耳鼻咽喉科・頭頸部外科 91巻3号 (2019年3月)

特集 一側性難聴の現状とその対応

一側性感音難聴の疫学 茂木 英明
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POINT

一側性感音難聴の原因疾患としては下記が挙げられる。

●先天性一側性感音難聴:蝸牛神経低形成,先天性サイトメガロウイルス感染

●稀な遺伝性の先天性一側性感音難聴:Waardenburg症候群

●幼小児の一側性感音難聴:ムンプス,先天性サイトメガロウイルス感染

●成人の一側性感音難聴:急性感音難聴

両耳聴の意義と検査 川瀬 哲明
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POINT

●両耳聴では,単耳聴に比較して閾値低下,ラウドネス増大を認める(両耳加重効果)。

●音源定位や雑音下の聞き取りには,左右の耳に到達する信号の時間差,音圧差のほか,頭部や耳介,外耳道による周波数フィルタ効果が重要である。

●音場での音源定位検査や雑音下の聞き取り検査は,一側性難聴症例にも適応可能であるが,検査環境,条件の設定に注意を要する。

●ヘッドホン下の音像定位検査(方向感検査),マスキングレベル差検査,両耳分離聴・融合能検査は,臨床現場において比較的簡便に計測可能な両耳聴関連検査である。

一側性難聴のQOL 岩崎 聡
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POINT

●SF-36v2によるQOL評価では,一側性難聴(突発性難聴)の程度は中等度の両側感音難聴と同等レベルである。

●HHIAによる評価では,両側中等度感音難聴は重度ハンディキャップを,突発性難聴による一側高度難聴は中等度ハンディキャップを示す。

●小児期に発症した一側高度難聴者は,成人になるとハンディキャップの自覚が低下する。

●一側高度難聴には何かしらの介入が必要である。

ウイルスと一側性難聴 守本 倫子
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POINT

●先天性一側難聴の原因としてサイトメガロウイルスや風疹ウイルスの胎児期感染がある。

●胎児期感染のものでは,遅発性,進行性に一側難聴となることもあり,さらに対側も難聴が進行してくることもある。

●後天性一側難聴の原因としてムンプス感染や水痘・帯状疱疹ウイルス感染がある。

●後天性ウイルス内耳感染では通常一側難聴であることが多いが,両側難聴となることもあり,予防にはワクチン接種が重要である。

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POINT

●一側性難聴は0.07〜0.09%程度の割合で発症し,そのうち頭頸部奇形を合併する割合は6割強である。

●一側性難聴に合併する奇形では外耳道閉鎖症・外耳道狭窄症(耳小骨奇形を合併)が最多である。

●当科での検討からは,外表奇形を伴わない症例に限定すると,内耳奇形・内耳道奇形などが原因の感音難聴の症例が伝音難聴に比べて多かった。

●感音難聴の原因となる内耳奇形・内耳道奇形のうち最も多い表現型は報告により異なるが,蝸牛神経管狭窄が最多とする報告が多く,蝸牛神経欠損・低形成の頻度が高いことが推測された。

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POINT

●一側高度感音難聴症例で,メニエール病様の反復性回転性めまいのみが生じる場合を,同側型遅発性内リンパ水腫と呼ぶ。

●一側高度感音難聴症例で,メニエール病様の反復性回転性めまいに良聴耳の変動難聴を伴う場合を,対側型遅発性内リンパ水腫と呼ぶ。

●対側型遅発性内リンパ水腫は,先行する一側高度感音難聴の対側にたまたま発生・発症したメニエール病という考え方を否定できないため,厚生労働省では同側型遅発性内リンパ水腫のみを第2次指定難病としている。

