訪問看護と介護 24巻1号 (2019年1月)

特集 おとなの学びへの招待—在宅ケアを楽しく続けるために

  • 文献概要を表示

平成最後の新年を迎える2019年。多死社会の到来とともに、在宅医療に携わる専門職たちは地域の暮らしを支えるキーパーソンとして重要度・注目度が増しています。そんな彼・彼女らは基本的に、1人で訪問・訪室する場で、責任をもってケアを提供することを求められます。ただ、中小規模の組織に所属することが多く、体系だった教育・研修や、先輩から学ぶ機会や情報を得られにくい状況もあるのが現状です。今号は、訪問看護・介護関係者にとってこそ必須な「おとな(専門職)の学び」について、その楽しい出会い方・続け方を紹介します。

  • 文献概要を表示

 訪問看護には、現場での学びが不可欠です。それは、初めて訪問看護の世界に飛び込む人、新卒で訪問看護を選ぶ人、違う事業所に移動した人だけでなく、同じ業界や同じステーションに長く勤める人にとっても同じこと。利用者さんの変化や医療や社会の変化に応じて、否応なく自分のスキルや意識が試されるのが訪問看護の現場です。

 でも、忙しい現場で学ぶことって、簡単ではありません。自分自身の学びだけならいざしらず、新人や後輩の学びについてまで考えだすともう大変です。

 そこで、「大人の学びを科学する」をテーマに、企業・組織における人材開発・組織開発について研究している中原淳先生に、「訪問看護の現場の学び」について相談してみると……

 納得の答えとともに、訪問看護の現場が抱えている本質的な課題も見えてきました。

Part Ⅱ 多様に広がる学びのしかけ

  • 文献概要を表示

Ⅰの中原淳さんによるガイダンスで、訪問看護師が専門職として継続して学び続けるべき理由はわかった。

毎日の実践から学ぶだけでなく、もう一歩踏み出したいあなたが所属施設を飛び出して、刺激を受けられる機会は、全国各地にひらけています。

  • 文献概要を表示

 Care(ケア) Do(ドゥ)北海道は、道内の保健・医療・福祉・教育に関する取り組みや課題を語り合い、フラットな関係で参加者同士がつながる広域交流イベントとして2013年に始まりました。2016年は台風被害により直前に中止になりましたが、現在までに5回開催され、累計970人が参加しました(表)。

 毎回多様なテーマが掲げられ、農業や畜産といったこの地域ならではのセッションがあるほか、寸劇あり、障害者アーティストのピアノライブあり、推薦したい書籍のプレゼン企画「ビブリオバトル」、高校福祉学科のチアリーディング披露など、お祭り行事が実施されてきました*1。時には、実行委員が体を張ってのおもてなしも。ご当地キャラの着ぐるみが会場を練り歩いたり、オープニングを飾るチームショーも仕込んだりと、実行委員もせっかくだからと楽しんでいます(p.18〜19写真)。広大かつ僻地・過疎地も多く、人と知恵の交流に本土以上の工夫が必要な土地柄ならではの、新しい取り組みを素直に喜び、取り入れる開拓者文化、フロンティア精神があるからこそ、成立していると思います。

  • 文献概要を表示

 医療法人ゆうの森たんぽぽクリニックは2000年に、当時全国的にも稀有だった訪問診療専門の診療所として愛媛県松山市に開業した。当初は医師1名、看護師1名、医療事務1名という小規模でスタートしたが、現在は常勤医師10名、看護師30名に加え、100余名の多職種の職員で、訪問看護や訪問介護などの訪問系サービスや入院、高齢者住宅、あるいはへき地診療所などを運営し、患者・利用者の在宅療養や地域医療を多面的に支えることをめざしている。

 「全国在宅医療テスト」は、理事長の永井康徳がある学会の際に、親しくしている全国の在宅医仲間と食事をしているとき、当院で開業当初よりスタッフ向けに行なっているイベントについて何気なく話したところ、何人かが大いに興味を示され、「何なら受けてみますか」「ぜひ受けさせてほしい!」との会話が発端で始まった。開業10周年の2010年のことだったのでその記念行事として、従来の院内テストを開放して、名前も勝手に「全国」と銘打ち、実施することとした。特に告知することもなく知り合いのクリニックにお知らせするだけであったが、第1回から140名もの参加を得て、第9回となった今年は北海道から沖縄まで全国から、1922名の参加者を得るに至っている。継続して受験される団体も増え、毎年の恒例行事として各クリニックに根づいてきたのではないだろうか。

