日本内視鏡外科学会雑誌 10巻2号 (2005年4月発行)

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特集　乳腺内視鏡外科手術の適応とその限界

〔エディトリアル〕乳腺内視鏡外科手術清水　一雄 10巻2号 , 2005年4月 , pp.141-142

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　乳腺疾患に対する内視鏡手術は，1995年頃より日本で独自に開発された手術術式であり，各施設で種々の方法が考案され，斬新的アイディアのもとに始められた．現在までに手術操作・器具は工夫され，淘汰されることによってほぼ一定の手技に統一されてきたと思われる．乳腺内視鏡外科手術の特徴は，十分な根治性を考慮に入れたうえで成り立つ手法であることは当然であるが，乳房上に創痕を残さず，整容性をも追及する手術法であると思う．皮膚切開創を腋窩または乳輪縁におくことにより，ほとんど創痕を目立たなくすることができる．ただ，他の内視鏡手術と違い，乳腺は体表臓器であり胸腔や腹腔のような体腔を有しないために，まずworking spaceを作製することが必要で，このことが当初，手術操作を困難にしていた．しかし，器具の開発と弛まぬ工夫，努力により乳腺良性腫瘍はもとより，乳癌に対しても乳房温存手術のみならず，皮膚温存乳腺全摘術やセンチネルリンパ節生検も含めてほとんどの乳腺手術を内視鏡下に安全に行うことが可能となった．次に，内視鏡手術の最大の利点である整容性であが，創痕が目立たなくても乳腺の切除量が増えると乳房変形が避けらず，何らかの充填を伴った乳房再建が必要となる．乳房再建法と客観的整容性の評価法が重要となる所以である．2002（平成14）年4月には本手術が健康保険適用となった今日，本術式はますます広がっていくものと考えられる．

良性腫瘍—患者が選択する内視鏡下良性腫瘍摘出術北村　薫 , 定永　倫明 , 中村　俊彦 , 古山　正 , 長谷川　博文 , 住吉　康平 , 斉藤　元吉 , 北村　昌之 , 杉町　圭蔵 10巻2号 , 2005年4月 , pp.143-147

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　われわれは1997年より乳腺の良性腫瘍に対する治療選択肢の一つとして，内視鏡下摘出術を行ってきた．外来において乳腺手術に対する整容性と医療コストに対する患者の意識調査を行い，私費診療の内視鏡手術と保険診療の直視下手術との自由選択で術式を決定したところ，患者が選んだ術式はアンケート調査結果と同様であった．すなわち，①若年者の良性腫瘍患者はできる限り乳房上に傷をつけない術式を希望する，②地元以外の病院でも受診する，③治療費が保険診療外でも整容性の高い治療を選択する，ということである．

悪性腫瘍武田　泰隆 10巻2号 , 2005年4月 , pp.148-152

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　乳癌に対する内視鏡手術は，癌の根治性を落とすことなく乳房の整容性を追求した手術である．それゆえ乳房温存術がそのよい適応となる．この場合は，直視下の乳房温存術の適応と変わらないと考えている．また，乳房切除術（乳腺全摘）でも乳房の再建を一期的に行う場合は内視鏡手術の適応である．乳癌の高度な胸筋・腋窩リンパ節浸潤あるいは皮膚浸潤が見られる場合は，術後の乳房の整容性を維持できない術式をとらざるを得ないことから適応外と考えている．乳腺内視鏡手術は，どんな乳癌に対してもまた手術のはじめから最後まで内視鏡を使用する必要はなく，癌の根治性を優先したうえで，術後の乳房の整容性を追求できる術式が選択できる場合にのみ適応となり，乳癌手術の一連のなかでの手術手技の一つであると考えるべきである．