●一側高度感音難聴症例にたまたま生じる良性発作性頭位めまい症は,同側型遅発性内リンパ水腫と注意深く鑑別する必要がある。

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POINT

●一側性難聴の補聴には気導補聴器,CROS補聴システム,人工内耳がある。

●難聴側に音源がある場合の聞き取りや雑音下での聞き取りが改善する。

●気導補聴器や人工内耳では,音の方向覚や耳鳴が改善する可能性がある。

●機器の装用による検査結果の改善と患者の満足度が一致するとは限らず,患者の強い希望と現実的な目標設定が重要となる。

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Summary

●軟骨伝導は気導,骨導とは異なる特徴をもつ新しい伝導様式で,その特徴を生かすことでさまざまな音響機器への応用が可能である。

●軟骨伝導を用いた補聴器(軟骨伝導補聴器)は外耳道閉鎖症でも使用可能で,骨導補聴器と同等以上の効果が期待できる。

●片側外耳道閉鎖症であっても,装用することで聞き取りの改善,方向感の改善などの効果を認める。

●装用感,審美性に優れ,外科的な治療を必要としない。試聴することが可能で,装用に伴うリスクはほぼ認めない。外耳道閉鎖症では大きな選択肢の1つであるといえる。

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はじめに

 日本における2016年の結核新規登録患者数は1万7625人,人口10万対の罹患率は13.9で,結核の中蔓延国である。地域差が生じており,大阪,東京,兵庫などの大都市は多いが,宮城,秋田,山形,福島では10を下回り,しばらく経過している1)。2016年の肺結核は1万4014人,肺門・縦隔リンパ節結核が121人,その他のリンパ節結核が835人であった。結核性頸部リンパ節炎はその他のリンパ節結核に含まれ,肺外結核では結核性頸部リンパ節炎が胸膜炎に次いで多いとされている2)。耳鼻咽喉科の日常の診療でも出会うことのある疾患であることを常に念頭に置かなければならない。

 今回われわれは,診断までに11か月の時間を要した結核性頸部リンパ節炎の1例を経験したので,報告する。

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はじめに

 橋や中脳などの上位脳幹の背側には眼球運動に関与する神経核と運動中枢,それらを連絡する神経路が複数密集して存在する。このため,同部の障害により異常眼球運動や外眼筋麻痺を呈し,難治性のめまいやふらつきとともに動揺視,複視などの症状が発症しうる。

 複視については,一部の患者においてプリズム矯正や,麻痺側と拮抗する外眼筋へのボトックス注射などの治療法1)が有効な場合があるものの,異常眼球運動を伴う動揺視がある場合や,左右の眼位が異なるなどの場合には,総じて治療困難であることが多い。動揺視が強いために,最終的には片眼を遮蔽するしか対処方法のないこともある。これに対して川平ら2-4)は,前庭眼反射と随意注視に伴う眼球運動とを同時に誘発させ,これを反復することで外眼筋麻痺を改善させる,「迷路性眼球反射促通法」と称する眼球理学療法の有効性を報告している。

 今回,われわれは橋出血後に発症した両側内側縦束症候群(medial longitudinal fasciculus syndrome:以下,MLF症候群)を伴う重度の動揺視,複視のため,両眼を開眼した状態でいることが難しく,慢性期に至っても座位保持さえ困難であった患者に対して,「迷路性眼球反射促通法」を応用した眼球理学療法を行ったところ,両眼開眼,座位保持が可能となり,テレビを見る,簡単な文字が読めるなどのQOLの改善が得られたので,報告する。

 なお,図中の写真の撮影と本報告への掲載については,本人および家族の同意を得てある。

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はじめに

 甲状腺濾胞型乳頭癌は乳頭癌の亜型であり,腫瘍のすべて,あるいは大部分が胞状構造を呈する乳頭癌である。通常型乳頭癌よりも甲状腺外進展,リンパ節転移の頻度が低く,予後良好であるとの報告がなされているが,今回われわれは甲状腺濾胞型乳頭癌で内頸静脈に腫瘍塞栓をきたし,腕頭静脈まで進展したと考えられた1例を経験したので報告する。

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はじめに

 鼓膜穿孔閉鎖術は,耳周囲に皮膚切開を必要とする鼓室・鼓膜形成術と比べ,慢性鼓膜穿孔に対する低侵襲で安価な治療である。その有用性は高く,近年では自己血清1-3),濃厚血小板血漿4),basic fibroblast growth factor(bFGF)製剤5-7)を使用する方法などのさまざまな報告が散見されるが,治療の特殊性から市中病院での導入はやや困難と思われる。これらに対してキチン膜はきわめて安価であるが,これまでの報告では,これを単独で用いた方法は鼓膜閉鎖率が低いと認識されている2,8,9)。本方法を特殊な製剤を用いずに行ったため,その結果について報告する。

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はじめに

 オンコサイトーマはかつて膨大細胞腫や好酸性腺腫といわれ,頭頸部領域においては耳下腺,顎下腺,鼻腔,口蓋などにも認められ,なかでも耳下腺に好発するといわれる稀な良性腫瘍である。このたび当科で経験した6例のオンコサイトーマ症例について検討し,それらの臨床的特徴をまとめたうえで,若干の文献的考察を加えて報告する。

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はじめに

 水痘帯状疱疹ウイルス(varicella zoster virus:VZV)の多くは小児期に初感染したのちに全身の神経節に潜伏感染する。その後,宿主の肉体的・精神的ストレスや免疫能低下によって再活性化し,皮膚・粘膜の症状,運動や知覚神経の麻痺を生じる。VZVが咽喉頭領域にのみ症状をきたすことは稀である。今回われわれは,VZVが関与したと考えられる両側迷走神経麻痺の1例を経験したので報告する。

