リハビリテーション医学 55巻4号 (2018年4月)

特集 回復期リハビリテーション医療からの発信

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 わが国の医療や社会の情勢を背景として回復期リハビリテーション医療の重要性が増して久しい.制度上の後押しも受け,地域差を残しつつも回復期リハビリテーション医療が量的には充足しつつある中で,さらなる質的向上が急務となっている.本特集では各領域でご活躍の先生方に,回復期リハビリテーション医療の発展に不可欠なエビデンスの構築と活用にかかわる情報発信をお願いした.

 本特集が回復期リハビリテーション医療の今後のありかたを問う議論を深める一助となれば幸いである.

▷ 担当:岡﨑哲也,企画:編集委員会

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要旨 リハビリテーション医療にもエビデンスに基づく医療(EBM)の提供が求められている.EBMには無作為比較試験(RCT)などの質の高いエビデンスが必要とされるが,RCTはリハビリテーション医療では実施しにくい場合が多い.そこで,RCTに代わるエビデンス蓄積の方法として大規模データベースがある.回復期リハビリテーション医療では,DPCのような大規模なデータベースは存在していないが,日本リハビリテーション・データベースなどがすでに構築されており,これらに基づく優れた研究も発表されている.リハビリテーション医療の質向上と,それに寄与するエビデンスの蓄積,蓄積されたエビデンスの利用のために,大規模データベースの構築とそれを活用した研究の蓄積が望まれる.

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要旨 よりよい回復期リハビリテーション医療を行うには,結果の評価が重要となる.診療報酬制度に実績指数というFIM運動項目効率に類する概念が導入されたこともあり,回復期リハビリテーション病棟においてADLに重点が置かれすぎる危険性がある.機能障害の底上げにも着目すべきである.FIM採点の信頼性を確保するにはある程度の研修が必要である.また,しているADLを測定するという側面から,入院日のFIMを厳密に採点すれば低めの点となることが想定される.

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要旨 脳卒中患者の回復期において,歩行獲得は象徴的な目標である.歩行が困難な患者においては,道具(装具,歩行補助具,懸架・懸垂装置,ロボットなど)の使用,個別リハビリテーション以外の訓練機会をつくる病棟運営としての工夫,などにより歩行訓練量を十分に確保することが重要である.歩行の習熟段階に応じて,歩行課題としての難易度を調整し,患者の学習が進むようにする.歩行獲得過程で生じる転倒には十分な配慮が必要であり,細やかで適切な自立度の設定が必要である.さらに,歩行自立には,歩行動作そのもの以外の関連動作の習得が必要であり,そのことを念頭に置き評価や訓練を進める.

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要旨 わが国では高齢化が進み,ほぼ4.5人に1人が運動器疾患が原因で介護が必要となっており,回復期のリハビリテーション医療において運動器リハビリテーションは重要である.2008年から診療報酬制度で回復期リハビリテーション病棟に質の評価が導入された.年々リハビリテーション実施単位数が増加しているにもかかわらず,大腿骨頚部骨折を中心とした骨折系では,平均入院日数が延長し,自宅復帰率が低下していた.また,人工関節系ではFIM利得が少なかった.大腿骨頚部/転子部骨折,人工関節置換術患者の多くは高齢者であり,リハビリテーション治療の効果に影響する因子として,認知症,受傷前の歩行能力,術後合併症,訓練量,リハビリテーション科専門医の関与などが考えられる.

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要旨 日常生活動作(ADL)の改善を比較するには,ADL改善指標の特徴を理解する必要がある.Functional Independence Measure(FIM)利得は,ADL改善指標として本邦で頻用されているが,天井効果という課題があり,層別化や制限が必要になる.天井効果のないFIM effectivenessは,欧米ではFIM利得以上に頻用されている.FIM effectivenessを重回帰分析に用いた報告は少ないが,これを目的変数にした重回帰分析の予測精度は高い.ADL改善を病院間で比較するために数種類の方法が考案されている.ADL評価の信頼性が重要であることを強調したい.

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要旨 リハビリテーションを行う高齢者には,低栄養とサルコペニアの合併が多い.高齢リハビリテーション患者の低栄養とサルコペニアの有症率はそれぞれ49〜67%,40〜46.5%と報告されている.低栄養とサルコペニアはいずれもリハビリテーションや健康関連のアウトカムと負の関連がある.それゆえ,リハビリテーションを行う高齢者に対しては,全身管理と併存疾患のリスク管理を行いつつ,積極的な栄養サポートを多職種で推進する必要がある.

