JOHNS 40巻3号 (2024年3月発行)

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特集　耳科診療の論点―異なる立場の対話とディベート―

異なる診療科の立場から

小児急性中耳炎の対応―耳鼻咽喉科医の立場から― 有本　友季子 40巻3号 , 2024年3月 , pp.239-242

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はじめに

　小児急性中耳炎は，小児で最も多くみられる上気道感染症疾患と言っても過言ではない。欧米の報告では，1歳までに62％，3歳までに83％の小児が少なくとも1回は罹患するとされる^1）。小児急性中耳炎は，2000年初頭には耐性菌の蔓延による難治化がみられ，対応に苦慮する例も多く経験した。その後，耐性菌に高い感受性をもつ経口抗菌薬の小児適応が承認され，抗菌薬の選択肢も拡がった。また，2002年に小児急性上気道感染症に対する第一選択薬をペニシリン系抗菌薬とすることが推奨され，2006年には「小児急性中耳炎診療ガイドライン」がわが国で初めて発表された。抗菌薬の適正使用や診療ガイドラインが普及するにつれ耐性菌が占める割合は減少し，以前よりは少ないものの現在でも難治例や反復例に遭遇することはある。

小児急性中耳炎の対応―小児科医の立場から― 勝田　友博 40巻3号 , 2024年3月 , pp.243-247

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はじめに

　改めて言及するまでもなく，急性上気道炎の罹患機会が多い小児における急性中耳炎（acute otitis media：AOM）の発生頻度は高い。本稿は今回のテーマである「異なる診療科の立場から」という方針に則して，主にアメリカ小児科学会（American Academy of Pediatrics：AAP）のガイドライン2013^1）（以下，AAPガイドライン）と日本耳科学会，他のガイドライン2018^2）（以下，国内ガイドライン）を引用しつつ，1人の小児科医としての私見も交えた原稿とする。

加齢性難聴と認知症―耳鼻咽喉科医の立場から― 太田　有美 40巻3号 , 2024年3月 , pp.248-250

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はじめに

　高齢者の多くが難聴には直面する。国立長寿医療センター・老化に関する長期縦断疫学研究（National Institute for Longevity Sciences, Longitudinal Study of Aging：NILS-LSA）において，難聴（良聴耳の聴力が25dB以上）有病率は，75～79歳では男性71.4％，女性67.3％と報告されている^1）。難聴は高齢者の健康にさまざまな影響を与える。

加齢性難聴と認知症―認知症専門医の立場から― 安野　史彦 40巻3号 , 2024年3月 , pp.251-253

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アルツハイマー型認知症と加齢性難聴の関係―3つの仮説―

　アルツハイマー型認知症（Alzheimer’s disease：AD）と加齢性難聴は，加齢とともに増加する障害であり，中枢神経系や聴覚系の老化過程の表現であると考えることができるが，これまでに難聴者で認知症の発症リスクが高まる要因として主に3通りの考え方が提唱されてきた^1）。

異なる医療施設の立場から

補聴器外来について―診療所で行う補聴器外来のメリット，デメリット― 杉内　智子 40巻3号 , 2024年3月 , pp.255-257

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はじめに

　近年，超高齢化社会の中にあって，高齢者は増加の一途をたどり，年代が上がるごとに難聴の人の割合も増す。ともに聞こえにくくもなりながら，必要であれば補聴器を装用して，コミュニケーション豊かに楽しく健康寿命を全うしようというムーブメントが感じられ，補聴器診療の役割は大きくなっている。本稿では，診療所における補聴器外来について，その流れを辿りながらメリットとデメリットについて考えてみたい。

補聴器外来について―大学病院で行う補聴器外来のメリット，デメリット― 櫻井　結華 , 近藤　由以子 40巻3号 , 2024年3月 , pp.258-259

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はじめに

　補聴器は非侵襲的に聴覚を補助し，生活の質をあげる有効な管理医療機器である。適切な診断と調整が，補聴器を有効な状態で継続して使用してもらうために必須である。しかし，中には販売店で補聴器を購入したものの，さまざまな理由からうまく使えずに，補聴器嫌いになっている例も少なくない。また，日本では耳鼻咽喉科医の補聴器への関わりが少ない^1）。本稿では，補聴器診療における大学病院の役割，メリット，デメリットについて考える。