  • 文献概要を表示

 KAIGO(カイゴ) MY(マイ) PROJECT(プロジェクト)は、医療・介護・福祉分野、またその業界に関心がある方を対象とした連続ワークショップです(写真)。3か月・全6回にわたって、井上英之研究室(慶応義塾大学SFC)から始まった教育手法「マイプロジェクト(通称マイプロ)」を用いて、「介護」領域に課題意識をもつ人が集い、職場や生活の中でみつけた小さな疑問や違和感、問題意識に焦点をあて、そこから生まれてくる想いからプロジェクトを創っていきます。

 参加者は介護職、看護師、医師や理学療法士などの専門職だけでなく、学生、人材派遣やITなど異分野の人まで幅広く、これまでの参加者は14期・130名を超えています*1。現在、2019年1月から開始となる15期を募集中です(表)。

  • 文献概要を表示

 「参加する学校」を活動のコンセプトに掲げるチーム医療フォーラムは、2003年設立の任意団体(チーム医療人フォーラム)を前身とし、2008年12月1日に設立された。これからの社会の医療を担う人材の育成に取り組み、“社会医療人”を輩出することで、社会に貢献しようとしている。これまでにコーチング、プレゼン講習、タウンミーティング、マインドマップ等、学びのイベントを計50数回開催し、のべ参加者数は5000名にのぼる。ただ、最初のイベントでは700名定員の会場(東京ビッグサイト)に集客数十人という閑古鳥が鳴く辛酸も経験している。そのとき、主催者の私はスタッフに対し「時代の先を行き過ぎた!」とわけのわからない言いわけをしたそうだ(自分ではよく覚えていない)。

  • 文献概要を表示

 コミュニティナース(以下、CN)とは、看護の専門性を活かしながら、制度にとらわれることなく、まちに出て自由で多様なケアを実践する医療人材です。2016年から育成を開始し、2018年現在までに6期102名の修了生が生まれ、現場で活躍しています。

 その人らしい自由で多様なCNとしての実践を行ない、後押しすることを通して、住民の声やアイデアが形になり、より健康でより幸せな人がまちにあふれていく未来をつくることをめざしています。現時点では看護師資格保有者に参加を限定していますが、医療福祉に限らない多様な方の地域実践が重要ですから、将来的には有資格であることは条件としてなくすことを検討中です。

  • 文献概要を表示

 ヘルスケアリーダーシップ研究会(Institute for Healthcare Leadership;以下、IHL)は、ヘルスケアに関わる者として、自分の価値観(死生観・医療観)を持ち、強い意志のもと、人々の共感を得ながら、社会の変革と創造を推進することができるリーダーを輩出することをミッションとしたNPO法人です。

 医療に関わる者のセミナー活動・研究会活動・キャリア支援を活動の柱として2009年4月より法人化、本格的に始動しました。研究会の研修内容として、課題解決に取り組むプロジェクト、年間12回の定例セミナー、シンガポールのTetsuyu Home Care視察(IHL2016有志)といった課外活動を行なっています。修了後のアルムナイ(修了生)の交流のため、リアルなイベント開催の他、ウェブ上でのコミュニケーション・バーチャルネットワーキングに努めています。Facebookでアルムナイと現役生による非公開グループが多様に広がっていて、日本酒やトライアスロンの会など楽しいクラブ活動も広がっています。

  • 文献概要を表示

 病院を飛び出し、地域の中で活動しようとする医療専門職は、不確実性に耐える力、さらには考える力が必要だと、私たちMedical Studioは考えます。そこで、コミュニティ・ヘルスケアをいっしょに“悩む”場づくりとして、ジェネラリスト・スクールのコミュニティ・ヘルスケア・リーダーシップ(以下、CHL)学科を、仲間とともに学ぶ合宿型の連続研修を行なう学科として立ち上げました。2018年12月現在、6年6期目を終え、のべ242人が「地域×医療」を手がかりに、全国4都市で学んできました(写真)。

 修了生の一部は、CHLでの学びを「答えのない問題に挑む場」とか「自分の中のOSが進化した感じ」「住民も医療も一緒に共通の目標を立てて動き続ける考え方を習得した」と表現しています。

  • 文献概要を表示

 NPO(特定非営利活動)法人浅草かんわネットワーク研究会は、2015年に設立されました。東京都台東区の浅草および周辺地域の住民、広くは一般市民に対して、共通の認識で適正に緩和ケアを提供できるよう、緩和ケアに関する教育、普及・啓発、相談、フィールド調査研究、情報収集・提供、広報活動とあわせてさまざまな課題の改善とその向上を図ることが主旨です。定例会に加え、以下の派生イベントや映画会などを主催しています。

