訪問看護と介護 17巻1号 (2012年1月)

特集 地域包括ケアシステムの展望

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今春に迫る6年ぶりの診療報酬・介護報酬同時改定。

「医療、介護、予防、住まい、生活支援サービスを切れ目なく提供する『地域包括ケアシステム』の構築が必要」と宣言した2011年介護保険制度改正は、超高齢社会・多死時代といったこの国の大きな変動に即した内容で進みました。その中心として期待される、訪問看護と介護の力。

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 2011年の「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」の成立により、介護保険のサービスとして「複合型サービス」が位置づけられた。

 従来は、介護事業なら介護サービスを、訪問看護事業なら看護サービスを単体で提供してきたが、今後は病院の在院日数のさらなる短縮化が図られるので、地域には、高齢化し、かつ急性期の治療が終わったばかりの方々が流れてくる。これらの高齢者は介護も医療も必要な方であるので、介護だけ、看護だけといった単体サービスでは支えきれない現実がある。

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――当地で開業されて20年余、医療の枠を超えて、高齢者ケア施設の運営と拡充(表)に努めてこられた過程をお聞きします。いつごろから地域医療に関心が?

新田 もともと外科医として病院に勤めるなかで、がんの治療・手術、そして看取りを含めた急性期から終末期医療に携わってきました。ただ、再発を繰り返すような進行がんに対し、果たして医師として、患者のために何ができるだろうという問題意識を抱えるようになったのが発端です。

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 日本においては、少子高齢化が急速に進み、独居や高齢者夫婦世帯が増加するなかで、高齢者へ効果的に介護や医療サービスを提供するための住宅を広く供給する必要があり、また、こうした住宅の供給が欧米各国に比べて立ち遅れていることから、高齢者住宅の整備が行なわれてきていました。高齢者円滑入居賃貸住宅(高円賃)、高齢者向け優良賃貸住宅(高優賃)、高齢者専用賃貸住宅(高専賃)がそれらです。

 しかし、これらの施設は各施設の管轄がわかりづらく、運営上のさまざまな問題があったため、わかりやすいかたちで整理される必要が生まれました。

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 ナラティブホームという造語がはじめて活字になったのは、今からもう8年も前のことである*1。それまでは「ホスピスホーム」という呼び方をしていた。ホスピスという言葉はすでに市民権を得た感じがあったが、どうしてもがん患者さんの終末期というイメージと、イギリスの救貧所やキリスト教を連想させることもあって、私にはしっくりこなかった。

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 京都大原記念病院グループ(医療法人社団行陵会、社会福祉法人行風会)は、「高齢者の生活を支えるため、急性期医療以外はすべてやる*1」との理事長の児玉博行氏の方針のもと、京都大原記念病院(京都市左京区)を中心に20余の介護関連事業所を運営している。

 同病院(急性期病棟31床、回復期リハビリテーション病棟172床)は、総勢100人以上のセラピスト(PT・OT・ST)を擁する全国最大級の回復期リハビリテーション病院として、患者の在宅復帰を支援する拠点であり、またグループとして左京区を中心に京都市をカバーする在宅ケアの地域ネットワークを築いている点が大きな特徴である。老人保健施設、特別養護老人ホーム、有料老人ホームなど、施設サービスで計600床、訪問・通所サービス、居宅介護支援など、在宅でのサービス利用者は約4000人を数え、その人数比は地域医療の枠組みとしてバランスのとれた構成になっており、近未来の日本社会で必要な医療・介護モデルを先取りした比率でもある(図)。

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「ぼけても、障害があっても、住み慣れた町で暮らし続けたい」。

「宅老所よりあい」(福岡市)は、認知症高齢者の在宅生活を支えようと、1991年11月に開設された。以来20年間、民家を利用した通い(デイサービス)と泊まり(ショートステイ)で、自宅を中心とした暮らしをできるだけ継続することを支えてきた。全国に広がる宅老所の先駆けであり、グループホームや小規模多機能型居宅介護など、現在の地域密着型サービスの源流でもある。

宅老所のイメージは「お年寄りのための“もうひとつの家”」だ。既存制度に縛られることなく、地域ニーズに応じた小規模多機能なケアをきめ細やかに提供するそのありようは、システム以前の「地域包括ケア」を本来的に担ってきたと言ってもよい。

その「よりあい」が、ケアの柱の1つであるグループホームを閉じて、「小規模な入所施設」の立ち上げを計画している。地域の認知症ケアを担う拠点として、小規模とはいえ、本格的な入所施設の運営に、いま乗り出すのはなぜか? そして、この先どのように変化しようとしているのか? 代表の下村恵美子さんにお話をうかがった。