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要旨 中枢神経損傷後の機能回復過程では,組織障害の拡大を防ぐ急性期治療に引き続き,損傷を免れた脳領域が損傷部位の機能を代償する機能的再構成による比較的緩やかな回復が約数カ月続く.この時期の回復期リハビリテーションの成果は最終的な機能予後を決定することから,この時期に機能的再構成を効率的に誘導する介入などを駆使した集中的なリハビリテーション介入が重要となる.本稿では,ニューロリハビリテーションにおける回復期リハビリテーションの位置づけ,および治療介入戦略について概説する.

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要旨 リハビリテーション科専門医が主治医としてかかわることがリハビリテーション医療の質向上に役立つことは,われわれの多施設データベースを用いた研究からも示されている.質向上に関する要因として,不必要な安静や絶食の排除,併存障害の管理,安全管理,チームアプローチの適正化,在宅復帰の効率化,社会参加の評価と調整などが挙げられる.回復期リハビリテーション診療の質が問われている現状において,回復期リハビリテーション病棟におけるリハビリテーション科専門医はきわめて不足しており,深刻な問題である.

巻頭言

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 医療における成果とは病気を治すことであろう.しかし,病気の中にはもちろん完治させることができない病気があり,進行するものや後遺症が残るものも多くある.その結果,患者には身体的な効果以外に精神的にも大きな変化が生じていると思われる.医療者は患者の痛みを感じ,その結果,患者と医療者との間に共感が生まれればよい成果として認められ,より親密な医療がなされるものと信じる.インフォームドコンセントは,まだまだ医療サイドからの一方的な説明で終わる場合が多いのではないだろうか.不幸にも医療訴訟が起こるケースでは,医療者と患者・家族との間に十分な共感が存在しなかったのではないか.

 インフォームドチョイス(informed choice)では,医師による十分な説明を受けたうえで,患者自身がその治療を受けるかどうか,あるいは複数の治療方法の中から自身が受ける治療法を選択することである.しかし,がんの末期の患者のリハビリテーションの中では,患者は不安や喪失体験から自信がなくなり決められないことが多い.そこで,リハビリテーションが参画することでできることを発見し,気づき,自己決定力が賦活することができると思う.患者は常に不安の中にいる.訪問リハビリテーションでは,機能的な改善が認められない患者でも,定期的な訪問の医療者の顔を見るだけで,あるいは励ましの声を聞くだけで十分に満足して生きがいを感じているケースがある.

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就学・復学支援の現状

 近年,教育現場では特別な教育的支援を受ける子どもが増え続けている.背景には,発達障害(神経発達症群)やその疑いのある子どもの増加がある.高次脳機能障害のある子どもも深刻な状況にある.家族会は,診断や評価を受けられる医療機関の不足と教育的な支援の必要性を強く訴えている.文部科学省は「教育支援資料」で,発達障害に加え,病弱の項目に高次脳機能障害を追記し,障害による認知や行動上の特性への理解とそれらに配慮した指導を求めている.また,「教員向け支援冊子」で家族の思いへの理解の重要性を指摘している.

 高次脳機能障害や発達障害は,どちらも高次脳機能に問題がある.子どもの高次脳機能の問題とそれに伴う影響を理解して支援できる専門家・機関は非常に少ない.そのために,保護者も教師も子どもに困惑し苦悩している.後述するが,高次脳機能の理解が家庭と医療・教育機関で共有されなければ,支援に原則や一貫性や具体性や継続性を欠き,子どもが不利益を被る危険性が高い.就学・復学には,高次脳機能への理解と支援が欠かせない.

関節リウマチの治療update 守田 吉孝
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はじめに

 関節リウマチ(rheumatoid arthritis:RA)は,抗CCP抗体に代表されるシトルリン化蛋白に対する自己抗体の出現を特徴とし,罹患関節での持続的炎症と破骨細胞の活性化により,軟骨・骨破壊をきたす疾患である.以前は患者の多くがADLの制限を余儀なくされ,生命予後も悪かった.しかし,過去15年間で治療法は劇的に変化し,疾患予後は著しく改善した.その一方,治療薬が多様となり,非専門医にとって治療の敷居が高くなったことも事実である.本稿では,2017年6月9日の第54回日本リハビリテーション医学会学術集会における教育講演の内容をもとに,最近のリウマチ治療薬の分類,注意していただきたい使用上のポイント,近年特に注目されているRAの合併症(呼吸器合併症とリンパ増殖性疾患)について概説する.講演後の2017年後半,新たに3つの薬剤(JAK阻害薬のバリシチニブ,抗RANKL抗体のデノスマブ,抗IL-6受容体抗体のサリルマブ)がRAの治療薬に加わることとなった.この3剤についても本稿の内容に加える.

