The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 54巻7号 (2017年7月)

特集 生活期(維持期)のリハビリテーションを考える

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 急性期,回復期に引き続き在宅などで生活していく時期は「維持期」と呼ばれていますが,近年,「生活期」という名称が注目されています.これは単なる名称変更に留まらず,生活を支えるというリハビリテーションの原点回帰といえます.生活期は期間が圧倒的に長く,ニーズが高まっている一方,提供できる資源は圧倒的に不足しており,効率的に質の高いリハビリテーションを提供する方策が求められています.本特集では生活期リハビリテーションの第一線で活躍する先生方にご寄稿いただきました.本特集がリハビリテーション科医,専門職種に求められる役割を考える一助となれば幸いです.

▷ 担当:水野勝広,企画:編集委員会

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要旨 生活期リハビリテーションは「機能や活動の低下を防ぎ,身体的,精神的かつ社会的に最も適した生活を獲得するために提供されるリハビリテーション医療サービスである」と定義され(1998年),機能の維持・向上,生活環境の整備,介護負担の軽減,社会参加の促進を通して,利用者の自立生活を支援するとされている.この定義の後,地域包括ケアなどさまざまな理念が導入され,生活期リハビリテーションのあり方にもリハビリテーション本来の理念があらためて求められるようになったが,さまざまな課題も指摘されている.本稿では,これまでの経過から生活期リハビリテーションの目標を「利用者の生活機能の維持・改善を図り,地域社会で,その人らしい自立した生活を継続させること」とし,目標実現のための指針について述べた.

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要旨 生活期リハビリテーションは医療機関から退院した後の在宅や施設において展開される.医療機関に入院している時間よりも長い場合が多いが,入院時と比べるとリハビリテーション専門職種の関与は,時間的にも人員的にも圧倒的に少ないのが現状である.限られた時間,限られた資源の中で,効果的な生活期リハビリテーションを行うために,患者の主体性を導き出すような具体的な目標を設定し,生活期の患者の活動性の向上を主眼に置いたプログラムを作製し,患者自らが主体性をもって行うように促していくことが必要である.また,リハビリテーション専門職と生活期を支える関連職種や地域行政を巻き込んだ総合的・包括的地域リハビリテーションの構築が必要である.

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要旨 脳卒中においては装具処方の機会は多いが,最良の選択はしばしば困難である.障害評価に基づき最良のリハビリテーション医療を行うという活動目標のために,装具療法においても急性期から回復期,生活期に至るまで,変化する障害に対して評価を行い,適合だけでなく,予後予測やアドヒアランスも勘案して,装具の適応を決めていく必要がある.生活期の装具のフォローアップシステムは,活動し続ける体を保持するために,生きているときを活かす大切な手段であり必須であるが,不完全である.生活期の装具療法の長期アウトカムに結びつく装具処方・装具療法のエビデンスが期待される.

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要旨 2016年度の診療報酬改定では,生活期における逓減制でのさらなる減算など,介護保険への移行がさらに促進された.医療保険での生活期リハビリテーションの提供がますます縮小されているが,都市部のクリニックにおける外来訪問リハビリテーションの取り組みについて患者数などの実績を交えて紹介する.外来リハビリテーションの役割として,①機能改善,②社会復帰・参加,③維持や予防が挙げられる.介護保険の訪問リハビリテーションにおいては,リハビリテーション会議の開催や医学的な視点がより必要とされる場面も多い.在宅医療の充実を図るには,医療保険のリハビリテーションと介護保険のリハビリテーションが双方向性に機能することが重要であり,生活期リハビリテーションに精通したリハビリテーション科専門医の担う役割も大きいと考える.

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要旨 心臓リハビリテーションは心疾患に対する最適な包括的疾病管理プログラムであり,回復期・維持期と長期にわたり介入し続けることが必要な治療とされる.しかし,心臓リハビリテーション施設数は十分ではなく,特に回復期・維持期における外来通院型心臓リハビリテーション施設数は非常に少ない.循環器内科外来として包括的疾病管理プログラムを提供するうえで必要不可欠な心臓リハビリテーションをクリニックで実践可能かどうか,当初はモデルケースも少なく不可能という意見もあったが,当院は2011年4月心臓リハビリテーション科を主たる診療科目とした,回復期・維持期外来心臓リハビリテーションを開設し,6年が経過した.本稿では,当院の実際について報告すると共に生活期心臓リハビリテーションについて考えてみたい.