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 肺炎は罹患率が高く、85歳以上の高齢者死亡率は若年成人者の1000倍以上であり、主要な死因となっているだけではなく、高齢者は肺炎発症を契機として日常生活能力(ADL)や生活の質(QOL)を低下させる。わが国においては、将来、高齢化社会へと急速に進むことが推測されており、高齢者肺炎の治療や予防は、わが国の今後の医療を考えるにあたって重要な位置を占めている。

 2011年8月に、日本呼吸器学会は、長期療養型施設や在宅での介護を受けている高齢者肺炎を主な対象とした「医療・介護関連肺炎診療ガイドライン」(NHCAP)を新たに発表した。本稿では、そのガイドラインを中心に、著者自身の経験も含めて「医療・介護関連肺炎」について解説する。

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 3年前、EPA(経済連携協定)にもとづいて、インドネシアから104名の看護師候補者たちが来日し、日本語研修ののち病院で働きながら看護師国家試験に向けて勉強していた。この第1陣の候補者のうち2名が昨年の看護師国家試験で合格し、今年は13名が合格して看護師の資格を得ることができた。

 本誌で2回(2011年1月号、2009年8月号*1、2)にわたってインタビューした東京・八王子市永生病院のデウィ・セップティヤスリニさん(28歳)と横浜市菊名記念病院のアイヌール・ロフィックさん(33歳)も、そのなかの2人である。そこで、晴れて合格した2人に日本で看護師として働く喜びをうかがった。

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社会科学の立場から日本の医療のあり方を論じた、猪飼周平さんの『病院の世紀の理論』(有斐閣、2010)が、広く注目されている。

その内容は、学問の枠を越え、現場医療職による実践や、厚生労働省が構築を急ぐ「地域包括ケアシステム」などの政策論にも影響を及ぼすものだ。

このなかで、猪飼さんは、「病院の世紀」の終焉と、それと表裏一体である「地域包括ケア」の時代の幕開けを告げている。

その理論的背景は? 今後のヘルスケアシステムのあり方とは?

それを先取りするように、第一線で在宅ケアに取り組んできた太田秀樹さんが、年頭に当たり、猪飼さんと今後の展望を語り合った。

超高齢社会・多死時代のケア実践の方向性を指し示す。

連載 これって、急変? なんとなく変への対処法・第1回【新連載】

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本日の目標

❶どんな発熱で重症感染症を疑うか理解する

❷「なんとなく変」を言語化できるようになる

❸「在宅の発熱」を自信をもって評価できるようになる

連載 在宅ケア もっとやさしく、もっと自由に!・28

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 先日、兵庫県看護協会研修センターにて、衛星通信を使った退院支援看護師養成のセミナーがありました。昨年に続く企画です。原案の企画者は、京都大学付属病院の宇都宮宏子さんです。

 プログラムは、始めに尼崎市で訪問診療を行なっている長尾和宏先生の在宅医療の講演です。そのあと、秋山による在宅で過ごすために訪問看護につながったさまざまな事例から退院支援・調整の実際を、在宅側から聞いたり、一部映像で見たりしてもらい、退院時の在宅へつなぐときのイメージが具体的に湧くようにお話しました。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第6回

話す身体と聞く身体 細馬 宏通
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 会話をする力は、認知症を考えるときの大きな手がかりである。たとえば、認知症をスクリーニングする検査としてよく使われるものに、N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)がある。これは介護者や身近な人が、日頃のお年寄りの様子を観察して点数をつけていく尺度なのだが、そのなかに「会話」の項目がある。介護者は、呼びかけに反応するか、話し方がなめらかか、話のつじつまが合わないことがあるかどうか、といったことをもとに点数をつける。

 NMスケールは観察に基づく検査だけれど、診断や検査の多くは、質問に答えてもらう方法をとる。たとえば認知症検査でよく用いられる改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)では、「お年は?」「ここはどこ?」といった質問をして、それに答えてもらう。「お年は?」という質問に答えるには、ただ自分の年がわかるだけでは足りない。質問の意味を理解し、次は自分が答える番だということに気づき、自分の年を相手にわかるようなことばで声にしなければならない。このように認知症の検査では、単に記憶力だけでなく、直接間接に会話をする力が評価されている。

連載 訪問看護 時事刻々・154

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 厚生労働省の審議会で、2012(平成24)年度診療報酬改定の基本方針が確定した。「医療と介護の役割分担の明確化と地域における連携体制の強化の推進及び地域生活を支える在宅医療等の充実に向けた取組」、これが重点課題の1つだ。