難治性外耳炎の治療―診療所治療のメリット，デメリット― 兵　行義 , 兵　佐和子 40巻3号 , 2024年3月 , pp.260-262

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はじめに

　外耳炎は耳のかゆみ，耳痛，耳漏，耳閉感，難聴など，さまざまな症状を呈し，耳鼻咽喉科においては日常診療で遭遇することが多い疾患である。丁寧な診察が求められ，他科医師では処置が困難な部位である。本稿では，難治性外耳炎について，診療所での対応，特に病院ではなく，頻回に受診する環境であることのメリットについて，概説する。

難治性外耳炎の治療―病院治療のメリット，デメリット― 吉田　尚弘 40巻3号 , 2024年3月 , pp.263-266

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はじめに

　外耳道は，成人男性では直径約8mm，長さ25mmで水平方向，やや緩やかなS字型を呈し，骨部外耳道と軟骨部外耳道で構成されている。骨部外耳道は皮膚が薄く（約0.1mm），皮下組織，分泌腺がない，耳毛がないなどの特徴がある。一方で軟骨部外耳道の皮膚は比較的厚く（10～15mm），耳毛，皮脂腺，汗腺が存在する。耳垢，外耳道分泌物は主として軟骨部外耳道から生じる。外耳道に生ずる疾患はその多くが診療所での治療で症状を改善させ得るが，一方で病院での治療を要する病態，疾患もある。

さまざまな治療法の中から

突発性難聴の追加治療について―ステロイド鼓室内投与の立場から― 岡田　昌浩 40巻3号 , 2024年3月 , pp.267-268

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はじめに

　突発性難聴は急性感音難聴をきたす代表的な疾患の1つである。一般的に，ステロイドや循環改善薬などの全身投与がなされる場合が多いが，“治癒” に至るのは約4割のみである^1）。ステロイドの全身投与を行っても難聴が残存した場合，追加治療としてステロイド鼓室内注入（以下，ITSと略）療法や高圧酸素療法が行われることがある。ここではITS療法について述べる。

突発性難聴の追加治療について―高気圧酸素療法の立場から― 上塚　学 , 河辺　隆誠 , 西池　季隆 40巻3号 , 2024年3月 , pp.269-271

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はじめに

　高気圧酸素療法はAmerican Academy of Otolaryngology-Head and Neck Surgery（AAO-HNS）ガイドラインの突発性難聴に対する治療において，ステロイド全身投与と並んで “option” に位置付けられている^1）。突発性難聴の推定病態の1つである内耳循環障害に対し，血液中の溶存酸素を増やし，障害を緩和する目的で使用されている。

耳管開放症の治療について―保存的治療の立場から― 大田　重人 40巻3号 , 2024年3月 , pp.272-275

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はじめに

　耳管開放症は，通常閉鎖している耳管に開放状態の持続が起こることにより，自声強聴や呼吸音聴取，耳閉感といった不快な耳症状を生じる疾患である。診断には，日本耳科学会ホームページに公開されている「耳管開放症診断基準案2016^1,2）」や「耳管機能検査マニュアル2016^3）」を参考にすることが推奨される。

耳管開放症の治療について―外科的治療の立場から― 池田　怜吉 40巻3号 , 2024年3月 , pp.277-279

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はじめに

　耳管開放症の治療の基本は，生活指導をはじめとした保存的治療法である。したがって，外科的治療は耳管ピンの使用指針（表1）にもあるように，基本的には6カ月以上の保存的治療にて症状のコントロールが困難な難治症例が対象となる。この点に注意しつつ，以下に耳管開放症に対する手術治療の概要について述べる。

聴神経腫瘍の治療について―放射線外科と放射線療法の立場から― 片野　厚人 40巻3号 , 2024年3月 , pp.280-282

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はじめに

　聴神経腫瘍とは蝸牛神経および前庭神経から発生する腫瘍の総称で，そのほとんどを前庭神経鞘腫（vestibular schwannoma：VS）が占める。VSに対する治療アプローチは，症状や腫瘍の大きさ，神経機能などの要因によって異なり，経過観察，手術療法，放射線治療が主な選択肢となる。95％以上の症例が片側に発症する孤発性VSであるが，神経線維腫症Ⅱ型（neurofibromatosis type 2：NF2）に関連したVSは両側性に発症するため著明なQOL低下の一因となる^1）。

