耳鼻咽喉科・頭頸部外科 92巻4号 (2020年4月)

特集 耳鼻咽喉科医が知っておくべきワクチン医療

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POINT

●ワクチン接種は歴史的,社会的にみて大きな効果を示しているが,その副作用も散見され,わが国のワクチン・ギャップの一因となっている。

●2013年以降,ワクチン・ギャップ是正に向けて定期接種ワクチンの追加などが行われたが,わが国のワクチン行政の問題点として任意接種という区分の存在がある。かなり以前に認可された小児に有用なワクチンであっても,依然として任意接種のままのものがある。

●定期接種化を妨げる要因として,①同時接種の制約,②他の予防接種との間隔の制約,③発熱時の予防接種の中止,がある。

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POINT

●ワクチンによる免疫の誘導には自然免疫と獲得免疫が関与する。

●樹状細胞は抗原をT細胞に提示し,獲得免疫を誘導する。

●ワクチンには生ワクチンと不活化ワクチンがあり,両者で免疫応答が異なる。

●不活化ワクチンではアジュバントが必要で,アラムとMF59が認可されている。

《各種ワクチンの最新動向》

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POINT

●わが国では4価不活化ワクチンが用いられている。

●ワクチンにより重症化抑制効果と,ある程度の感染予防効果が期待できる。

●ワクチンには個人への直接的な効果と,集団への間接的な効果がある。

●現行の不活化ワクチンの安全性は高い。

MMRワクチン 吉田 尚弘
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POINT

●麻疹・ムンプス・風疹(MMR)ワクチンは,無菌性髄膜炎発生率の点から現在接種中止となっている。

●麻疹,ムンプス,風疹ともにワクチン接種で予防可能である。

●ワクチン未接種,あるいは1回のみの接種による抗体価減弱が流行の原因となるため,2回のワクチン接種が重要である。

●ムンプス難聴を予防するうえでもMMRワクチンの定期接種が期待される。

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POINT

●水痘ワクチンは,水痘の患児より分離,継代された弱毒株(生ワクチン)であり,わが国では2014年から定期接種(2回)となった。

●定期接種直後から水痘の報告は激減したが,ブースター効果の低下による帯状疱疹患者数の増加が懸念されている。

●2016年3月,乾燥弱毒生水痘ワクチン「ビケン」に50歳以上の者に対する帯状疱疹予防の効能追加が認められた。

●近年,新規ワクチンとしてサブユニットワクチンや熱不活化ワクチンが開発され,ワクチンの使い分けや,より効果的な接種時期の検討が望まれる。

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POINT

●日本において,妊婦のサイトメガロウイルス(CMV)抗体保有率は70%を下回っており,CMV未感染妊婦が妊娠中に感染してしまう確率は1〜4%程度と推定されている。

●未感染妊婦がCMVに感染することを防ぐワクチンはまだ臨床試験段階である。

●糖蛋白B(gB)と抗原性補強剤(MF59)を組み合わせたワクチンであるgB/MF59は,未接種対照と比べて感染率50%程度の感染予防効果であった。

●有効なワクチンが得られない今,先天性CMV感染症の被害を最小限にとどめるため,未感染妊婦に向けて生活上の注意を啓蒙することが重要である。

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POINT

●現在日本で承認されているヒト乳頭腫ウイルス(HPV)ワクチンは2価(HPV 16型・18型)と4価(HPV 6型・11型・16型・18型)のものであるが,海外では9価のものも承認されている。

●日本ではHPVワクチンは予防接種法に基づく定期接種であるが,2013年6月より積極的な接種勧奨が差し控えられた状態が続いている。

●HPVワクチン接種後の多様な症状は機能性身体症状と考えられているが,国内外の調査により,HPVワクチン接種者と非接種者の間で発生頻度には差異のないことが判明している。

●HPVワクチンにより子宮頸部のHPV感染や前癌病変である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)が減少することが示されている。2018年には子宮頸癌が減少することも初めて報告された。

