訪問看護と介護 16巻11号 (2011年11月)

特集 わが家で看取る―当事者として在宅で

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訪問看護師は、医療の専門職として「他人」である利用者・家族と向き合うことを常とします。その人生のなかで、時にみずからの「家族」をケアすることもあれば、みずからケアされるときが来ることも避けられません。

ひとの生死の局面に立ち会うプロとしての職業的修練は、いざ自身が当事者になるときにどれほどの強みに、また弱さにもなるのでしょうか。

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 東京に戻って、そろそろ1年が経つ。2010年8月、滋賀県に住む私に、母の担当ケアマネジャーから、がんと診断されたので主治医に会ってもらいたいと連絡があった。高齢だし……と私はのんびりと構えて、9月4日に上京して一緒に外来に行く予定を立てたが、9月2日に母はひどい貧血のために自宅で倒れ動けなくなっているところを訪問ヘルパーに発見され、入院した。主治医に電話すると余命1か月だろうという。

 9月12日。職場で調整を済ませ、1か月の休暇をもらい、4匹の猫を車に詰め込んで中央高速を半日かかって東京にたどり着いた。

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 私は「作家の母」と「作家になれなかった父」の間に生まれたひとりっ子で、両親ともがいつも誰か他の人を好きになっている家庭で育ちました。

 両親とも外に出る仕事でしたから、私の世話をしてくれたのは、父の生家に住み込みで働いていた元「ねえやさん」。私が生まれたときから一緒に暮らし、私が家を出てからも、ずっと両親と暮らしていました。いわば育ての母みたいなものです。

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2010年4月、国際的な免疫学者であり、作家・詩人、能作者としても多様な活動を続けられた多田富雄氏が逝去された。2001年に脳梗塞に倒れ、右半身不随・構音障害の患者となった。同氏の晩年までその創作意欲は衰えず、また厚生労働省のリハビリテーション診療報酬制度の改定を批判し、48万人もの署名を集め“リハビリ闘争”と称された反対運動を主導されるなど、その活動は広く注目された。常にその傍らにあって夫を在宅でケアされた夫人の式江さんに、振り返ってお話を伺った。

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 今年の夏は、日本中の皆様が「節電」を合言葉に、よしずや打ち水の風流を楽しみながら酷暑を乗り切ったのではないでしょうか。わが家も、川風やグリーンカーテンに助けられながら、この夏を過ごしました。

 妹の宏子が自宅療養に踏み切った2007年も本当に熱い夏でした。

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 「あなたの家族は誰ですか?」

 もし、あなたがそう尋ねられたら、誰を思い描くだろうか。「家族」を構成する1人ひとりに思い描く「家族」がある。それが一致する場合もあれば一致しない場合もある。

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 あえぐような声が聞こえ、ベッドわきで仮眠していた私は目を覚ました。

 「痛い、痛い! くすり」

巻頭インタビュー ケアする人々・6

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「いただきます」―。私たちは、自然からのいただきもので生命を維持している。そして、食べれば必ず排泄する。本来、それは自然へと還され、“肥やし”となるはずのものだが、現代では下水道を介してゴミとして処理されるのが普通だ。しかし、伊沢さんは、21世紀に入って以降、大便に限っては、一度もトイレで用を足したことがない。一生物として“生命の循環”の一部となり、自然に“お返し”するためだ。それには正しい作法があり、守らなければ、かえって自然に害をなすおそれもある。その追究は、伊沢さんにとって生きる意味の転換であり、死の意味をも反転させてしまった。その真意を、岡田慎一郎さんが聞いた。“生命の循環”における「排泄」の意味とは?

東日本大震災の被災地から

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 3月11日14時46分。盛岡に住んでいる私は、そのとき自宅の居間で、携帯電話のエリアメールのけたたましい音にびっくりしながら、次第に激しくなる地震を感じておりました。揺れが収まりひと心地がつき、地震の情報をみようとテレビをつけましたが停電で映りません。でも、まだそれほど大変なことが起こっているとは知らずにおりました。

 やがて蝋燭の明かりの中で聞いていた携帯ラジオから、地元ラジオ局のアナウンサーが、真っ暗闇の中に浮かぶ信じられない陸前高田の情景をリポートする悲壮な声が聞こえてきました。

ほっとらいん ふろむ ほんごう

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 平成がはじまった1989年、小社発行の看護総合誌『看護学雑誌』53巻4月号の巻頭グラビアに、3人の看護師の肖像が掲載されました。

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 本年6月、「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律*1」(以下、改正法)が成立した。この大部分は、2012年4月以降の介護保険制度で施行されることとなる。

 なぜこのような改正が行なわれ、実践現場にはどのような影響が予測されるのだろうか。本稿では、改正法を概観するとともに、2012年以降の介護保険制度の課題について若干の考察を行なう。

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はじめに

 わが国の高齢化は他に例がなく、2007年には超高齢社会を迎えました。健康長寿をと願いながらも、現実的には医療依存度の高い高齢者の増加、入院期間の短縮化により、在宅ケアや施設ケアの現場では医療行為の必要な高齢者が増加しています。

