The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 55巻2号 (2018年2月)

巻頭言

0.9%の壁 川手 信行
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 昨年12月15日に日本専門医機構から一次登録領域別採用数が公表された.2年目研修医の約9割に当たる約8,000人の登録があり,リハビリテーション科専攻医プログラムに登録し採用されたのはそのうち66名であった.全体の約0.8%である.残念なことに,もともと基幹病院のない県を含め26県にリハビリテーション科専攻医がいないことになった.リハビリテーション科を津々浦々に浸透させていくためには,すべての都道府県にリハビリテーション科専攻医がいることが望ましい.そのためには少なくとも全国のリハビリテーション科専攻医のプログラム数である75以上の登録が必要である.すなわち約0.9%.どうしたら0.9%の壁を破ることができるのか.

 あるリハビリテーション科専門医は,「ICUに積極的に介入し,リハビリテーション科が急性期医療に関与していることをアピールすべき」という.他のリハビリテーション科専門医は,「多職種の力で創意・工夫をして,身体障害をもった患者のできることを増やすことを見せるべき」という.また,あるリハビリテーション科専門医は,「患者,一人ひとりの在宅生活を支援し,新しい生活を再構築していくためのサポーターであることを強調すべき」という.どれが良い,どれが悪いもない.すべてがリハビリテーション科専門医の魅力である.日本リハビリテーション医学会は,リハビリテーション医学を,「障害を克服・機能を回復・活動を育む医学」としている.これは,まさに急性期医療・回復期医療・生活期医療の中でのリハビリテーション医学を示している.急性期医療・回復期医療・生活期医療のすべてにかかわり,それぞれの専門性をもつことがリハビリテーション科専門医である.

特集 地域包括ケアとリハビリテーション医学

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 世界でも類を見ない超高齢社会の中で,保健(予防)・医療・介護・福祉を地域にどう創るか.国民の中心的課題である.その軸には生活・活動があり,リハビリテーション医学が重心として機能する.地域包括ケアシステムには,さまざまな地域に一般化できることがあると同時に地域ごとの個別性が求められる.本特集では,さまざまな地域において異なる視点から地域包括ケアに取り組まれている第一線の先生に執筆をお願いした.地域において活動の医学を実践・模索するにあたり一助となれば幸いである.

▷ 担当:大高洋平,企画:編集委員会

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要旨 公立みつぎ総合病院で,在宅ケアによる寝たきりゼロ作戦が始まったのは昭和49(1974)年である.寝たきりになる要因の第1は家庭内における介護力の不足,第2は不適切な介護,第3は不適切な住環境である.これらつくられた寝たきりを,在宅ケアによって予防しようと考えたのが,われわれの寝たきりゼロ作戦であった.その後,病院の医療と行政の保健福祉をドッキングさせた保健福祉センターを開設し,介護保険施設など保健福祉総合施設を整備し,最後に住民参画の体制をつくり,地域包括ケアシステムを構築した.その結果,寝たきりの減および医療費の減という成果を得ることができた.地域包括ケアシステムは地域づくり・まちづくりそのものである.

広島県では平成24(2012)年に広島県地域包括ケア推進センターを開設し,125の日常生活圏域に125通りの地域包括ケアシステムの構築をめざし,現在その内容の評価を行っている.

2 脳卒中と地域包括ケア 近藤 国嗣
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要旨 地域包括ケアの概念は,要介護状態となっても住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最後まで続けることであり,このためには地域リハビリテーションの存在は重要である.介護保険制度に通所・訪問リハビリテーション事業が位置づけられたことによって地域リハビリテーションは急速に拡大してきているが,生活の視点,さらには医学的効果の検証などについてはまだ不足しており,さらにリハビリテーション科医も大幅に不足している.脳卒中患者のリハビリテーションに関してはガイドラインも作成され,行うべき科学的根拠のあるリハビリテーションが提示されてきているが,地域リハビリテーションの現場で十分に活用されているかについては疑問である.効果が示されているスタンダードなリハビリテーションを提供して,結果を生むことによって,地域リハビリテーションが地域包括ケアの中核(リハビリテーション前置主義)となると考えられる.そのためには,地域でのネットワークづくりも重要である.

