LiSA 28巻6号 (2021年6月)

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「抗血栓薬飲んでるから,刺しものは止めようね」「肺が悪いからor心臓が悪いから,全身麻酔は回避しよう」……手術患者の高齢化が進む中,毎日のカンファレンスでおなじみの会話かもしれない。一つ一つの問題点への対処方法は,各施設で定型的なものができあがっていることも多いであろう。では,これらの問題点を併せもつ患者に麻酔をかけるならどうするか? これが今回のテーマである。

 患者が高齢化すると,麻酔管理上の問題点も増加する。複数の重大な問題点をもつ患者にどう麻酔をかけようかと文献を当たっても,なかなか答えは見つからない。問題点は多数あり,その組合せはそれこそ無数で,目の前の症例に合致する文献が見つかる確率は低い。日本の高齢化率は世界の中でもトップであり,このような局面に直面することはまれではない。

 本症例とまったく同じ症例を経験することはないかもしれない。しかし,一つの症例について,自分の意見と他人の意見を正面切って比較できる機会というのは意外と少ない。読者の施設ではどのような麻酔管理を行うか。ぜひとも一緒に考えていただきたい。

予告編
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次号の症例カンファレンスの提示症例を,一足先に紹介する。自施設にこのような症例が来たら,どのような麻酔計画を立てるか,事前に考えておいてほしい。次回,各施設のPLANをお楽しみに!

徹底分析シリーズ レミマゾラム

巻頭言 坪川 恒久
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レミマゾラムが使えるようになって半年が経過した。臨床麻酔での使用は日本が世界で最初である。これまでの多くの薬物は,欧米で10年くらい先行して使用され,そのうえで日本へ導入されてきた。また,論文では見かけるがいまだに日本に導入されていない薬物も数多い。日本での先行使用は,麻酔科で使う鎮静薬・鎮痛薬の領域では初めてのことではないだろうか?

 誇らしい気分であるが,同時に責任も生じている。この薬物に関して得た知見をいち早く世界に知らせるのは日本の麻酔科医の責務となっている。とはいえ,世界初ということは情報がほとんどないことをも意味していて,手探り状態が続いている。10年以上前にこの薬物の治験に参加したときの印象はすでに薄れているが,使い道が限定されるように感じた。しかし,今,実際に使い始めてみると,「こういうことにも使えそうだ」と,さまざまな可能性を感じている。

 今回の徹底分析シリーズでは,日本の麻酔科医がレミマゾラムを臨床麻酔で使用していくための現時点での最大限の情報を提供している。読んでいただくと,「これからすべきこと」がどんなにたくさん残されているかということに気づかれることと思う。

 せっかくのアドバンテージですから,十分に活かして世界に情報を発信していきましょう。なにをやっても「世界初」の研究になりますよ!

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2020年8月,【全身麻酔の導入及び維持】を効能・効果としたレミマゾラムべシル酸塩〔アネレム®静注用50mg*1(以下,レミマゾラム)〕の日本における販売を無事開始することができました*2

 本稿では,今日まで静脈麻酔時に用いられてきた薬物が抱える課題について簡単にまとめ,レミマゾラムの薬剤開発の経緯や,日本以外の国における承認状況について紹介します。

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世界に先立ち日本においてレミマゾラムベシル酸塩(以下,レミマゾラム)が臨床使用されるようになった。その期待の大きさ故か「超短時間作用型ベンゾジアゼピン」という言葉が周知される一方で,その薬理作用について詳細に議論されることはまだあまりない。ベンゾジアゼピン系薬物は全身麻酔のみならず,集中治療,ペインクリニック,精神科,脳神経内科など広い分野で頻用される薬物であり,多くの種類と特性がある。鎮静のエキスパートである麻酔科医には,その使用法や作用機序について深い知識が求められる。

 本稿では,周術期に使用されるベンゾジアゼピン系薬物が,催眠・鎮静作用を生じる薬理学的機序,およびベンゾジアゼピン系薬物により影響を受ける循環・呼吸の生理作用について,知識を再整理する。

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レミマゾラムベシル酸塩remimazolam besilate〔以下,レミマゾラム(メモ1)〕は,すみやかに代謝されるように開発されたベンゾジアゼピン系薬物で,全身麻酔の維持に使用できます1)。これまでの噂や論文に“ultra-short acting”と記載があることから“レミマゾラムは超短時間作用性”というイメージがあるかもしれません。しかし実際の濃度減少速度は,プロポフォールと同程度で“short acting”です。したがって,過量投与は覚醒遅延のもとになります。

