JIM 3巻9号 (1993年9月)

特集 外来でみる関節痛

Editorial

外来でみる関節痛 松井 征男
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 日常の一般外来診療では,関節痛は内科医であれ,外科医であれ,しぼしば遭遇するものである.本特集号では,実地診療上,病態の理解と患者ケアの向上に直接的にかかわってくる総論的な事柄を重視した.そして,個々の疾患は頻度の高いものについて実際のマネージメントを中心に扱うことにしてみた.

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 ■関節痛は炎症性,非炎症性,神経性の3種類に大別できる.

 ■炎症では局所の痛みのほか,発赤,腫脹,発熱が認められる.

 ■関節の生理的な構造の破壊によって侵害刺激が増強し,関節痛が生じる.

 ■痛みは感覚であり主観的要素も強く,末梢,中枢,自律神経の相互作用によってその強度や性質も調節されている.

臨床に役立つ関節の解剖 西岡 淳一
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 ■関節の痛みはその構造自体による痛みと,個々の組織の機能異常に基づくものとがある.

 ■構造に起因するものは形態と構築の2面から成り,構造上の特異性がある.

 ■エンテーシス(J1)の部の痛みが特徴的で各年齢層に病変の特殊性がある.

 ■機能に起因するものは神経機能に左右される.

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 ■手関節のリウマチ様の変化は全身性エリテマトーデス(SLE),混合性結合組織病(MCTD)でも起こり得る.成人T細胞白血病(ATL)でリウマチ様の関節変化を起こすことがある.

 ■関節炎および膝・肩関節の診察法について述べる.

関節痛の鑑別診断 奥 和美
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 ■関節痛は関節および関節周囲組織の痛みで,その部位に病変が存在する場合や全身性疾患の一病変として認められる場合がある.

 ■関節痛を訴える患者が来院した場合,1)性別・年齢,2)経過,3)炎症の有無,4)罹患関節の数,5)罹患関節部位,6)関節の変形などを調べることが鑑別診断上重要である.

 ■関節痛の原因は多岐にわたるため,その診断に際しては詳細な問診と臨床検査(血液,関節液検査,X線検査,組織検査)を総合して行うことが大切である.

Key Articles 箕輪 良行
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 本誌の特徴は,日常診療でみられるありふれた症状をテーマとして取り上げて,実際に役立つような診察法や治療法を提供することである.それらの根拠となる基礎医学や臨床疫学的事項にも触れている.

 本号は関節痛を特集した.外来でよくみられる四肢の関節痛としては,膝,肩,手指,手関節,頸など部位も多く,整形外科的な疾患からリウマチ性疾患まで幅広くカバーしなくてはならない.

関節痛のマネージメント

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 ■単純性股関節炎はcommonな疾患で,一過性股関節炎(transient synovitis of the hip),またはobservation hipとも呼ばれている.3~6歳を中心に12歳以下の男児に多く(およそ5:1),大部分が片側性である.

 ■原因として感染説,外傷説,アレルギー説などがあるが,いまだ不明確である.一般にかぜが先行することが多く,ほとんどが2週間程度の安静のみで一過性に治癒するという特徴がある.

 ■鑑別診断上最も重要なものはペルテス病であるが,両者の初期症状は極めて似ているため,慎重に経過を観察することが重要.

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 ■スポーツ障害による膝関節痛の中で,半月板損傷は頻度の高い疾患である.

 ■膝半月板損傷は,適切な診断と処置をしたうえで,整形外科の専門医に紹介して精査・治療を行うべきである.

慢性関節リウマチ 内田 詔爾
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 ■まず患者の評価を行い病態を把握し,その次に目標を設定する.

 ■その目標を達成するために,日常生活,リハビリテーションや薬物および手術を,患者の病状に応じて適切に使い分けをする.

 ■その患者に反応の高い薬剤をみつけ,低量で長期に服用させる.

 ■治療効果は一生を通してどういう意義があるかを定期的に評価を行い,きめ細かい治療を進めることが肝要である.

痛風 斎藤 輝信
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 ■痛風は急性関節炎発作であり,その背景に高尿酸血症が存在する.

 ■高尿酸血症のすべてが痛風に進展するわけではないが,その頻度は高く約10%とされている.

 ■痛風の診断では,その特徴的局所所見が極めて重視される.

五十肩 田畑 四郎
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 ■これまで五十肩は肩関節周囲炎とも呼ばれ,中高年に発症する特発性の肩の痛みと運動制限を主徴とし,数カ月から年余で自然治癒する症候群とされてきている.

 ■ここで述べる五十肩は病態のはっきりした石灰沈着性腱板炎や,腱板断裂を除外して狭義の内容のものにしている.

