The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 53巻10号 (2016年10月)

特集 リハ専門医が知っておくべき骨関節の3次元動態

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 四肢,体幹の機能回復はリハビリテーションの非常に大きな目的であるが,特に理学および作業療法士の方々には,可動域訓練や筋力訓練などを行うにあたり,それを人体で可能とさせている筋肉や骨関節構造を十分に理解する必要がある.それは車の構造を知らずに故障を修理することと似ている.本特集では,生きた人間における筋肉や骨関節の仕組みを,ほぼ全域にわたって解説したものであるが,訓練を行ううえでの参考となることを願ってやまない(担当:菅本 一臣,企画:編集委員会).

1 頚椎のバイオメカニクス 長本 行隆
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要旨 頚椎は,脊椎の中で最大の可動域を有し,環軸椎という軸椎下の椎骨と大きく形態を異にする椎骨の存在のために,そのバイオメカニクスは脊椎の中でも独特である.近年の3次元動作解析により,生体内での頚椎前後屈,回旋,側屈のすべての基本運動の詳細な挙動が明らかにされ,中でも回旋や側屈における椎間レベルの可動域や,カップルドモーションと呼ばれる3次元的な運動パターンの解明が,飛躍的に進んだ.頚椎疾患の治療に携わる医療従事者にとって,頚椎のバイオメカニクスを理解しておくことは重要である.そこで本稿では,バイオメカニクスの中でもリハビリテーションにおいて,特に重要と思われる頚椎の機能解剖やキネマティクスを中心に取り上げ解説する.

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要旨 肩は上肢の基盤ともいえる部位であり,肩甲上腕関節と肩甲帯から構成される.肩甲上腕関節は体の中で最も広い可動域をもつ関節であり,その肩甲上腕関節が機能を十分発揮するためには肩甲帯が機能的に働くことが必要不可欠である.肩甲帯は通常の関節のように関節包や靱帯によって支えられておらず,肩甲骨に付着する筋群によって複雑にコントロールされている.そのため肩甲帯がどのように動いているのか,その仕組みを知ることは肩や上肢のリハビリテーションを考えるうえで非常に重要である.本稿では肩甲帯の解剖とその運動の仕組みについて解説する.

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要旨 肩関節運動は肩甲骨と上腕骨の共同運動であり,またリハビリテーション(以下,リハ)においてもその役割は重要視されている.しかし,肩甲骨の動きは外転運動などでは明らかにされているが,水平内外転運動に関しては,あまりよく知られていない.

 また肩関節外旋位での水平内外転運動は,肩関節脱臼や投球動作のcocking phaseに相当し,脱臼術後のリハにおいても肩甲骨の動きが不十分であれば,可動域制限をきたす.健常人の肩関節水平内外転運動における肩甲骨の3次元動態解析を行い,肩甲骨の動態を解明することにより,肩関節の機能改善につながることを期待する.

4 肘関節のバイオメカニクス 岡 久仁洋
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要旨 肘関節には腕尺関節,腕橈関節,近位橈尺関節の3つの関節があり,屈伸運動と前腕回旋運動を行うことができる.安定した関節運動を行うための機構として内側側副靱帯,外側側副靱帯複合体があり,靱帯機能が破たんすることにより,肘関節拘縮,不安定性の原因となる.屈伸運動の回転軸の通過する位置は,上腕骨滑車中心の内側側副靱帯前斜走線維の付着部に一致するが,外側は屈曲肢位により外側側副靱帯付着部面に分布し,回転軸の軌跡は円錐状となる.前腕回旋軸は尺骨小窩と橈骨頭中心を通過し,前腕は,ほぼ一軸性の回旋運動を行う.これらの肘関節における解剖学的特徴と3次元的動態解析に基づいた運動機能について述べる.

5 手関節のバイオメカニクス 大森 信介
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要旨 手関節は橈骨手根関節,手根中央関節,遠位橈尺関節の複合運動により,掌背屈,橈尺屈,回内外運動が可能な関節である.手関節の効果的なリハビリテーションを行うためには,手関節の機能解剖を理解することが重要である.しかし,手関節の3次元バイオメカニクスを含めた機能解剖についてはいまだ解明されていない部分も多く,議論も多い.本稿では,まず手関節の正常機能解剖について述べ,次に手関節外傷として頻度の高い橈骨遠位端骨折,DISI変形に代表される手根不安定症における3次元手関節バイオメカニクスについて述べる.

