JOHNS 41巻11号 (2025年11月発行)

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特集　ますます必要になるかぜの専門知識

【総論】

かぜの定義とその対応の歴史的変遷小川　郁 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1413-1415

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はじめに

　“かぜ”はおそらく多くの人にとって最も馴染み深い疾患の1つであるが，その定義はさまざまで出典によって微妙に異なるのが現状である。本誌は耳鼻咽喉科頭頸部外科の専門誌であることもあり，日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会の用語集およびホームページに記載のある“かぜ症候群”をもとに以下に解説する。

かぜの分類本郷　昭典 , 千代延　和貴 , 竹内　万彦 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1416-1419

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はじめに

　かぜ（感冒）は日常診療で最も頻繁に遭遇する疾患の1つである。多くは軽症だが，高齢者や基礎疾患を有する患者では重症化や合併症を呈し，時に生命を脅かす。耳鼻咽喉科領域では，かぜ症候群が中耳炎，副鼻腔炎，喉頭炎など多彩な疾患に進展する可能性があるため，鑑別とマネジメントが重要である。感染症の流行パターンが変化し続ける現代において，耳鼻咽喉科的観点から実際的な“かぜの分類”を整理することは，患者に適切な治療を提供するためにも今後ますます必要となる。

成人と小児のかぜの違い木勢　彩香 , 守本　倫子 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1420-1423

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はじめに

　一般にかぜとはかぜ症候群のことを指し，発熱（軽微なことが多い），くしゃみ，鼻汁，鼻閉などの鼻症状，咽頭不快，咽頭痛，咳嗽などの症状を伴うが，ほとんどが自然治癒する急性のウイルス性上気道感染症である^1）。約1週間の自然経過で改善するが，2週間ほど続くものも約10％みられる。全身症状は概ね軽度であるが，特に乳幼児は大人と比べ，その解剖生理学的特性，免疫学的未熟性から重症化リスクが高く，重篤な疾患が隠れている，もしくは重篤な疾患に移行する可能性があり，適切な診断が重要である。

かぜ診療における医師および医療機関の役割大森　孝一 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1425-1428

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はじめに

　かぜ診療は，日常診療の中でも最も頻度が高い領域の1つであり，主に内科，小児科，耳鼻咽喉科を標榜する医療機関で取り扱われる。2019年～2023年の新型コロナウイルス感染症（COVID-19）流行期には，多くの施設で発熱外来が設置され，抗原検査やPCR検査を活用し，患者の動線や診療時間を分ける対応が取られた。これらの発熱外来は厚生労働省や地方自治体により指定され公表されていた。2023年5月に新型コロナウイルス感染症が感染症法上の分類で2類感染症から5類感染症に移行して以降はインフルエンザと同様の扱いとなり，現在は急性上気道炎症状を有する患者に対して各施設が独自で発熱外来を設けるか，通常診療の中で対応している。

薬剤耐性対策アクションプランとかぜ診療阪上　智史 , 岩井　大 , 八木　正夫 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1429-1432

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はじめに

　抗菌薬の歴史は1928年，アレクサンダー・フレミングによる青カビ（Penicillium notatum）からのペニシリン発見に始まる^1）。この偶然の発見が抗菌薬開発の扉を開き，1940年代にはペニシリンが量産され，第二次世界大戦中の戦傷感染や肺炎の治療に大きく貢献した。その後，ストレプトマイシン，クロラムフェニコール，テトラサイクリンなどが次々と登場し，1950〜1970年代には“抗生物質の黄金時代”と呼ばれる革新期を迎えた。抗菌薬の登場は，20世紀における医療革命の1つとされ，多くの感染症から人類を救ってきた。その効果は劇的で人類の疾病構造を変え，寿命の改善に大きく貢献した。

【成人のかぜのみかた】

せき・はな・のど型かぜ―普通感冒― 河野　通久 , 髙原　幹 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1433-1435

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はじめに

　いわゆる“せき・はな・のど型かぜ（普通感冒，狭義のかぜ）”は，ライノウイルスやコロナウイルスなどのウイルスによって引き起こされる急性上気道炎であり，鼻汁，咳嗽，咽頭痛などの症状がほぼ同時に同程度出現することを特徴とする。若年者では軽症かつ自然軽快することが多いが，高齢者においては症状の出現様式が非典型的であり，感冒に伴うQOLやADL低下をきたし重症疾患の引き金となることもある。

はな型かぜ―急性鼻副鼻腔炎― 櫻井　大樹 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1437-1440

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はじめに

　日常診療で頻繁に遭遇する“はなかぜ”は，鼻汁，鼻閉，くしゃみなどの鼻症状を主とする，いわゆる“かぜ症候群”の一形態であり，多くは自然軽快するウイルス性上気道炎である。しかしその中には，急性鼻副鼻腔炎を呈する症例が含まれており，一部は経過中に細菌性感染に進展することで症状の遷延や再発をきたすことがある。“はなかぜ”とみなされる症例の中に実際には治療介入が必要な鼻副鼻腔炎が含まれることがある。

