胃と腸 30巻4号 (1995年3月)

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はじめに

 この特集が成り立つかどうかを調べるため,1985年1月から1994年7月までの最近10年間の本邦報告例をJICSTで調べてみた.重複して報告されたものと症例呈示のない総説を除くと,学会抄録97編,症例報告120編,総説15編,計232編が選び出された.

 以上のデータから本特集号は編集できると判断したのだが,この資料の一部を呈示し,序説に代えたい.

 なお,総説15編中に呈示された42例は記載に不備なものが多いのでこれを除き,学会抄録97編127例,症例報告120編132例,計259例を分析の対象とした.

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要旨 腸結核は今なお臨床の場で忘れてはならない疾患の1つである.その診断は,病歴・臨床症状から,主としてX線や内視鏡による形態学的診断によって行われる.それらにより特徴的所見が得られたり,病理組織学的に特徴的所見が得られた場合には診断は容易である.非特異的な所見しか得られない場合,鑑別が困難な症例においては結核菌感染の証明が不可欠である.従来の培養同定法における時間および感度の問題を解決するため,PCR法による結核菌特異的genomeの証明や,抗cord factor抗体などの特異的診断法が応用されている.その方法の特徴および限界を熟知すれば極めて有用な診断法となる.

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要旨 腸結核診断の現状を明らかにするために,平成以降(1989年以降)に当科で経験した活動性腸結核6例の臨床成績を検討した.5例は50歳以上で,2例は無症状で大腸がん集検により拾い上げられた.肺結核の既往,初診時活動性病変はそれぞれ1例にみられたのみで,2/3の症例は原発性腸結核と思われた.ッベルクリン反応が陽性を示したのは半数のみだった.X線的には大腸癌,Crohn病との鑑別を要したのが1例ずつあった.3例で病変部から結核菌を検出できたが,乾酪壊死は1例にも証明できなかった.他の3例も形態学的特徴と治療効果から確診とした.今後も結核罹患率低下の鈍化が続くことが予想され,腸結核の存在を常に念頭に置いて診療に当たる必要がある.

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要旨 腸結核のX線像は基本的には,①個々の潰瘍の形態(代表的なものは帯状潰瘍),②潰瘍搬痕を伴う粘膜萎縮帯,③変形(大腸の場合はhaustraの消失,腸管長軸方向への短縮,狭窄,憩室様変形,タッシュ様変形など)の3つに要約できる.鑑別すべき主な疾患としてはCrohn病,潰瘍性大腸炎,虚血性腸炎が挙げられるが,鑑別診断上参考になる事項としては,①潰瘍性病変の方向性(腸結核では横軸方向,Crohn病や虚血性腸炎では縦軸要素の潰瘍),②病変の罹患部位(小腸の場合,腸結核では腸間膜付着対側,Crohn病では腸間膜付着側に潰瘍は好発する)と共に,③画像の経時的変化の観察が挙げられる.それでもなお確診がつけられず,どのように治療すればよいかとまどう症例があり,これらの症例をどのように取り扱うかが今後の問題である.

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要旨 大腸結核症例のうち活動期病変を有する16例のX線および内視鏡所見について検討した.活動期の潰瘍の形態は,不整びらん型88%,輪状型69%,不整型63%,アフタ様びらん型44%などが観察された.活動期病変を有する場合でも周辺に瘢痕萎縮帯や炎症性ポリープ,腸管の短縮,回盲弁の開大などを伴うものが多い.非活動期では多発潰瘍瘢痕,偽憩室,回盲弁の開大などが特徴的であった.活動期病変で結核菌が証明されたものは16例中8例(50%)で生検組織の培養が有用であり,肉芽腫は5例(31%)に証明された.腸結核のX線および内視鏡診断は,主病変のみならず周辺に結核の特徴を見出すことが大切である.

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要旨 腸結核における遺伝子診断の有用性について,17例の腸結核患者(非手術例12例,手術例5例)を対象に検討した.方法は生検および外科手術標本のパラフィンブロックから薄切標本を作製してDNAを抽出し,polymerase chain reaction(PCR)で増幅した後,制限酵素で消化してrestriction fragment length polymorphism(RFLP)のパターンから結核菌を同定した.生検組織標本においては12例中8例が陽性を示し,感度は66.7%であった.それに対して,非腸結核症例29例ではいずれも陰性で,特異度は100%,有用度は90.2%であった.従来の生検組織診断と結核菌培養との組み合わせにより,12例中11例(91.7%)で結核の診断が可能であり,PCR-RFLP法は腸結核の補助診断法として有用と考えられた.一方,外科手術標本では5例いずれも陰性で,長時間ホルマリン液に浸したことが原因と考えられた.本法の感度を更に向上させるためには新鮮組織標本での検討が必要と思われた.

