に壁肥厚や腫瘤を形成している場合には,動脈硬化以外の病態が原因となる可能性が高く,鑑別を要する。本稿では大動脈疾患のなかでも壁肥厚や腫瘤を形成する疾患に焦点をあて,画像診断を通した鑑別方法について述べる。

  • 文献概要を表示

本稿では,急性肺塞栓症,深部静脈血栓症の画像診断について,特に診断的検査である造影CTや下肢静脈超音波検査に重きをおきながら,適切な画像検査の選択や解釈につき概説する。

連載 着眼大局のススメ

  • 文献概要を表示

「ホスピタリストに必要なシステム改善のエッセンスや公衆衛生の視点を提供する」という趣旨のもと,前回から新連載を開始しました。今回は,皆さんもおそらく聞いたことがあるであろう「健康の社会的決定要因social determinants of health(SDH)」をテーマにお届けします。プライマリ・ケア領域では近年注目され始めていますが,ホスピタリストにとってSDHとはどのような意義があるのでしょうか? まずは下記のCaseを見てみましょう。

連載 根拠のない習慣

  • 文献概要を表示

症例

86歳の女性。乳癌,肺癌に対して手術歴あり。急性の発熱,歩行困難で受診した。血液検査で白血球増多,胸部X線で右中肺野に気管支透亮像を伴う浸潤影を認めた。市中肺炎の診断で入院治療の方針となった。

 入院経過は極めて良好であったが,フォローアップの胸部X線上の浸潤影の改善は乏しく,入院中に計5回撮影し,改善傾向を認めたため退院とした。また,残存する陰影のフォローアップのため,退院3週間後の外来で胸部X線のフォローを予定した。市中肺炎の症例に胸部X線フォローはどの程度必要なのか?

  • 文献概要を表示

1. Effect of renal denervation and catheter ablation vs catheter ablation alone on atrial fibrillation recurrence among patients with paroxysmal atrial fibrillation and hypertension:The ERADICATE-AF randomized clinical trial. JAMA 2020;323:248-55.PMID:31961420

[研究デザイン]

多施設単盲検RCT

[背景・目的]

腎神経焼灼術は心臓における交感神経の刺激を抑え,心房細動における抗不整脈作用を有する可能性がある。高血圧と発作性心房細動(PAF)を有する患者で肺静脈隔離術に腎神経焼灼術を追加した場合の,肺静脈隔離術の単独治療と比較した長期的な抗不整脈効果を検証する。

[対象]

PAF(定義:発作の持続が30秒〜7日以内のAF)が指摘されており,ガイドラインに基づき肺静脈隔離術治療を計画されている次の①,②を満たす18歳以上の患者:①収縮期血圧≧130mmHgまたは/かつ拡張期血圧≧80mmHgを満たす臨床的に有意な高血圧を有する,②事前のMRAで腎血管へのアクセスが可能である(ロシア,ポーランド,ドイツの5施設,2013年4月〜2018年3月)

[介入・方法]

肺静脈隔離術のみを行う肺静脈隔離術群と,腎神経焼灼術を追加した腎神経焼灼術群に1:1に無作為に割り付けた(隠蔽化あり,患者盲検-治療者非盲検)。施設で層別化。

[プライマリアウトカム]

12か月後のAF,AFL(心房粗動),AT(心房頻脈)の非再発率(ITT解析)

--------------------

目次

次号目次

基本情報

21880409.8.2.jpg
Hospitalist
8巻2号 (2020年6月)
電子版ISSN:2433-510X 印刷版ISSN:2188-0409 メディカル・サイエンス・インターナショナル

文献閲覧数ランキング(
7月19日~7月25日
)