巻頭言
当事者意識とinformed choice
影近 謙治
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1金沢医科大学医学部リハビリテーション医学
pp.284
発行日 2018年4月18日
Published Date 2018/4/18
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- 文献概要
医療における成果とは病気を治すことであろう.しかし,病気の中にはもちろん完治させることができない病気があり,進行するものや後遺症が残るものも多くある.その結果,患者には身体的な効果以外に精神的にも大きな変化が生じていると思われる.医療者は患者の痛みを感じ,その結果,患者と医療者との間に共感が生まれればよい成果として認められ,より親密な医療がなされるものと信じる.インフォームドコンセントは,まだまだ医療サイドからの一方的な説明で終わる場合が多いのではないだろうか.不幸にも医療訴訟が起こるケースでは,医療者と患者・家族との間に十分な共感が存在しなかったのではないか.
インフォームドチョイス(informed choice)では,医師による十分な説明を受けたうえで,患者自身がその治療を受けるかどうか,あるいは複数の治療方法の中から自身が受ける治療法を選択することである.しかし,がんの末期の患者のリハビリテーションの中では,患者は不安や喪失体験から自信がなくなり決められないことが多い.そこで,リハビリテーションが参画することでできることを発見し,気づき,自己決定力が賦活することができると思う.患者は常に不安の中にいる.訪問リハビリテーションでは,機能的な改善が認められない患者でも,定期的な訪問の医療者の顔を見るだけで,あるいは励ましの声を聞くだけで十分に満足して生きがいを感じているケースがある.
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