耳鼻咽喉科・頭頸部外科 92巻5号 (2020年4月)

増刊号 フローチャートと検査一覧で ひと目でわかる耳鼻咽喉科診療

序文 小川 郁
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 フローチャートは流れ図とも呼ばれ,診断や治療の進め方を表す手法としても従来から汎用されてきた.今回は,耳鼻咽喉科・頭頸部外科領域における各症候とその症候に関連する検査一覧から,いかに適切に診断を進めるべきか,またいかにその治療(対処)を行っていくかについてまとめたフローチャート集を企画した.

 耳鼻咽喉科・頭頸部外科の診療上の問題解決において,フローチャートを作成する最も重要な意義は,診断および対処法に至る過程を視覚的に明確に表せることである.各項目の執筆者には「この症状から診断・治療はこう続く」としてフローチャートを示していただき,そのうえで,その症候に対する「問診・診察での留意点」「行うべき検査と疾患の鑑別のポイント」,さらには「各疾患への対処法」を解説するというフォーマットでまとめていただいた.

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ここを押さえておこう

●耳介腫脹の診断は,問診と視診・触診が非常に重要である.

●耳介腫脹から鑑別が必要になる全身疾患が存在する.

●治療介入の遅れが,耳介変形などの後遺症につながる.

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ここを押さえておこう

●耳瘙痒感で最も多いのは外耳道湿疹であり,患者が耳を触らないように指導することが最も重要である.

●外耳道真菌症は耳内の視診で診断するが,外耳道湿疹と鑑別しがたい場合もある.外耳道湿疹で皮膚バリアが破綻したのちに感染をきたしていることが多く,抗真菌薬局所投与で感染を制御したのちに外耳道湿疹の治療を行う.

●アレルギー性鼻炎など鼻腔や咽頭の疾患でも耳瘙痒感を訴えることがあり,耳内に異常所見がない場合はこれらの部位の診察も行う.

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ここを押さえておこう

●耳介の牽引痛の有無を確認する:急性発症の耳痛の原因で多い外耳道炎,中耳炎の鑑別ポイントである.外耳道炎は耳介を牽引すると痛みが増強するが,中耳炎は変化しない.

●外耳道,鼓膜所見をよく観察する:耳漏の有無,外耳道腫脹の有無,水疱の有無,鼓膜所見,耳後部の腫脹の有無を観察する.

●耳疾患以外でも耳痛を生じる:耳痛は耳疾患以外でも生じることを忘れずに.外耳道,鼓膜に所見がない場合は咽頭,扁桃,顎関節を観察する.

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●耳漏の性状:水様性耳漏の場合は髄液耳漏に注意する.

●鼓膜所見:耳漏が多い場合には洗浄し,正確な鼓膜所見を得る(電子内視鏡などで経時的変化を記録すると有用である).

●難治性の場合の鑑別疾患:悪性腫瘍,結核性中耳炎,ANCA関連血管炎性中耳炎,好酸球性中耳炎,真珠腫性中耳炎などが挙げられる.

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●新生児聴覚スクリーニングは,referとなっても滲出性中耳炎や正常例を含んでいるため,詳細な局所観察や聴性脳幹反応(ABR),聴性定常反応(ASSR)による精査が重要である.

●一方で,pass例でも成長に伴って遅発性に難聴を発症する例があるため,乳幼児健診や学校健診などの結果に留意する.

●先天性難聴の少なくとも60〜70%以上に遺伝子が関与していることが推測されているため,CTによる中耳・内耳奇形の精査後,難聴以外の症状の有無により,遺伝学的検査やウイルス検査などを行う.

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●純音聴力検査を行って難聴の種類,程度を把握するのは必須である.

●問診はきわめて重要である.発症のきっかけになるイベント(音響曝露,外傷など)の有無,薬剤使用の有無は必ず押さえておく.

●外耳道・鼓膜の所見をとり,耳垢栓塞や中耳炎がないかを確認しておく.

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●既往歴,薬歴,職歴のすべてを把握してこそ,慢性難聴の診断が可能となる.

●伝音難聴では耳硬化症,感音難聴では聴神経腫瘍の可能性を常に念頭において診察する必要がある.

●若年発症型両側性感音難聴は指定難病となった.

