地域リハビリテーション 11巻12号 (2016年12月)

特集 これからの地域看護のかたち—施設篇

山下 裕子
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 急速に進む高齢化や急性期病院等の在院日数の短縮などの影響で施設の利用者が増加しています。入居者は重症化し,施設を終の棲家として看取りのニーズも高まっています。暮らしを支える視点でのケアと医療を一体化させる看護職の役割と期待は今後さらに大きくなってきます。今回の特集では,それぞれの施設における看護の役割について紹介していただきました。多職種とのチームワークで,入居者の尊厳ある暮らしを支える施設づくりのさらなる向上を目指していただけたらと思います。

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 日本は団塊の世代が75歳以上となる2025年には,人口の約1/5が75歳以上になると推測されており,その後も高齢化が進展するとされている。

 わが国は2025年を見据え,医療や介護が必要な状態になっても,できる限り,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを続けることができるよう,地域を基盤とした「地域包括ケアシステムの構築」を推進している。地域において医療・介護の連携を強化し,包括的かつ継続的な在宅医療・介護を受けることができる環境を整備していくことが喫緊の課題であり,これまでのような病院完結型から,住み慣れた地域で医療や介護を受けながら療養する人々を,人生の最期まで支えられるようにさまざまな機能を強化していく必要がある。

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はじめに

 世界に類を見ない速さで超高齢社会に突入したわが国は平成12(2000)年に介護保険制度(皆保険)が導入され,早16年が経過した。その結果,地域におけるさまざまなケースが掘り起こされ,高齢者施策はそれなりに成果を上げてきた。しかし,昭和20年代(1940年代後半)生まれの団塊の世代が後期高齢者になる2025年には,後期高齢者の医療費を占める割合が24.1%になることが予測される(図1)。国の財政上の問題や疾病構造,社会構造変化に伴う独居,老老介護などの複雑な生活背景から生じる虐待,孤独死などが連日ニュースで報じられ,今までの施策や取り組みでは解決できない状況がある。国民の多くは高齢や病気や障害があっても住みなれた地域や家でなじみの人に囲まれ最期まで自分が望む暮らしを願っているが,現実にはさまざまな困難がある。

 長年,訪問看護は医療依存度が高く,状態の変化が著しい人に対し24時間365日看護を提供してきたが,限られた時間の中での対応で,ほとんど家族が担っており,家族の負担は計り知れないものがある。今後増え続ける慢性疾患を抱えて生きる人,認知症高齢者など,介護を必要とする人々に,医療・看護・介護の在宅サービスだけではない多様なサービスが急務である。平成24(2012)年度の介護保険改正によって作られた,訪問看護と小規模多機能型居宅介護サービスを組み合わせた看護小規模多機能型居宅介護に取り組み,第二のわが家を目指した「つるかめ庵」(以下,当施設)の活動について報告する。

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はじめに

 高齢者の介護施設である特別養護老人ホーム(指定介護老人福祉施設;特養)は,当然ではあるが,職員の大半を介護職員が占め,業務の中心は介護であり,収入源は介護報酬である。しかし,介護職員だけで利用者のケアのすべてを担い,施設運営をしていくことは不可能であり,看護職員をはじめとして,生活相談員,リハ担当者,栄養や調理に携わる職員,事務職員,運行,清掃,警備などさまざまな職種が協働している。さらに,吉祥寺ナーシングホーム(以下,当施設)では,ボランティアや地域の方のご尽力もいただき施設運営が成り立っている。

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はじめに

 看護師は病院勤務が主流であったが,近年,介護施設や在宅などで働く看護職が増えている。筆者が老人保健施設〔1999(平成11)年時の呼称〕(以下,老健)へ勤務するきっかけとなったのは異動によるもので,新規施設を開設することになり立ち上げからの出発となった。神奈川県域の新規老健として県内47番目の開設施設であった。2016(平成28)年9月現在では175施設と,当時と比べて3倍以上の施設が新設された。

 2000(平成12)年4月に介護保険制度が施行された。その目的は,「高齢化の進展に伴い,介護を必要とする高齢者の増加や介護期間の長期化など,介護に対するニーズが増大する一方,核家族化の進行,介護する家族の高齢化など介護を支えてきた家族をめぐる状況の変化を背景に,高齢者の介護を社会全体で支え合うこと」である1)

