特集 乳腺内視鏡外科手術の適応とその限界
〔エディトリアル〕乳腺内視鏡外科手術
清水 一雄
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1日本医科大学外科学第2講座
pp.141-142
発行日 2005年4月15日
Published Date 2005/4/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.4426900579
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乳腺疾患に対する内視鏡手術は,1995年頃より日本で独自に開発された手術術式であり,各施設で種々の方法が考案され,斬新的アイディアのもとに始められた.現在までに手術操作・器具は工夫され,淘汰されることによってほぼ一定の手技に統一されてきたと思われる.乳腺内視鏡外科手術の特徴は,十分な根治性を考慮に入れたうえで成り立つ手法であることは当然であるが,乳房上に創痕を残さず,整容性をも追及する手術法であると思う.皮膚切開創を腋窩または乳輪縁におくことにより,ほとんど創痕を目立たなくすることができる.ただ,他の内視鏡手術と違い,乳腺は体表臓器であり胸腔や腹腔のような体腔を有しないために,まずworking spaceを作製することが必要で,このことが当初,手術操作を困難にしていた.しかし,器具の開発と弛まぬ工夫,努力により乳腺良性腫瘍はもとより,乳癌に対しても乳房温存手術のみならず,皮膚温存乳腺全摘術やセンチネルリンパ節生検も含めてほとんどの乳腺手術を内視鏡下に安全に行うことが可能となった.次に,内視鏡手術の最大の利点である整容性であが,創痕が目立たなくても乳腺の切除量が増えると乳房変形が避けらず,何らかの充填を伴った乳房再建が必要となる.乳房再建法と客観的整容性の評価法が重要となる所以である.2002(平成14)年4月には本手術が健康保険適用となった今日,本術式はますます広がっていくものと考えられる.
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