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●機能性難聴は,自覚症状を持つ場合,持たない場合の両方が存在する.その難聴は両側,片側,伝音性,感音性難聴のどんなパターンもありうる.そのため,小児ではもちろん,成人でも難聴を訴えるすべての症例において鑑別として考えるべき疾患である1)

●機能性難聴の鑑別診断には,歪成分耳音響放射(DP-OAE)検査が有用である.確定診断には聴性脳幹反応(ABR)検査,聴性定常反応(ASSR)検査を行う.

●機能性難聴の背景に,自覚症状に乏しい発達の遅れや凹凸を持つ児童・生徒が多い.聞き違い,聞き取りにくさを持つ児童も存在する.このなかに,聴覚情報処理障害や,読み書き困難をはじめとする学習障害を持った児童が含まれることがある2,3)

●児童・生徒の「しんどさ」が機能性難聴に現れているとも考えられ,そのサインを丁寧に汲み取って,必要な支援に繋げたい.

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●耳鳴・聴覚過敏の診断には問診が重要である.

●耳鼻咽喉科疾患以外の基礎疾患および精神疾患の除外が必要.

●慢性耳鳴・聴覚過敏に対しては,Tinnitus Retraining Therapyを検討する.

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●耳閉感は小児が訴えることは少ない症状である.

●外耳・中耳疾患が多いが,内耳疾患や後迷路性疾患でも出現するため,これらの病態を念頭に置いた対応が必要となる.

●耳管狭窄性や滲出性中耳炎の原因疾患として上咽頭腫瘍が見つかることも多いため,耳管咽頭口の精査は必要である.

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●自声強聴とは,自身の発する音声が耳に響いて聴こえる症状をいう.あるいは「割れて聴こえる」「こもって聴こえる」という表現もあり,同時に耳閉感を伴うことが少なくない.

●咽頭腔の音声が開放した耳管を介して直接的に中耳腔に到達することにより自声強聴は生じる.この発症機序からは耳管開放症を容易に想起できるし,実際に耳管開放症では自声強聴は患者を悩ます主症状となる.そのため,自声強聴を主訴とする患者を診察した場合に最初に考える疾患は,耳管開放症であろう.

●しかし,自声強聴は自声の伝わる2つの経路,気導および骨導のうち,急に骨導の伝導割合が大きくなった状態でも生じる1).例えば,急に外耳道が閉塞された状態である.さらに,感音難聴に伴う補充現象により自声強聴・聴覚過敏の訴えが出現する.

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●めまいという症状を訴えるものの既存の診断基準に合致せず,各種平衡機能検査,画像検査,心理検査などで精査しても原因がはっきりしない場合,めまい症と診断される.近年,めまい症の一部あるいは多くが,慢性めまいを主訴とする機能性疾患である持続性知覚性姿勢誘発めまい(PPPD)である可能性が示されるようになった.SSRIの内服や前庭リハビリテーション,認知行動療法の有用性が報告されている.

●60歳以上で,少なくとも3か月以上持続するバランスの悪い姿勢または不安定性,歩行障害,慢性めまい,転倒の頻発などの慢性前庭症候のうち2つ以上を有し,軽度の両側性末梢性前庭機能障害を有しているものが,加齢性めまい(加齢性平衡障害)と診断される.前庭リハビリテーションが有用である.

●中枢性の原因で最も重要かつ見逃してはならないのは脳卒中(脳梗塞・脳出血)である.めまいという症状が前景に出る脳卒中は,脳幹または小脳の脳卒中である.これらが疑われたら早急にMRI拡散強調画像を撮影する.脳神経内科医あるいは脳外科医に診察を依頼する.

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●回転性めまい発作をきたす3大疾患(良性発作性頭位めまい症,メニエール病,前庭神経炎)の特徴を理解する.

●問診で,発作誘因(外傷含む)の有無,聴覚症状の有無,発作持続時間,反復の有無を確認する.

●脳血管障害のリスクファクター(高齢,心疾患,高血圧,糖尿病など)や頭痛,顔面の知覚低下などの随伴症状に留意する.

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●起立性めまい,立ちくらみの原因疾患には,重篤性のある循環器疾患(不整脈,弁膜疾患など)や脳神経疾患(てんかん,椎骨脳底動脈循環不全,多系統萎縮症など)のほか,純粋自律神経不全に加え,耳鼻咽喉科医がよく遭遇する起立不耐症症候群〔起立性低血圧(OH)や体位性頻脈症候群(POTS)〕や内耳疾患などがある.

