書評
「ユマニチュード入門」
信田 さよ子
1
1原宿カウンセリングセンター
pp.90-91
発行日 2014年9月15日
Published Date 2014/9/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1689101377
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「人間だもの」から「人間になる」へ
ユマニチュードというフランス語の響きは、英語圏一辺倒にみえる認知症ケアの世界に新風を吹き込んでいる。すでにメディアでも多く取り上げられ認知症ケアにおける「効果」だけが喧伝されているようだが、本書の衝撃はその「哲学」にこそある。ある方法・技術がなぜ有効かの論拠を哲学と呼べば、近年それはあまりに軽視されつつある。エビデンス重視が輪をかけているのかもしれない。
テレビでサッカーワールドカップを見ていると英語圏は世界のごく一部にすぎないのだと気づかされるように、認知行動療法の席巻は、実はフランスには及んでいないのである。ラカンの精神分析にみられるように、フランスは考え抜くことへの価値偏重ともいうべき国である。そこで誕生したケアの技術論は、具体的でわかりやすく、同時に深い哲学・ケア論に裏打ちされているのだった。
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