術式の工夫とセンチネルリンパ節生検玉木　康博 10巻2号 , 2005年4月 , pp.153-159

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　吊り上げ法による内視鏡併用乳腺部分切除術およびセンチネルリンパ節生検のために開発した専用器具と，各操作のポイントを解説した．腋窩もしくは乳輪周囲から4mmの細径鏡と専用吊り上げ鉤，創縁保護リングや特殊形状の圧排鉤を用いることで，容易かつ効率的に本手術を施行することができる．しかし，各操作の要点さえつかんでしまえば，必ずしもこれらの器具がそろっていなくても本手術を行うことは十分に可能である．本手術は決して難しい特別な手術ではなく，適応も従来の手術と変わらず，その延長として容易に習得が可能である一方，症例を選ぶことにより従来手術よりはるかに整容面での術後のQOLが高い優れた術式である．

乳房再建法沢井　清司 , 中嶋　啓雄 , 水田　成彦 , 阪口　晃一 , 鉢嶺　泰司 10巻2号 , 2005年4月 , pp.160-164

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　乳癌に対する乳腺内視鏡外科手術は，目立たない部位の小さな手術創で行うのが最大の特徴である．切除範囲に関しては，傍乳輪切開または腋窩切開で乳腺全切除術を含め自由に選択することが可能である．しかし，整容性に関しては，切除範囲に応じて適切な再建法を選択することが重要である．再建法に関しては，以下のとおりである．①縫合法は切除範囲が小さい場合には優れた方法である．②外側脂肪弁充填法は主にBq（quadrantectomy）を行った場合に適応されるが，乳腺と広背筋の間に存在する脂肪が少ない例ではボリュームが不足する．③デキソンメッシュ充塡法は新しい術式として期待されるが，異物反応などの合併症をどのように防止するのかが課題である．④広背筋脂肪弁充塡法は乳腺を1／3以上切除するときに適応される優れた方法である．⑤生理食塩水バッグ挿入法は簡便であるが，バッグの耐久性と位置変位が課題である．⑥シリコン挿入法は乳房温存術後の部分的乳房変形に対する再建でも用いることができる．

整容性の評価山下　浩二 10巻2号 , 2005年4月 , pp.165-170

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　乳腺内視鏡手術の目的は整容性の向上である．その整容性の評価方法は，従来の4段階法の他，乳房温存療法ガイドラインによる評価法があった．より客観的な評価には，BRA法，沢井班研究報告による整容性評価法と，われわれが考案した5項目4段階ABNSW法がある．ABNSWは，乳房の位置，形状，乳頭の変形，皮膚の状態，瘢痕について4段階に評価し，合計点で総合判定する．乳腺内視鏡手術後には90％が11点以上となり，この手術の整容性のよさが示された．また，再建方法として，乳腺授動法，側胸部脂肪織充塡法，合成繊維網充塡法（FMS法）があり，充塡法が整容性で勝っていた．乳腺切除量が多い場合には充塡による再建が必要である．

内視鏡下乳房全摘術の遠隔成績と術式適応福間　英祐 , 比嘉　国基 , 和田守　憲二 , 坂本　尚美 , 角田　ゆう子 , 杉野　三千男 , 宮内　充 , 宇井　義典 10巻2号 , 2005年4月 , pp.171-178

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　開始後9年以上経過した内視鏡下乳癌手術，とくに内視鏡下乳房全摘術の長期成績を報告した．内視鏡下乳房全摘術はskin sparing mastectomyの一つで，皮膚温存と小皮膚切開手術の特徴を生かしインプラントを用いた再建を前提としている．再建後の整容性は良好である．乳房の解剖学的特徴を利用した同手術は皮膚切除量を除けば従来法の乳房全摘術と同等の癌根治性があると考えられ，5年生存率は0,1期乳癌100％，2期乳癌94.4％と従来法と同等の成績である．9年以上経過した内視鏡下乳癌手術は確立された手技と考えられ，マンモトームによる乳房生検，内視鏡下前哨リンパ節生検，内視鏡下乳房再建術と併せ小皮膚切開で完結する乳癌診断・治療システムの構築が可能だと思われる．

