書評
ナラティブホームの物語—終末期医療をささえる地域包括ケアのしかけ
長谷川 雅美
1
1金沢医科大学看護学・精神看護学
pp.531
発行日 2015年9月15日
Published Date 2015/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689200140
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著者である佐藤氏との出会いは、私が前任校の大学院生を連れて「ナラティブホーム構想」(本書第1部)の勉強会に参加した時である。私自身常々、精神的諸問題を持つ人々に接しているなかで、「人として生きることとは?」を問うてきた。
誰にでも平等に訪れる「死」を、人が「生きる」ことのゴールとするならば、看護はその人らしい生き方に付き合い、医療的視点を持ちながら、生活に依拠したゴールのあり方を求めたい。この勉強会には幾度も参加したが、「家庭のような病院」作りのために、著者を核として多様な背景を持つ地域の同志たちが集い、熱く交わされる言葉にあふれていた。終末期における在宅医療のあり方をさまざまな角度から問い、時には回りくどいと感じられるほど慎重にその実現の可能性を探っていた。眼前の患者の生涯を「物語」として思い起こし、その人にとっての最良の状況で人生の最終章の日々を過ごすことを医療職が念頭に置いたところから始まるケア。大きな医療的挑戦であったと思う。今やこのナラティブホームは、確固たる医療資源として根づき頼りにされていることを、地域住民の私はよく知っている。
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