精神看護 18巻5号 (2015年9月)

特集 学校の先生に聞きました。

精神看護学をどのように工夫して教えていますか?

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看護専門学校、大学など、学校の先生というのは横のつながりが意外と少なく、精神看護学の授業について、他の先生がどのように教えているのかを知る機会がない─

そんな声が聞こえてきました。

そこでこの特集は、困っている教員同士が、精神看護学を教える時の自分の工夫を、本音で教え合うような企画にしたいと思いました。

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 今、ご縁があって私は、教員という立場になって看護を伝えています。看護の教員が、どのように看護を伝えているかを公開するのは、非常にナイーブで恥ずかしく、裸体を見せるようなものです。公で語ることに極度な恐怖感を感じています。しかしこのたび、せっかくの機会が与えられたのですから、私が精神看護学をどのように伝えているのかを、覚悟を決めて紹介してみようと思います。

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 私が担当しているのは在宅看護論であり、特集テーマである精神看護学ではない。しかし今回紹介する授業案が、精神看護学においても十分活用が可能であるということから、編集部から依頼されて紹介することとなった。

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 私は、精神看護学の授業を担当するようになって3年目の教員です。授業での学生からの反応をみると、充実感が湧いてくる時と、逆に不全感が残る時があります。授業は教員と学生との相互作用のなかで作られるので、学生にとって授業がおもしろく、学生の興味や関心を惹き寄せることができた時には、私にとってもやりがいや喜びが生まれます。私は、おもしろい授業とは、学生にとって学問的な深さや臨床のリアリティを感じることができたり、意外な発見が伴ったりするものだと思っています。そのような授業を行うために、私が大切にしていることをいくつかご紹介します。

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「精神力動看護研究会」を継続的に開催

 私は、学生や新人には、患者さんの些細な行動や発言の“意味”をそのつど考えることの大切さを伝えたいと思っている。

 学生はとかく、目にする暴力や衝動行為などの現象そのものに意識が行き、現象の背景にあるその真意にまでたどり着かないことが多い。臨床実習でも学生なりに患者や精神科病棟で起こっている現象の背景に隠された真意を理解するために努力をしているが、僅かな光を頼りに学生なりの答えを見つけようとした頃には実習は終了してしまう。

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精神看護学担当デビュー

 「精神看護学担当になってほしい」と上司から告げられたのは2014年の3月下旬。人事異動により前任の担当者が学校から離れることになったという発表を聞いた直後でした。それまでは成人看護学を担当しており、私なりの指導方略が見えてきたところでした。そのような時期に担当変更を告げられ、驚きと共に、自分にできるのかという不安が生じました。

 しかし、4月から15時間の講義と5月からは臨地実習が始まるというスケジュールが目前に迫っていたため、戸惑っている暇はありませんでした。「やるしかない」と自分に言い聞かせながら、時間を見つけては教科書や参考書を読み、精神科病院に勤務している知人に精神看護とは何かを教えてもらったり、実習病院へ研修に入らせてもらうなど、無我夢中で精神看護学とは何かを学び得ようとしました。

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ひょんなことから教員の道へ

 私は大学の保健学科で、看護学生による一般大学生への禁煙教育の効果について研究し、卒業後すぐに大学院の修士課程(博士前期課程)へ進学し、看護師による患者への禁煙サポートの研究を深めました。

 修士課程2年生最後の修士論文発表会間際、隣の研究室の教授と昼食を食べていた時、突然「教員に興味はないか?」と聞かれました。前々からおもしろそうだなとは思っていたため、とっさに「あります!」と答えていました。続けて「知り合いに今度看護学部を立ち上げる大学の先生がいるから推薦しとくよ」と言っていただき、話が進んでいきました。ただ、その時はすでに大学病院に看護師としての就職が決まっていたため、看護学部を立ち上げようとしていた大学の先生からは「3年後に来てね」と言われました。そのようにして、精神科での臨床経験を3年経たのちに教員になりました。

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 2015年7月、斎藤環氏がオープンダイアローグについて最初の体系的解説書となる『オープンダイアローグとは何か』を著しました。医学書院ではそれを記念して、日本精神科看護学術集会のランチョンセミナーにて斎藤環氏による講演会を開きました。

