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はじめに
人工膝関節置換術(total knee arthroplasty:TKA)の目的は,障害膝の除痛,支持性,可動域(range of motion:ROM),耐久性の獲得を求め,患者にとってより適したADLとQOLを再現することである.
TKAには,後十字靭帯(posterior cruciate ligament:PCL)を温存するCR(cruciate retention)型とPCLを切除して脛骨上のpostと大腿骨のcamによりPCL機能を代償させるPS(posterior stabilizer)型が主に使用されている.近年,前十字靭帯(anterior cruciate ligament:ACL)とPCLの両靭帯を温存するBCR(bi cruciate retaining)型が使用され始めたが,まだ安定した成績が出ていない.現在では,軟部組織バランスを獲得するためにはPS型のほうがやさしいとする観点からPS型が多く使用されている.それに対し,CR型は正常膝の形態と靭帯バランスを再現する必要があり手技的に難しいとされているが,PCLを温存することで,より高い安定性と脱臼の心配もなく正座が可能となることから,徐々に増えつつある.
筆者らはTKAに際し,日本人の日常生活に適した膝関節のROMと安定性を得るため,後十字靭帯温存型人工膝関節置換術(CR型TKA)を行っている1, 2).
手術では,大腿骨遠位の切除は,大腿骨コンポーネントのメタルの厚さとする“独自の表面置換法”で行っている.また,大腿骨コンポーネントの設置は,日本人の大腿骨遠位の形態(前弯)を理解し,その膝の本来の位置に設置すべく,仮のjoint lineを大腿骨遠位のintercondylar notch point(顆間部)と規定し3-5),大腿骨遠位を軽度屈曲位(7〜8°)に切除して,その膝の本来の位置に設置する.
靭帯バランスは,膝の安定性を得るため軟部組織の剥離は最少とし,ACLは切除するが,PCLは温存し,内側側副靭帯(medial collateral ligament:MCL),外側側副靭帯(lateral collateral ligament:LCL)の解剖学的靭帯バランスの維持に努める.
筆者らの手術手技とリハビリテーションで,150°以上の正座膝が約10%得られ,4種類の人工膝関節機種(CR型)で正座が可能であった(図1).
CR型TKA術後の良好なROMと安定性は患者にとってよりよいADLをもたらし,正座,スポーツも可能となる(図2).
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