のど型かぜと危険なかぜ―急性咽頭炎・扁桃炎，扁桃周囲炎・扁桃周囲膿瘍，急性喉頭蓋炎― 石水　瑛理奈 , 井下　綾子 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1441-1444

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はじめに

　急性咽頭炎や急性扁桃炎（いわゆる“のど型かぜ”）は上気道感染症の中でも頻度が高く，大半はウイルス性で1～2週間以内に軽快するが，一部は細菌感染で重篤化する。本稿では一般的なのど型かぜと，重症化リスクのある“危険なかぜ”について概説する。

せき型かぜ―急性気管支炎― 島田　茉莉 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1445-1447

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はじめに

　かぜ症候群は外来診療において最も頻度の高い疾患群であり，その中で咳嗽を主症状とする“せき型かぜ”は特に高齢者においてしばしば問題となる。若年成人では一過性で自然軽快することが多いが，高齢者では咳嗽の遷延や誤嚥，二次感染のリスクが高く，また心不全やCOPDなど基礎疾患の増悪に結びつく可能性もある^1,2）。そのため単なるかぜの一病型と軽視せず，正確な診断と適切な対応が求められる。

妊婦・授乳婦のかぜのみかた森田　由香 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1448-1450

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はじめに

　かぜ症候群とは鼻腔から喉頭までの上気道に急性の炎症による症状を呈する疾患であり，時としてこの炎症が下気道にまで波及する。妊婦や授乳婦を含めたあらゆる年齢層の健常人に発症し，自覚症状として鼻症状や咽頭痛，発熱，頭痛，全身倦怠感が主体であり一般的に予後は良好である。妊娠期ではこれらかぜ症候群の症状と紛らわしい生理的変化による症状もあり，その見極めが必要となる。一方で，かぜ症候群で認められる咽頭痛や鼻漏，咳嗽，頭痛といった症状はさまざまな重篤な疾患の初期にも生じるため，耳鼻咽喉科医はいわゆるかぜ症状から重篤な疾患の有無を適確に診断し，薬剤投与を含めた適切な治療の要否を判断する必要がある。

【小児のかぜのみかた】

せき・はな・のど型かぜ―普通感冒― 小林　有美子 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1451-1454

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はじめに

　普通感冒とは，「鼻汁・鼻閉・咽頭痛，咳を主な症状とする急性のウイルス感染症」と定義されている^1）。いわゆる子どもの“かぜ”については，ガイドライン上明確な診断基準や治療法が記されているわけではないので医師の判断によって大きく対応が異なり，またかぜという言葉の意味が医療者や保護者間で異なることによって，重症化などをめぐってトラブルも生じうる，というのが小児医療現場の実情である^2）。

はな型かぜ―急性鼻副鼻腔炎― 月舘　利治 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1455-1458

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はじめに

　かぜ（かぜ症候群）は，多くはウイルス感染による急性上気道感染で，通常は自然寛解が期待できる疾患である。はな型かぜは，鼻汁，鼻閉，くしゃみなどの鼻症状が主で，基本的に咽頭痛や咳嗽は認められない病型であり，急性鼻副鼻腔炎に該当する。

のど型かぜ―急性咽頭・扁桃炎― 小森　正博 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1459-1462

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はじめに

　かぜの診断は，鼻閉，鼻汁，咽頭痛，発熱，咽頭の発赤など，病歴と局所所見に基づいて臨床的に行われる^1）。その診断では鑑別すべき疾患は多岐にわたる。基礎疾患の有無，ワクチン接種歴，周囲の感染状況などは病原体の推定に重要である。また，3カ月未満，3カ月から3歳未満では注意すべきことが多い^2）。耳・鼻・のどの視診，頸部の触診だけでなく，時に全身の観察や聴診，触診も必要になる。また，発症初期に受診した場合，かぜの初期症状か，かぜに似たほかの疾患の症状かを鑑別することはしばしば困難で，断定できなければ慎重に経過を診ることが求められる。中には，学校保健安全法上の配慮が必要な疾患も含まれる^3）。

せき型かぜ―急性気管支炎― 鈴木　法臣 , 守本　倫子 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1463-1466

