訪問看護と介護 16巻12号 (2011年12月)

特集 認知症医療・ケアの知識を見直そう 認知症こそ在宅・地域で

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認知症の方にとって、住み慣れたわが家・わが町こそ、安心できる生活の場であってほしい。

でも、介護するご家族の疲労やうつなどの問題も少なくありません。

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 私が勤務する海上寮療養所(以下、当院)は、千葉県旭市にある民間の単科精神科病院です。199床の病床すべてが開放病棟で運営されているという特徴があります。

 現在、当院では認知症の方に対する精神科医師の訪問診療を行なっています。なぜ認知症の方に対する訪問診療を始めることになったのか、ご説明しましょう。

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 2007年、私は認知症看護認定看護師(当時の呼称は、認知症高齢者認定看護師)になりました。その後、通所介護(以下、デイサービス)を立ち上げ、ちょうど4年になります。

 認定看護師コースの卒業時、その「職務記述書」に私が書いた“使命”は、「認知症高齢者の『生命』『生活の質』『尊厳』を尊重し、教育・実践・指導に貢献する」であり、その“目的”は「高齢者および家族・地域社会(介護保険関係者を含む)に、高齢者・認知症についての専門的知識・技術を広げ、認知症高齢者の人権を尊重するケアの実践に貢献する」というものでした。この内容に沿って、株式会社を立ち上げ、デイサービスを始めました。

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 当訪問看護ステーションは、開設して11年が経ちました。現在、利用者数約100名の訪問を、約10名の看護師で担っています。

 開設当初の11年前は、認知症治療薬のアリセプト®の服薬が始まった頃で、在宅でもアリセプト®を内服する利用者が徐々に増えてきました。この数年は、高齢化に伴い、認知症ケースの訪問依頼が増えています。最近では、「独居で大丈夫なの?」と思われる事例や、介護する配偶者もまた認知症である事例も多くなり、“綱渡り状態”でなんとか在宅で生活している状況が多くみられるようになりました。介護者であるご家族が疲労困憊している困難事例もあり、独居や高齢世帯などの別居家族は現状を理解していないことが多いなか、対応に困るケースも増えています。

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 高齢化が進むわが国では、訪問看護の対象者もまた「高齢者」が多い。「認知機能の低下」はどのような利用者にもみられる自然な変化であるが、それが日常生活を営むことに直接影響するレベルになると、診断や治療が必要な“医療の対象”となる。

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 認知症の中核症状は、記憶障害である。記憶障害とは、情報の貯蔵や検索ができない「情報障害」と考えられる。たとえば、“財布を置いた場所”を検索できない。それが、“盗られた”という思い込みの原因となり、さまざまな周辺症状を引き起こす。であれば、そもそもの原因である「財布を置いた場所の検索」を支援すればよいのではないか。

 従来の認知症支援は、心理的・社会的なものに偏りがちである。各種ツールなどによる、「情報支援」も行なうべきだ。筆者は、本誌にて、「もの忘れを補うモノたち――簡単な器具と器機による認知症・記憶障害の方への生活支援」を2007年5月号から1年間連載し、これらのツールを紹介した。本稿では、その後に考案したものなどを紹介する。

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本人からの問いかけ

「がんばってくれていることに感謝しています。でも、自己満足じゃあないですか、ねぇ……?」

 これは、昨年ある県で開催された認知症のケアに従事する職員向けの研修の冒頭で、60歳代のアルツハイマー型認知症の男性が、その参加者に投げかけた質問です。穏やかな口調ながら毅然とした一言に、会場は静まり返りました。

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家族が認知症になった。そして、介護が始まった――。

その日々には、どんな苦労があったのか?

それでも、どうして在宅介護を続けてきたか?

認知症のご家族との自宅での暮らしを続けてこられたみなさんに、現在進行形の介護の日々を、ホンネで語り合っていただきました。

毎日を一緒に過ごすからこその認知症ケアの工夫は、専門職へのヒントにも溢れています。

ご家族の思いから知る、求められる支援とは?

