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はじめに
わが国の高齢化は他に例がなく、2007年には超高齢社会を迎えました。健康長寿をと願いながらも、現実的には医療依存度の高い高齢者の増加、入院期間の短縮化により、在宅ケアや施設ケアの現場では医療行為の必要な高齢者が増加しています。
しかし、医療行為を行える医師や看護師の配置が十分ではなく、WAM NETによると大阪府内の60%強の介護老人福祉施設に常勤医師がいないという状況があり(2011年5月31日調べ)、看護師に医療的な判断が委ねられている状況にあります。そのため、介護老人福祉施設に勤務する看護師には質の高い看護実践能力が求められますが、配置人数の少なさもあり、研修等の自己研鑚の機会が不足していると言っても過言ではないでしょう。
このような状況の中、「チーム医療」の考え方を前提に、2003年には在宅ALS患者の吸引*1、2004年には特別支援学校における吸引・経管栄養・導尿*2というように、医療行為を実施できる者の範囲が家族以外の者へと拡大されました*3。
そして、2010年4月には、特別養護老人ホーム(以下、特養)におけるたんの吸引と経管栄養について、一定の条件のもとであれば介護職員がその一部を実施することが認められました*4。
大阪府看護協会では、これまでも高齢者施設に勤務する看護師の能力向上に向けた取り組みを行ってきましたが、その延長として、特養の介護職員による吸引等の実施に向けた指導看護師養成研修(以下、本研修)を企画・実施しました。本研修は厚生労働省のプログラムに準拠しながらも、少人数グループによる技術演習を取り入れるなど、実践への応用を念頭に置いて企画したものです。
本稿では、研修を実施するまでの経緯と、研修の実際について報告します。
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