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要旨 認知症の地域包括ケアは,家族を含めた関係者が認知症の定義や特徴を踏まえ,本人と家族が不安なく過ごすことができる環境を整備することにより達成される.環境を整備するにあたっては,その残存機能を活用しつつ生活機能を高め,ADL,IADL,社会的な活動を維持するのに必要なリハビリテーションが各地域内で提供されるよう調整されることが望ましい.本稿では,認知機能そのものへのリハビリテーションや,認知症による生活障害へのリハビリテーション,さらには脳卒中など合併症へのリハビリテーションについて,その対応原則を含めて解説した.これらの包括的な取り組みにより,認知症の人が「認知症という困難」を抱えながらも安心して暮らし続けられる地域をめざそう.

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要旨 長野県南部西南地域における10年にわたる生活実態調査により,①過疎山村Y村では「住み慣れた地域で人生の最期まで暮らし続ける」という意味で「地域包括ケア」は実現されていた,②生命予後とQOLに関与する要因は一致せず,性差も存在する,③QOLの維持・向上には,ADLの維持と個人のライフスタイルの継続への支援が重要であること,が明らかになった.地域包括ケアの充実には,①エビデンスに基づいたサービスの提供(社会的診断),②受傷(発症)前の「潜在的廃用期」への予防的なリハビリテーションチーム・アプローチ,③介護保険サービスを補完する互助・共助機能の助成・育成,が不可欠である.

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要旨 「地域包括ケア」を担う未来の医療人材の養成を重要な課題として捉え,全国で初めて学校法人として「藤田保健衛生大学地域包括ケア中核センター」を設置した.訪問看護・リハビリテーション,ケアマネジャー事業所,在宅医療介護連携センター,ふじたまちかど保健室の4つを運営している.地元医師会との連携,在宅医療・介護の実践や教育,多職種人材育成研修会の主催,市内訪問看護・ケアマネジャー・療法士・社会福祉士の職能団体設置のほか,豊明団地にて自治会・行政・URと協力して「学生居住」による互助と予防・生活支援の取り組みを実践している.リハビリテーション医療の視点から活動を中心とした地域課題の解決により,世界に「地域包括ケアモデル」を発信していきたい.

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要旨 地域包括ケアシステムの導入は喫緊の課題である.介護予防の要諦は,早期発見・適切な対応・継続的なケアにある.すなわち,①基本チェックリストの経年的変化を分析し,その過程を解明し,2次予防対象者になる可能性が高い人を早期に発見し支援する.②適切な介護予防事業を運営し,機能向上をもたらし,③2次予防対象者が,翌年に再び介護予防対象者となって戻ってくるというリピーター問題に対応することである.介護予防事業の前・中・後段対策を実践することで,介護予防システムの充実に貢献できる.これらの試みと地域の横糸と縦糸の絆をしっかり紡ぎあげた新たな街づくりが,地域包括ケアシステムの介護予防に資するものになる.

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要旨 わが国では諸外国に例をみないスピードで高齢化が進行し,団塊の世代の約800万人が後期高齢者となる2025年以降は医療や介護の需要がさらに増加する.限られた医療と介護の資源を効率的に利用するため「地域包括ケアシステム」の構築が急務といわれ,生活期リハビリテーションを担うリハビリテーション専門職の果たすべき役割は大きい.回復期リハビリテーションのためしばらく入院していた病院から自宅に退院した直後,環境や移動方法が変化し,転倒や廃用進行のリスクが高まる.地域のリハビリテーションの中核を担う永生会では,コーディネーター役のベテランの理学療法士,訪問診療を行うリハビリテーション科専門医を配置し,退院後可及的早期から「質の高い訪問リハビリテーション」が開始できるような体制を整えた.

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要旨 地域包括ケアシステムのうち,医療介護連携の推進が最も重要な活動と考え,2012〜2013年度の倉敷地域リハビリテーション広域支援センター事業では,医療介護連携シート(以下,連携シート)の作成・普及を行った.これによって,医療と介護との相互理解が深まったが,全域に連携シートを普及するには大きな課題があることがわかった.そこで,連携シート普及のための研修会を行政事業の中で継続的に行い,徐々に浸透することが可能となった.また,介護の現場で働いている実務者すべてに地域包括ケアシステムに関する情報を知らせるためには,相当な時間を要すると考えられる.そこで,その情報を学ぶ場を設けることを主目的に,2016年度に「岡山県地域包括ケアシステム学会」を設立した.

