胃と腸 30巻5号 (1995年4月)

今月の主題 colitic cancer―微細診断をめざして

序説

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 colitic cancer(潰瘍性大腸炎を母地にして発症した大腸癌)は,潰瘍性大腸炎に罹患した症例のうち,全大腸炎型で発症から10年以上を経過した症例で合併する率が高くなると言われている.

 colitic cancerは早期診断が難しく,予後が著しく不良であったが,直腸生検によるdysplasiaの証明がcolitic cancerのマーカーとして注目されるようになり,潰瘍性大腸炎発症後8~10年を経過した全大腸炎(~左側大腸炎)を対象に,年1回の定期的surveillance colonoscopyと生検(隆起性病変と10cm間隔で採取)を施行し,癌あるいはdysplasiaを証明することが,colitic cancerによる死亡の減少,予防に,最も有効な方法と考えられ,欧米のセンター的病院を中心に行われてきた.また,病理診断に関してはRiddellらを中心としたDysplasia Morphology Study Group(DMSG)が作成した診断基準が広く用いられている(Hum Pathol 14: 931-968, 1983).

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要旨 潰瘍性大腸炎症例を対象として,①dysplasiaの出現頻度,②腫瘍性病変のX線・内視鏡所見,および③腫瘍性病変におけるX線像の経時的変化を検討した.①surveillance colonoscopyで採取された121生検標本中,dysplasiaが20標本にみられ,このうち17標本は顆粒状粘膜ないし結節状隆起から採取されていた.②腫瘍性病変を合併した10症例21病変は,内視鏡上明らかな隆起性病変11病変,顆粒状粘膜6病変,隆起と顆粒状粘膜の混在2病変,陥凹と顆粒状粘膜の混在1病変に分類可能であったが,粘膜内癌1病変は内視鏡上同定できなかった.③3例4病変のX線所見の遡及的検討では,3病変が活動期あるいは寛解期の粘膜から顆粒状粘膜として発生し,2病変では顆粒状粘膜が内視鏡診断に1年ないし6年先行して認められた.以上から潰瘍性大腸炎における腫瘍性病変の診断には隆起性病変と顆粒状粘膜に注目することが重要と思われた.この粘膜面の微細な変化はX線検査でも描出可能であるので,特に寛解期においては色素内視鏡を用いた内視鏡検査と二重造影法によるX線検査を併用することが本症における潰瘍性病変の診断上重要と考えられた.

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要旨 潰瘍性大腸炎(UC)に合併したdysplasia(粘膜内上皮性腫瘍:粘膜内癌を含む)を中心に,その肉眼像,実体顕微鏡観察下の微細表面性状を検討し,生検組織診断について考察した.dysplasiaは肉眼的には,45.8%(11/24)が隆起であり,褐色~黄褐色調を呈するものが19/24(79.2%)を占めた.pit patternの大部分はIBD非合併大腸粘膜にみられる腺腫,粘膜内癌のそれらと類似していた.dysplasiaの多くは,内科的治療によりUCを寛解期に導入したうえで,隆起もしくは発赤に注目し,同部のpit patternを観察することで内視鏡的に捉えることが可能であると考えられた.UC粘膜の生検組織診断に際しては,dysplasiaと炎症(再生)異型,UC粘膜内に発生した通常型腺腫との鑑別が問題となる.これらの鑑別には,病理学的にはp53免疫染色が有用な補助手段となりうると考えられた.

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要旨 長期経過した潰瘍性大腸炎(UC)では大腸癌のリスクがある.その対策としてわれわれの行っているUCサーベイランスの方法を述べ,具体例を通じて成果・問題点を提示した.UCサーベイランスの精度向上には,①確実に1年ごとに検査すること,②緩解期に内視鏡検査をすること,③平坦粘膜からも生検すること,④些細に見える病変にも注意を払うこと,⑤表面パターンの観察,色素法などを併用すること,などが重要であると思われた.更に今後の問題として,よりhigh riskな症例を選択する補助診断法の確立が望まれる.