●起立性めまい症例に欠かせない検査に起立試験があり,OHやPOTSの評価に用いられる.収縮期圧が20mmHg以上,拡張期圧が10mmHg以上の低下幅を示すとOHと診断され,心拍数が30拍/分以上の持続的増加があればPOTSと判定される.

●OHによるめまいに対する治療には,生活指導(誘因の回避)や理学的療法などの非薬物療法と,薬物療法がある.まず非薬物療法を行い,効果が乏しい場合には薬物治療を追加する.血管収縮作用を有するミドドリン塩酸塩が第一選択薬として用いられる.

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●原因疾患は多岐に及んでおり,鑑別診断のためには詳細な問診,診察が肝要である.

●Bell麻痺,Hunt症候群が原因の多くを占めるが,生命予後にかかわる中枢性や悪性腫瘍によるものを常に念頭におきながら鑑別する.

●急性期,特に神経変性が完成する7〜10日目頃に重症度・予後診断を行い,それにより治療方針を決定する.

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●特発性(一次性)片側性顔面痙攣の原因は,顔面神経根出口領域(root exit zone)での血管による圧迫説が有力であり(神経血管圧迫症候群),後下小脳動脈や脳底動脈などが責任血管となる.

●二次性顔面痙攣である顔面神経麻痺後遺症,腫瘍,血管奇形,眼瞼痙攣,眼瞼ミオキミアなどとの鑑別が重要であり,詳細な問診と診察でおおよその鑑別は可能であるが,確定診断にはMRI検査が必須である.

●治療については,内服薬による薬物療法の有効性は乏しいため,神経血管減圧術(いわゆるJannetta手術)が行われてきたが,近年,ボツリヌストキシン治療が急速に普及した.

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●両側性の鼻閉は非特異的な症状である.

●原因疾患が単一でない場合も少なくない.

●診断には問診と鼻内の観察がメインとなる.

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●さまざまな原因により鼻汁の粘液量が増加した場合に生じる症状を鼻漏という.

●後鼻漏を主訴とする2大疾患は,慢性鼻副鼻腔炎とアレルギー性鼻炎である.

●症状・所見・検査から適切に診断し,その重症度に準じた治療を行う.

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●片側性鼻閉には鼻腔形態異常が隠れている.

●片側性鼻閉患者の鼻副鼻腔には必ず何かが起きている,と考える.

●多くは問診,視診,触診のみで診断可能で,CT,MRIなどの画像検査は鑑別疾患の除外目的に行うことが多い.

●比較的容易に診断可能であるが,診察方法を誤ると的確な治療法へつなげられずpitfallとなる.

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●鼻漏・後鼻漏は鼻腔という局所的な部位の症状ではあるが,日常の診療で遭遇するものの多くは両側性であり,アレルギー性鼻炎,感冒など全身的要因の一症状である.一方,片側性の鼻漏・後鼻漏は,何らかの局所的要因が潜んでいることを示唆している.

●したがって,診断においても,血液検査などの全身的要因に対する検査よりも局所的要因の検査が中心となる.また,重篤な疾患が含まれるので,通常の両側性鼻漏・後鼻漏の場合よりも一歩踏み込んで診察や検査を組んでいくことが必要である.

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●副鼻腔炎罹患歴の有無

●航空機の搭乗の有無

●副鼻腔手術歴の有無

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●嗅覚障害は気導性,嗅神経性,中枢性の3つに分類される.

●問診,鼻内視鏡検査,画像所見によって病態を推定する.

●嗅覚検査によって嗅覚障害の程度や予後を推定する.

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●嗅覚障害は量的障害と質的障害に分類され,異嗅症は質的障害の代表的なものであり,さらに刺激性異嗅症と自発性異嗅症に分けられる1).これらの異嗅症は単独で生じることは少なく,量的障害とともに生じ,刺激性異嗅症は感冒後嗅覚障害,自発性異嗅症は外傷後嗅覚障害に合併することが多い.

●その他の質的障害には嗅盲,嗅覚過敏,悪臭症,自己臭症,幻臭,鉤回発作などがある.

●治療は異嗅症の原因に応じてすることとなり,原因の多くを占める感冒後や外傷性嗅覚障害に対しては有効な治療法がなかったが,近年では嗅覚刺激療法が有効である可能性が報告2)されている.また嗅覚過敏,自己臭症などは心因性の要素があることも多く,心療内科への相談も検討が必要である.悪臭症は副鼻腔炎や扁桃炎によるものであり,原疾患の治療を行う.