 介護保険制度が施行されてから今年で16年目を迎え,施設を利用する高齢者の利用者も元気な方から医療依存度の高い利用者へと変化してきた。その間,介護報酬改定や診療報酬同時改定がなされ,さまざまな取り組みや仕組みなどが導入された。

 開設時のことを振り返ると,老健で働く看護職はどのような看護を提供するのか,知識として確固たるものがなかった。また,お手本となる教材や資料もなく,手探りの状況で看護・介護マニュアルや資料を作成したことを今でも鮮明に覚えている。施設は150床で,そのうち50床は認知症専門棟である。開設にあたり,老健で働く看護職の業務を明確にすることが必要であり,参考にする物もなく悶々とする日々が続いていた。一番困ったことが看護と介護の業務内容をどうやって協働していくのかであった。マニュアル作成も病院勤務時のものを参考にした。認知症に関する資料は少なく,あちこちから集めてなんとか看護介護(以下,療養部)に対するマニュアル,手順書などが作成できたが,いざ利用者を迎え手順に沿ってケアを実施してみると,病院でのマニュアルは施設には合わないと感じた。老健は治療するところではなく,病状が安定した高齢者や認知症高齢者が入所し,リハ(生活訓練・機能訓練など)をしながら在宅へ戻るという,「療養上のお世話」が中心となるケアの展開で,病院のように医療器具や衛生材料が豊富にあるわけではない。在宅酸素療法を必要とする利用者がいても,中央配管などが設置されていないので,酸素ボンベを使用しながらのケア提供であった。

 介護職は「日常生活上のお世話」が中心で,食事・排泄・入浴・更衣・移動などの業務を担っている。

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はじめに

 超高齢社会の到来に伴い,将来への不安のトップに挙げられるのが介護問題である。その解決のために,高齢者の施設として,特別養護老人ホーム,療養型病床群などがある。また,住まい(在宅)として,有料老人ホームがあり,その役割は,高齢者への住まいの提供にある。高齢者が介護を受けながらも尊厳を保った暮らしができる住まいを提供することが求められている。そこでの看護師の役割は,高齢者の暮らしを支えるための看護である。しかし,看護師は治療現場で治療の看護を重点に教育され育ったことで,「高齢者の暮らしを支える看護」を求められても,その方向性を定めることができず,看護師としての誇りや,やりがいを見失うことになってしまう。超高齢社会の到来に伴い,老人介護の問題が浮上する中,暮らしを支える看護師を育てることが必要であるとの認識が高まり,3年前より,日本看護協会も「暮らしの看護」の教育に力を入れているように感じる。ナイチンゲールは「看護師は,病気を看護するのではなく,病人を看護するのである」と言っている。また,「看護師とは対象者の生活過程(暮らし)を通して,認識と生命体に働きかける援助者であり,暮らしを整えることが看護師の機能である」と彼女の看護論から学ぶことができた。老人ホームは,ナイチンゲールの看護を実践できる随一の現場であると考える。「暮らしの看護」の実践で,看護師としての喜びや誇りを感じてくれると確信している。

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はじめに—ホスピス和が家

 在宅ホスピスとは,治癒しない病を抱えている人が,その人の望む暮らしが送れるよう痛みや不安などの症状を緩和する医療や日常生活の援助を受けることにより,その人の暮らしの場である家でその人らしく生きることができるよう生を支えることである。症状緩和がメインの緩和ケア病棟と大きく異なるところは,在宅ホスピスとは,“暮らしを支える”というところにある。

 製糸業で栄えたこの町のとある旧養蚕農家である古民家(図1)がこの「ホスピス和が家」(以下,当施設)の誕生である。在宅ホスピスの草分け的存在の小笠原一夫医師(緩和ケア診療所いっぽ 院長)が平成15(2003)年に「どんな状態にある人も理解して受け入れられ,ほっとした気持ちで最期を迎えられる,そんな場所が必要である。医療主体ではなく,暮らしを優先する」と,当施設を設立した1)2)

 当施設の常駐職員構成は,介護職である。医療においては,外部から訪問診療・訪問看護を受けており,看護師である筆者は,介護職である常駐職員の主に相談役となっている。

 現在,当施設では認知症などの慢性疾患やがんの方など13名の方たちの生と死を支えている(図2,3)。

 本稿では,この当施設で出会った2人の方を紹介しつつ,「在宅ホスピスにおける看護師の役割」を述べたい。

巻頭カラー 第30回障害者による書道・写真全国コンテスト入賞作品

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 「障害者による書道・写真全国コンテスト」は全国障害者総合福祉センター(戸山サンライズ)主催のもと,障害のある方の文化・芸術活動の促進と技術の向上,それらの活動を通した積極的な自己実現と社会参加の促進を目的に1986年から開催されています。30回の節目を迎えた2015年は書道部門972点,写真部門227点の応募がありました。

