快人快説
—麻酔メカニズム研究シリーズ⑩—臨床で役立つ麻酔作用機序:物理化学の目で見た麻酔薬のふるまい
岡村 恵美子
1
Emiko OKAMURA
1
1姫路獨協大学薬学部医療薬学科 生物物理化学研究室
pp.633-641
発行日 2021年6月1日
Published Date 2021/6/1
DOI https://doi.org/10.11477/mf.3101202009
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はじめに
物理化学にもとづく麻酔薬の研究は古く,今から120年も前に「油に溶けやすい麻酔薬ほど作用が強い」というMeyer-Overtonの法則が存在した。細胞膜が油に似た環境であることによるものであった。その後,膜の構造・性質の詳細が明らかになり,細胞膜を単純に油とすることは,麻酔作用を語るのに十分でないことがわかってきた。作用部位についても,単純に油(膜の内部)に溶けるというよりは,細胞膜の水に馴染む表面と油のような膜内部の接点に作用して脂質・タンパク質に影響を及ぼすと考えるほうがふさわしいことも明らかとなった。麻酔薬が細胞膜に留まる時間は非常に短く,膜に結合したかと思えば,次の瞬間は膜から離れるなど,興味深いこともわかってきた。そのあたりを先生と二人の学生の会話から見てみよう。
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