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はじめに

 脊髄損傷受傷後は呼吸器合併症を発生することが多い1).そのため,脊髄損傷に適した呼吸管理方法を導入し,呼吸器合併症を予防,改善し,良好な呼吸状態を導くことが重要である.それによって全身状態は安定し,損傷レベルに応じた身体の機能訓練を進めることができ,安定した社会生活を送ることができる.

 脊髄損傷受傷後早期から慢性期に至るまでの呼吸状態,呼吸管理方法について概説する.

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■ 意義

 今や痙縮の治療方法として欠かせないものとなっているボツリヌス療法であるが,期待どおりの効果をもたらすこともあれば,効果が不十分と感じることもある.また,ときには過去と同様に同じ量を施注したにもかかわらず,効果が出すぎることもあり,使用方法に頭を悩ませたことがある方は少なくないだろう.本論文では錘内筋線維に対するボツリヌス療法の影響を検討しており,上記疑問解決の一助になると考える.

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要旨

目的:呼吸リハビリテーションのための簡便で非侵襲的に胸郭運動を計測するストレッチセンサ(STR)が開発された.本研究の目的は,STRによる胸郭運動計測の妥当性を検討することである.

方法:健常成人男性12名が立位姿勢で3つのセンサ〔STR,インダクタンス式呼吸プレチスモグラフィー(RIP),スパイロメーター(FLOW)〕を装着し,4つの呼吸様式(自然呼吸:120秒,深呼吸:60秒,頻呼吸:60秒,無呼吸:60秒)での胸郭運動を計測した.STRはバンドとして胸部と腹部に装着した.各センサの胸郭運動計測について分析した.

結果:STRの出力はFLOWおよびRIPと有意な相関を示した(r=0.50〜1.00,p<0.05).STRから得た呼吸回数はFLOWから得た実測値と差を認めなかった(p>0.05).STR出力は呼吸様式によって有意に変化していた(無呼吸<頻呼吸<自然呼吸<深呼吸,p<0.05).

結論:STRは健常若年健常者におけるさまざまな呼吸条件において胸郭運動を計測することができる.

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 東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会の開催を前に,障がい者スポーツを取り巻くスポーツ環境の恒常的な充実を図るため,「第1回障がい者スポーツ関係学会合同コングレス」が2017年12月16,17日に,早稲田大学大隈記念講堂で開催された.

 「第1回障がい者スポーツ関係学会合同コングレス」は,テーマである「東京2020レガシー“スポーツを通じた共生社会の創造”」のもとに,教育関係者,学術研究者などを中心に,障がい者スポーツの将来に向けての課題への共通認識の確認と情報共有を行う場として開催された.コングレスで意見交換された主なテーマや研究内容,主催,主管は以下のとおりで,日本リハビリテーション医学会は実行委員会構成団体として協力した.

リハニュース【基幹研修施設インタビュー】

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 2017年7月1日付で,日本医科大学大学院医学研究科リハビリテーション学分野主任教授,および日本医科大学リハビリテーション科部長に就任された,松元秀次先生にお話をうかがいました.

 (文責:広報委員会)

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 2018年2月17日,長崎大学医学部記念講堂にて,市民公開講座「認知症のリハビリテーション」を開催しました(主催:日本リハビリテーション医学会・日本リハビリテーション医学会市民公開講座長崎地区実行委員会).認知症に対する不安や悩みをおもちの市民を対象に,住みなれたところで,一生安全に,その人らしくいきいきとした生活ができるように支える,「地域リハビリテーション」の考えをもとに,認知症を理解するだけでなく「認知症の方とその家族を地域で支える」ことを意図し企画しました.

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 第52回日本脊髄障害医学会は,2017年11月16日(木)・17日(金)の2日間,千葉市の三井ガーデンホテル千葉で行われ,千葉県千葉リハビリテーションセンターセンター長の吉永勝訓先生が大会長を務められ,参加者総数は600名を超えた.

 今回は,昭和大学の笠井史人先生が中心となった脊髄障害SIG企画のハンズオンセミナーが行われた.筆者は同SIGのコアメンバーとして,脊髄損傷者における褥瘡の早期診断に役立つ,超音波による皮下の評価を紹介した.大勢の参加者があり,時間が足らないぐらいだった.

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リハビリテーション医学
55巻4号 (2018年4月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-3526 日本リハビリテーション医学会

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