 しかし、医療行為を行える医師や看護師の配置が十分ではなく、WAM NETによると大阪府内の60%強の介護老人福祉施設に常勤医師がいないという状況があり(2011年5月31日調べ)、看護師に医療的な判断が委ねられている状況にあります。そのため、介護老人福祉施設に勤務する看護師には質の高い看護実践能力が求められますが、配置人数の少なさもあり、研修等の自己研鑚の機会が不足していると言っても過言ではないでしょう。

 このような状況の中、「チーム医療」の考え方を前提に、2003年には在宅ALS患者の吸引*1、2004年には特別支援学校における吸引・経管栄養・導尿*2というように、医療行為を実施できる者の範囲が家族以外の者へと拡大されました*3

 そして、2010年4月には、特別養護老人ホーム(以下、特養)におけるたんの吸引と経管栄養について、一定の条件のもとであれば介護職員がその一部を実施することが認められました*4

 大阪府看護協会では、これまでも高齢者施設に勤務する看護師の能力向上に向けた取り組みを行ってきましたが、その延長として、特養の介護職員による吸引等の実施に向けた指導看護師養成研修(以下、本研修)を企画・実施しました。本研修は厚生労働省のプログラムに準拠しながらも、少人数グループによる技術演習を取り入れるなど、実践への応用を念頭に置いて企画したものです。

 本稿では、研修を実施するまでの経緯と、研修の実際について報告します。

連載 訪問看護 時事刻々・152

看取り 石田 昌宏
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 来年春の介護報酬改定に向けて議論が行なわれている厚生労働省の介護給付費部会。今年も「看取り」への対応がテーマになった。今から25年後には年間死亡者数が170万人(今の1.5倍)になると見込まれている。病院などの病床数は増えないと考えられるから、このままでは数十万人が死に場所がなくなるという推計さえある。いままで医療を中心に看取りを行なってきたが、介護の分野でも積極的に取り組んでいかねばならないというわけだ。

 「終の棲家」として期待されているのは特別養護老人ホームだ。すでに45万床近い定員をもつ。退所理由のうち63.0%が「死亡」であるから、まさにそれを実践している。ところがそのうち6割ほどが施設内から出て医療機関に入院し、そこで死亡しているという。看護師数が少ないなど、看取りができる体制が整っていないためだ。また平均在所日数も長く1465日もある。入所者が長くいるため、新しい入所が難しい。

連載 在宅ケア もっとやさしく,もっと自由に!・26

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 地元新宿の訪問介護事業所の集まり(「者」ではなく「所」)は、介護保険が始まって比較的早くから「つどい」と銘打って、定期的な勉強会や、講演会や、調理実習などを企画してきました。それは管理者のみの集まりではなく、1ヘルパーとしても参加ができ、集える会として発展しています。

連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第4回

声は動作を真似る 細馬 宏通
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 転倒がきっかけでしばらく入院していたキウチさんが、グループホームに戻ってきた。足腰の弱ったキウチさんは、車椅子を使うようになっていたが、それだけでなく、左脳の機能がかなり低下しており、以前は動いていた利き手の右手が、ほとんど動かなくなっていた。今は慣れない左手を使い、介護用の柄の太い曲がりスプーンで流動食を口に運んでいる。

 入院前、椅子に座って食事をしていたときのキウチさんの「食欲」は、からだが前傾姿勢になることから見てとれた。食べ物によって上半身がテーブルに近づいたり、頭が前に乗り出すので、あ、これは好きな食べ物なのだなと見当がついた。病院から戻ってきた今、車椅子にもたれたキウチさんの上半身は、はっきりとは動かない。流動食も一人では食べられないので、食事のあいだ、スタッフのハヤシさんがマンツーマンでキウチさんの横についている。キウチさん、ずいぶん弱っちゃったなあ。

連載 在宅ホスピスの現場から ターミナルケア実践からの12の学び・11

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 「歩きたい」―。隆志さんのご家族が、当ステーションが属する医療法人社団パリアンの相談外来に来訪されたのは、去年の冬のはじめのことです。相談外来のカルテに残された奥様と長女さんの話から、隆志さんはそのためにリハビリテーション(以下、リハビリ)に取り組んでおり、「退院したら、どこかに出かけたい」という希望があることを知りました。退院後の初回訪問診療でも「車椅子で、近くのスーパーなどに外出したい」と医師に、訪問看護師にも「右下肢の麻痺は治るのでしょうか?」と問い、歩きたい思いを語っていました。そこで、理学療法士として訪問を開始することになりました。

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 経営状況を計る指標として、約75%の訪問看護事業所が「職員1人あたりの訪問回数」を活用していると回答している*1。経営の指標として、単純に収支(赤字/黒字)だけを見るのではなく、黒字につながる経営の指標をもつことは、事業所の運営上有意義であると考える。「職員1人あたりの訪問回数」は、経営状況の指標として有効であることを調査結果にて確認する。

