連載 介護することば 介護するからだ 細馬先生の観察日記・第4回
声は動作を真似る
細馬 宏通
1
1滋賀県立大学人間文化学部
pp.942-943
発行日 2011年11月15日
Published Date 2011/11/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1688102038
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転倒がきっかけでしばらく入院していたキウチさんが、グループホームに戻ってきた。足腰の弱ったキウチさんは、車椅子を使うようになっていたが、それだけでなく、左脳の機能がかなり低下しており、以前は動いていた利き手の右手が、ほとんど動かなくなっていた。今は慣れない左手を使い、介護用の柄の太い曲がりスプーンで流動食を口に運んでいる。
入院前、椅子に座って食事をしていたときのキウチさんの「食欲」は、からだが前傾姿勢になることから見てとれた。食べ物によって上半身がテーブルに近づいたり、頭が前に乗り出すので、あ、これは好きな食べ物なのだなと見当がついた。病院から戻ってきた今、車椅子にもたれたキウチさんの上半身は、はっきりとは動かない。流動食も一人では食べられないので、食事のあいだ、スタッフのハヤシさんがマンツーマンでキウチさんの横についている。キウチさん、ずいぶん弱っちゃったなあ。
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