Book Review
上肢・手の機能と作業療法—子どもから大人まで
渡辺 誠
1
1秋田県立医療療育センター
pp.976
発行日 2017年11月15日
Published Date 2017/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.5003200746
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自閉症スペクトラムの3歳の女の子と遊具に一緒に乗った際,横に座った女の子が指を絡ませてきた。いわゆる「恋人つなぎ」である。恋人ではないので,不安? いつも? なぜそうしたのか…。手の使い方でいろいろなことを想像させ,意味を持ち,気持ちがより通じ合うこともある。食事を作るときは包丁やフライパンを操り,適度な手加減で調味料をふりかけ,家族の団らんに一役買う。舞踊家は手の先端まで神経を使い美しさを表現する。「ばいばい!」と言うとき,手を振らないことは稀なように,手は発する言葉よりも重い意味を持つこともある。近年はボタンだけを操作してディスプレイ上のスポーツを楽しむ。人は手を使い,道具を操ることによって日常生活を営み,さまざまなものを創り出すことができる。手は単なる運動器官ではなく人間らしく生きるために文化的で社会的な意味を持つものである。「出会った人の,その人らしさを追求する」ことがOTだと恩師に教わった。筆者のOT観の根幹にある言葉である。「上肢・手」はその人らしさに欠くことのできない大きなテーマである。
本書はテーマごとに成人と小児の領域から執筆していることが最大の特徴である。その執筆者の顔ぶれがなんと豪華なことだろう。この人は何を書いているか? 見逃せない顔ぶれである。
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