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はじめに

　厚生労働省による「抗微生物薬適正使用の手引き（第三版）」では，“風邪”や“感冒”として病院を受診する疾患を“急性気道感染症”とし，それをさらに米国内科学会（American College of Physicians）による分類に基づき，鼻症状（鼻汁，鼻閉），咽頭症状（咽頭痛），下気道症状（咳，痰）の3系統の症状によって，“感冒（非特異的上気道炎，普通感冒）”，“急性鼻副鼻腔炎”，“急性咽頭炎”，“急性気管支炎”の4病型に分類している（表1）^1）。この分類は成人と学童以上の小児に対して採用され，学童未満の乳幼児では咽頭痛など症状の訴えが不確かであるため，“感冒・鼻副鼻腔炎”“咽頭炎”“クループ症候群”“急性気管支炎”“急性細気管支炎”に分類している。両分類において急性気管支炎の位置づけに大きな違いはない。

急性中耳炎型かぜ湯浅　有 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1467-1470

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はじめに

　中耳腔は耳管を介して上咽頭と交通を持つため，上気道の一部となる。小児は成人に比し耳管機能が悪いため，鼻腔や咽頭からの微生物の侵入により中耳腔の炎症が起きやすい。上気道の中でも鼻腔や咽頭における急性炎症の原因となる微生物の多くはウイルスであるが，一方で続発する急性中耳炎の原因の多くは肺炎球菌やインフルエンザ菌を主体とする細菌感染である。

【原因別の対応】

新型コロナウイルス溝上　雄大 , 木村　百合香 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1471-1474

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はじめに

　新型コロナウイルス感染症（COVID-19）は，当初は重症肺炎として注目されたが，パンデミックの長期化とともに，咽頭痛・鼻汁・咳嗽などを主訴とする“かぜ様症状”を呈する例が多くなり，耳鼻咽喉科外来でも日常的に遭遇する疾患となった。オミクロン株の流行以降は，強い咽頭痛を伴う急性咽喉頭炎や嗄声を主訴とする症例が増加し，診断や治療方針の判断において新たな視点が求められている。

インフルエンザA・B型唐帆　健浩 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1475-1478

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インフルエンザとは

　インフルエンザはウイルスによる急性呼吸器感染症であり，突然現れる高熱，頭痛，関節痛，筋肉痛など全身の症状が強いのが特徴で，併せて咽頭痛や，鼻汁，咳嗽などの症状も見られる。世界的に大流行することがあり，また合併症がある場合には重症化して死に至る可能性もある^1）。

RSウイルス小笠原　徳子 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1479-1483

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はじめに

　RSウイルス（respiratory syncytial virus：RSV）は，特に新生児や乳幼児における細気管支炎や肺炎などの下気道感染症の主要な原因微生物として知られている。ほぼすべての乳幼児が2歳までに一度は感染するとされており，小児医療の現場では極めて一般的な病原体である。一方で，免疫機能が低下した高齢者や基礎疾患を有する成人においても重症化のリスクがあり，近年では高齢者および妊婦を対象としたRSウイルスワクチンの開発が進められている。現在，わが国では2種類のRSウイルスワクチンが販売・使用の認可を受けており，公衆衛生上の関心も年々高まっている。

アデノウイルス文入　悠 , 細谷　誠 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1485-1488

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型と病態─さまざまな臨床症状─

　ヒトのアデノイド組織から分離された^1）ためアデノウイルスと名付けられた経緯があり，耳鼻咽喉科との関連は深い。ヒトに感染するマストアデノウイルス属のヒトアデノウイルス（human adenovirus）は，直径約80nmの2本鎖DNAウイルスで，正十二面体構造をとり，十二面体の各頂点から突き出したファイバーの先端部分が，細胞に結合し細胞内に侵入して増殖する。また，脂質膜であるエンベロープをもたないため感染対策上アルコールの有効性は低い。

ライノウイルス西山　友理 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1489-1491

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ヒトライノウイルスとは

　ヒトライノウイルス（human rhinovirus：HRV）はピコルナウイルス科に属する1本鎖RNAウイルスである。直径15〜30nmの正20面体の構造で，エンベロープはもたない。1956年にPriceとPelonらによって初めて分離され，1963年にTyrrellらによりRhinovirusと命名された。HRVの名前はこのウイルスの感染によって引き起こされる症状が鼻炎を特徴とすることから，ギリシャ語の鼻（rhino-）を意味する言葉に由来する。感冒の原因微生物として最多であり，成人においても小児においてもその30～50％を占める。小児では1.2〜6回/年，成人では0.7回/年HRVに感染する^1,2）。

コクサッキーウイルス，エンテロウイルス藤井　可絵 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1492-1495

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はじめに

　コクサッキーウイルス（coxsackie virus）およびエンテロウイルス（enterovirus）はいずれもエンテロウイルス属に含まれ，手足口病やヘルパンギーナなど夏期に流行する発熱性疾患の代表的なウイルスである。これらのエンテロウイルス感染症は，一般的に予後は良好でほとんどは自然治癒するが，まれに無菌性髄膜炎，脳炎，脳症，心筋炎，肝炎などの重症感染症を起こすことが知られており，注意が必要である^1〜3）。