 薬が第一選択ではないこと、「言葉の力」が驚くべき治癒率をもたらしていること、そしてこの治療技法が職種間のヒエラルキーを消してしまう可能性さえあることが語られると、聴講している精神科看護師は少なからず衝撃と希望を感じたようでした。

 本誌ではこの講演から、オープンダイアローグと精神科医療との関係について語られた部分を抜粋してお伝えします。

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 オープンダイアローグの登場は、統合失調症に対する治療法の大きなパラダイムシフトを引き起こすのみならず、現代の精神医療における大きなパラダイムシフトを引き起こすかもしれない。

 それは、この治療法が統合失調症患者の入院治療期間を大幅に短縮し、症状の再発を防ぎ、障害者手当の受給率を大幅に抑えることができるからだけではない。この治療法は、現代の精神医学が前提としてきた「主体」についての考えを根底から変えてしまうようなものであるがゆえに、大きなパラダイムシフトを喚起する起爆力をもっているのである。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・105

連載 愛か不安か・1【新連載】

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政治家と引きこもりは自己愛の強さでは同類?

 散歩をしていたら、選挙の立候補者の宣伝カーが後ろから近づいてきた。あともう一息です、ぜひとも皆様のお力添えを、なんてわざとらしいことを言っている。うるさい。落選すればいいのにと思わずにはいられない。

 ふと振り向いた拍子に、マイクを握ったスタッフの女性と目が合ってしまった。気まずくなって、よせばいいのになぜか手を振ってしまった。するといきなり立候補者本人が「ありがとうございます、熱いご支援ありがとうございます! 頑張ります!」とスピーカーから声を浴びせてきた。苦笑いをしながら、気合いが入っているなあと感心せずにはいられなかった。数日後、実際にわたしが投票したのは別の候補者だったけれど。

連載 精神科病床を休止。超長期入院の患者さんをどうやって地域へ?・3【最終回】

医療依存から離れる覚悟 高田 大志
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なぜ今回は可能だったのか

 浦河で起きた2014年の精神科病棟閉鎖の物語は、決して地域移行の成功例ではない。支援者の力不足と病院の一方的な事情により転院を余儀なくされ、今も別の精神科病院の中で生活を送っている方がいることを忘れてはいけない。慣れ親しんだ病棟を奪われ病状が悪化してしまった方、家族との距離が離れてしまった方、治療が十分にできないまま転院してしまった方たちがいたこともまた事実である。

 本稿でこれまで紹介してきた方たちは結果としてグループホームへの退院を果たしているが、こうすれば地域移行はうまくいくという説明は今でも難しい。病棟廃止(休止)という逃れようのない現実が起こり、「この人の場合はどうするか」ということをひたすら試行錯誤するしかなかったからである。ただ、これまでの退院支援と異なる点を1つあげるとするならば、それは「覚悟」ではないだろうか。

連載 イイネ!その業務改善・1【新連載】

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日本人の平均就寝時刻は、23時15分!

 皆さんの病院の消灯時刻は何時ですか?

 皆さんは病院の消灯時刻の設定に、疑問を感じたことはありませんか?

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ウェルカムボードを設置した目的とねらい

 ウェルカムボードとは、精神看護学実習を受け入れている当センターの6つの病棟で、実習生に向けてメッセージを掲げるために設置した掲示板のことです。実習に来た看護学生(以下学生)に楽しみながら学びを深めてもらうことを目的に導入しました。

 学生を受け入れる側として私たち臨床側が常に思っていることは、実習で精神疾患を患う人のイメージをありのままに持ってほしいということです。昔と比べていくぶん精神科に対するイメージは肯定的になりました。しかし心を病むということを十分に理解できている学生は多くはありません。それゆえ学生は、患者さんに対して“自分たちのかかわりが悪影響を及ぼしてしまうのではないか”“急に状態が変わってしまうかもしれないので、何を話してよいのかわからない”というような気持ちを抱いています。