 本欄では,入賞作品の一部を掲載します。

巻頭言

「障害者検診」のすゝめ 西嶋 一智
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 健常者に対する疾病の予防・早期発見には健康診断やがん検診などがある。個人の健康維持に役立つだけでなく医療費節減など社会的な側面からも重要なのは言うまでもない。

 一方,障害者に対する二次障害の予防・早期発見については,重要と思われるにもかかわらず,残念ながら何も用意されていない。医療機関での定期的なフォローは「疾病の二次予防」が主目的であることが多く,二次障害の予防まではなかなか目が行き届かないのが現状である。リハビリテーション科専門医によって機能障害を丁寧にフォローされている障害者は珍しいかと思われる。

連載 おもちゃが拓くリハビリテーションの世界・第6回

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はじめに

 「おもちゃは昔みんな手づくりだった」,これは芸術教育研究所初代所長,東京おもちゃ美術館の初代館長多田信作の言葉である1)。規格化され,大量販売されるおもちゃが世に出るまでは,おもちゃは家庭や,地域の工房で作られていた。本号で取り上げる手づくりおもちゃは,おもちゃの分類2)の中の一つで,身近な素材を使って,簡単に作れるおもちゃのことである。リハビリテーションの中での手づくりおもちゃの役割について述べる。

連載 高次脳機能障害・発達障害・認知症のための邪道な地域支援養成講座・第9回

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私はリハビリ科ナース1年目のあいか.

今日はカレー半額の日なので病院食堂でカレーです!

連載 感性の輝き・第42回【最終回】

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 今日は,Aさんの14回目のサービス担当者会議。

 日程調整するために,9事業所・機関に開催可能な日時を書いて,半数以上の事業所の日程が重なればラッキーくらいに思いながらFAX。数日後に戻ってきた用紙を重ねると,見事にピンポイントに,全事業所が出席可能なところがあった。普段は6畳2間に一人暮らしのAさんの家に,9事業所・機関の14名が集まった。

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要旨 [目的]本研究の目的は,脳卒中片麻痺者の生活空間の広狭を判別する要因を,在宅にて実施可能な評価から明らかにすることである。[対象]対象は,発症後180日以上経過し,当院外来および通所を利用している脳卒中片麻痺者115名とした。[方法]Life-space Assessmentから最大自立範囲が町内・町外の者を広範囲群,未満の者を狭範囲群に分類した。分類した生活空間を従属変数,基本情報およびBerg Balance Scale(BBS),30秒立ち上がりテスト(CS-30)などのパフォーマンス評価を独立変数とし,ロジスティック回帰分析を行った。また,判別因子についてカットオフ値を算出した。[結果]判別因子にBBSとCS-30が選択された。カットオフ値は,BBSが44.5点,CS-30が7.5回であった。[結語]脳卒中片麻痺者の生活空間の広狭は,在宅にて評価可能なBBSとCS-30から判別可能であることが明らかとなった。

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要旨 本研究は,地域在住高齢者を対象とし,二重課題(DT)条件下でのバランス機能と転倒および生活機能の関連について検討した。閉眼,開眼時の単一課題(ST),DTバランスの各測定値の比較した結果,すべてのパターンにて有意差が認められ,視覚依存と副課題の影響を受ける傾向が確認された。また,DTバランスはTMT-Bとの相関関係が認められたため,副課題の遂行によって注意分配能力が低下しバランス機能が低下したと解釈した。転倒群と非転倒群の各測定値の比較においては,DTバランス,握力,GDS,老研式に有意差が認められた。地域在住高齢者の一次・二次予防を推進するためには,定期的な生活機能のスクリーニングテストが不可欠である。しかしながら,対象者の問題や測定会場のスペースの問題などで歩行の検査ができないことが少なくない。今回,DTバランスにおいても転倒との関連が示されたため,歩行検査ができない場合のスクリーニングテストとしてDTバランス検査が有用であると考えた。

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基本情報

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地域リハビリテーション
11巻12号 (2016年12月)
電子版ISSN: 印刷版ISSN:1880-5523 三輪書店

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