❶定例会…年2回、第22回まで開催。参加者のべ987名。

❷勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来シンポジウム…第8回まで開催。参加者のべ736名。

❸勝海舟記念下町(浅草)がん哲学外来メディカルカフェ…第74回まで開催。参加者のべ398名

❹浅草緩和DI塾…第25回まで開催。参加者のべ655名。緩和医療にかかわる医薬品の情報(DI)や考え方を学ぶ研修会。医師・看護師も交えた病院薬剤師、保険薬局薬剤師を主対象として年6回程度開催。毎年の緩和医療薬学会でもシンポジウムを開催。

  • 文献概要を表示

 横浜を「病や障害を有しても快適に暮らせる街」としていくために地域内外の人たちが集い学び合う場として、2016年から開始した講演会シリーズが「ケア・アライアンス・YOKOHAMA」です。

 私たちの診療所が位置する港南区をはじめとする横浜南部地域は、横浜市内でも高齢化が著しく進行した地域です。私たちの診療圏でもある横浜市栄区の高齢化率は30%を超え、横浜市内で最も高い値となっています。一方で人口あたりの入院ベッド数は限られ、「高齢」や「障害」という問題を従来の医療モデル的思考で解決しようとするのは不可能です。

  • 文献概要を表示

「おとなの学び」と青少年期の学びの違いのひとつは、外から求められるものというよりも、自分のなかから湧き出る動機によって行なうものだということではないでしょうか。

そんなおとなの学びを続けていくために欠かせないのは、学びそのものが「楽しい」ということ。

そして、それまでの自分から一歩踏み出す「越境」があるということ。

そこで、在宅現場に関わる学びの場を主催するお2人に、この2つの言葉をテーマに語り合っていただきました。

そこで浮かび上がってきた新たなキーワードは、「共有」。

よい学びの場とは、「仲間を見つける場」でもあるようです。

連載 生き場所と死に場所をさがしてる。・第1回【新連載】

たべかけのドーナツ 幡野 広志
  • 文献概要を表示

妻には90歳ちかくになる父方の祖母がいる。

祖母は認知症だ。ぼくと妻が結婚をした7年前は、まだ新しいことを覚えることができて、ぼくの名前も呼んでくれた。

連載 50歳からの人生行路 精神科医の老い方論・第1回【新連載】

  • 文献概要を表示

 最近、人生100年とよく言われる。世界各国で高齢化が進んでいるが、なかでも日本はそのスピードがきわめて速い。そこでいまだ経験したことのない「人生100年時代」における人間の生き方について、3回にわたって考えてみようと思う。

 まず第1回で『生涯人間発達論(第2版)』(医学書院、2010年)の紹介、ことに人生の後半部、50歳からの発達について、精神科医の視点を交えつつ書きたい。なぜなら、訪問看護や介護の対象者の多くは、この年齢に該当すると考えられるからである。また近年私は、私の発達論とはまったく別の視点からなる古代インドの人生モデルに強い興味と深い共感を覚えている。そこでこれを第2、第3の回で紹介し、私の老い方論の一端を述べてみようと思う。

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・112

  • 文献概要を表示

 事例検討を中心とした勉強会は、古今東西、広く行なわれてきた「学び」のツール。暮らしの保健室でも、事例をもとに勉強会を行なってきました。

 しかしそれは、単なる事例検討ではなく、事例の経過プロセスと、関わる人たちの関係性や思いを大事にして、ライブのように当事者に発言を求める方式を取り入れたものです。また、連携の見える化ができるとよいと考え、見やすい関係図や、時系列の経過表を皆で共有するやり方をしています。

連載 認知症の人とその家族から学んだこと—「……かもしれない」という、かかわりの歳月のなかで・第21回

  • 文献概要を表示

認知症の人の語りから始まる自己との対話

 認知症臨床研究のパイオニアである長谷川和夫先生が自分の認知症を公表されてから、もう1年近くになるが、つい先日、NHK総合『ニュースウォッチ9』に出演されて、「認知症になると少しずつわからないことが増えると思っていたけど、違いましたね。わかることが結構あるんですよ。対応力がつくんですね。習慣にしている日課を変えないで、いつも通りに過ごすようにしています。それと、伴侶がこれほどに分身に近い存在だったとはわかっていませんでしたね」と、いつも通りの、人を包み込むような口調で話されていた。