聴神経腫瘍の治療について―外科的治療の立場から― 大石　直樹 40巻3号 , 2024年3月 , pp.283-285

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聴神経腫瘍とは

　聴神経腫瘍は主に前庭神経に生じる神経鞘腫であり，小脳橋角部腫瘍のおよそ80％を占める。最新の疫学データでは，一生涯に500人に1人を超える割合で発症するとされ^1），従来考えられていたよりも高頻度で生じる疾患であることがわかってきた。前庭神経に生じる腫瘍であるものの，最も頻度の多い症状が難聴である。聴神経腫瘍患者のうち約6割で進行性難聴を生じ，1～2割程度の割合で急性感音難聴を呈する。突発性難聴の診断で治療を受けた症例のうち，聴神経腫瘍の診断に至る例はおよそ3％程度とされ^2），突発性難聴の重要な鑑別診断の1つである。

外耳道癌の治療について―化学放射線治療の立場から― 志賀　清人 40巻3号 , 2024年3月 , pp.287-290

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はじめに

　外耳道癌は稀な疾患である。患者には頻回な耳かきの習慣や繰り返す外耳道炎，中耳手術の既往などがあり，これらが原因として予想されるが発症については不明点も多い。UICCのTNM分類第7版までは解剖学的部位として記載はなく，Pittsburgh分類^1）など独自の分類が用いられてきた。ようやく2017年の第8版で頭頸部の皮膚癌の解剖学的部位として記載された。

外耳道癌の治療について―外科的治療の立場から― 小宗　徳孝 40巻3号 , 2024年3月 , pp.291-295

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はじめに

　側頭骨悪性腫瘍には，扁平上皮癌，腺様囊胞癌，粘表皮癌，基底細胞癌など多彩な組織型が含まれる。側頭骨悪性腫瘍は稀な疾患のため，標準的な治療ガイドラインの確立が遅れているのが現状であり，エビデンスレベルの高い報告は，前方視的もしくは後方視的な研究のいずれも非常に少ないのが状況である。そのため，喉頭や咽頭などの他の頭頸部癌と異なり，エビデンスに基づいて治療方針を論じることが非常に難しい領域になる。実際に，多くの施設では，他の領域を原発とする頭頸部癌の治療ガイドラインから大きく逸脱しないように治療を行っているのが現状ではないだろうか。

気導補聴器が使えない伝音難聴，混合性難聴の治療について―骨導インプラントの立場から― 岩崎　聡 40巻3号 , 2024年3月 , pp.296-298

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骨導インプラントについて

　わが国で保険適用されている骨導インプラントには骨固定型補聴器Baha^®（bone anchored hearing aid，以下Bahaと略す，Cochlear社）とBONEBRIDGE^®（以下BBと略す，MED-EL社）があり，ともに伝音・混合性難聴症例が対象の人工聴覚器である。Bahaは2013年より，BBは2021年より保険適用となっている。骨導インプラントは振動子が対外部に付く受動型骨導インプラント（Baha）と側頭骨内に植え込む能動型骨導インプラント（BB）に分類される^1）。同じ伝音・混合性難聴症例が対象となる人工聴覚器には人工中耳があり，vibrant soundbridge（以下VSBと略す）が保険適用となっている。人工聴覚器はすべて手術が必要であり，基本既存の手術手技にて聴力改善が困難であったり，補聴器，骨導補聴器，軟骨伝導補聴器が常時使用困難か，十分な補聴効果が得られない場合に選択される^2）。

気導補聴器が使えない伝音難聴，混合性難聴の治療について―VSBの立場から― 日高　浩史 , 池田　怜吉 40巻3号 , 2024年3月 , pp.299-303

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はじめに

　人工中耳，VSB（vibrant soundbridge^®，MedEl社）は，もともと従来型補聴器で装用効果が得られない感音難聴の患者に対して，キヌタ骨を直接振動させることで聴取能を改善させる目的で開発された^1）。その後，2005年には耳小骨が残存していない例や，鼓室硬化症でアブミ骨底板が固着している症例に対し，蝸牛窓を直接振動させる方法が当該機種の応用として改良された^2,3）。振動子であるfloating mass transducer（FMT）を蝸牛窓に設置することで直接蝸牛に振動エネルギーを伝えることができるため，ハウリングがなく長時間の装用も可能である^2～6）。2007年に伝音・混合性難聴に対する適応でCE-Markの承認が得られ，国内では2011～2014年にVSB臨床治験が行われた後^3～5），2016年に保険適用となった。