乳房温存手術の手術成績から見た手術適応と術式選択山形　基夫 , 笠原　三津子 , 佐藤　一雄 , 森下　友起恵 , 笠倉　雄一 , 松田　年 , 林　成興 , 高山　忠利 10巻2号 , 2005年4月 , pp.179-188

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　乳腺内視鏡手術は乳房温存手術に分類され，日本で独自に開発された術式である．乳腺手術は創部保護法，皮弁作製法，大胸筋膜剥離法，乳腺切離法，再建法，腋窩リンパ節郭清法およびセンチネルリンパ節生検などの手術操作より成り立っており，それぞれの適応について述べた．また手術成績から検討すると術中出血量に差があるものの通常の乳房温存術式と同等の成績が得られ，またその安全性が証明された．適応の限界については，手術効果としては通常術式と同じく3cmの腫瘍まで適応となるものの，乳腺切除体積が30％を超えると術後乳房の変形をきたすことを考慮すると腫瘍径1.5〜2cmが適応の限界であり，これ以上の腫瘍では何らかの再建術の併用が必要と思われた．術後乳房の変形の要因を検討すると，乳腺を縫合再建することが最も重要な因子であり，縫合再建以外の方法の開発が必要と思われた．

原著

自然気胸手術の術中所見と病理所見の比較野田　雅史 , 田畑　俊治 , 星川　康 , 岡田　克典 , 鈴木　聡 , 松村　輔二 , 半田　政志 , 近藤　丘 10巻2号 , 2005年4月 , pp.189-195

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　2年間に自然気胸にて手術を施行した162例の術中所見，病理所見を解析した．再発数は162例中7例（4.3％），無再発数は155例であった．切除線未処置群0％（0／15例），フィブリン糊群10.4％（5／48例），フィブリン糊＋ポリグリコール酸（以下，PGA）フェルト群2.0％（2／99例）であった．再発原因は切除線のブラ新生5例，見逃し2例であった．病理所見では切除線再発群で壁の線維性肥厚が100％（5／5例），ブレブの存在が80％（4／5例）であった．術中所見では大畑分類Ⅱ型が無再発群で68.4％（106／155例），切除線再発群で100％（5／5例）が特徴的であった．大畑Ⅱ型で広範囲に広がるブラの近傍には肉眼的には確認し得ない病理学的ブレブが存在している可能性があり，この存在が切除断端の再発に関与している可能性がある．

胸部食道癌手術におけるHALS（hand-assisted laparoscopic surgery）の有用性田中　寿明 , 末吉　晋 , 笹原　弘子 , 田中　優一 , 白水　和雄 , 藤田　博正 10巻2号 , 2005年4月 , pp.197-202

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　食道癌手術において，近年，手術侵襲軽減を目的に内視鏡下手術が普及しつつある．われわれは胸部食道癌症例に対して，HALS併用右開胸開腹食道切除再建術を2000年に開始した．そこでHALSが手術侵襲軽減に貢献するかどうかを検証する目的で，HALSを施行した33例と同時期の開腹にて手術された33例の2群間で手術侵襲程度をretrospectiveに比較・検討した．手術時間，郭清リンパ節個数は両群間で差はなかったが，全出血量，腹部出血量はHALS群で有意に少なかった．また白血球，CRPの推移は両群間で差を認めなかったが，SIRS期間はHALS群で有意に短縮していた．上記の結果より，胸部食道癌手術においてHALSは根治性を損なうことなく手術侵襲の軽減につながることが示唆された．HALSは食道癌手術における標準術式として有用と考えられた．

腹腔鏡補助下幽門側胃切除術と開腹下幽門側胃切除術における術後短期および中期（6か月以降）成績の比較・検討小竹　優範 , 村上　望 , 俵矢　香苗 , 吉野　裕司 , 小泉　博志 , 森田　克哉 , 伴登　宏行 , 山田　哲司 10巻2号 , 2005年4月 , pp.203-207