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要旨 母指および指関節は手根中手関節,中手指節関節,指節間関節からなる.母指はつまみ動作や握り動作など手の機能の中で中心的な役割を果たしている.その中で,母指の手根中手関節は中手指節関節や指節間関節と比べて,関節の自由度が高く,屈曲伸展,内外転,回旋動作が可能で母指のkey jointとされている.一方,指では手根中手関節の動きは限られており,軽度の屈曲伸展運動を認めるのみであるが,中手指節関節は,屈曲伸展に加えて,内外転も許容し,関節の自由度が高く,指のkey jointとされている.本稿ではその母指ならびに指の関節の構造と機能について解説する.

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要旨 腰椎のキネマティクスは胸椎とは異なり,胸郭,肋骨による支持がないために大きな運動性と可動域を有する.また腰部脊柱管狭窄症・腰椎変性すべり症・腰椎変性側弯症などの変性疾患や腰椎圧迫骨折・腰椎破裂骨折などの外傷の好発部位となる.その理由としては,上位脊柱からの荷重や運動負荷が腰椎に集中するからであると考えられている.こういった疾患を治療するうえで,腰椎の解剖とキネマティクスへの理解は大変重要である.本稿では腰椎の解剖と疾患との関係性,キネマティクス研究の歴史について述べる.

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要旨 膝関節は,骨,靱帯,筋肉のそれぞれが合わさって屈曲と伸展だけではなく,屈曲に伴う大腿骨-脛骨間のrollback motionと外旋運動を認める.変形性膝関節症では,一部に内旋運動を認める症例があり,正常膝とは異なる動態を認めた.2D/3Dレジストレーション法を用いた人工膝関節術後の動態解析では,大腿-脛骨コンポーネント間の屈曲角度は平均120°程度であった.脛骨に対する大腿骨の外旋運動は認められるものの,その回旋量は約10°前後と正常膝に比べて少なかった.またキネマティックパターンはさまざまであり,インプラントの表面形状,手術手技により規定されている可能性が高かった.

9 足関節のバイオメカニクス 福本 貴彦
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要旨 足関節は複雑な構造をしているかと思いきや,いたってシンプルな構造である.しかも,その構造は合目的的であるため,構造の理屈がわかれば理にかなった動きをしていることがわかる.ここで述べる距腿関節・距骨下関節・遠位脛腓関節は,それぞれの形状によりその動きが規定され,画一的な方向への運動が起こる.リハビリテーション場面では,このような関節運動学上の特性を理解し,内容を踏まえ,定義的な単純運動方向(一方向)である底背屈・内外反などといった3次元空間の定義ではなく,足関節が本来有する運動方向への動き(背屈+外反,底屈+内反)によって運動療法を行うべきであろう.

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 腹腔鏡視下手術に加えてda Vinci Surgical System®の保険適用が拡がるなど医療用ロボットは長足の進歩を遂げている.平成28年の診療報酬改定ではロボットスーツによる歩行運動処置(J118-4)の保険適用が認められたが,効果については百家争鳴で,エビデンス構築のためのデータ集積が始まったばかりである.一方で経済産業省や厚生労働省が導入を勧める介護ロボットは超高齢社会の社会保障費用の伸びを抑えるための介護支援型(介護者の負担軽減),自立支援型(高齢者の日常生活動作を支援),見守り支援型であり,ロボット技術によりリハビリテーションの限界をブレイクスルーしたいわれわれ現場とは同床異夢である.

 モノのインターネット(IoT)はさまざまな「物」がインターネットに接続され,情報交換することにより相互に制御する仕組みである.現在でも関節の動きを数式化して内蔵コンピュータが動きを調節する膝継手や足継手にかかるモーメントを可視化して訓練にフィードバックするシステムは存在するが,医療・ヘルスケア分野ではもっと大がかりに,センサー技術などの進歩によりヒトの生命徴候のみならず身体・精神活動などすべての生体データがインターネットを介して収集(ヒトのビッグデータ),解析されるIoH(ヒトのインターネット)が始まっている.余談ではあるが,最近ではドローン(drone)を利用して競技中の選手の動きをリアルタイムに観測し,次のプレーに反映させることも行われる.