連載 武井麻子のOh!それみ〜よ・1【新連載】

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米国人が一生に一度は読む本

 今年5月、ある本のニュースが世界中を駆け巡った。「米作家ハーパー・リー氏(89)の新作『Go Set a Watchman(見張りを立てよ)』が7月14日に出版される」。

 といっても、日本の、特に若い世代にとっては「ハーパー・リーって誰?」という感じかもしれない。実は、彼女の処女作“To Kill a Mocking Bird”(邦題『アラバマ物語』)は、1960年に出版されるやたちまちベストセラーとなり、彼女はピューリッツァー賞を獲得した。しかも、翌々年には映画化され、主人公の父アティカス・フィンチを演じたグレゴリー・ペックは、1962年度アカデミー賞の主演男優賞を獲得して話題となった。

連載 失恋の話を聞きまくる男たち。桃山商事・8

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今回紹介するのは、婚活パーティで知り合った年下男性と交際し、「結婚」をほのめかしてくる彼に翻弄されながら、最終的に浮気をされてフラれてしまったY子さん(33歳)の事例です。恋愛経験が少なく、異性との出会いもほとんどないという彼女は、街コンやお見合いパーティ、会員制のマッチングサイトといったサービスを利用しながら婚活に勤しんでいました。そんななかで出くわした、今回の一件。Y子さんの話を聞くなかで見えてきたのは、現代社会を生きる女性たちの多くに見られる「受験型恋愛」とも言うべき傾向の存在でした。

Y子さんは東京生まれの東京育ち。8年勤めた出版関係の会社を辞め、今はフリーランスの編集者として仕事をしています。

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 2016年4月から、厚生労働省が「訪問診療」のみを行う診療所を認める可能性があるという(2015年7月10日、日経新聞1面より)。

 健康保険法では患者は好きな医療施設を受診できると定めているため、厚労省はこれまで、「外来診察時間」と「診察室」を持たなければ医療施設としての許可を与えてこなかった。それが転換されることは、実質的な「在宅医療推進」の流れとみることができる。

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暴力に対する問題意識から

 精神科における患者からの暴力に対し、最も基本的な対策は、患者のパーソナルスペース外に出ることだとされている。しかし実際の場面ではスタッフは1人で患者のそばに「近づき」、「話し」、多くの場合「触れて」いる。そのため患者に接近した距離での突発的暴力、特に「急に殴られる」「箸・鉛筆などで突かれる」に対して不安が残る。そうした暴力はパーソナルスペース外への離脱がすぐには難しい状況で起こり得るからである。

 そこで、筆者と同じ問題意識を持つ笹本洋志氏(少林寺拳法正拳士四段)に、「“急に殴られる”“箸・鉛筆などで突かれる”への対処を武道に学ぶ」のテーマで技術指導を依頼し、2014年7月29日、細木ユニティ病院(以下、当院)内において研修を行ってもらった。当日は当院23名のスタッフが指導を受けた。

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 著者である佐藤氏との出会いは、私が前任校の大学院生を連れて「ナラティブホーム構想」(本書第1部)の勉強会に参加した時である。私自身常々、精神的諸問題を持つ人々に接しているなかで、「人として生きることとは?」を問うてきた。

 誰にでも平等に訪れる「死」を、人が「生きる」ことのゴールとするならば、看護はその人らしい生き方に付き合い、医療的視点を持ちながら、生活に依拠したゴールのあり方を求めたい。この勉強会には幾度も参加したが、「家庭のような病院」作りのために、著者を核として多様な背景を持つ地域の同志たちが集い、熱く交わされる言葉にあふれていた。終末期における在宅医療のあり方をさまざまな角度から問い、時には回りくどいと感じられるほど慎重にその実現の可能性を探っていた。眼前の患者の生涯を「物語」として思い起こし、その人にとっての最良の状況で人生の最終章の日々を過ごすことを医療職が念頭に置いたところから始まるケア。大きな医療的挑戦であったと思う。今やこのナラティブホームは、確固たる医療資源として根づき頼りにされていることを、地域住民の私はよく知っている。

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次号予告・編集後記

基本情報

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精神看護
18巻5号 (2015年9月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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