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●視力障害,眼球運動障害の発生機序を理解する.

●視神経障害を疑った際には対光反応の確認が有用である.

●視力障害が急速に進行する症例では早期の手術を念頭に置く必要がある.

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●鼻出血は耳鼻咽喉科領域でよく診る救急疾患の1つであり,大半が誘因のない特発性鼻出血である.しかし,そのなかに稀ではあるが見逃してはならない疾患が存在する.

●時として止血が得られた時点で満足し,精査を怠ってしまうことで,その原因となる疾患を見逃す危険性がある.

●止血処置を行いながら,効率よく問診・身体診察を行い,疑わしい鼻出血に対しては精査を進めていくことで,その背景にある疾患を早期に発見することが必要となる.

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●急性の口腔・咽喉頭の痛みを訴える患者に対して,対応の遅れが致命的となりうる緊急疾患(本号の「呼吸困難」の項を参照)の可能性がないか,まず見極める.

●急性の口腔・咽喉頭の痛みは,common coldとしてのありふれた咽喉頭炎から,特殊感染症,自己免疫疾患など頻度が少ないものまで,さまざまな原因で生じることを念頭に置いて診察する.

●診断に迷った際の抗菌薬やステロイド剤の安易な投与は,かえって診断を難しくする場合があるので注意する.

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●難治性の口腔・咽喉頭の痛みを訴えた場合,痛みの部位,性状,経過を聞いたうえで,口腔・咽喉頭を隈なく観察する.

●全身疾患の一病変として現れるものがあるため,皮膚症状,眼症状,消化器症状の有無や既往について詳細に問診する.

●悪性病変の除外につとめ,漫然と経過をみるのではなく,適切に細菌検査や病理検査を行い,治療を進めていく.

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●味覚障害の障害部位を,受容器,末梢神経,中枢神経(疾患性,機能異常),心因性,口腔乾燥などの伝達障害に分けて考える.

●味覚機能検査は煩雑な一面をもつため,自覚症状と一致しない場合,安定しない場合は再施行,または全口腔法などを施行し,総合的に味覚機能を評価する.

●受容器障害は微量元素・ビタミンなどの欠乏の有無をチェックし,不足があれば補充療法を行う.

●訴えは味覚異常でも舌痛症に病態や治療法が類似した自発性異常味覚が存在するため,口腔異常感症に準じた対応が必要となる.

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●超高齢社会にあって口腔乾燥症の患者数は増加傾向で,その原因も多彩である.

●口腔乾燥感をきたす原因として,唾液腺機能障害,代謝性・全身性疾患,神経性,薬剤性,機能性・心因性に大別されるが,原因は1つでなく複数あることも少なくない.

●詳細な病歴聴取,唾液分泌機能検査,血液検査,画像検査,病理組織検査を組み合わせて原因を見極め,適切な治療法を選択していく.

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●構音障害とは,声帯で生成された喉頭原音を,声道の形態を変化させて言語音に変換する動作の異常であり,原因と病態により,器質性構音障害,運動障害性構音障害,機能性構音障害に分類される.

●発音の不明瞭さを主訴に外来受診する患者には,原疾患の診断・治療後である場合とそうでない場合があり,後者では神経筋疾患,粘膜下口蓋裂,機能性構音障害などを見逃さないようにする.

●通常の診察で異常が確認されなくても,患者の訴えがある限り,言語聴覚士による精査や専門科による原因検索につなげる.

●鼻咽腔閉鎖不全による共鳴障害(開鼻声)と子音の歪みも併存することが多く,一緒に評価する.

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●急速または準緊急的に進行する呼吸困難の症例を鑑別する.

●原因は感染症,免疫性疾患,異物など多岐にわたる.

●呼吸困難と同時にみられる疼痛の部位や強さの進行程度を把握しながら狭窄部位:原因を判断する.

●バイタルサインのモニターを行い,気道確保のタイミングを誤らないようにする.

●炎症を主体とする疾患を中心に考えた場合,疼痛を生じる場合が多く,疼痛の発生時期と呼吸困難の発症時期が治療選択の基準となる.

●咽頭の所見と疼痛の程度の比較が重要である.