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要旨 全結腸炎型の潰瘍性大腸炎の経過中に内視鏡検査,X線検査で比較的大きな平盤型病変を8つ認め,それらの中の1つが生検でGroup4の診断であったため結腸全摘術が行われた.これらの平盤型病変のX線所見は丈の低い病変であり,m癌の1病変は不揃いな結節状を呈していた.異型上皮は均一な顆粒状を呈していた.内視鏡通常観察でこれらの平盤型病変を見出すには,粘膜の光沢の変化に注意する必要がある.光沢の変化を認めた場合には色素撒布により病変は明瞭となる.m癌の1病変では発赤と不均一な結節が認められた.

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要旨 患者は29歳,女性.9歳時に潰瘍性大腸炎と診断され,以後20年間下痢,血便の緩解,再燃を繰り返した.今回,1994年4月の注腸X線検査では左半結腸が著明に短縮,狭細化した左側結腸型潰瘍性大腸炎の像を示し,直腸に隆起性病変を認めた.直腸の病変は内視鏡検査で,扁平な隆起とその周囲の凹凸不整粘膜から成り,生検で分化型癌と診断された.結腸全摘標本で直腸に5.0×3.2cmの大きさの,一段と高い隆起部分と平坦に隆起した不整粘膜から成る隆起性病変を認めた.病理組織診断では,癌は隆起の表面と不整粘膜面に拡がり,一段と高い部分は,癌の粘膜下層以下の膨張性浸潤により押し上げられた所見であった.癌の組織型は高分化腺癌,癌の粘膜下の浸潤は固有筋層に達していた.リンパ節に転移は認めなかった.癌の周囲,その他の部位にdysplasiaの粘膜面を認めなかった.

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要旨 潰瘍性大腸炎診断後6か月で大腸癌を認めた症例を経験した.患者は66歳,女性で,貧血を主訴に来院し,全結腸炎型の潰瘍性大腸炎と診断され,6か月後の大腸内視鏡検査で多発性ポリープを指摘され,手術を施行した.切除標本では3個のm癌と,3個の腺腫内癌,および24個の腺腫を認めた.潰瘍性大腸炎に伴う大腸癌は全結腸炎型で10年以上経過例に多いとされるが,本症例は6か月で癌を認めた点で珍しい.また,多数の腺腫の中に癌を認めたが,いずれもm癌であった.潰瘍性大腸炎においては観察期間が短くても,腺腫を認める場合は癌病変の存在を念頭に置き,詳細に頻繁に観察をし,生検で癌と診断されたら,早急に手術を含めた積極的な治療を施行すべきである.

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要旨 潰瘍性大腸炎(UC)に合併した大腸癌2例を呈示した.〔症例1〕は66歳,女性.経過20年の全大腸炎型のUCで,偶然の理由から内視鏡検査を施行し,S状結腸に径3cmの扁平隆起が認められた.病変はこのほかに2個認められたが,すべて粘膜にとどまる腫瘍性病変であった.〔症例2〕は44歳,女性.経過21年の全大腸炎型の難治性UCとして紹介されたところ,術前検査で下行結腸に異常形態を指摘され,あたかも炎症性ポリープの集簇のごとくであったが,表面パターンはvillous tumorに類似するため内視鏡的に腫瘍と診断し,生検で確認された.UC合併大腸癌のサーベイランスにおいて,異常形態が認められた場合には,その表面のパターンを詳細に観察することにより,内視鏡的に診断可能であることが示唆された.

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要旨 患者は43歳,女性.20歳時に潰瘍性大腸炎を指摘された.1989年9月初め,下痢,血便を認めた.注腸X線検査で全大腸型潰瘍性大腸炎およびS状・下行結腸部の狭窄と辺縁不整像を指摘され,10月3日入院.内視鏡検査では,狭窄部に発赤した不整形陥凹を認め,その周囲に白色調扁平な領域を伴っていた.生検で高分化腺癌の診断を得,11月15日手術を行った.切除標本の病理学的検索では大きさ11.3×6.7cm,深達度sの4型の高分化腺癌であった.内視鏡像と組織像との対比では,粘膜内癌巣は発赤した不整形陥凹部と,その周囲の褪色と一部びらんを伴う白色調扁平な領域に一致した.病理学的検索では,発赤した陥凹部の組織像は高~中分化腺癌で,周囲の白色調扁平部分はRiddellのhigh-rade dysplasiaに相当する高分化腺癌であった.以上から,X線・内視鏡診断上ならびに癌の発育進展のうえで興味ある症例と考え報告した.