肺炎球菌ワクチン 澤田 正一
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POINT

●肺炎球菌ワクチンは小児と高齢者が接種対象者となっている。

●肺炎球菌ワクチン導入により侵襲性肺炎球菌感染症は急激に減少している。

●肺炎球菌ワクチン導入後,小児急性中耳炎ではインフルエンザ菌の割合が増加,肺炎球菌は減少し,耐性肺炎球菌も減っている。

●肺炎球菌による感染症は減ったが,非ワクチン含有血清型が増えてくる可能性があり,今後の動向には注意が必要である。

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POINT

●b型インフルエンザ菌(Hib)は病原性が強く,乳幼児を中心に侵襲性インフルエンザ菌感染症(IHD:髄膜炎,敗血症,急性喉頭蓋炎,化膿性関節炎,骨髄炎,心外膜炎)などの重症感染症の主要な原因菌となる。

●Hibワクチンが導入される以前には,IHDの88.6%はHibによるものであり,病型として細菌性髄膜炎,菌血症が多かった。

●Hibワクチンが定期接種となり普及した結果,IHD全体が劇的に減少した。

●Hibワクチンは安全性が高いと評価されている。副反応の主体は非重篤な局所反応であり,全身性の副反応は稀である。

●Hibワクチンの接種対象者は,2か月以上5歳未満の小児であり,3回の初回接種のみでは十分な免疫効果が得られないことから,4回目の追加免疫が重要である。

Review Article

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Summary

●Ramsay Hunt症候群は,顔面神経の膝神経節に潜伏感染した水痘・帯状疱疹ウイルスの再活性化により発症する。

●顔面神経麻痺,耳介帯状疱疹,第8脳神経症状(めまい,難聴,耳鳴)を3主徴とするが,症状の発現と時期は不規則で,不全型ではBell麻痺との早期鑑別が困難である。

●薬物治療はステロイドと抗ヘルペス薬による早期併用療法と鼓室内ステロイド注入があり,重症例には顔面神経減荷術の選択肢がある。

●小児期の水痘ワクチン接種と成人の帯状疱疹ワクチン接種で発症を予防できる。

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はじめに

 副鼻腔悪性腫瘍の原発部位は上顎洞が最多であり,蝶形骨洞はきわめて稀である1)。また,小細胞癌は肺に好発する悪性腫瘍であり,頭頸部領域での発生は稀である2)。今回,われわれは蝶形骨洞に発生した小細胞癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 癌性髄膜症は悪性腫瘍が脳軟膜やクモ膜下腔に転移・浸潤する疾患であり,固形癌の約5〜8%に合併するとされている1)。臨床症状としては聴覚障害などを呈する場合もあり,耳鼻咽喉科へ紹介されることも多い2〜5)。癌性髄膜症を診断するためには悪性腫瘍の既往や画像検査から鑑別に挙げ,髄液細胞診で診断をつける必要がある。しかし,悪性腫瘍が根治していると考えられた症例に発生する場合や,画像検査で所見が得られない場合もあり,診断に難渋することがある。今回,早期肺腺癌手術の4年後に両側進行性難聴を呈した癌性髄膜症症例を経験したので報告する。

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はじめに

 免疫チェックポイント阻害薬は悪性黒色腫,肺癌,腎癌,尿路上皮癌などで有効性が証明されており,2017年3月より抗PD-1抗体であるニボルマブが「再発または遠隔転移を有する頭頸部癌」に対して保険承認された。免疫チェックポイント阻害薬は,時に免疫関連有害事象(immune related adverse event:irAE)が生じ,厳重な管理を要する場合もある。

 今回筆者らは,再発舌癌症例に対しニボルマブを4コース投与後,四肢・体幹に広がる皮膚症状が生じたため投与中止を余儀なくされたが,その後も再発病変が縮小しつづけ1年以上も完全奏効の状態を維持している症例を経験したので報告する。

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はじめに

 悪性黒色腫はメラノサイト由来の悪性腫瘍であり,皮膚以外では眼瞼,鼻副鼻腔,消化管,腟,外陰部などの粘膜からも発生する。悪性黒色腫全体に占める粘膜発生例の割合は,欧米では1〜2%であるのに対して,本邦では約10%と多く,これは本邦では皮膚原発症例が欧米より少ないため,相対的に粘膜原発症例の頻度が高くなるためとされている1,2)。また,頭頸部領域は粘膜悪性黒色腫の好発部位とされており,頭頸部領域での原発部位としては鼻副鼻腔(57〜89%),口腔(5〜41%)の順に多いと報告されている3)