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●いびきとは,いびき→上気道抵抗症候群→閉塞性睡眠時無呼吸(obstructive sleep apnea:OSA)という,上気道が閉塞していく過程で起こる睡眠呼吸障害の一番軽いタイプであると考える.

●OSAか,いびき症かの鑑別は,夜間睡眠中の終夜睡眠ポリグラフ(PSG)検査で,無呼吸低呼吸指数(apnea hypopnea index:AHI)が5以上か5未満であるかによる.

●いびきに関しての治療は,原因となる危険因子が肥満であるならば,それを体重減量指導でとりのぞき,ほかには側臥位睡眠,口腔内歯科装具を試す.OSAを合併し,AHIが20以上で,いびきをとりのぞきたいという気持ちが強ければ,持続気道陽圧療法(continuous positive airway pressure:CPAP)を行うという考え方もある.手術治療は閉塞部位に応じて鼻手術,口蓋垂軟口蓋咽頭形成術,高周波治療装置などを考える.

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●音声障害の鑑別には喉頭内視鏡検査,ストロボスコピーが最も重要である.

●声帯運動障害の原因検索あるいは病態把握のためには,CT,MRIなどの画像検査に加えて喉頭筋電図検査が有用である.

●機能性発声障害は,音声タスクなどを用いて特徴的な発声動態を観察することが診断のために重要であり,それぞれの病態に応じた音声治療を行う必要がある.

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●異常感の訴えは主観的なものであり,「のどがイガイガする」「何か異物があるような感じがある」「何となくつまった感じがする」というものが多く,症状の特徴として痛みを伴わないこと,食事により症状が改善すること,摂食時の嚥下では自覚されないことなどがある.

●症状は間欠的であったり持続的であったりさまざまで,自然経過によって症状の増悪・改善がみられることもある.

●問診・視診・頸部触診・喉頭ファイバースコープ検査まで行って,訴えに見合うような器質的病変(腫瘍性病変,慢性咽喉頭炎,口腔内乾燥,後鼻漏など)を見出せないときには,咽喉頭異常感症という病名がつけられる.有病率は不明であるが,外来患者の5〜10%を占めるとの報告もある.

●咽喉頭異常感を惹起する疾患が多彩であること,診断法が確立されていないこと,実臨床上は除外診断であることから,器質的疾患を見逃さないように留意すること,器質的疾患が除外された場合には十分に説明して安心させること,が重要である.

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●嚥下の各期(認知期・準備期・口腔期・咽頭期・食道期)が,さまざまな原因で障害されることにより嚥下障害を生じる.

●嚥下障害は原因疾患により障害のされ方が異なる.腫瘍や炎症,狭窄などによる器質的障害と,神経筋疾患や脳卒中などによる機能的障害がある.機能的嚥下障害の評価では,原因となりうる疾患でどのような嚥下障害が生じるかをあらかじめ理解しておく必要がある.

●脳神経障害(特に下位脳神経麻痺)を評価し,神経学的評価と患者の全身所見から嚥下障害の原因疾患を推測することがポイントである.

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●頸部腫脹をみた際に,腫脹か腫瘤かを鑑別する.

●腫脹であれば炎症性病変を主に考える.

●腫瘤であれば先天性・発育異常,炎症,腫瘍,外傷を考える.

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●ここでは正中頸囊胞,側頸囊胞,リンパ管腫(囊胞状リンパ管腫),神経鞘腫,頸動脈小体腫瘍について述べるが,頸部腫瘤については,癌のリンパ節転移や悪性リンパ腫など悪性疾患の鑑別が最も重要である.

●これら頸部腫瘤性疾患については細胞診による診断確定は困難なことが多く,臨床症状,経過,画像検査から診断・診療を進めていく必要がある.

●良性の腫瘤であれば,治療は手術による後遺障害も考慮し,年齢,症状などにより総合的に検討する.

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●急性・亜急性炎症の場合は,発熱,痛み,腫脹など症状が明確な場合が多い.

●慢性甲状腺炎では症状が不定愁訴的な訴え(食欲低下,めまい,うつ傾向など)の場合があるので,常に念頭に置いておく.

●バセドウ病では,動悸,発汗,体重減少など自覚症状が比較的明瞭なことが多い.

●体格によって触診の難易度は異なるが,診断の第一歩であるため丁寧に行う.