 ■成因としては,腱板や上腕二頭筋長頭腱の変性が基盤になり,これに小外傷やインピンジメントが加わって生じるとされている.結果として腱板炎・肩峰下滑液包炎・長頭腱腱鞘炎が生じ,これらの終末像として関節包の縮小を伴った凍結肩となる.しかし,自然治癒が多数を占める本疾患の原因は不明である.

 ■症状の発現は誘因なしに,または小外傷を契機にある日突然に,徐々に気付かないうちに来るなど様々である.

変形性膝関節症 赤司 浩二郎
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 ■変形性膝関節症は中高年より発症する退行性疾患で,正座時,起立時,歩行時,階段昇降時といった日常生活動作の障害を来す.

 ■診断上,立位正面X線像による骨の変形が最も参考となる.

 ■治療は肥満防止と適度な運動が全経過を通じて最も大切である.

 ■長期にわたる中高年者の疾患であるため継続した治療と患者教育が必要であり,治療にあたっては画一的にならず変化をもたせ,副作用や合併症の発現を防止しなければならない.

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 「関節痛の治療」をめぐって,2症例を討論します.第1例目ではリウマチの患者の症例について,主に非ステロイド系抗炎症薬の使用法についてディスカッションし,第2例目では五十肩の症例をめぐって,局所のケアを中心に討論を進めます.また,生活指導などについても検討します.

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 Generalistとspecialistの問題について,その担い手の基盤となる地域医師会の立場から考えてみたい.

 地域医師会は医療の第一線をリードし,より良い医療システム作りを進めながら,常に「今,医療が求められているものは何か?」を追求している.

研修病院ガイド

みさと健和病院 水井 薫
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研修内容

 当院では研修医オリエンテーションの一環として,院内各課で半日ないし1日の実地研修を行います.夜勤の看護婦について体位交換を手伝ったり,栄養課でキュウリを刻んだり,リネン室でタオルをたたんだり…….お互いの顔を知るのによい機会であると同時に,病院が機能するためにはコメディカルとのチームワークが不可欠,という当たり前の原則を医師として働き始める前に現場で実感できたことが,大きな収穫でした.

 内科病棟での研修に入って約半年後,外来研修が始まります.急性疾患のみかたや救急対応は,当直でも修得できますが,慢性疾患の患者とつきあうためには,週1回でも診療所や病院の外来に出ることが必要です.指導医のカルテチェックを受けつつ,生活の中で患者をみる視点を学んでいきます.1年たつと,おなじみの人が何人かでき,自分の中にも主治医としての自覚や責任感が芽生えてきたように思いました.

総合外来

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 ■1992年1月より,C型慢性肝炎に対して組織学的に,活動性肝炎と確診されることを条件に,インターフェロン(IFN)の投与が保険適用となった.著効率は20~40%という.

 ■本療法には,多彩な副作用が高頻度にみられるが,これら医学的(身体的)副作用の他にも,肝生検が義務,高額である,自己注射が認められないなど,外来において本療法を実施・継続するには,インフォード・コンセントを含めて"副作用"(課題)が少なくない.

深夜総合診療の技と心 矢吹 清人
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 ■1974年わずか28床の外科系ミニ病院を始めて以来患者さんに「いつも何でもみる」ことを約束して実行してきた.最近は週4日の当直をパート医にお願いし,残る3日を院長の筆者が当直している.当然のことながら深夜に患者さんをみることが多く,週2~3回としても18年間で少なくとも2,000回以上は夜中に起きていることになる.

 ■夜中に起きるのはつらいこともあるが,これも町の医者の仕事のうち.慣れてしまえばさほどのことでもない.それどころか,これらの深夜の患者さんたちにはgive and takeで,昼の平常診療とは一味も二味も違ういろいろなことを教えられたように思う.

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 ■細菌性髄膜炎・肺炎・尿路感染症をできる限り見逃さないため,発熱を主訴とする場合は,必ず初めに鑑別する.

 ■貧血・紫斑・発疹の有無を必ず確認する.末梢血液検査時には血液像も提出.忘れてならないのは川崎病,白血病などの小児がん.

 ■肺炎でも咳は軽度で聴診上ラ音が聴こえず,呼吸音の減弱のみのことがある.

 ■治りにくい"かぜ"の時は胸部X線写真を撮ってみる.

ミニテクニック

便利な往診カバン 越智 晶俊
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 昔の医師は,シルクハットに皮の黒カバンが往診のスタイルであった.しかし,この黒カバンは重い,注射器や注射薬など整理しにくい,収納量は少ない,とあまりよいところはない.筆者は,日曜大工店で合成樹脂製の工具入れ用のボックスを入手し重宝している.緊急の薬剤や,使用頻度の多い薬剤を多数整理整頓でき,ボックスそのものも軽く堅牢である.使用時には大きく広げることができるので使いやすい.しかし,このボックスを持ってホームドクターと名乗っても,住居の修理屋さんと間違われるので,要注意.