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要旨 67歳,女性.肺結核の既往はない.近医での注腸X線検査で横行結腸の異常陰影を指摘され入院.注腸X線検査で盲腸から横行結腸にわたりhaustraの消失,盲腸の変形,伸展不良像,上行結腸の軽度短縮,壁硬化像,瘢痕萎縮帯を認めた.横行結腸右側に分葉状広基性隆起性病変,およびその周辺には半球状の小ポリープが散在性に認められた.大腸内視鏡検査では盲腸に多発潰瘍瘢痕と偽憩室形成を認め,横行結腸に径約25mmの分葉状扁平隆起型腫瘍を認めた.その周囲を含め上行結腸から横行結腸まで粘膜の萎縮が著明であった.大腸結核瘢痕部に合併した早期大腸癌と診断し,右半結腸切除術を施行した.組織学的には腺管絨毛腺腫内癌で,粘膜下層に線維化を認めた.

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要旨 患者は56歳,女性.17歳時に肺結核の診断で治療歴あり.便潜血反応陽性のため精密検査目的に受診した.胸部X線検査では陳旧性肺結核の所見を示した.大腸内視鏡検査で,右側結腸の萎縮瘢痕帯および炎症性ポリープと盲腸の潰瘍性病変を認めた.そのほかに中等度異型腺腫を認めた.右半結腸切除術が施行された。上行結腸は短縮し,盲腸に23×22mmの潰瘍性病変を認めた.盲腸部の病変は,病理組織学的に中分化腺癌から成り,癌の側方および深部の先進部に非乾酪性の結核結節を認め,結核結節内に癌細胞が混在した.腸結核病巣内に合併した上行結腸mp癌であった.

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要旨 患者は,79歳,男性で便潜血陽性を主訴に来院.注腸検査,大腸内視鏡検査で,盲腸部の偽憩室形成,上行結腸の短縮を認め,陳旧性腸結核が疑われ,また,上行結腸肝彎曲部に粘膜集中を伴う陥凹性病変を認めた.生検の結果,中分化腺癌と診断され,右半結腸切除術が施行された.切除標本では,上行結腸肝彎曲部に大きさ35×30mmの潰瘍浸潤型の病変を認めた.癌の組織型は中分化腺癌が主体で一部未分化像を示し,深達度は漿膜下層までであった.切除標本の全割検索により,上行結腸から盲腸部にUl-Ⅲの潰瘍瘢痕と,癌の近傍にUl-Ⅱの潰瘍瘢痕を認めた.乾酪性,非乾酪性肉芽腫は認められず,異型上皮も認められなかった.

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要旨 患者は43歳,女性.主訴は発熱,水様性下痢.約2か月間近医で対症療法を受けていたが,低蛋白血症,貧血を呈するようになり,当科紹介入院となった.注腸造影・大腸内視鏡検査では上行結腸に潰瘍を伴うcobblestone-like appearanceを認め,横行結腸にskip lesionを認めた.Crohn病を疑いIVHおよびSalazopyrin投与で加療したが病状の改善を認めなかった.1か月後,2回目の大腸内視鏡検査での生検で乾酪性肉芽腫を認め,大腸結核と確診した.抗結核剤の投与により,臨床症状および注腸・内視鏡像は改善した.本症例はcobblestone-like appearanceを認め,Crohn病と大腸結核を鑑別するうえで示唆に富む症例であると考えられた.

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要旨 患者は64歳の女性.左下腹部痛を主訴に来院.大腸内視鏡検査でS状結腸と横行結腸に粘膜下腫瘤様の隆起と潰瘍を伴う病変を認めた.生検で類上皮性肉芽腫を認め,腸結核と診断された.更に横行結腸の潰瘍にカニューレを挿入,バリウムによる注腸造影を施行したところS状結腸が造影され,腸結核による痩孔形成と診断した.rifampicinとisoniazidの投与で,左下腹部痛は改善し,瘻孔も消失した.瘻孔を形成した腸結核を大腸内視鏡での瘻孔造影で診断しえた症例を経験したので報告する.

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要旨 患者は78歳の女性.下腹部痛,腹水を主訴として来院.腹水はリンパ球優位の滲出液で,ほかに血清CA125の上昇が認められた.結核性腹膜炎を疑い原因病変の検索のため全消化管の精査を行ったが,消化管の病変は回腸末端に微小な潰瘍を認めるのみであった.腹腔鏡検査では回盲部腸管の漿膜側に白色調の小結節が散在しており,その生検組織上,乾酪性肉芽腫が認められた.以上のことから,微細な腸結核病巣から腹膜炎を来した症例と考えられた.腹部結核は一般に,消化管に病変を有する腸結核と,消化管に病変を有さない腹膜結核に分類され,後者の感染経路は十分に解明されていない.消化管病変のない腹膜結核の中には,詳細な検索を行えば,このような微小な消化管病変が発見される可能性もあると考え報告した.