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 唾液腺を構成する組織は多彩であり,したがって病変も多様である.発生母地を考慮しつつ,各疾患の診断を行う.

●唾液腺実質では,腫瘍,唾液腺症がある.

●排泄管では,唾石,細菌の上行感染,拡張症,囊胞がある.

●血管(血液,白血球)からでは,ムンプスウイルス感染,サルコイドーシス,木村氏病,悪性リンパ腫,自己免疫性疾患が挙げられる.

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●鼻副鼻腔腫瘍を診断するためのポイントは,まず問診や診察,鼻内内視鏡検査で悪性疾患であるかどうかを推定することである.続いて造影CT,MRI,生検,血液生化学検査などの検査を順次予定していく必要がある.

●それぞれの検査の特徴を理解しておくことは,疾患の術前診断と治療方針決定のために重要である.

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●悪性腫瘍を見逃さない.

●問診で喫煙歴などの悪性腫瘍のリスク因子・背景を聴取する.

●痛みなどの症状,経過から悪性腫瘍の可能性を推測する.

●時として痛みを伴い困難なこともあるが,触診を必ず行う.

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●上咽頭は軟口蓋より上方,かつ後鼻孔の後方に位置し,観察しにくい.そのため,上咽頭の疾患が疑われる場合は鼻咽頭ファイバースコープによる観察を行う.

●上咽頭癌の初発症状は日常診療で耳鼻咽喉科医が遭遇するものである.症状が遷延する場合は上咽頭癌をはじめとする上咽頭の疾患も念頭におく.

●上咽頭癌は他の頭頸部癌と比較して転移しやすく,頸部・遠隔転移などを想定した全身的な検索が必要である.

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●中咽頭腫瘍(p16陽性・陰性中咽頭癌,悪性リンパ腫)の鑑別は,生検による病理診断が重要である.

●p16陽性中咽頭癌とp16陰性中咽頭癌はTNM分類でそれぞれ独立して分類されている.

●p16陽性中咽頭癌は予後良好であるが,現在のところp16陽性・陰性は区別せず治療を行うことが原則である.

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●下咽頭癌と頸部食道癌は飲酒・喫煙が発癌の危険因子であり,特に飲酒により顔面が発赤する「フラッシャー」はハイリスクである.

●数か月前からの頸部腫瘤や咽喉頭異物感があり上記危険因子を有する症例は,下咽頭癌や頸部食道癌の可能性が高い.

●局所進行下咽頭癌に対する標準治療は,下咽頭・喉頭全摘術と化学放射線療法である.下咽頭表在癌では経口的切除術や放射線単独治療が行われる.一方,頸部食道癌は耳鼻咽喉科・頭頸部外科と食道外科でやや治療戦略が異なる.標準治療の確立は今後の課題である.

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●各疾患に対する内視鏡所見の特徴を押さえるとともに,既往歴・生活歴などの把握を怠らない.

●進行癌や保存的治療が優先される肉芽腫や乳児血管腫を除き,治療は一般的にtransoral laser microsurgeryである.

●手術は病変の完全切除と術後の喉頭機能の両方を意識して行う.

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●原発不明癌頸部リンパ節転移は必要な検査を行ったにもかからわず原発巣を見つけられない癌を指す.

●詳細な問診,リンパ節腫脹の部位,病理診断などから原発巣を推定し,内視鏡検査や画像診断などを加え系統立った検査を行い,原発不明癌を減らすことが大切である.

●原発不明癌であった場合は手術(頸部郭清術)に加え,術後治療を行うことが中心となる.一般的には原発不明癌頸部リンパ節転移の予後は良好である.

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●良性,悪性を含め,多くの腫瘍が発生する甲状腺や副甲状腺はかけがえのない内分泌臓器であり,過不足のない治療が求められる.

●最近,2018年に『甲状腺腫瘍診療ガイドライン』(以下,ガイドライン2018)が改訂された1)

●治療においては分子標的薬が登場し,内視鏡下甲状腺手術が保険収載された.

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●増大傾向,圧痛,顔面神経麻痺,頸部リンパ節腫大があれば悪性を念頭に置く.

●穿刺吸引細胞診は陽性的中率が高いが,組織型の診断までは難しい.

●臨床経過,細胞診所見,画像検査を組み合わせて総合的に判断する.

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目次

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あとがき

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
92巻5号 (2020年4月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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