連載 高次脳機能障害に対する認知リハビリテーションの技術・第10回
ヘルペス脳炎後,高次脳機能障害を呈した40歳代男性への復職を目指した認知リハビリテーション
中島 恵子
1
1帝京平成大学大学院臨床心理学研究科
キーワード:
神経心理学的評価
,
病態認識
,
機能回復
,
代償手段
,
環境調整
Keyword:
神経心理学的評価
,
病態認識
,
機能回復
,
代償手段
,
環境調整
pp.794-799
発行日 2016年10月18日
Published Date 2016/10/18
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はじめに
脳損傷後の機能回復に関する歴史では,Brocaをはじめとする多くの研究者らによって大脳局在論が成立した.局在論的立場からの仮説は,①機能代理,②機能代行,③機能再編成,④機能代償がある.現在は,①②が機能再建,③④が再組織化および脳機能への直接訓練となった.局在論的立場とは反対に,全体論的立場からの仮説は,傷を受けた大脳が選択的に抑制作用を起こし,この抑制作用が消失することで回復につながるとする.全体論的立場は,その後,包括的アプローチへと発展し,外的代償手段の活用訓練や環境調整への介入となった.認知リハビリテーション(以下,リハ)は,損傷された機能を回復させるための直接訓練,損傷された機能の近接領域あるいは対側半球により再組織化させるための訓練,代償手段の活用や環境を調整する訓練へと発展する.リハ医療では,さまざまな職種がそれぞれの担当を担う専門職連携によるアプローチが効果をあげている.
今回,ヘルペス脳炎後に復職を目指した40歳代,男性への認知リハとして,①病態認識改善,②機能回復(注意,記憶,遂行),③代償手段の活用(記憶),④環境調整(家族,会社)を心理士が実施し,復職に至った過程について報告する.
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