連載 一器多用・第6回

「働く身体」の条件 岡田 慎一郎
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 最近、異業種の方から、仕事での体の動かし方について質問されることが多くあります。たとえばパン屋さんからは、1袋20キロもある小麦粉を毎日30袋移動させなくてはならないので、移動のコツを教えてほしい。引越し屋さんからは、エレベーターが使えない建物での荷物を抱えての階段の昇り降りを。カメラマンからは、撮影機材の持ち運びなど……、さまざまです。共通するのは「重い荷物を、いかに負担なく持ち運べるか」ということです。みなさん、どうしても筋力、とくに腕の力に頼った動きが中心になりやすいので、“全身”を有効に活用する動きを実際にやってみせ、アドバイスをしています。

連載 「介護」「看病」は“泣き笑い” ウチの場合はこうなんです!・第8回

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杏里 3月11日に東日本大震災が発生してから半年以上が過ぎました。今回は、家族を介護する者として、東京で体験したあのときのこと、震災と介護について、改めて考えます。

母 あれから半年なんだね。

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 高齢者介護施設におけるケアの目標である「利用者のクオリティー・オブ・ライフの維持・向上」のためには、レクリエーションプログラムの充実が欠かせない。今回、名古屋大学医学部附属病院と金城学院大学環境デザイン学科の技術協力のもと、特定非営利活動法人全国福祉理美容師養成協会(代表:赤木勝幸)が実施主体となり、美容に関する訪問レクリエーションプログラム(ビューティーキャラバン)を実施したので、若干の考察を加えて報告する。なおビューティーキャラバンは、東海ゴム工業株式会社、特定非営利活動法人全国福祉理美容師養成協会、名古屋大学、金城学院大学の4者による産学連携事業である。

 2009年3月から2010年11月に、ビューティーキャラバンへの参加申し込みのあった11施設(特別養護老人ホーム3施設、有料老人ホーム4施設、グループホーム4施設)に対して各1回プログラムを実施した。

書評

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 大切な方をうしなうつらさを理解できますか? そして、その方々を支える難しさ、とても大きくて悩むことがありませんか? 私もこれまで関わらせていただいた患者さんのご家族や恋人など、仲がいいほどそのつらさは大きいように感じられて、どう支えていったらいいのだろうかといつも悩んでいました。

 今回、広瀬寛子さんが、大切な方を失うつらさや、その支援の仕方について丁寧に書かれている『悲嘆とグリーフケア』を読ませていただきました。中にはドキドキするようなリアルな表現で、(実際に体験されたことのようですが)ご家族の悲しみやつらさが書かれていて、心に響きました。愛する大切な人の死に向かい、愛していればいるほど残されるであろう、または残された方たちの悲しみは慟哭に近く、私たちケアを提供する側もまた大きな悲しみを抱えることになります。

読者の声

訪問看護の切れ目が命の切れ目
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訪問看護の切れ目が命の切れ目

匿名 東京都・42歳・在宅療養者家族

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ニュース―看護と介護のこのひと月

INFORMATION お知らせ

今月の5冊

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次号予告・編集後記 杉本 , 青木
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便秘に悩む人が多い。巻頭インタビューの伊沢さんには、それをどこでどうするかはもちろん、「何日連続」という記録を聞くに、それが「毎日」出ることにも驚かされた。秘訣を聞くと、「人間、『今しかできない』と思うと出るものです」とのこと。赤ん坊は産まれて初めて息をするとき、吸うよりもまず吐くと聞く。普段の呼吸でも、よく吐くことで、よく吸える。先月「食べること」を特集したが、そのためには、入れる前にまず出す、という循環をつくるのが、もしかしたら近道なのかも。このようないろいろの循環が、人体を生命たらしめており、その仕組みは精妙かつダイナミックだ。体の中には大自然がある。特集では、それをケアしたり看取ったりする凄みと機微を改めて思い知ったのでした。…杉本

祖母は晩年、10分程で記憶がループする前向性健忘でした。それはもう見事なボケで、見舞いにゆくたび同じ問答を何度となく交わすことに。「誰や?よお来たな。結婚はしたか?別嬪さんか?子どもはできたか?お菓子食べるか?…なんでうちここにおるんやろ?家に帰りたい。帰らして」。最後の返事ができぬ間に時は過ぎ、また振り出しに。最初はからかわれているのかと真剣に疑ったものです。途中で同じ返事をするのに飽きて冗談を織り交ぜても、すぐまたはじめから。●誰より祖母を護った伯母の「在宅ではもう無理。施設で看てもらう」選択が間違っていたとは今も思いません。ただ、3年前に彼女の声に真剣に向き合えなかった自分の無為を悔いています。本特集に至った思いの1つでした。…青木

基本情報

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訪問看護と介護
16巻11号 (2011年11月)
電子版ISSN:1882-143X 印刷版ISSN:1341-7045 医学書院

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