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要旨 健康医療福祉都市構想とは,2003年に開始された,超高齢者や障害者,認知症,子育て世代を含めたすべての人に優しく,安全に安心して快適に外出でき,社会参加し,その人なりに社会貢献して,いきいきと暮らしていけるコンパクトなユニバーサルデザインの都市機能整備計画のことである.健康医療福祉面で困ったときは,急性期・回復期・慢性期の地域医療福祉連携で解決し,その後の長期的な支援は医療保険や介護保険に加えて,それぞれの自治体による街の環境整備と社会参加支援活動体制が支えていく.この健康医療福祉のハードとソフトを核にした街づくりの実現そのものが地域包括ケアシステムの完成を意味している.

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はじめに

 「うつ」はリハビリテーション医療の現場にあふれている.患者が抑うつの状態にあることを把握することは,患者とその背景を理解し,効率的なリハビリテーション医療を展開することにつながる.リハビリテーション医療における「うつ」で重要なことは,「うつ」の把握,対応の違いにつながる「うつ」の鑑別,そして専門家にコンサルトすべき「うつ」の見極めである.

 本稿では,上記について対応も含めて解説した後,脳卒中後のうつの様相,リハビリテーション医療一般の場合のうつの様相について述べる.なお,本稿にて「うつ」は病態,すなわち広く“抑うつ”を呈する状態の一群を指す.

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はじめに

 リハビリテーション医学の領域で用いられる評価・研究方法の中で,動作解析は主要な方法の1つです.動作解析は動作自体の変化を記録・解析する運動学(kinematics)と運動に伴う力の変化を記録・解析する動力学(kinetics)があります.私は1999年に英国Leeds大学に留学して以来,kinetics,その中でも筋骨格モデルによる解析を用いてきましたが,非侵襲的に被験者の筋力や関節間力を解析できる有用な方法である一方,筋骨格モデルを用いた解析では,手法上の限界もわきまえて解析結果を理解することが必要だと感じています.英国で行った研究は内容的には拙いもので学会誌に載せるほどのものではありませんが,私の研究過程を示すことが筋骨格モデルを理解していただくために役立つと思いましたので,あえてその内容も最初に触れて紹介していきたいと思います.

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■ 意義

 今日では廃用予防のために,臥床からできるだけ早期に離床を図りトレーニングに移行することが重要とされているが,本研究はSaltinらが,有酸素能力と体組成・呼吸循環器系などの総合的な変化について,長期臥床を続けることがいかに身体に悪影響を及ぼすかについて,またその後の有酸素トレーニングの効果を実証した.身体的な脱調節(deconditioning)とその回復について長期にわたる詳細なデータを示し,早期離床と運動療法についての理論的な妥当性を証明した世界で初の研究である.

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要旨

目的:鏡視下腱板修復術後のリハビリテーション期間延長に関わる因子を明らかにすること.

対象:当院で施行した576肩(男性331肩,女性245肩,平均年齢63.9±12.3歳)を対象とした.後療法は3週間の固定を基本とし,術後翌日よりリハビリテーション開始.

方法:術後リハビリテーション期間が6カ月で終了した376肩(男性228肩,女性148肩,平均年齢63.9±11.8歳)をA群,6カ月以上リハビリテーション継続を必要とした200肩(男性103肩,女性97肩,平均年齢63.5±13.3歳)をB群として2群に分類.検討因子は,保険種別,罹病期間,術前の可動域・筋力・運動時痛・肩関節疾患治療成績判定基準,断裂の部位・形態・修復状況,術後3カ月時の可動域ならびに6カ月時の可動域と筋力を独立変数とし,2群のリハビリテーション期間を従属変数としてロジスティック回帰分析を行った.統計学的検討はEZRを使用.有意水準は5%.

