精神看護 17巻5号 (2014年9月)

特集 地域につなげる「退院サマリー」を提案します

熊崎 恭子
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本特集のきっかけ

 患者さんが退院する際、看護師は必ず「退院サマリー」を作成しています。みなさんはこれをどのような思いで記載しているでしょうか。

 退院に際しては、本来であれば、必要な事例すべてにおいて、患者さん本人と病院・地域の支援者が顔を合わせて、生活のしづらさや今後の希望、退院後の支援のあり方について検討できることが理想です。しかし近年、在院日数が短縮化され、訪問看護師などの地域支援者と日程調整を経て退院前にケアカンファレンスをしたり、患者さんと顔合せをすることが難しくなってきました。そんななか、退院サマリーが今後、継続ケアの重要な手がかりとなってくることが予想されます。

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どのような退院サマリーであれば、地域の人にとっても有用な情報になり、かつ、書く側の病院スタッフにとっても過大な負担にならないのでしょうか。

それを探るため、病院側、地域側、双方のスタッフに集まっていただき、現状把握、課題の抽出、そして解決策の提案までを話し合うことにしました。

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 私たち看護師は日々看護記録を書いていますが、看護記録は法的にはどのように規定されているのでしょう。

 結論から言うと、実は現行の保健師助産師看護師法上、看護記録に関する規定はないのです(助産録を除く)。

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 精神科医療には、急性期医療や外来機能の充実と共に、地域生活を支えるという役割が求められ、訪問看護や訪問診療との連携、地域支援事業者との協働が必要とされています。

 私は現在「地域連携室」という、病棟から一歩外に出た部署で退院支援に携わっていますが、病棟看護師から、「日々の業務に追われて……」という言葉をよく耳にするようになりました。“早さ”が求められる医療現場の延長線上では、「やるべきこと」や「やれること」が課題として残り、気がかりなまま地域生活に患者を送り出さざるを得ないことがあります。病棟環境のなかでのケアの“限界”や“不全感”を感じている看護師のモヤモヤとした気持ちが伝わってくるようです。「患者のために何とかしたい」と日々奮闘している病棟看護師が、在宅医療にも大きな力を発揮するにはどうしたらよいでしょうか。

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 精神科看護のケアを経過記録やサマリーに書く時、私たちは幾度となく「どこまで書いていいのだろうか」という迷いを持ちます。

 精神科看護の場面では、人と人とのかかわりによってなんらかの感情が生まれます。この感情の意味をみつめることは、患者さんと自分との間で何が起きているのかを考える上で重要です。そして看護師は、その感情を手がかりにケアを実施していくこともあります。しかし、この“感情”に関してどの程度記録に残してよいかについては大きな迷いを感じます。

おわりに 熊崎 恭子
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 退院サマリーの内容を検討し改めて感じたのは、「退院サマリーは“行ったことを書く”のではなく“つなぐために書く”ものだ」ということです。

 退院サマリーは、外来やデイケア、地域活動支援センター、訪問看護など、いろいろな場所で、他職種との情報共有を可能にする貴重なツールであることを再確認しました。地域につなぐことを意識すれば、退院サマリーに記載する内容は当然変わっていきます。

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─DSM-5の日本語版である『DSM-5精神疾患の診断・統計マニュアル』が、2014年6月に医学書院から発行されました。大野先生はこの本の監訳者ですが、DSM-5に批判的なアレン・フランセス氏の著作『〈正常〉を救え─精神医学を混乱させるDSM-5への警告』の監修者でもあります。ちょっと矛盾するようにも感じられるのですが、先生のお考えを聞かせてください。

大野 フランセス博士の本はDSM自体を批判しているわけではないんです。しかし、その前になぜそもそもかつてのDSM-Ⅲが必要だったのか、というところから話しましょう。

連載

べてる新聞『ぱぴぷぺぽ』・99

連載 こうすれば退院できるし、暮らせるし。・3

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 私は、精神科病院での勤務が長く、たくさんの長期入院患者さんと向き合ってきた。退院支援のかかわりを通してその方の可能性を引き出すきっかけを作るのは、一番近くにいる看護師だと考え、病棟でも患者さんと共にこれからの人生の希望を再構築することに奮闘してきた。