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要旨 地域の中規模病院から訪問診療を行っている経験を踏まえ,高齢者の訪問診療で必要な視点や在宅医療と入院医療の適切な連携について述べる.訪問診療では診断能力,かかりつけ医としての疾患管理能力,リハビリテーションの専門家としての能力など総合力を求められる.リハビリテーションの専門家としては動作障害や嚥下障害に現実的・具体的な対策を提示することが重要である.病院から訪問診療を行う利点として,入院中にも継続的に関与できること,生活期の患者の短期入院が可能なこと,医師の教育的効果があることが挙げられる.訪問診療は生活を診ることができるリハビリテーション科医が積極的にかかわるべき領域である.

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要旨 家で暮らす人のリハビリテーションについて筆者の経験を報告する.在宅医療とリハビリテーションは親和性が高かった.在宅にリハビリテーション科医が入ることで長く変わらなかったリハビリテーション経過が動く場合があった.離島など地理的な困難をもつ所にもくまなくリハビリテーションを届ける工夫が必要であった.在宅のリハビリテーション科医に特別なスキルは必要なく,数的に多い病院勤務医の積極的な参加が望まれる.医師の負担軽減には情報通信技術(ICT)の活用など今日的な工夫を取り入れるべきである.

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要旨 生活期はリハビリテーション資源が乏しく,リハビリテーション非専門職との協働では地域リハビリテーションに対する理解が最も必要とされる.地域リハビリテーションの潮流は共生社会,地域包括ケアシステムでの介護予防,かかりつけ医機能・在宅医療の中の生活支援にあり,その理念・技術を支える役割を求められている.東京都では特に超高齢社会に向け,予防的リハビリテーションにおけるリハビリテーション専門職の活用が試みられている.また在宅医療における重要な視点として,リハビリテーションは生活支援と共に希望を創造する手立てとして期待も高い.今後は質・量ともに不足する地域でのリハビリテーション専門職の人材育成と,サービスの受け手である市民への啓蒙,必須となった医療福祉介護職との協働の深化が急務である.

巻頭言

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 大学リハビリテーション科の責任者がタイトルのようなことを主張しても,当たり前のことと思われるかもしれないが,あえて今がまさにそのときであると言い切るには確固たる理由がある.

 第1の理由は人材の充実である.昨年度の専門医試験の合格者が史上最多の140名となり,いよいよ多数の専門医を地域に送りだす時代が到来したといってよい.筆者はより多くの専門医が,幅広い分野の基礎研究や臨床研究を推進することを期待している.しかし,リハビリテーション科を志向する医師には,いわゆる「臨床志向」が強い人が多く,研究や学位に無関心な人も少なくない.これはきわめて危険である.臨床実践のためには,臨床研究によるエビデンスが必須であることはもちろん,基礎研究の成果を踏まえたトランスレーショナルリサーチを具現化する不断の努力が必要である.これを怠っているとリハビリテーション医学はあっという間に,陳腐な分野として消滅する危険性すらある.

Interview 第1回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会 会長インタビュー

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第1回日本リハビリテーション医学会秋季学術集会は,菅本一臣会長(大阪大学)のもと,大阪国際会議場を会場に10月28日(土)〜29日(日)の2日間開催されます.本学術集会に対する菅本会長の「すべてがかわるリハビリテーション」というメインテーマに込められた気持ちを中心にお話をうかがいました.(聞き手:三原雅史編集委員)

教育講座

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はじめに

 咽頭および喉頭は,呼吸,発声,構音,嚥下などにかかわる多機能な臓器である.さらに,喉頭は気管の入り口に位置しており,下気道への異物侵入を防ぐ気道防御の役割もある.これらの多様な機能には,咽頭・喉頭粘膜からの感覚入力および中枢での精密な運動制御機構が必要である.本稿では,咽頭・喉頭の機能のうち,発声および嚥下を中心にそのメカニズム,神経機構,および機能評価法について述べる.

末梢神経の機能と評価 和田 直樹
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はじめに

 リハビリテーションは歴史的にみると,まず骨・関節系とポリオなどの末梢神経系による障害が対象となり,次いで脳性麻痺,脊髄損傷,脳血管障害などの中枢神経障害に対するリハビリテーションが加わり,そしてさらに高次脳機能障害が対象として取り上げられるようになってきた.リハビリテーションは脚気やポリオの蔓延する時代から長く末梢神経障害に関わってきた歴史がある1).末梢神経障害は全人口の2.4%に存在し,55歳以上の成人では8%にみられると報告されている2).末梢神経障害は直接的な機能障害をきたし,リハビリテーションの対象となるため,末梢神経の機能を理解することはリハビリテーション科医にとって大変重要である.本稿では,末梢神経の機能と評価について,特に筆者の専門である自律神経に重点をおいて述べる.

