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はじめに
変形性膝関節症(osteoarthritis of the knee:以下,膝OA)は,高齢者の膝関節疾患の中でも最も多く,立ち上がりや歩行時などの疼痛・筋機能の低下・変形による関節可動域制限などにより日常生活活動(ADL)が阻害される.膝OA患者のADLの改善のためには運動療法が効果的である.近年の欧米における無作為化比較試験(RCT)による研究では単一の運動ではなくOpen Kinetic Chain(OKC)とClosed Kinetic Chain(CKC)両方を含んだ下肢全体のトレーニングが膝OAに有効とされている.本邦では従来,大腿四頭筋訓練や膝伸展位下肢挙上(SLR)訓練を中心としたOKC運動が推奨されてきたが,RCTによる結果を受けてCKC運動が注目されてきている.CKC運動では下肢全体の筋群が協調して活動するなどの優れた特徴があり,膝OAにおける筋力と神経運動器協調能の低下を改善する効果が期待できる.しかし,二関節筋の抑制現象などOKCとは全く異なる運動様式を示すことが判明しており,CKC運動を指導する時にはその特性を十分理解しておくことが重要である.我々はCKC運動の特性を解明すべくバイオメカニクス研究をこれまで行ってきた.また運動療法と併用されることが多い温熱については,分子生物学的にどのようなメカニズムで効果を発揮するのかは必ずしも明らかではない.我々は新規に開発した物理刺激高感受性培養神経細胞を用いて温熱の細胞・分子レベルでの作用を研究してきた.膝OAにおける温熱とCKC運動の効果について臨床研究だけでなくバイオメカニクスと細胞分子レベルの基礎研究について解説する.
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