結果:リハビリテーション期間には保険種別・術前の断裂形態・術後3カ月の屈曲角度ならびに外旋角度・術後6カ月時の外転筋力が有意に関連していた.

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 2017年12月2日に兵庫医療大学で日本リハビリテーション医学会主催,近畿地方会・兵庫医科大学共催の市民公開講座「リハビリテーションでここまでできる!—よりよい生活をめざす医療—」が開催されました.今回,生活の中で優先順位が高いと考えられる,手を使うこと,歩くこと,飲み込むことの3つの点について,各分野のエキスパートの3人の先生にお願いし,リハビリテーション医療がよりよい生活をめざす医療であるということを実感していただくことを目的として開催いたしました.

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 2017年7月29日に名古屋国際会議場で行われた第3回リハビリテーション先端機器研究会に参加いたしました.今回は藤田保健衛生大学の加賀谷斉先生を会長に迎え,先端機器の臨床応用をテーマに開催されました.土曜の午後という短い時間ではありましたが,3つの教育講演と1つのシンポジウムという非常に密度の濃いプログラムとなっておりました.

 まず,最初の講演は藤田保健衛生大学の平野先生から下肢のロボットリハビリテーションについて,自験例を含めながらわかりやすく概説いただき,ロボットリハビリテーションの基本的な概念から,最先端の機器まで丁寧にご講演いただきました.次に経頭蓋磁気刺激(TMS)について,John Hopkins大学のCelnik先生から講演をいただき,脳卒中後のTMS治療についてエビデンスを踏まえてご講演いただきました.そして,この研究会の最も重要なセッションであるシンポジウムは「機能再建のための刺激療法最前線」ということで現在臨床で使用可能な機能的電気刺激(FES),経頭蓋直流電気刺激(tDCS),反復経頭蓋磁気刺激(rTMS),反復末梢性磁気刺激(rPMS)4種すべての刺激方法に対して,その研究のトップにいらっしゃる先生方が概説と特徴,エビデンスについて講演されました.同時に4種類のシステムについて学ぶことで,それぞれの特徴や違いについて理解がしやすく,とてもよい流れでありました.さらに,本会のよいところはその刺激装置を販売している会社が展示を出しており,そのシンポジウムの後,時間をとって実際にその装置を体験できるところです.

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 2017年10月19日(木)〜21日(土)の3日間,リハビリテーション・ケア合同研究大会が井出 睦大会長(社会医療法人雪の聖母会聖マリアヘルスケアセンター院長)のもと,久留米シティプラザにて開催されました.会期中は小雨もあり,肌寒さも出てきた頃合いでしたが,それを吹き飛ばすかのような熱気に包まれ,3日間で約2,200人もの先生方が参加されました.

 多職種の幅広い演題が各地の臨床現場より多数寄せられ,職種を超えて活発な議論がみられました.演題の趣旨も多岐にわたり,高価な医療器具ではなく,身近な生活の品での評価といった演題には感銘を受けました.もちろん,リハビリテーションとケアの相互理解,そのための創意工夫もさまざまな演題でみられ,まさしく,今学会のテーマである「美しく リハの縦糸 ケアの横糸」がよく表れていた合同研究大会でした.また,リハビリテーション,ケアには医師の視点も不可欠であるために,チームとしての医師のかかわりをさらに深めていくことが重要であることもあらためて再認識させられました.

リハニュース【医局だより】

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 まもなく教授就任1年目を迎える西村行秀先生にお話をうかがいました.(文責:広報委員会)

機能回復や障害克服だけではなく活動を育む医療を実践

 西村行秀先生は,和歌山県立医科大学医学部リハビリテーション医学講座から,2017年4月1日に岩手医科大学医学部リハビリテーション医学科の教授に就任されました.

 「大学のある盛岡は,海の幸にも山の幸にも恵まれています.温暖な和歌山の生活が長かったのですが,赴任する前から北国には寡黙で辛抱強い人が多いと聞いていました.病院で実際に患者さんと接していると,本当に口数が少なく我慢強い人が多いことに驚きました」と話す西村先生.

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The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
55巻2号 (2018年2月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-3526 日本リハビリテーション医学会

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