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　腹腔鏡補助下幽門側胃切除術（LADG）の手術の侵襲性，根治性，安全性，栄養状態，術後6か月以降のQOLについて，開腹下幽門側胃切除術（ODG）と比較・検討した．2002年4月から12月に施行したLADG 12例とODG 11例を対象にした．なお，ともにstage IBまでを対象とした．侵襲度の評価項目は手術時間，出血量，術後の有熱期間，鎮痛剤使用回数，排ガス日，排便日，術後在院日数とし，根治性の評価項目は郭清リンパ節個数，再発率，生存率とした．また，安全性の評価項目は術中偶発症，術後合併症とし，術後6か月以上経過後の栄養状態の評価はヘモグロビン，総蛋白，総コレステロール，体重の変化とした．便の性状，ダンピング症状，腹部症状，日常生活への影響，満足度などをアンケート調査で術後6か月以降のQOLの比較・検討をした．検定はMann-Whitney U検定にて行った．有意差を認めた手術時間ではLADGが長かったが，出血量，鎮痛剤使用回数，術後在院日数においてはLADGが良好な結果を認めた．根治性，安全性，栄養状態，術後6か月以降のQOLでは同等であった．術後急性期においてはLADGが低侵襲であったが，今後もさらに長期にわたる予後，QOLなどの評価が必要と思われた．

症例報告

縦隔鏡下食道切除術を施行したEMR適応外の早期食道癌の1例七戸　俊明 , 奥芝　俊一 , 北城　秀司 , 真名瀬　博人 , 川原田　陽 , 加藤　紘之 10巻2号 , 2005年4月 , pp.209-213

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　今回，われわれはEMR適応外の早期食道癌に対して縦隔鏡下食道切除術を行ったので報告する．症例は71歳，男性．下部食道に1／2周強の0—Ⅱc＋Ⅱb，深達度m2の病変を認め，EMRを試みたがlifting不良であり，病変範囲の同定が困難であったため，縦隔鏡下食道切除術を行った．縦隔操作は左頸部の小切開創より行い，両反回神経を良好な視野のもとで確認・温存し，食道を切除した．腹部操作は用手補助下腹腔鏡手術下に行い，胃管を作製し，後縦隔経路による胃管再建を行った．術後経過は良好で，反回神経麻痺などの合併症を認めず安全に施行し得た．本術式はEMR不能食道表在癌に対する根治手術として適応であると思われた．

脳室—腹腔シャントチューブを有する患者に対する腹腔鏡下手術の1例—腹腔鏡補助下脳室—腹腔シャント造設術も含めて塚山　正市 , 山村　浩然 , 新納　英樹 , 土屋　勝裕 , 金平　永二 10巻2号 , 2005年4月 , pp.214-218

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　脳室—腹腔シャント（ventriculo-peritoneal shunt：VPS）を有する高齢早期胃癌患者に対して，腹腔鏡補助下幽門側胃切除術（LADG）を施行した．術後合併症に伴う逆行性感染を防ぐため腹腔鏡下にVPSの腹腔側カテーテルをいったん抜去した．第7病日の頭部CTで水頭症の進行を認め，傾眠傾向が出現したため第26病日に腹腔鏡補助下VPS再造設術を施行した．腹腔鏡は腹腔内の癒着部位の把握，カテーテルの刺入部位や先端位置の決定，先端からの脳脊髄液流出の確認に有用であった．腹腔内の癒着を減らしVPSに伴う合併症を防ぐためにも，VPSを有する患者には腹腔鏡下手術を可能な限り行うべきであると思われた．

胸腔鏡・腹腔鏡同時併用による食道平滑筋腫切除術の1例末吉　晋 , 田中　寿明 , 大田　準二 , 田中　優一 , 藤田　博正 , 白水　和雄 10巻2号 , 2005年4月 , pp.219-223