60円の白紙ノート 和田 力
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 医師の言ったことが患者さんに,特に老人にわかっていただけるという保障はありません.医師の言い分をノートに記しておけば自宅で読み返してくれるでしょうし,若い人が読んでくれるかも知れません.また,血圧,体重などを記入しておけば,本人の安心と励みにもなると思います.

 それぞれにすばらしい健康手帳がありますが,筆者は白紙のほうが,必要なことを順番に記してあるので,読むほうも書くほうも簡単でよいと思います.

当直医読本

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 一過性意識障害を主訴として救急部門を受診する患者は極めて多く,全体の3~5%を占める.原因として失神,癲癇,頭部外傷後の一過性健忘,ヒステリー,低血糖発作などを鑑別する必要がある.鑑別には病歴・身体所見が最も重要で,患者のほかに発作の目撃者からも直接に病歴聴取をすることが大切である.失神患者では,心疾患などの器質的疾患を見逃さないこと,および器質的疾患がなくとも再発性失神患者では原因を明らかにすることが必要である.

和漢診療ケーススタディ リフレッシャー・コース・9

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症例1 メニエール症候群と水毒

 患者 38歳,保母,主婦. 主訴 立ちくらみ.

 既往歴・家族歴 特記すべきことなし.

フライ先生の日常病レッスン・5

急性尿路感染症 楢戸 健次郎
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どんな疾患か

 尿路感染症はありふれた疾患の1つである.にもかかわらず,その原因,重要性,適切な処置についてはわからないことがまだまだ多い.この感染症は大体大腸菌によってかかると考えられる.ただ,典型的な症状を呈していても半分は病原菌が検出できない.今まで尿路感染症と言われているものの中には次のような疾患,症候群が入る(図1).腎孟腎炎:膀胱,尿管とともに腎臓にも感染が及んだ時.腎孟炎:膀胱と尿管の感染.膀胱炎:膀胱だけに感染が限局した時.尿道症候群:症状はあるが尿に病原菌が検出できないもの.(訳者注:腎孟腎炎と腎孟炎を分類することは臨床的には不可能と思われる.また尿道症候群は尿道炎でよい.)

 プライマリケアの現場では腎孟腎炎と腎孟炎の患者は少ない.大部分の尿路感染症患者はその誘因となる基礎疾患を持たないが,あればその後の対応も変わるので早めにそれを除外しておくこと.子供では先天的な構造上の欠陥,膀胱尿管逆流.男性,特に老人では,膀胱頸部の閉塞が原因として多く,女性では婦人科,産科領域の原因も考慮する必要がある.また,神経疾患も尿路感染症を引き起こすことがある.

診察術の歴史・11 The Evolution of Physical Diagnosis

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胸部打診法の最初の本を著す

 アウエンブルガー(1722~1809)は1761年にラテン語の小冊子"Inventum Novum (胸部の打診)"を出版した.この95ページの本は胸部の系統的な打診法について書かれた最初のものであった.彼はその本の中で次のように述べた1)

 「わたしはここに胸部疾患を発見するための新しい診断法を紹介する.それは胸部の打診法である.打診により生ずる音の性状により,われわれは胸腔内の様々な状態を知ることができる.」

JIM Report

安楽死と自殺幇助 宮地 尚子
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[終わったよ,デビー]

 アメリカ医学会雑誌(JAMA)に"It's Over, Debbie"という記事が載ったのは1988年1月のことである1).これは,匿名の医師によって書かれた1頁の短い手記であるが,全米の医師たちの間で大きな反響を呼んだ.この記事は,患者に安楽死を施したという医師の告白であった.簡単に記事を振り返ってみよう.

 婦人科のレジデントとして深夜当直をしていた医師は,病棟から呼び出され,デビーという20歳の患者をみる.彼女は卵巣癌で化学療法も奏効せず,既に姑息的治療法のみを受けていた.やせ細った状態で呼吸困難にあえいで苦しむデビーは,病室を訪れた医師に「もう終わりにしましょう」と一言呟いた.

デンマークの家庭医 中山 博文
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 デンマークと言えば,最近行われたマアストリヒト条約に対する国民投票,アンデルセン,キルケゴールなどを思い浮かべる方が多いでしょうが,忘れてはならないのがその充実した社会福祉と地域医療です.筆者は,1991年12月より厚生省海外留学生としてコペンハーゲンのRigshospitaletおよびBispebjerg病院神経内科にて脳卒中患者のケアについて研修していますが,当地では家庭医を基本とした地域医療システムが有効に機能しており,最近提唱された「かかりつけ医制度」をはじめ,日本の今後の地域医療のあり方を考えるうえで大いに参考になると考え,筆をとりました.

基本情報

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JIM
3巻9号 (1993年9月)
電子版ISSN:1882-1197 印刷版ISSN:0917-138X 医学書院

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