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はじめに

 厚生労働省の2009(平成21)年国民生活基礎調査の概況で世帯構造を確認すると、65歳以上の者のいる世帯は全世帯の41.9%、そのうち高齢者世帯を世帯構造別にみると、「夫婦のみの世帯」が高齢者世帯の48.6%、「単独世帯」が48.1%と単独世帯で約半数を占めており、今後も高齢単独世帯の増加が見込まれている*1。単身世帯への支援、連携のあり方は多様である。今回、独居の多系統萎縮症男性への訪問経験から、病状の進行と生活環境の対応をまとめたので報告する。

東日本大震災の被災地から

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 大震災直後、私は被災地で宗教者が悲嘆のケアに奔走する姿を、数か月にわたって取材した。それは仙台近郊にある岡部医院の岡部健院長に電話で話を聞いたことから始まった。

巻頭インタビュー ケアする人々・7

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訪問看護師のパイオニアである村松静子さん。その転機は35歳のとき、退院後の行き場をなくし、医療と福祉の狭間で苦しむ地域の人々を支えるボランティアとして、その在宅ケアを志す活動は始まりました。それから28年が経った本年、赤十字国際委員会から、世界中の看護師を対象に顕著な功績があった方を顕彰するフローレンス・ナイチンゲール記章(Florence Nightingale Medal)授与の連絡を受けたそのとき、村松さんは東日本大震災の被害に苦しむ被災地福島にあって、さらに新しい在宅ケアのかたちづくりを前進させていました―。

今回の「ケアする人々」は特別篇。常に現場にあって看護の道を切り拓いてこられた村松さんの半生の振り返りと、現在の思いをおうかがいしました。

連載 訪問看護 時事刻々・153

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 第16回目となる「日本看護サミット」が11月1・2日に福岡で開催された。この催しは都道府県と都道府県看護協会が実行委員会をつくり持ち回りで行なわれる。厚生労働省、日本看護協会、そして都道府県の各医療系団体の後援もあり、まさに看護に関する“頂上会議”と言えよう。

 2日間にわたる会議では、日本看護協会長による基調講演のほか、看護職国会議員や厚生労働省看護課長らが参加する分科会やシンポジウムが行なわれ、各課題について意見を交換する。今年も看護管理者を中心に全国から3000人以上が参加した。

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 近年急速に進む高齢化を背景に、地域で暮らす「医療依存度の高い療養者」が増えている。また、ここ10年、介護保険制度の導入、第5次医療法改正や医療制度改革法、がん対策基本法における在宅医療の推進の明文化など、「在宅看取り」についても国を挙げた取り組みが推し進められている。

連載 在宅ホスピスの現場から ターミナルケア実践からの12の学び・12【最終回】

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 鶴子さんは、乳がんのホルモン治療継続中に、左臼蓋・右大転子に骨転移が発見され、放射線治療を受けました。しかし、疼痛コントロールが十分図れず、3か月後メタストロン®89Sr)*1を投与、その6日後に退院が決定していましたが、十分に疼痛緩和や管理ができない状況でした。

 鶴子さんは、右股関節から腰部にかけての疼痛を、安静時には口頭式評価スケールVRS(Verbal Rating Scale)2~4(/10)、体動時にはVRS7~8(/10)と訴えていました。初回訪問時にも、「じっとしていても痛みがある。動いたら痛いし、全然動かれへん」などの発言がありました。

連載 在宅ケア もっとやさしく,もっと自由に!・27

あれで良かったんだよね 秋山 正子
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 山形県寒河江市は、サクランボで有名なところ、訪問看護の先駆者のお一人宮崎和加子さんの出身地でもあります。「利用者さんの長寿を祝って百歳記念花火を上げるよ」と在宅医である折居和夫先生からお誘いがあり、寒河江市を訪ねたのは今年の1月4日のことでした。百歳記念花火は翌日の新聞に掲載され、折居先生からメールを頂戴したことなどは『在宅ケアのつながる力』(医学書院)のエピローグに書きました。

 その時のつながりから、この秋、寒河江市西村山郡訪問看護ステーション15周年記念行事に招かれました。市民公開講座の講演を依頼されたのです。この訪問看護ステーションは1市4町の支援を受けた事業団によるかなり広い地域を訪問するステーションで、遠くは月山のふもとまで、車で1時間以上かかる訪問先もあるということです。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第5回