 介護護報酬との同時改定にあたるため、医療と介護の連携や役割分担の整理が進められることは当然。さらに超高齢社会をにらみ、在宅医療の充実の方向もはっきり示されている。

連載 一器多用・第8回

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 最近、とある訪問介護事業所のサービス提供責任者の方から、半ば愚痴を聞きました。

 「わが子が通う小学校から介護のことを教えてほしいと、特別授業の依頼があったんですよ。人前で話すのは苦手だし嫌だったんですが、断りにくいので引き受けました。やるからには役に立つよう、スライドなんかも作成し、車椅子体験もしてもらおうと、いろいろ準備していきました。いざ授業が始まり、スライドを見せながら、ヘルパーの仕事を説明したり、お年寄りとのエピソードを紹介したりするものの、いまひとつ反応が薄い。車椅子に乗ってみれば多少は違うかと期待したんですが、それも仕方なくやっている感じです。やっぱり受けなければよかったなぁ。ちょっと落ち込んでいます……」

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第10回

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杏里 この連載のマンガを描いてくださっている日野さんが、前号の認知症特集の座談会でご一緒したとき「どうも雨や天候が悪いと(認知症の義母の)調子が悪いみたい」と言っていたんだけど、天気と認知症の人の体調って関係があるような気がするんだよね。

母 そりゃ、大アリよ。

ほっとらいん ふろむ ほんごう

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 11月13日(日)、日本看護協会・全国訪問看護事業協会企画・協力、日本訪問看護振興財団の主催による、「訪問看護サミット2011」が、ベルサール神田(東京都千代田区)において開催された。

 今回のテーマは、「見せよう訪問看護の力 地域包括ケアの実現に向けて」。同財団の清水嘉与子理事長は、開会のあいさつにおいて、東日本大震災発災時の被災地での看護職の働きぶり、同財団からも6月から宮城県内の仮設住宅において訪問看護を展開していることを紹介し、本サミットで、職種間の交流が行なわれ、連携がいっそう深まるよう期待を述べた。

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 小林光恵さんのこれまでの著書を契機に、日本中の看護師がいっせいに、それまでのエンゼルケアを見直しました。エンゼルメイクセットを買い揃え、講習会を開催し、ご家族に満足いただけるエンゼルケアへと質が向上してきていると思われます。

 でも、そのエンゼルケアは、狭義の「エンゼル“メイク”」に偏重してはいないでしょうか? メイクだけでよいのなら、エンゼルケアを「看護師が行なう意味」は弱まってしまいます。私は、昨今のエンゼルケアの躍進を、多少冷ややかな目をもって眺めていました。

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「排泄」も「看護」も自然循環の中にある

寺崎亜世子 兵庫県・看護師

 

訪問看護師の言葉に看護の原点を再発見

根岸貴子 埼玉県・看護教員

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ニュース―看護と介護のこのひと月

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いよいよ訪問看護と介護の時代が来た。と、新春対談をまとめながら感慨が湧き上がってきました。読者のみなさんのこれまでの地道な実践の意義を確信し、また今後ますますの活躍に期待する内容です。人々は安上がりに死ぬために自宅や地域に戻るわけじゃない。新時代の価値基準は「“その人にとって”何が大事か」だとも指摘されました。でもそれって、家族でも一生を連れ添ってなお知り得ないのも稀ではないこと。誰かのそれに触れたり、まして共有できることは、とてもかけがえのないことに思えます。そこに近づき得る「長い時間」「濃い時間」をもてる状況が整っていくことを祈りつつ、『訪問看護と介護』は2012年も在宅・地域ケアを応援します。…杉本

 

人間どうしがお互いに幸せに生きるためのしくみが、時に人を縛ります。それでも、何らかの不便を甘受することで得られる利得がどれだけあるか―。そうした勘定抜きでは生き難いのは、時代を超えた世の常かもしれません。ナイチンゲールが「病院は、あくまで文明が発達する途中段階にあるものにすぎない。現在、病院は貧者が看護を受けられる唯一の場所であるが、究極の目的は、すべての病人を家庭で看護すること」と唱えたのは1876年でした。人が自ら選んだ場所で生きて、死にたいと願う気持ちも、時代を超えて続くでしょう。システムや共同体は、人間のためにあるもので、それ自体は常に更新されてゆけばよい。◎全国で日々歩まれる皆さんの足取りやその手触りを、今年も追ってゆきます。…青木

基本情報

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訪問看護と介護
17巻1号 (2012年1月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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