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要旨 患者は60歳の女性.全大腸炎型(再燃緩解型)の潰瘍性大腸炎で,定期的な内視鏡検査で大腸癌が診断された.切除標本で,癌は中・低分化腺癌と印環細胞癌が混在する進行癌を下行結腸に,m癌を上行結腸に認めたが,他の部位にdysplasiaは認められなかった.進行癌の内視鏡像は辺縁不整で発赤が強くない,浅い陥凹性病変であった.深達度診断は内視鏡像や注腸造影像では一見早期癌のように見え困難であったが,超音波内視鏡による深達度診断は標本病理所見と一致しており有用であった.

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要旨 患者は31歳,男性.1982年10月から血性下痢が出現し,翌年全結腸型潰瘍性大腸炎と診断された.その後,salazosulfapyridine投与のみで明らかな再燃はなかったが,発症後約8年目の大腸X線・内視鏡検査で,中部直腸に約半周性の軽度発赤した平坦な結節集簇様病変を認めた.手術で,大きさ35×30mmの平坦な隆起性病変で,大小の結節が集簇していた.病理組織学的には中等度異型を伴う管状絨毛腺腫で,癌の部分は認めなかった.病変周囲粘膜は萎縮が著明で,病理組織学的にも寛解期の潰瘍性大腸炎に合致し,dysplasiaは認めなかった.なお,遡及的検討で,3年前のX線検査では,同部位に22×22mmの不整な顆粒と小結節が集簇する病変を認めた.

主題症例をみて

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 長期経過した慢性大腸炎に大腸癌が高率に合併する.その癌をcolitic cancer(大腸炎関連大腸癌)という.colitic cancerは普通の大腸癌(common cancer)に比べて,予後の悪いことが多い.肉眼的にびまん性であり,組織学的に未分化であることが多いからである.したがって,colitic cancerを早い時期に診断することは極めて大切なことである.本特集は,大腸癌のない大腸(noncolitic colon)におけるように小さな平坦・陥凹型腫瘍がどの程度診断しうるようになったかを知ると共に,問題点があればそれの解決のポイントを探ろう,ということを目的に企画された.

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 「coliticcancer―微細診断をめざして」の特集に寄せられた“術前に診断できた潰瘍性大腸炎に合併した癌ないし腺腫”の貴重な8症例をみて,正確にはゲラを通覧して,二,三の感想を述べてみたい.

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〔患者〕36歳,男性.同性愛者.1990年7月から全身倦怠感出現.9月から粘血便が出現し,他院で大腸内視鏡を施行し潰瘍性大腸炎と診断され,1991年1月上行結腸切除術を受けた.このとき,梅毒血清反応陽性,HIV抗体も陽性であったため,同年3月当院感染症科に転院となった.入院時,全身に疥癬の皮疹存在,硬口蓋に発赤を示す腫瘤を認めた.

〔胃内視鏡所見〕第1回目入院時,1991年4月に初回内視鏡検査を施行した.硬口蓋には暗赤色で約2cmの半球状の腫瘤が,数個集合していた(Fig.1).生検組織からカポジ肉腫と診断された.そのとき,穹窿部前壁にangioectasia様の約2mmの発赤を認め(Fig.2a),色素撤布(インジゴカルミン)による観察によると,その中央がやや陥凹しているように見えた(Fig.2b).硬口蓋のカポジ肉腫は放射線照射で治療し,6か月後の第2回目の内視鏡施行時には,腫瘍の縮小をみた.一方,胃の所見では,前回angioectasia様の発赤のあった宥隆部前壁には,直径約1.5cm,山田Ⅱ型を呈し,まだらな発赤を有する隆起性病変を認めた.隆起の中央には陥凹がみられた(Fig.3).そのほかに,胃体中部大彎にも,大きさ約1cmの類似した所見の隆起性病変を認めた(Fig.4).

これらは,生検組織からすべてカポジ肉腫と診断された.

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〔患者〕49歳,女性.主訴:肛門部不快感.既往歴,家族歴に特記すべきことはない.1970年ごろから肛門部に不快感を自覚していたが放置していた.1988年ごろから排便時に粘液の排出を認め,池田町立病院を受診,直腸ポリープと診断され手術を予定したが,悪性の確診が得られず痔の治療を行っていた.1993年9月から症状の悪化が認められたため,1993年11月22日当科に紹介入院となった.なお,排便時間は15~20分と長く,排便時のいきみも強い.