 本稿では,2021年1月までに論文になっている情報+αをもとに薬物動態の特徴について紹介し,レミマゾラムによる全静脈麻酔(TIVA)における濃度調節を中心に薬物動態について考えていきます。

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レミマゾラムベシル酸塩(以下,レミマゾラム)はベンゾジアゼピン系薬物の一つであり,さまざまな効果は共通していると考えられている。ベンゾジアゼピン受容体に結合しGABA体の作用を強めることで細胞内のクロールイオン(Cl-)濃度を高め,神経細胞を過分極させて作用を発現させている。ベンゾジアゼピン系薬物は古くから使われており,1950年代にレオ・スターンバックがクロロジアゼポキシドを発見し,1960年に抗不安薬としてロシュ社から発売されている。ロシュ社はその後もこの系統の薬物を次々と発売し,世界的大企業となった。ベンゾジアゼピン系薬物は短期間の投与であれば有効な鎮静・抗不安作用を示すが,長期間の投与では耐性,依存性,離脱症状,せん妄を呈することが知られ,一時は社会問題となった。ベンゾジアゼピン系薬物は代謝が遅く蓄積性があり,これまで高用量で用いられることはなかったが,超短時間作用性であるレミマゾラムの登場で,従来とは異なった投与・使用方法が可能となった。

 本稿では,レミマゾラムが脳波に与える影響について解説し,今後解決されるべき課題を提案する。

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レミマゾラムベシル酸塩(アネレム®静注用50mg,以下,レミマゾラム)は,世界に先駆けて日本で全身麻酔薬として使用可能になった,超短時間作用性ベンゾジアゼピン系薬物である。導入・覚醒がすみやかで,循環・呼吸抑制も少ないという特徴は,全身麻酔薬の作用遷延や呼吸抑制・血圧低下などの合併症が懸念される高齢者の麻酔に理想的な特性を備えている。しかし新しい薬物であるが故,実臨床でのデータはまだ明らかではない。

 本稿では,これまでに得られた限られたデータから,高齢者におけるレミマゾラムの作用と使用方法について解説する。

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レミマゾラムベシル酸塩(以下,レミマゾラム)はプロポフォールと比較して血圧低下作用が軽度であることが報告されている。心臓血管麻酔症例は,心血管系に器質的合併症を有するため麻酔導入時における血圧低下が顕著となる場合があり,慎重な麻酔導入が求められる。血圧低下作用が軽度であるというレミマゾラムの特性は,心臓血管麻酔時の安全性に寄与できる可能性がある。

 本稿では,心臓血管麻酔におけるレミマゾラムの可能性について論考する。

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はじめに

物理化学にもとづく麻酔薬の研究は古く,今から120年も前に「油に溶けやすい麻酔薬ほど作用が強い」というMeyer-Overtonの法則が存在した。細胞膜が油に似た環境であることによるものであった。その後,膜の構造・性質の詳細が明らかになり,細胞膜を単純に油とすることは,麻酔作用を語るのに十分でないことがわかってきた。作用部位についても,単純に油(膜の内部)に溶けるというよりは,細胞膜の水に馴染む表面と油のような膜内部の接点に作用して脂質・タンパク質に影響を及ぼすと考えるほうがふさわしいことも明らかとなった。麻酔薬が細胞膜に留まる時間は非常に短く,膜に結合したかと思えば,次の瞬間は膜から離れるなど,興味深いこともわかってきた。そのあたりを先生と二人の学生の会話から見てみよう。

こどものことをもっと知ろう 第26回

こどもの溺水 鉄原 健一
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麻酔科医:気候がよくなると,こどもの水の事故のニュースが多くなりますね。

小児救急医:溺水は突然起こり,家族に深い悲しみをもたらします。レジャーだけでなく,家庭のお風呂などでも溺水は起こります。季節は問いません。

麻酔科医:そうなんですね。私たちにできることは,あるでしょうか。

小児救急医:こどもの溺水事故の多くは,予防できます。一緒に溺水について考えていきましょう。

連載 研修医・初心者のための〜Dr.DのおもしろTEE講座 第9回

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ベントについて語れますか?