 ヒトprogrammed cell death-1(PD-1)に対する完全ヒト型IgG4モノクローナル抗体であるニボルマブは,本邦において2014年7月に悪性黒色腫の治療薬として承認された。また,抗PD-1抗体薬を含む免疫チェックポイント阻害薬だけでなく,BRAF(serine/threonine protein kinase)阻害薬やMEK(mitogen-activated protein kinase)阻害薬などの分子標的治療薬の有効性が報告され,根治切除不能な悪性黒色腫に対する治療戦略が急速に変化している4,5)

 分子標的治療薬は,従来の殺細胞性抗腫瘍薬とは作用機序が全く異なるため,分子標的治療薬特有の免疫関連有害事象に留意する必要性がある。今回,われわれは,当院にてニボルマブを使用した悪性黒色腫症例について後方視的検討を行ったので,特に頭頸部領域の症例を中心に免疫関連有害事象も含めて報告する。

 なお,本検討は,ヘルシンキ宣言,および,人を対象とする医学系研究に関する倫理指針にのっとり,広島市民病院(当院)の倫理委員会にて審査のうえ,承認を受けた(承認番号:30-6)。

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 海外の研究成果に学ぶ時代なら英語論文は読めれば良かった。が,医学研究において,日本が最先端の一角を占める分野が珍しくなくなった。つまり,英語での論文発表が求められる時代になった。その時代に不可欠なノウハウを,長年に渡る英語論文の執筆・添削指導をしてきた経験から引き出し,多くの添削事例とともにまとめたのが同名書の初版であった。1991年の出版以来,30年近く読み継がれてきた名著の新訂版が本書である。

 著者の植村研一先生は,中学時代に英語弁論大会に出場して以来,千葉大医学部卒業後は横須賀米国海軍病院でのインターンを経て,7年半にわたって米英に留学されるなど,英語をたくさん使ってきた経験を持つ。さらに帰国後も日本脳神経外科学会の英文機関誌に投稿される論文の英文添削にかかわり,日本医学英語教育学会や日本脳神経外科同時通訳団まで創設してしまった方である。

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目次

欧文目次

バックナンバーのご案内

あとがき 小川 郁
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 新型コロナウイルス(COVID-19)感染症の猛威が衰えません。コロナウイルスは発熱や上気道症状を引き起こすウイルスで,ヒトに感染を起こすものは6種類あることがわかっています。鳥類やヒトを含めた哺乳類などに広く存在し,エンベロープ上にコロナ(王冠)のような蛋白質の突起を持つことが特徴で,これが名前の由来にもなっている一本鎖RNAウイルスです。6種類のコロナウイルスのうち,中東呼吸器症候群(MERS)や重症急性呼吸器症候群(SARS)など,重症化傾向のある疾患の原因ウイルスもありますが,それ以外の4種類のウイルスは,一般の風邪の原因の10〜15%(流行期は35%)を占めます。

 中華人民共和国 湖北省武漢市において,令和元年12月以降,新型コロナウイルス関連肺炎の発生が報告され,中国湖北省を中心に急増し,世界各国からも発生が報告されています。すでに死亡者もSARSによる数を上回っています。日本国内では本年1月15日に,武漢市に渡航歴のある肺炎患者からこのウイルスが検出されたのが初例です。日本でもクルーズ船内での集団感染や,マスク・消毒薬の品切れ,中国人を中心とするインバウンドの旅行者の激減で観光地も悲鳴をあげるなど,連日報道が続いています。日本政府も入国者や帰国者に対する健康状態の確認や入国制限など水際対策に躍起で,感染が確認された際に強制的な入院などを勧告できる“指定感染症”に定め,国を挙げて感染拡大を防ぐ体制づくりが進められています。まだいつ収束に向かうのか不透明で,7月からの東京オリ・パラ大会に対する影響も心配されていますが,WHOを中心とした世界規模でのしっかりとした対策を講じて,1日も早い収束と,東京オリ・パラ大会が予定通りに開催されることを期待したいと思います。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
92巻4号 (2020年4月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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