たどんの思い出 細馬 宏通
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 数年前、滋賀県の高島市で高齢者の回想法の試みに関わったことがある。当時、わたしにとって回想法は初めての経験で、みんなで話し合って昔のことを思い出す、というくらいの漠然としたイメージしかなかった。ところが、実際にやってみると、これは単なることばのやりとりではないことに気づいた。

 たとえば、人の配置がそうだ。初回はとにかくたくさんでやりましょうということになり、デイケアに通う方々に集まってもらい、広いホールでやってみた。7、8人のグループを5組ほど作って、それぞれの組が円形に座って話をする。しかし、これはうまくいかなかった。ホールの高い天井に会話が反響して、あちこちからわんわんと声が聞こえる。ただでも耳の遠いお年寄りが多いので、グループでの会話をあきらめて、隣の人とぼそぼそと話し始める人があちこちに現われ始めた。

連載 一器多用・第7回

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 ある訪問介護事業所の研修会で、女性ヘルパーの方からこんな質問がありました。

 「身長は180センチくらいで、体重は80キロはあるかなり大柄な男性を、車椅子からベッドに移乗させるのがとても大変です。両腕は私の肩にかけてくれるのですが、足腰がほとんど動かないので、立ち上がることができません。そのため、ベルトのあたりを持って抱え上げています。もっと楽な抱え上げ方ってありますか?」

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第9回

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杏里 今回は、特集座談会(p.1014)の番外編です。

あかね 奥さんの介護を「感謝の心でやらせてもらっているんです」という内田順夫さんの言葉にはジーンと来たな。

書評

『在宅ケアのつながる力』 高橋 都
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 2年前に長距離通勤を始め、電車内の読書が毎日の楽しみになっている。友人から勧められて本書を手に取ったその日、あまりの面白さに本から目を離せず、3つある乗換駅でいずれも乗り越しそうになった。

 本書は、在宅ケアの領域ではすでに“名著”になりつつあるかもしれない。しかしその内容は、広く医療現場全体に、そして私たちの毎日の暮らしに、実に大きな示唆を与えてくれる。

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認知症高齢者の行為を“分ける”ことで見えてきたもの

根岸貴子 埼玉県・教員

 

リタイアナースの災害支援活動

諸橋テル 新潟県・看護師

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INFORMATION お知らせ

ニュース―看護と介護のこのひと月

今月の5冊

投稿規定

バックナンバーのご案内

次号予告・編集後記 杉本 , 青木
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認知症こそ在宅・地域で、と特集タイトルで言い切るのには、長らく迷いがありました。認知症のご家族がある友人から、どうしようもなく殴った縛った自分が病気になったと聞くにつけ、それはとても非現実的で、余計に苦しめることになるのでは?と躊躇われたからです。こうなると、“わが家”は「安心できる場所」ではなくなってしまいます。でも今回、専門職をはじめご家族やご本人の立場からも論考をいただき、その実践に触れるにつれ、可能性の広がりを感じることができました。また、いかに認知症を知っているつもりで知らなかったか痛感。無知や偏見を減らし、いかに手厚くケアしても、悲しみやとまどい、生活上の苦労がある認知症ですが、それでもどこかに「安心」を感じられることが第一歩と、みなさんの言葉に教えられました。…杉本

 

村松静子さんが福島に開設されたセカンドハウス「よりどころ“ここさこらんしょ”」は、“あなたの別宅”と謳われています。福島弁で「ここに寄っておいでよ」という誘い文句が命名の由来。元々旅行好きで、東北各地を周遊されてきた村松さんですから、「岩手や宮城でなら、それぞれのお国言葉で名づけました。私は被災地のいずれも好きで歩いてきたから、どこにでも作りたくて」。セカンドハウス自体、震災前から抱かれてきた「必要なときに自由に利用でき、いつでも自宅に戻れる」一軒家構想です。読者の皆さんに、またそれぞれのご当地のイメージで共有され得る“地域包括システム”のかたちかもしれません。「今月の5冊」欄で紹介した『ナース発東日本大震災レポート』で、詳しい開設秘話も読めます。…青木

訪問看護と介護 第16巻 総目次

基本情報

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訪問看護と介護
16巻12号 (2011年12月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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