気導補聴器が使えない伝音難聴，混合性難聴の治療について―軟骨伝導補聴器の立場から― 江﨑　友子 40巻3号 , 2024年3月 , pp.305-307

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はじめに

　軟骨伝導補聴器は軟骨の振動を介して音を伝える新しいタイプの補聴器である^1～3）（図1）。2017年11月より市販が開始され，2023年10月現在，全国150以上の医療機関で取り扱われている。

さまざまな手術法の中から

耳科手術の3鏡について―顕微鏡のメリット，デメリット― 藤田　岳 40巻3号 , 2024年3月 , pp.308-310

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はじめに

　19世紀後半から20世紀初頭にかけて，急性乳突洞炎から頭蓋内合併症で死亡してしまうことを防ぐため，乳突部の急性炎症を外科的に取り除く乳突部単削開術や中耳根治術が開発された。これらは肉眼で行われていた^1）。スウェーデンの耳科医，Carl Olof Nylenが耳の手術で初めて顕微鏡を仕様したのは1921年のことであった。この時に用いられたのは単眼式顕微鏡であったが，翌1922年にはドイツのZEISS社により双眼式顕微鏡が開発され，Nylenの同僚であったGunnar Holmgrenが耳科手術に使用した。Nylenもその新しい顕微鏡の有用性を認め，以後急速に顕微鏡技術の発展と手術への応用が進んでいった^2）。

耳科手術の3鏡について―内視鏡のメリット，デメリット― 角南　貴司子 40巻3号 , 2024年3月 , pp.311-313

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はじめに

　内視鏡下耳科手術（endoscopic ear surgery：EES）は近年急速に広まっており耳科手術のスタンダードになりつつある。しかしながら，内視鏡下耳科手術にはデメリットもあり，手術を行うに際しては内視鏡手術のメリット，デメリットをよく理解した上で取り組む必要がある。メリットとしてはなんと言っても精密な画角と広い視野である。デメリットには片手操作や “one hole surgery” であるため操作範囲が限定されること，そして立体視ができないことなどがある。内視鏡手術による医療事故が起こることがないように内視鏡のデメリットを理解し，デメリットを克服する技術を身につけて手術を行うべきである。

耳科手術の3鏡について―外視鏡のメリット，デメリット― 伊藤　吏 40巻3号 , 2024年3月 , pp.315-318

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はじめに

　現代の耳科手術は，疾患の種類や病変の進展範囲に応じて顕微鏡下，内視鏡下，そして両者の併用で行われている。近年，低侵襲な経外耳道的内視鏡下耳科手術（transcanal endoscopic ear surgery：TEES）が発展，普及してきているのと同時に，顕微鏡の代替としての外視鏡（exoscope）による耳科手術が注目されている。外視鏡を使用した手術は，元来，脳外科領域を中心にその有効性が報告されてきたが^1～3），最近では耳科手術にも応用され外視鏡下耳科手術（exoscopic ear surgery：ExES）と呼ばれる。

鼓膜穿孔閉鎖術について―鼓膜穿孔治療剤の立場から― 金井　理絵 40巻3号 , 2024年3月 , pp.319-322

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鼓膜再生療法とはどんな治療か？

　組織再生には細胞，足場，調節因子の3要素が必要である。鼓膜再生療法は新鮮創化を行うことによって残存鼓膜から細胞を誘導し，足場としてゼラチンスポンジ，調節因子として線維芽細胞増殖因子を用いる新しい穿孔閉鎖治療法である。ゼラチンスポンジと線維芽細胞増殖因子はこれらがセットになった世界初の鼓膜再生治療薬であるリティンパ^®を用いる（図1）。鼓膜再生療法は自己再生能力を促す治療法であり，自然な形態に近い鼓膜が再生しうる。これにより気骨導差の少ない良好な聴力改善が期待できる。

鼓膜穿孔閉鎖術について―接着法の立場から― 小林　泰輔 40巻3号 , 2024年3月 , pp.323-325

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はじめに

　鼓膜穿孔に対する手術は鼓膜切開術や鼓膜換気チューブ留置術についで耳鼻咽喉科医が手がける手術である。多くの術式が報告されており，術者によりどの術式をとるかの選択枝もさまざまである。また，患者の全身状況，局所所見や患者の希望によりどの術式をとるか決めることになる。あらゆる術式に精通しておくことがインフォームド・コンセントにおいても実際の手術においても重要である。