 病院勤務時代、他職種と協働して脱施設化と銘打った「退院準備グループ」を運営していた時期があった。グループの1年間を振り返ってたどりついた答えは、「私たち支援者の考え方を脱施設化しなければ」ということだった。それは他の誰でもない、退院を目指し始めた患者さんから教えられたのだ。連載の前回で田中さんから渡された「患者さんは変わり続けてきた。変わらなければならないのは私たちではないか」というバトンは重く、支援者としてのありようを自問自答し続ける覚悟を問われている。私たちが変わっていくためには何から始めればよいのか。

連載 精神科の患者さんの身体では、何が起きている?・5

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 精神科領域においても、発生すれば急死につながる重大な問題が存在します。

 某日、夕食で同時に2件の窒息事故が発生しました。いずれも意識がなく、呼吸は停止し、脈拍も触知不能でした。処置が奏功して2件とも無事救命できましたが、どちらもあと少し遅れると死亡に結びついたと思われる危ないケースでした。このように、めったにないようですが、必ず遭遇する問題。それが今回のお話です。

連載 「自殺者の少ない地域」のコミュニケーション力を考察する・1【新連載】

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自殺者が少ない町を歩いてみた

 日本の自殺者数は、1997年の2万4391人から1998年に3万2863人へと急増し、2011年まで3万人台が続いた。2012年~13年となって3万人を下回ったが、1997年以前の水準に比べると依然として高い(その頃も高かった)。

 しかしその私たちの国にも、自殺者の割合がほかと比べると圧倒的に少ない地域がいくつかある。そのような地域の特徴は、岡檀の研究(『日本の自殺希少地域における自殺予防因子の研究』)によって見えてきている。研究によれば、「コミュニケーションが緩やかで量が多い」「人間関係は疎で、かつ、多い」「申し訳ないと思う人が少ない」「政治は自分たちで変えられると思う人が多い」「自殺をするのは仕方がないと思う人が少ない」「よそ者に寛容」「うつ病への偏見が少ない」などのいくつもの特徴があるという。

連載 まさぴょんの「こんなレクリエーション療法はどう?」・5

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当デイケアで行っているプログラムを紹介します

 私が所属するクリニックではデイケアを行っています。デイケアを希望する人は、生活リズムを整えたい、日中過ごせる場所が欲しい、友だちを作りたい、病気とのつき合い方を知りたい、再発を防ぎたい、仕事に就くための準備をしたい、人づき合いが上手になりたいなど、参加目的はさまざまです。

 精神疾患を持つ患者さんは、ストレスに対する脆弱性があるため、再発や悪化を繰り返す傾向があります。しかし、ストレスを切り抜けるための対処法を学んだり、アロマテラピー、ストレッチなども含む息抜きなど、気持ちの切り換えやストレス発散の方法を学び、繰り返しトレーニングすることで、社会生活への順応性が増していきます。

連載 船吉。・4

船吉。 宮本 満寛
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 七尾市は、石川県能登半島県のほぼ中ほどに位置する、漁業・農業が中心の町。観光としては全国的に有名な和倉温泉。なかでもプロが選ぶ旅館100選で30年以上連続1位の加賀屋がこの地にあり、年間を通して多くの観光客が訪れます。

 漁業では日本海側最大の牡蠣の養殖が行われており、その他日本海側最大級の定置網漁での鰤漁が盛んです。ちなみに全国的には隣県の氷見鰤が超有名ですが、漁場は同じです。夏場にはクロマグロの幼魚(メジマグロ)や、近年ではトラフグの漁獲量が全国トップになるなど資源豊富な漁場を有しており、能登半島七尾湾は天然の生簀とも言われています。その他、七尾湾の中心にある能登島には野生のイルカが生息しておりイルカウォッチングがブームとなっています。気の知れた船には数頭のイルカが寄ってきて並走します。その姿は圧巻です。

連載 中動態の世界・5

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怖い人にカツアゲされてお金を差し出す。

したくない便所掃除をさせられる。

それは受動的な経験でもあるが、能動的な行為でもある。

確かに同意はしているが、自発的にしているわけではない。

そんな「仕方なく同意する」ことに満ちている私たちの平凡な日常は能動/受動という枠組みではなぜ語りにくいのか─

アレントとフーコーという二人の哲学の巨人の思考から探ります。

連載 失恋の話を聞きまくる男たち。桃山商事・2

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 前回(5月号)は、我々の自己紹介をさせていただきました。桃山商事とは、女性の恋愛相談に複数の男子が無償で乗りつつ、そこで聞かせてもらったお話を書いたりしゃべったりする「恋バナ収集ユニット」です。恋愛相談に乗る際は「とにかく聞く」「彼氏を悪く言わない」「別れさせようとしない」を原則に、なんとか相談者さんに元気になってもらうよう努めるのが基本ルールです。