〔注腸X線所見〕下部直腸後壁側(病変A)と中部直腸前壁左側寄り(病変B)に2個の粘膜下腫瘍様隆起性病変を認める(Fig.1).病変Aの隆起頂部にはバリウム斑を認め(Fig.1,矢印),病変Bはなだらかな立ち上がりを示している(Fig.2).直腸下部前壁側には病変Bから連続するように隆起性病変(病変C)を認める.病変Cは病変A,Bとはやや異なり,比較的明瞭な立ち上がりを有し,隆起頂部にはバリウム斑を認める.また,病変Cから後壁側へ延びる線状のバリウム斑と,その先端に皺襞集中を伴った,潰瘍と考えられる浅いバリウム斑(病変D)を認める(Fig.3).明らかな偽憩室形成や縦走する索条の粘膜ひだの所見は認めない.

レベルアップ講座 診断困難例から消化管診断学のあり方を問う

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 回盲部に発生したⅡa型早期大腸癌症例について,遡及的に3年前の注腸X線フィルムを見直してみると,既に病変が存在していることが確認された.そこで3年前の諸資料を俎上に上げて,診断上の反省点について述べる.

 症 例 患者は77歳,女性.1983年に直腸癌に罹患し,外科手術を受けた既往歴がある主婦である.1990年に人間ドック検診を受診した際,便潜血検査陽性を指摘されたため注腸X線検査を行った.このとき,下行結腸に亜有茎性ポリープを指摘したのでtotal colonoscopyを試みたが,回盲部については特に異常は診断されず(Fig.1),下行結腸ポリープ(腺腫)に対してのみ内視鏡治療を行った.

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要旨 患者は73歳,男性.心窩部不快感を主訴として当科に入院.内視鏡検査で小膨隆白色斑の集簇と発赤した浅い陥凹を認めた.これらの部分はヨード撒布で,ヨード不染帯を示した.食道二重造影像では下部~中部食道(Ei~Ⅰm)に顆粒状粘膜を認め,その口側には少し濃いバリウムの付着を認めた.0-Ⅱa+Ⅱc型食道表在癌,深達度mmと診断した.切除標本では,97×45mmの大きさの病変を認め,胃側には白色小結節状の少し隆起したⅡa部分とその口側には浅い陥凹を示すⅡc部分があり,これらの部分はヨード不染帯を示した.病理組織診断は,高分化型扁平上皮癌でⅡaの部分はverrcous carcimomaの発育形態を示し,深達度はmm3,Ⅱcの部分は深達度epとmm1であった.

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要旨 患者は50歳,女性.約6年前から右下腹部痛,嘔気出現.腹部単純X線検査で上行結腸から下行結腸にかけて腸管に沿った線状の石灰化像,注腸透視で上行結腸から横行結腸にかけ半月ひだの消失,管腔の狭小化を認めた.大腸内視鏡検査では同部位で粘膜は粗い網目状に暗青色を呈し,浮腫状で浅い小潰瘍が散在していた.腹部CTで結腸壁の肥厚とその周囲血管壁の石灰化がみられた.以上から静脈硬化症による虚血性腸疾患と診断された.結腸亜全摘術を施行したが,組織学的にも静脈の硬化を認めた.本疾患は非常にまれであり,更に母親も同疾患で手術をしており,家族発症した症例はいまだなく,内視鏡的に経過を追えたこと,術前に診断しえたことから貴重な症例と考え報告した.

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要旨 直腸カルチノイド15例(sm:13例,mp:2例)を経験し,超音波内視鏡(EUS)の有用性につき検討した.術前にEUSを用いて壁深達度診断およびリンパ節転移の有無について検索しえたのは12例(sm:10例,mp:2例)であり,長径4mmのsm症例の1例は描出不能であったが,他のsm症例は全例SMと術前診断され,mpの2例はMPとA1以深に診断されていた.直腸カルチノイドは,mp以深に浸潤するとリンパ節転移,遠隔転移を起こしやすいため,mp以深の壁深達度かどうかの判定が,治療方針決定に重要であった.また,sm症例の中でも浸潤増殖範囲がsm浅層の場合は内視鏡治療で治癒が望め,sm層に深く浸潤する場合は外科的治療が必要である.EUSによる術前壁深達度診断は正診率が高く,7.5MHz-EUSと1.2MHz-EUSを用いることによりsm層内における浸潤の程度や増殖形態も推測可能であった.これらの結果から,EUS診断は直腸カルチノイドの治療法選択に有用であると考えられた.