みなさん,こんにちは。TEEしてますか。今回は,ベントのお話です。人工心肺を使用する心臓手術の多くでベントカニューレを使用します。カニュレーションの手順は,術者によって異なりますが,多くの場合,送血管と脱血管を挿入して人工心肺が確立された後に,心臓外科医と体外循環技士が「ベント入れるね。ボリューム戻して」とか「ベント入れて。左室張ってるから」などと話しながら進んでいきます。

 ところで“ベント”とは何でしょうか? 「心臓外科医と体外循環技士のやりとりだから,麻酔科医は関係ないか…」で終わらせてはいけません。ベントは,心臓手術においてとても大切な役割をしていて,ないがしろにすると患者の安全を確保できませんし,甘くみると人工心肺離脱時の麻酔科医の循環管理に跳ね返ってきます。

連載

THE Editorials
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The New England Journal of Medicine

Article:

Desmond A, Offit PA. On the shoulders of giants — from Jenner's Cowpox to mRNA Covid vaccines. N Engl J Med 2021;384:1081-3.

■ワクチンによる感染予防

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対してのワクチン開発と接種を巡り,多くの情報が飛び交い,議論されている。昭和23年に施行された予防接種法によれば,予防接種とは「疾病に対して免疫の効果を得させるため,疾病の予防に有効であることが確認されているワクチンを,人体に注射し,又は接種することをいう」。ジフテリア,百日咳,急性灰白髄炎(ポリオ),麻疹,風疹,日本脳炎,破傷風,結核,Hib感染症,ヒトパピローマウイルス感染症などのA類疾病に対しては,定期接種が行われる。インフルエンザやCOVID-19などB類疾病に対しては,臨時の予防接種が行われる。

 COVID-19に対するワクチン接種は医療関係者に先行して実施され,その後に高齢者に実施される予定となっている。ワクチン接種を強く希望する者もあれば,その予防効果を信じなかったり,副反応を恐れてワクチン接種を希望しない者もいる。国際医療福祉大学の和田耕治教授が2021年3月に首都圏の1都3県の20代から60代の人を対象に行ったウェブアンケートでは,回答した3200人のうち安全性に疑問をもつ者が45%近くもいたことが明らかになっている。2021年3月21日までに約58万回の接種が行われ,最も重篤なアナフィラキシーの発生率は約1万2千回に1回とされている。それほど高い頻度ではないし,死に至るような重篤な例も起きておらず,十分に許容範囲であると考えられる。

連載 判例ピックアップ 第31回

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●Summary

全身麻酔下での手術終了抜管後に,換気困難に陥り,再挿管を試みたが,遷延性意識障害を経て最終的に死亡した。遺族は,麻酔薬が体内に過量に残存した状態で抜管した麻酔科医に過失があるとして損害賠償を請求した。

diary

北海道函館市 小林 康夫
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当院は1987年に脳神経外科を主科として創設されました(現在は整形外科,内科/循環器内科,小児科,皮膚科,歯科もあります)。「新都市」と銘打ったわりには当時は周囲に何もない原野だったようです。今では郊外型の店舗が立ち並び,ようやく名前負けしなくなりました。脳神経外科では開頭術はもちろんのこと血管内手術に力を入れており,道内でもトップクラスの件数を誇ります。整形外科は鏡視下肩関節手術が盛んで毎週2〜3件あります。麻酔科は私を含めて常勤2名(もう1名は現役最高齢!?の87歳)で年間360例ほどを担当しています。そのうち全身麻酔が95%超で,そのほとんどがTIVAです。脳外科術後は全例HCUに収容し,緊急開頭術後などは抜管せず搬入することも珍しくありません。術後人工呼吸管理はほぼ全例私が担当しており,長期管理が必要な場合は気管切開も当科で行うことがあります。

時短・簡単・驚嘆レシピ 夕ご飯 何にする?

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コロナ禍で生活様式がずいぶん変化してしまい,お弁当を持って遠出することも難しくなってしまいました。こんな時,いつもと違う容器に料理を盛り付けて,ベランダやお庭でミニピクニックはいかがでしょう。日も長くなってきましたので,お休みの日に家族や友人と夕日を眺めながら食事を楽しむのもいいかもしれません。

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基本情報

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LiSA
28巻6号 (2021年6月)
電子版ISSN:1883-5511 印刷版ISSN:1340-8836 メディカル・サイエンス・インターナショナル

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