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はじめに

 顔面神経減荷術は重症のBell麻痺やHunt症候群,外傷性顔面神経麻痺などで考慮される治療法である。本邦の『顔面神経麻痺診療の手引 2011年版』では,顔面神経減荷術は推奨度Grade C1であり1),海外のBell麻痺のガイドラインでも質の高いエビデンスに欠けることから推奨しないとされている2)。治療の特性上,質の高いエビデンスを構築するのは容易でなく,これらの意見をもって減荷術自体が即否定されるものではないと考えるが,元来聴力正常者に施行することも多く,麻痺の改善効果も確実とは断言できないため,聴力損失をはじめとする後遺症を最低限にする努力が求められる。

 当科で施行した顔面神経減荷術例に対し,術前・術後の聴力変化について検討を行ったので報告する。

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 医師の日常は,臨床カンファレンスから学会発表,研究成果発表会など,プレゼンの機会に事欠きません。若手の医師にとっては,初の全国学会での口演発表,中堅医師では,シンポジウムの発表,共催セミナーでの口演が当たると,大変うれしいものです。また公的研究費の獲得や公的なポストへの昇進など,プロフェッショナルとしてのキャリアをアップする上でも,プレゼンの重要性に異を唱える人はいないと思います。しかし,いかに仕事の内容が素晴らしくても,聴衆に効果的に伝える努力を私たちは十分しているでしょうか? 今から思いますと,私も若いころ,かなり独り善がりなプレゼンをしていたように思います。

 このたび医学書院から,医療者向けに『脱・しくじりプレゼン』が刊行されました。編著者は,名著『パーフェクトプレゼンテーション』(生産性出版,1995)で有名な八幡紕芦史氏です。私自身,プレゼンの基本を八幡氏から学んだ一人です。本書は,多忙な臨床医や研究者向けに,プレゼンの極意を,マンガと丁寧なレクチャーでビジュアルに解説しています。効果的なプレゼンには,事前の情報収集と分析がまず必要なこと,聞き手に当事者意識を持たせることを示して,さまざまな場面での失敗の要因を分析しています。デリバリーとは,まさに伝えるテクニックです。内容を聴衆に理解してもらい,さらに信頼してもらえるかは,このデリバリーの技術にかかっています。また,研究費の獲得や公的なポストへの昇進でのプレゼンでは,プレゼン後の質疑応答が,より大切になってきます。この質疑応答の成否は,深い意味では,プレゼンした内容が,いかにあなたの実体験に基づいているかにかかっています。本当に身についた知識や内容であれば,聴衆は本当に理解して,共感してくれると思いますが,プレゼンの目的や聴衆はさまざまだと思います。本書は,さまざまな局面で,「しくじらない」ためのノウハウを満載しています。Practice makes perfect! 皆さん,本書をひもときながら,ぜひ多くのプレゼンをしてください。その後,本書を読み返すと,さらに大きな発見があると思います。

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次号予告

あとがき 丹生 健一
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 大坂なおみが全米に引き続き,テニスの4大大会の一つ全豪オープン女子シングルスで優勝しました。きっとNHKのライブ放送に釘付けとなった皆さんも多いことでしょう。世界ランクもアジア勢初の第一位。ハイチ人の父親と日本人の母親から受け継いだ類い稀な身体能力と,謙虚でチャーミングなパーソナリティーに,セリーナを育てたコーチ陣が加わり一気に才能が開花しました。ぜひ,東京オリンピックで金メダルを取ってほしいですね!

 そういえば今年の大河ドラマ「いだてん」はオリンピックがテーマです。物語は東京高等師範学校の校長・嘉納治五郎が生徒の金栗四三を擁し日本人のオリンピック初参加を実現させたところから始まります。講道館柔道の創始者でもある嘉納治五郎。生まれは神戸市御影で,「白鶴」や「菊正宗」を創業した嘉納一門の縁戚にあたります。両家が中心となって設立した灘中・灘高の開校にあたっては顧問として参画。おかげで中学では柔道の授業が必須で,校是は治五郎が柔道の精神として唱えた「精力善用」「自他共栄」。私は見逃してしまいましたが,大河ドラマの初回放送でも東京高等師範学校の校長室にこの言葉が掲げられていたそうです。高校を卒業して40年,今の私にとっても大切な教えです。

基本情報

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耳鼻咽喉科・頭頸部外科
91巻3号 (2019年3月)
電子版ISSN:1882-1316 印刷版ISSN:0914-3491 医学書院

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