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欧文目次

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 質問 胃癌に対する内視鏡治療に積極的に取り組んでいますが,1cmを超えた大きさの未分化型腺癌の治療は適応外であるとされています.そこで,内視鏡治療の適応となるような微小(5mm以下)な未分化型腺癌を内視鏡検査で発見するコツがあればご教示下さい.(金沢市・YK生)

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 Omeprazole or ranitidine in longterm treatment of reflux esophagitis: Hallerbak B, Unge P, Carling L, et al (Gastroenterology 107: 1305-1311, 1994)

 逆流性食道炎の初期治療におけるomeprazoleの治療効果については異論のないところで,H2受容体拮抗剤より優れていると認織されている.一方で薬剤投与中止後の再発は必発で,それゆえ安全でかつ有効な維持療法が必要と考えられる.そこで今回,著者らは初期治療後の各種酸分泌抑制剤(omeprazole,ranitidine)による維持療法の再発率につき検討し,加えて胃底腺粘膜の内分泌細胞や血清ガストリン値に及ぼす影響を指標として,それら薬剤の安全性についても検討した.

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 Nonsteroidal antiinflammatory agents in chemoprevention of colorectal cancer: At what cost?: Trujillo MA, Garewal HS, Sampriner RE (Dig Dis Sci 39: 2260-2266, 1994)

 大腸癌は,アメリカで2番目によくみられる悪性腫瘍である.1993年には,およそ152,000人の新しい大腸癌患者が発生し,57,000人が死亡した.50歳以上の人は,およそ5%の確率で大腸癌になり,2%の確率で死亡する.しかし,早期の病変は極めて治療成績が良好で,死亡率は20%である.進行した転移のある場合には治癒することはなく,罹患率,死亡率を減少させる最も有望なアプローチは予防にある.癌の予防への1つのアプローチに薬剤を使用する化学的予防がある.piroxicam,sulindac,indometacin,aspirinのような,非ステロイド性の抗炎症剤(NSAIDS)が最も有望な薬剤とされている.本論文では,NSAIDSの既に知られている副作用と,化学的予防から得られる利益の面から文献的に検討した.

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 上部消化管検査の方法には,X線による二重造影法と内視鏡検査がある.これらの2つの検査に軽重はなく,いずれも大切な検査である.この度,吉田裕司博士の書かれた「胃X線撮影技術の基礎と応用」は,優れたX線像を得るための,X線二重造影法の撮影技術の具体的方法について述べたもので,この本ほどわかりやすく記述されたものは珍しい.

 著者は,胃X線診断の基本的考え方として,「胃X線診断の考え方と進め方」を出版し,読影法と鑑別診断については,「胃X線読影の基本と実際」を出版している。今回の著書は,いわばまとめであり,胃X線診断も読影も鑑別診断も,すべて優れた胃X線像あってのものであるとの立場で書き進められている.しかも,単なる技術・手技の記述にとどまらず,著者の努力の過程や繰り返し繰り返し反省する粘り強い心の葛藤までも余すことなく述べられている.この姿勢は読者に訴えるところが絶大であると思う.また,それゆえに本書が単なる技術指導書と異なる点である.

編集後記 岩下 明徳
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 潰瘍性大腸炎に合併する癌は,「胃と腸」誌でも約10年前に1度「潰瘍性大腸炎と大腸癌」という主題で特集(21巻9号)が組まれている.その号は,わが国の潰瘍性大腸炎に合併した癌の実態を明らかにすることを主目的として企画されており,ほぼその目的を達成しているように思う.

 本特集号の表題は「colitic cancer―微細診断をめざして」である.つまり,わが国でも潰瘍性大腸炎長期経過例の増加に伴い,合併癌症例の増加が予想かつ懸念されている状況にあり,この合併癌をいかに早期の段階で発見するか,その形態診断学体系の確立をめざして本号が編集されたわけである.

基本情報

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胃と腸
30巻5号 (1995年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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