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　近年，良性食道腫瘍に対する手術は内視鏡下手術が標準術式となってきている．今回，われわれは胸腔鏡・腹腔鏡同時併用にて切除しえた食道平滑筋腫の1例を経験したので報告する．症例は50歳の女性，会社の検診で胸部異常影を指摘されて入院した．画像検査で胸腹部食道に長径10cmの大きさの粘膜下腫瘍を認め，食道平滑筋腫が疑われた．手術は右半側臥位とし，胸腔鏡下に胸腔内の腫瘍を剥離，腹部は気腹下に腹腔鏡で腫瘍を剥離して小開胸創より摘出した．腫瘍は馬蹄型に発育し，組織学的に平滑筋腫と診断された．術後6年経過し再発は認めていない．

腹腔鏡下に切除した腸間膜嚢胞性リンパ管腫の1例鈴木　英之 , 古川　清憲 , 高崎　秀明 , 野村　務 , 進士　誠一 , 田尻　孝 10巻2号 , 2005年4月 , pp.225-228

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　今回，成人の下行結腸間膜に発生した腸間膜嚢胞性リンパ管腫（MCL）を腹腔鏡下に切除し得たので報告する．症例は54歳の女性．2001年より腹部CT検査で左側後腹膜に約2cm大のcystic lesionを指摘されていた．2003年より左下腹部の自発痛が出現，腹部CT検査で増大傾向がみられたため当院に紹介された．超音波・CT・MRI検査でMCLを疑い腹腔鏡下摘出術を行った．本疾患に対する腹腔鏡下手術は低侵襲性や整容上の利点だけでなく，診断的意義や腸間膜周囲の繊細な剥離操作の観点からも有用な治療法であると考えられた．

大腸内視鏡検査にて術前診断し腹腔鏡下切除術を施行した遺残虫垂炎の1例伊東　英輔 , 長谷川　小百合 , 石津　和洋 , 石過　孝文 , 添田　仁一 , 渋谷　誠 , 幕内　博康 10巻2号 , 2005年4月 , pp.229-232

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　患者は32歳，女性．3年前に虫垂切除術の既往がある．術後1か月頃より右下腹部の圧痛を自覚し，その後嘔気，右腰背部痛も認め，症状の増悪があり，当院を受診した．炎症反応は低値であったが，右下腹部に限局した強い圧痛を認めた．腹部超音波検査で盲腸先端部の5mm大の突出部と内部の高輝度域を認めた．大腸内視鏡検査では虫垂開口部の浮腫炎症所見と内部の糞石像を認め遺残虫垂炎と診断し，腹腔鏡下盲腸部分切除術を施行した．虫垂根部粘膜面に縫合糸が露出し，その周囲に糞石が付着していた．文献検索上，本邦における遺残虫垂炎の報告は自験例を含め8例あるが，腹腔鏡下手術をした報告はなく初例であると考えられた．

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編集後記清水　一雄 10巻2号 , 2005年4月 , pp.246

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　エジプト，インド，インドネシア，マレーシア，サウジアラビア，これらに共通するのは国民の多くがイスラム教徒であることだ．これらの国で開催された国際学会や大学に招聘され，甲状腺内視鏡手術のライブデモを行った．エジプト，カイロ大学では2回にわたり7〜8日間ずつ滞在し，現地外科医と十数例の手術を行い，カンファランスに連日出席させられた．サウジアラビアでは，リアド市で開催された国際シンポジウム参加と王立サウジアラビア大学でのライブデモを行った．同市でこの期間の前後に2回も大規模な自爆テロがあり多数の死傷者が出た．その合間に施行した．まさに危険で，緊迫した手術であった．

　今回の特集「乳腺内視鏡外科手術の適応とその限界」と同様に甲状腺内視鏡手術にもいえることは，この手術の目的は，女性に多い疾患であるがゆえに，特に整容面を重視したものである．患者にとってつねに露出された前頸部に手術創が入る甲状腺手術の整容面の問題は想像以上のものがあろう．

基本情報

日本内視鏡外科学会雑誌
10巻2号
(2005年4月発行)

電子版ISSN：2186-6643 印刷版ISSN：1344-6703 日本内視鏡外科学会

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