連載 参加してためになる国際会議・第6回

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▶ 会議の概要

 米国では,リハビリテーション科医師はphysiatristと呼ばれている.このphysiatristの所属する大きな学会が3つある.研究色の色濃いAssociation of Academic Physiatrists(AAP),コメディカルも多職種所属しているAmerican Congress of Rehabilitation Medicine(ACRM),そしてAmerican Academy of Physical Medicine and Rehabilitation(AAPM&R)である.AAPM&Rは臨床研究をメインとしたphysiatristのための学会であり,そのAnnual Assembly(年次会議)は米国で最もメジャーなリハビリテーション医学の学術集会といえる.

 AAPM&R設立は1938年,当初はAmerican Society of Physical Therapy Physiciansであったが,その後3回名称を変えている.米国のリハビリテーション医学を語るとき避けて通れないのがDr. Krusenを父とするPhysical Medicine派と,Dr. Ruskを父とするRehabilitation Medicine派の対立であろう.当学会も紆余曲折を経て現在の名称に落ち着いたのは1955年であった.日本リハビリテーション医学会が第50回を迎えた2013年に75周年を迎えており,ちょうど四半世紀歴史が古い.オフィシャルな学術誌はPM&Rであるが,2009年からの刊行なのでこちらの歴史は浅い.

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要旨

【目的】周術期消化器がん患者に生じる倦怠感の変化とその関連要因を検討することを目的とした.

【方法】対象は消化器がん患者46例(男性25例,女性21例,年齢62.0±11.9歳)である.方法は倦怠感を評価するCFSの他にHAD,IKEF,6MWDを手術前・手術後・退院後で測定し,時期ごとでCFSと各評価の相関を調査した.

【結果】CFSは手術前が高値であり,経過を追うごとに減弱した.すべての時期でCFSは不安・うつに有意な正の相関,加えて手術前と退院後で6MWDとIKEFに有意な負の相関を認めた.

【結論】周術期消化器がん患者は手術前・手術後・退院後のすべての時期で倦怠感と不安・うつが関連し,さらに手術前と退院後で運動耐容能や膝伸展筋力が倦怠感に関係することが考えられた.手術前や退院後で運動機能に対する介入が倦怠感減弱に重要である可能性が示唆された.

リハニュース【Topics】

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 一般社団法人リハビリテーション教育評価機構(Japan Council on Rehabilitation Education:JCORE,理事長 才藤栄一 藤田保健衛生大学副学長)は,学校などのリハビリテーション教育の質の向上,発展充実のために活動し,もってリハビリテーション関連職種の教育・養成の振興に貢献することを目的に,2012年度に一般社団法人全国リハビリテーション学校協会(JRSA),公益社団法人日本理学療法士協会(JPTA),一般社団法人日本作業療法士協会(JAOT),一般社団法人日本言語聴覚士協会(JAS)の4団体により設立された.以下にJCOREの概要について紹介する.

リハニュース【リハ医への期待】

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 病院に勤めていた頃,“リハビリテーションの力”を強く意識する出来事があった.その病棟では,脳卒中で片手麻痺の患者さんに対し,動くほうの手を鏡に映し,麻痺したほうの手が動いているように錯覚させる,いわゆるミラーセラピーを行っていた.錯覚により脳を刺激し,動くはずのない手のよりリアルな運動のイメージを作り出すのだという.方法自体も面白いと思ったが,数日後,実際にその患者さんが麻痺したほうの手を動かし歩いているのを見て,本当によかったと思うと共に,大変驚き感銘したのであった.

 これがリハビリテーションの専門性なのか.看護にはない何かを感じ愕然とした.当時は今ほど「チーム医療」が当然ではなく,同じ病院でも他の職種が何をしているのか,積極的に知ろうとしていなかった.しかし,看護だけでは解決できない問題に幾度となく直面し,他の職種の知恵や技を借り,一緒に患者さんを支援することが必要ではないかと漠然と感じていた.では一緒に活動するにはどうしたらいいのだろう.まずは知ることだ.当時,幸運にも看護部長という立場にあった私は,院内の各病棟に出かけ,そこで働く医師や看護師,他の職種と話す機会をもった.

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 第52回日本理学療法学術大会が伊藤光二大会長(福島県立医科大学)のもと,2017年5月12日(金)〜14日(日)の会期で,幕張メッセ国際会議場・国際展示場・東京ベイ幕張ホールにおいて開催された.参加者は6,500名を超え盛大に開催された.

 日本理学療法学術大会は,12の分科学会と10の部門により構成されており,第52回の本大会は,同一期間,同一会場ですべての分科学会と部門が集結した連合形式で行われた.来年度以降の学会は,全体の分科学会や部門が一堂に集結することはなく,各分科学会が独立した形で開催される.そのような背景から,分科学会や部門が集結する最後の学術大会ということもあり,本学会は「理学療法士の学術活動推進」というテーマであった.

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基本情報

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The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
54巻7号 (2017年7月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-3526 日本リハビリテーション医学会

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