教育講座

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はじめに

 摂食嚥下障害は終末期医療とも関わるためたいへん難しい問題である.人は「口から食べる」ことに日々喜びを感じている.しかし,残念ながら,脳卒中やパーキンソン病などの神経変性疾患,がんの終末期,あるいは認知症の終末期などには経口摂取ができなくなる.そして,これらの摂食嚥下障害は,しばしば同時に,自律・自己決定の障害を伴っており,倫理的に問題となってくる.本稿では摂食嚥下障害に関わる倫理についてポイントを概説する1)

連載 高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの技術・第10回

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はじめに

 脳損傷後の機能回復に関する歴史では,Brocaをはじめとする多くの研究者らによって大脳局在論が成立した.局在論的立場からの仮説は,①機能代理,②機能代行,③機能再編成,④機能代償がある.現在は,①②が機能再建,③④が再組織化および脳機能への直接訓練となった.局在論的立場とは反対に,全体論的立場からの仮説は,傷を受けた大脳が選択的に抑制作用を起こし,この抑制作用が消失することで回復につながるとする.全体論的立場は,その後,包括的アプローチへと発展し,外的代償手段の活用訓練や環境調整への介入となった.認知リハビリテーション(以下,リハ)は,損傷された機能を回復させるための直接訓練,損傷された機能の近接領域あるいは対側半球により再組織化させるための訓練,代償手段の活用や環境を調整する訓練へと発展する.リハ医療では,さまざまな職種がそれぞれの担当を担う専門職連携によるアプローチが効果をあげている.

 今回,ヘルペス脳炎後に復職を目指した40歳代,男性への認知リハとして,①病態認識改善,②機能回復(注意,記憶,遂行),③代償手段の活用(記憶),④環境調整(家族,会社)を心理士が実施し,復職に至った過程について報告する.

連載 ISPRM招致活動記録・第10回

招致プレゼンと逆転勝利 道免 和久
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 開会前夜のウェルカムパーティーでは,水間前理事長を中心に,才藤委員長や浅見理事などが,各国の代表に対して「個人的に」日本や神戸の良さを売り込みました.プロモーション活動に制限がありましたので,売り込んだ相手が日本に好意的な場合に限り,準備しておいたA4のフライヤーを手渡す方法をとりました.ところがオーストラリアは,シドニーへの招致を呼びかけるフライヤーを,堂々と学会の公式デスクに山積みしていましたので,私たちもフライヤーを横に山積みして対抗しました.このあたりのことを含めて,どこまでが許容されるプロモーション活動なのかは,最後まで不明のままでした.

 また,パーティー会場の私たちの席にオーストラリアの担当者が挨拶に来られたのですが,「日本も頑張ってくださいね」と声をかける姿は余裕綽々に見えました.後からわかったことですが,すでにこの時点でオーストラリアの勝利が確実視されていたとのことです.パーティー会場では予想より多くの本学会会員を見かけましたので,本番までいろいろとお手伝いが必要になると伝えたところ,自然発生的に即席の「日本チーム」が現地で組織されました.何よりも心強かったエピソードの1つです.

リハニュース【Topics】

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介助犬とは

 介助犬とは,肢体不自由者の日常生活動作を補助し,自立と社会参加促進をすることを目的に訓練された犬で,2002年に制定された身体障害者補助犬法による認定を受けた障害者とペアとなった犬のことをいう.

 盲導犬は知られているが,「介助犬」の存在は知られておらず,いまだ全国でその数は73頭で,認知度が低いことが最も大きな課題といえる.

リハニュース【リハ医への期待】

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4年間教育への転換

 現在,理学療法士の養成課程において1学年の定員は1万3千人を超えており,結果的に卒業時の臨床能力が低いという強い指摘を受けています.そこにはさまざまな要因がありますが,その最たるものはリハビリテーション(以下,リハ)専門職の養成課程が,介護保険の導入や予防などへの参加で大きな変化がありながら,50年前と変わらず,3年間教育になっていることです.日本理学療法士協会では,4年間教育への転換を総会決議してからすでに20年近くが推移しましたが,なかなか思うようにいっていないのが現状です.日本のリハを科学的で実践力のあるものにするためには,リハ専門職の「力」も大きな要素です.教育こそがすべての始まりであり,日本リハ医学会として,理学療法士の4年間教育に対する協力が得られることを願っています.

リハニュース【REPORT】

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日本理学療法学術大会

 第51回日本理学療法学術大会が星文彦大会長(埼玉県立大学保健医療福祉学部教授)のもと,2016年5月27日(金)〜29日(日)に札幌コンベンションセンターと札幌市産業振興センターで開催されました.

 日本理学療法士学会は日本運動器理学療法学会,日本神経理学療法学会など12の分科学会と5つの部門で組織されています.今回紹介する学術大会は12の分科学会の“連合学会”として企画・開催されました.テーマは「理学療法学のアイデンティティ—基盤と分科—」でした.理学療法を機能不全に対する治療学と,生活活動を支援する適応学の両者を包含するものと捉え,専門分科していく理学療法のよりどころを再確認しようと,このテーマが掲げられました.

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基本情報

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The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine
53巻10号 (2016年10月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1881-3526 日本リハビリテーション医学会

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