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はじめに
看護師は病院勤務が主流であったが,近年,介護施設や在宅などで働く看護職が増えている。筆者が老人保健施設〔1999(平成11)年時の呼称〕(以下,老健)へ勤務するきっかけとなったのは異動によるもので,新規施設を開設することになり立ち上げからの出発となった。神奈川県域の新規老健として県内47番目の開設施設であった。2016(平成28)年9月現在では175施設と,当時と比べて3倍以上の施設が新設された。
2000(平成12)年4月に介護保険制度が施行された。その目的は,「高齢化の進展に伴い,介護を必要とする高齢者の増加や介護期間の長期化など,介護に対するニーズが増大する一方,核家族化の進行,介護する家族の高齢化など介護を支えてきた家族をめぐる状況の変化を背景に,高齢者の介護を社会全体で支え合うこと」である1)。
介護保険制度が施行されてから今年で16年目を迎え,施設を利用する高齢者の利用者も元気な方から医療依存度の高い利用者へと変化してきた。その間,介護報酬改定や診療報酬同時改定がなされ,さまざまな取り組みや仕組みなどが導入された。
開設時のことを振り返ると,老健で働く看護職はどのような看護を提供するのか,知識として確固たるものがなかった。また,お手本となる教材や資料もなく,手探りの状況で看護・介護マニュアルや資料を作成したことを今でも鮮明に覚えている。施設は150床で,そのうち50床は認知症専門棟である。開設にあたり,老健で働く看護職の業務を明確にすることが必要であり,参考にする物もなく悶々とする日々が続いていた。一番困ったことが看護と介護の業務内容をどうやって協働していくのかであった。マニュアル作成も病院勤務時のものを参考にした。認知症に関する資料は少なく,あちこちから集めてなんとか看護介護(以下,療養部)に対するマニュアル,手順書などが作成できたが,いざ利用者を迎え手順に沿ってケアを実施してみると,病院でのマニュアルは施設には合わないと感じた。老健は治療するところではなく,病状が安定した高齢者や認知症高齢者が入所し,リハ(生活訓練・機能訓練など)をしながら在宅へ戻るという,「療養上のお世話」が中心となるケアの展開で,病院のように医療器具や衛生材料が豊富にあるわけではない。在宅酸素療法を必要とする利用者がいても,中央配管などが設置されていないので,酸素ボンベを使用しながらのケア提供であった。
介護職は「日常生活上のお世話」が中心で,食事・排泄・入浴・更衣・移動などの業務を担っている。
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