 そんな活動紹介をさせていただいたところ、編集さんや読者さんから「ホンマかいな! 無償で話を聞くなんて……」「いろいろ危険な目にあっているのでは?」「下心とかないの?」「やっぱり恋愛に発展するでしょ?」など、さまざまな疑問が噴出。どうやら我々がやっている活動は、精神看護の仕事にかかわる方々からしたら、何かとあやしい活動に映るようなのです。

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 2011年に、地域医療の基本方針となる医療計画に盛り込むべき疾患として、従来のがん、脳卒中、急性心筋梗塞、糖尿病の4疾患に加えて精神疾患が入り、各医療圏域でこれらへの医療計画を策定することが義務づけられた。今回の診療報酬改定において、いくばくかでも反映するかと期待した向きもあったが、ほとんど考慮されることはなかった。

 診療報酬は、医療財源確保のための「財政中立」の名の下に、各科の大枠が決まっており、精神科にとっても厳しい改定内容となった。なお、精神科外来の主要な収入は、再診料(71点)、通院在宅精神療法(330点)、処方せん料(68点)で、通院在宅精神療法が大きな割合を占めているのが特徴である(診療報酬では1点10円と換算)。

特別記事

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なぜ“突撃在宅訪問”が決まったのか

 一昨年の秋、知り合いから1通のメールが届きました。

 「バングラデシュで8年間障害児者施設の責任者を務めている看護師の女性がいます。バングラデシュにはまだ、家の座敷牢で鎖につながれている精神障害者の実情があります」

2014年日精看大会@広島 示説発表で最優秀賞に選ばれた研究を紹介します

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[内容]

 自閉的な生活から一般就労が可能となった統合失調症の精神科訪問看護利用者の1事例を振り返った研究報告。利用者の変化と看護者の支援をリカバリープロセスの観点から明らかにし、精神科訪問看護における支援について検討した。

 患者さんは、20歳代に発症後、入退院を繰り返し、4年前より生活保護を受給し独居している40歳代前半の女性Aさん。

書評

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「人間だもの」から「人間になる」へ

 ユマニチュードというフランス語の響きは、英語圏一辺倒にみえる認知症ケアの世界に新風を吹き込んでいる。すでにメディアでも多く取り上げられ認知症ケアにおける「効果」だけが喧伝されているようだが、本書の衝撃はその「哲学」にこそある。ある方法・技術がなぜ有効かの論拠を哲学と呼べば、近年それはあまりに軽視されつつある。エビデンス重視が輪をかけているのかもしれない。

 テレビでサッカーワールドカップを見ていると英語圏は世界のごく一部にすぎないのだと気づかされるように、認知行動療法の席巻は、実はフランスには及んでいないのである。ラカンの精神分析にみられるように、フランスは考え抜くことへの価値偏重ともいうべき国である。そこで誕生したケアの技術論は、具体的でわかりやすく、同時に深い哲学・ケア論に裏打ちされているのだった。

精神保健関連ニュース

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川崎ダルク

脱「薬物」に女性専用施設

7月6日付○読売新聞

 薬物依存症患者のリハビリを支援するNPO法人「川崎ダルク支援会」は6月、県内初となる女性専用施設「Cozy Place」(コージープレイス)を川崎市中原区に開所した。コージープレイスとは、居心地のよい場所という意味。女性に安心して話してもらうための環境を整備、女性職員が対応して、早期回復を目指す。繁華街のビル3階にある一室。約60m2の室内には植物やソファ、木目調の家具が置いてあり、落ち着いた雰囲気だ。女性は、身近な男性から勧められて薬物に手を出すケースも多い。回復には異性を気にせず、正直に体験や心境を話せるくつろいだ空間が重要という。相談・問い合わせは同会(044-798-7608)。

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てんかん協会が声明「改正道交法は、差別助長」

6月17日○共同通信

 自動車運転死傷行為処罰法と改正道路交通法が施行されたことに対し、日本てんかん協会は6月1日、「特定の病気が過剰に危険だという誤った認識を社会に植え付け、理不尽な差別が一層助長される」とする声明を発表。患者の教育、労働の機会が不当に奪われないことや、運転免許を取得できないため移動に支障を来す人への社会的支援を充実させることを要望した。

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今月の5冊

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次号予告・編集後記

基本情報

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精神看護
17巻5号 (2014年9月)
電子版ISSN:1347-8370 印刷版ISSN:1343-2761 医学書院

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