ヒトパルボウイルス―りんご病― 中下　陽介 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1496-1498

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はじめに

　伝染性紅斑（いわゆる“りんご病”）は，ヒトパルボウイルスB19（Parvovirus B19）によって引き起こされるウイルス感染症で，学童期の小児に多くみられる。典型的な“両頰の紅斑”に加え，発熱，咽頭痛，咳嗽など，耳鼻咽喉科領域でも初診となりうる症状を呈することがあり，特にウイルス性上気道炎との鑑別が必要である。

ヒトメタニューモウイルス内薗　明裕 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1499-1502

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定義と歴史

　ヒトメタニューモウイルス（human metapneumo-virus：hMPV）は，2001年に発見された呼吸器感染症ウイルスで，RS ウイルスと同じパラミクソウイルス科のニューモウイルス亜科，メタニューモウイルス属に分類される^1,2）。

溶血性連鎖球菌宇野　敦彦 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1503-1506

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はじめに

　かぜ症候群とされる急性上気道炎は，多くがウイルス感染によって生じるが，同様な症候でも，細菌感染によって生じる咽頭炎・扁桃炎では抗菌薬治療の対象となるため，鑑別が重要となる。咽頭炎・扁桃炎の原因となる細菌では，A群β溶血性連鎖球菌（Group A beta hemolytic streptococcus：GABHS，あるいはGroup A streptococcus：GAS，本稿ではGASを用いる）の頻度が高く，治療標的として最も重視される。咽頭炎に関連して溶血性連鎖球菌（溶連菌）と呼ぶ場合はほぼGASを意味している。

連載　古典あれこれ

原点を探る―Michel型内耳奇形の初出原著とその引用の精度検証― 松田　信作 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1507-1513

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はじめに

　Michel型内耳奇形は，内耳の発生過程において最も重度の先天性異常であり，蝸牛や前庭，三半規管を含む膜迷路および骨迷路の全構造が欠如する稀な病態である。1863年にMichelにより最初に報告^1）され，内耳奇形の分類の中で最も早期の発生段階に障害が生じた結果と考えられている。Michel型内耳奇形は通常，妊娠第3週から第4週にかけての耳胞形成以前の異常に起因^2〜4）し，重度の感音難聴を伴うとされる。内耳奇形全般については，現代の画像診断技術や分子遺伝学の進展により，診断精度が向上しつつあるが，その病因や発症メカニズムについては未解明な部分も多い。

連載　診療つれづれ

こどものこころのケアセンターを設立して桐野　衛二 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1514-1516

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こどものこころのケアセンター設立の背景

　筆者は，成人も老人も児童・思春期も診るいわゆる一般精神科医で，特に児童・思春期を専門としていたわけではなかった。発達障害，不登校など児童・思春期のメンタル面でのケアを求めるニーズはますます高まっていたが，筆者の所属する静岡県東部地区には児童精神科医を標榜する施設が少なく，どこを受診してよいかわからない保護者や教育関係者が多い状況であった。

連載　ABR―深く理解し，正しく判定するために―

ラット聴覚皮質の誘発電位高橋　宏知 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1517-1521

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はじめに

　筆者が大学院生のころ，医学部の先生方に教わった通りにラットの頭部に電極を取り付け，クリック音を100回ほど提示すると，聴性脳幹反応（ABR）や中潜時反応（MLR）を計測できた。刺激で誘発される脳の電気信号の特定成分に名前を付けるわけだが，工学部出身の筆者は，どうして神経細胞集団の活動電位やシナプス電位が脳の誘発電位として観察されるのか，最初は不思議に思った。当時の思考を辿りながら，筆者がどのように誘発電位を理解したかを紹介したい。

連載　症例をどうみるか

Pott’s puffy tumorに至らず治癒し得た前頭骨骨髄炎症例和田　昂 , 折舘　伸彦 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1523-1527

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はじめに

　Pott’s puffy tumor（以下PPT）は，Sir Percivall Pottが1768年に提唱した疾患概念で，前頭骨骨髄炎を原因として前頭骨骨膜下に膿瘍が形成されることにより前頭部が腫脹した状態のことである。今回われわれは，若年女性の前頭骨骨髄炎症例を鼻外前頭洞手術および内視鏡下鼻副鼻腔手術を施行しPPTまで至らずに治癒し得たので若干の文献的考察を加えて報告する。

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目次 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1410-1411

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学会・研究会予定 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1424-1424

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バックナンバー 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1478-1478

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学会・研究会予定 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1522-1522

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次号予告 41巻11号 , 2025年11月 , pp.1528-1528

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基本情報

JOHNS
41巻11号
(2025年11月発行)

電子版ISSN：印刷版ISSN：0910-6820 東京医学社

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