 分水嶺を越える旅人の旗手、日本認知症本人ワーキンググループ共同代表の藤田和子さんは、45歳のときに若年性認知症の診断を受けてもう10年ほどになるが、「認知症になったばかりの頃は、いろんなことに失敗ばかりしていました。でも、2年、3年、5年と経つうちに、どうしたらいいかがだんだんわかってきました。症状が進んでいくとともに対応力がついてきました」と言われる。

連載 どう読む!? 在宅医療・看護・介護政策・第37回

  • 文献概要を表示

 厚生労働省は12月3日、「高齢者の保健事業と介護予防の一体的な実施に関する有識者会議」の報告書を公表した。後期高齢者を対象に、「保健事業」と「介護保険による介護予防」を一体的に実施する考えを打ち出している。介護予防の通いの場を活用して保健事業を実施するとともに、医療専門職が関与することで、高齢者1人ひとりに応じた支援につなげることを提案している。

 厚労省は報告書をふまえて、高齢者医療確保法を中心とした改正法案を次期通常国会に提出する方針だ。法改正により、保健事業と介護予防の一体的実施の法令上の扱いを明確にするとともに、後期高齢者医療広域連合と市町村の間で高齢者の医療・介護情報等の共有を図る。本格実施は、2020年以降になる見込みだ。

連載 シンソツきらきら・第25回

  • 文献概要を表示

 「教育は待つことが大事」とよく言われます。すぐできるようになってほしいとつい思ってしまいがちですが、わかればできること、わかっても身につけるまでに時間がかかること、そもそも理解し難い考え方など、学ぶものにもさまざまあり、特に後者になるほど、時間や経験、学習者自身の意味づけが重要になります。人材育成に関わる者として、学習のきっかけとなる種まきと定期的な水やりを欠かさず、芽が出るのをじっくり待ちたいと思うこの頃です。(小瀬)

連載 ふんばる患者が楽になる まいにちの手帖・第4回

未知との遭遇 たむらあやこ
  • 文献概要を表示

昨年 私は『筋トレ社長』(KADOKAWA)の作画を担当させていただいた

一緒に筋トレ漫画つくろう 筋肉描く練習しといて

  • 文献概要を表示

緩和ケアの原体験

 気がつけば医師になって20年、私は自分の専門分野を持つ幸運を得ました。過去に何度も自分のキャリアの節目となる機会がありました。その機会はいつも診療を受け持った患者がつくってくれた天の配剤ばかりでした。

 私が緩和ケアの魅力にとりつかれるきっかけとなった1人の患者のことを今でも明瞭に思い出すことができます。その患者は、肺がんの骨転移で相当な痛みで苦しんでいました。上司に相談しながらその患者の治療を受け持っていた私ですが、痛みの治療がうまくできず、「痛いと言ったときにソセゴン®を注射する」という今では考えられないような幼稚な治療をくり返していました。

--------------------

目次

今月の5冊

Information 学会・研究会情報

バックナンバー・年間購読のご案内

FAX購読申込書

  • 文献概要を表示

成人の学習の特徴として正しいのはどれか—。2013年、第102回看護師国試で出題された問いです。アンドラゴジーと称されるこの領域の研究や応用が看護基礎教育で進み、学生がそれに触れる機会ができた一方、日常業務に追われる当事者年代に届いてないなあと歯がゆく思っていました。ただ、いざ火がつけば在宅ケア者のバイタリティこそ学びの燃料に最適だと、多くの出会いから感じてます。訪問看護師が核となってスタートとした大人向けの学び場も、村松静子さんのメッセンジャーナース認定協会、秋山正子さんの30年後の医療の姿を考える会など、今号で紹介できた場だけでなく全国に多数あります。皆さんの心が動くきっかけがお届けできたら本望です。…青木

アンチエイジング。この言葉には「老いは、遅らせ、遠ざけるべきもの」という思いが暗に示されていると感じます。服部先生の著書『生涯人間発達論』はそうした発想とは距離をとり、人生は常に発達の過程にあるとし、老いもその一過程ととらえます。同著者による新連載『50歳からの人生行路』は、アンチエイジング的発想が強まった今こそ読まれてほしいものです。…小池

今号からカラーページを増やし、表紙と一部の誌面デザインを新しくしました。そこでデザイナーさんから問われたのは「『訪問看護と介護』とは何か」。誰に、どんな内容を、どんなふうに届ける雑誌なのか。読者にどんな価値を提供できる専門誌なのか。編集室の答えは……誌面から伝わることを祈りつつ、新デザインのご感想お待ちしております!…栗原

基本情報

13417045.24.1.jpg
訪問看護と介護
24巻1号 (2019年1月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

文献閲覧数ランキング(
6月17日~6月23日
)