鼓室形成術の周術期管理について―日帰り手術の立場から― 松田　圭二 40巻3号 , 2024年3月 , pp.326-328

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はじめに

　今回は，局所麻酔での日帰り手術に絞って話を進めたい。患者さんが歩いて来院し，手術後，歩いて帰宅するのが局麻日帰り手術の基本となる。私自身，勤務医時代の大半を麻酔医による全身麻酔で中耳手術を行い，術後10日ほど入院するという診療スタイルであった。局麻中耳手術は，キャリア最初の8年ほどを中心に300例ほどを行っていたに過ぎず，術後入院期間は全麻の場合と同じであった。2019年夏，新規開業にあたって病床や麻酔医の確保ができず，局麻日帰り手術へと診療スタイルの変更を迫られた。この方法では，術者が局所麻酔で手術を行い，術後は基本自宅で養生するため入院病床や全麻の設備投資を必要としない。幸い近くに地域連携病院が確保でき，入院希望者は1～2泊入院を受け入れてもらえることになった。

鼓室形成術の周術期管理について―入院治療の立場から― 田中　康広 40巻3号 , 2024年3月 , pp.329-331

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はじめに

　鼓室形成術は鼓室内の炎症が高度であり，肉芽や瘢痕化した組織によって耳小骨の可動性が障害された慢性中耳炎や癒着性中耳炎，真珠腫性中耳炎が適応疾患として挙げられ，主に鼓室内の清掃と伝音難聴の改善を主眼において行われる手術療法である^1）。慢性中耳炎でも鼓室内の清掃が不要であり，パッチテストにてパッチゲインを認める初回手術症例に対しては主に接着法による鼓膜形成術を行っており，基本的には日帰り手術で対応が可能である。

連載　古典あれこれ

江戸のシーボルト加我　君孝 40巻3号 , 2024年3月 , pp.332-340

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はじめに

　シーボルト（Philipp Franz Balthasar von Siebold，1796～1866）は鎖国時代の江戸時代後期に，わが国には西洋医学を伝え，逆に欧州には日本そのものを紹介し両方に大きな影響を与えた^1）。東京大学医学部のルーツである神田お玉ヶ池種痘所の設立者の中にシーボルトに直接教えを受けた蘭方医が3人いた^2）。

連載　わたしの研究歴

腸内細菌を研究する耳鼻咽喉科医矢野　寿一 40巻3号 , 2024年3月 , pp.341-343

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はじめに

　私は1994年に長崎大学を卒業し，耳鼻咽喉科学教室に入局しました。耳鼻咽喉科専門医の資格を持っていますが，現在の専門は「腸内細菌目細菌の薬剤耐性機序の解析」です。耳鼻咽喉科専門医でありながら，大腸菌，肺炎桿菌やエンテロバクターといった腸内細菌目細菌や，アシネトバクター属菌といったブドウ糖非発酵菌を扱っています。つまり，臨床は首から上，研究は横隔膜から下とまったく離れた部位を取り扱っています。なぜ，こんな不便（？）なことになっているのか，振り返ってみたいと思います。

連載　症例をどうみるか

短鼻を伴った鼻口蓋管囊胞に対し内視鏡下鼻腔手術を施行した1例波多野　孝 , 桑原　達 , 福井　健太 , 大氣　大和 , 折舘　伸彦 40巻3号 , 2024年3月 , pp.344-348

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はじめに

　鼻口蓋管（切歯管）囊胞（nasopalatine duct cyst：NPDC）は胎生期の口蓋突起癒合部前方部分において鼻腔と口腔を連絡する形で存在する鼻口蓋管に上皮が残存することにより形成される先天性囊胞性疾患である。治療には経歯齦部法，経口蓋法による囊胞の完全摘出や，より低侵襲な治療である内視鏡下鼻内法による囊胞の鼻腔への開窓術などが行われる。

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目次 40巻3号 , 2024年3月 , pp.236-237

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バックナンバー 40巻3号 , 2024年3月 , pp.295-295

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学会・研究会案内 40巻3号 , 2024年3月 , pp.349-349

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次号予告 40巻3号 , 2024年3月 , pp.350-350

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基本情報

JOHNS
40巻3号
(2024年3月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0910-6820 東京医学社

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