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要旨 患者は74歳,男性.69歳ごろから腹部不快感のため,毎年注腸造影検査を受けていたが,特に異常は指摘されていなかった.1988年,74歳時に施行した注腸造影検査で上行結腸のひだ集中を伴う陥凹性病変が指摘され,内視鏡検査でもひだ集中の目立つ地図状陥凹性病変が観察された.3回の生検でも裏付けは得られなかったが,画像診断から進行大腸癌の疑診で外科的に切除術を施行した.開腹時,腹腔内はケシ粒大から大豆大までの多数の結節が認められ,特に骨盤腔で著明であった.切除標本では上行結腸の病変は1.2×1.2cm大の地図状陥凹性病変であり,陥凹底は不揃いのgranularな変化が目についた.病変部の組織学的診断は結核であった.腹腔内の結節性変化も乾酪壊死を伴った肉芽腫から成る結核結節であることが確認され,腸結核を伴った結核性腹膜炎と診断された.

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〔患者〕79歳,女性.主訴:黒色便.現病歴:白内障の手術のため入院中,大量の黒色便をみるようになった.この間,腹痛や悪心,嘔吐はみられず,食欲も良好であったが,10日間にわたって黒色便が続き,しだいに体動時に心悸亢進がみられ,全身倦怠感が著明となった.受診時,RBC125×104/mm3,Hb4.4g/dl,Ht12.6%であった.上部消化管内視鏡検査を施行したが出血源は認められなかったので,続いて消化管出血シンチグラフィーを行ったところ,上部空腸にRI集積が認められた.腹部血管造影検査では,SMA造影で空腸に大きさ約3cmの血管に富む腫瘍陰影が確認され,空腸腫瘍からの出血を疑った.

〔小腸X線所見〕半充満像で上部空腸に,中心に深い潰瘍を有する4×3cmの楕円形の腫瘍陰影を認めた(Fig.1).二重造影では腫瘍は立ち上がり急峻で,中心に陥凹と思われる不整形の二重輪郭像が確認された(Fig.2,3).

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〔患者〕54歳,女性.心窩部痛を主訴に来院.

〔胃X線所見〕腹臥位二重造影法では胃体中下部の前壁大彎寄りに3.8×2.4cm大の不整形の浅いバリウム斑を認め,粘膜ひだ集中を伴っている.空気少量の二重造影像(Fig.1)では,集中する粘膜ひだは陥凹部の辺縁で中断ないし先細りを呈し,先端部分は一部で棍棒状の腫大,接合様の所見が認められる.しかしながら,空気を増量した二重造影像(Fig.2)では病変部と共に粘膜ひだは伸展され,粘膜ひだの先端の腫大所見もほぼ平坦化され,接合様のひだも一部を除き分離されている.陥凹部は不整形で,健常部との境界は明瞭であり,一部では鋸歯状を呈している.微細な観察では粘膜ひだの先端に蚕喰像もみられる.陥凹底にはやや大型の比較的形の揃った不整円形の顆粒が約10個ほど散在性にみられる.顆粒部以外の陥凹部は微細顆粒状から無構造である.

レベルアップ講座 診断困難例から消化管診断学のあり方を問う

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症例 患者は83歳,男性.1993年10月ごろから便秘傾向と血便が出現したため林医院を受診し,精検の結果,直腸癌と診断された.当院第2外科に手術目的で1994年1月12日入院した.注腸X線検査では,中部直腸左側壁に27×24mm大の隆起性病変を認める.病変は分葉し,中央にはバリウムの溜まりを伴っている(Fig.1a).腹臥位では壁の変形と,側面像でニッシェ様の毛羽立ち像を認める(Fig.1b).X線上はsm2癌と診断した・大腸内視鏡検査では,中部直腸に立ち上がりが明瞭な隆起性病変を認め,X線検査で認められたバリウムの溜まり,側面像のニッシェ様の所見は隆起の谷間と考えられた.色素撒布像と合わせても腫瘍は全体に柔らかい印象で,大きさからsm1と診断した(Fig.2a,b).同時に施行した細径超音波プローブ検査(病変中央部付近でのスキャン)では粘膜筋板が描出され,かつ保たれており粘膜内癌と診断した(Fig.3a,b).X線的にsm癌が否定できないためtranssacral resectionで外科的に切除した.病理組織学的には粘膜内に限局する高分化腺癌(ly0,v0)であった(Fig.4).

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要旨 64歳,男性の逆流性食道炎を合併した食道乳頭腫の1例を経験したので報告した.食道造影と食道内視鏡検査では,胸部中部食道後壁に径2cmの表面顆粒上の隆起性病変がみられた.病変部はヨード染色で染色された.トルイジンブルー染色では逆流性食道炎のために部分的に染色された.病変部の生検では食道扁平上皮乳頭腫であった.病変部の完全生検のため,内視鏡的粘膜切除術(EMR)が内視鏡的粘膜切除用チューブ法(EEMR-tube法)により施行された.病変部は本法により完全にかつ安全に1回で切除された.組織学的診断は食道の扁平上皮乳頭腫であった.EMRは本例の診断と治療に対して非常に有用であった.

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要旨 患者は64歳の男性で,黒色便を主訴に当科に来院した.胃X線検査および胃内視鏡検査で胃体中部小彎にbridging foldを有する正常粘膜で被覆された母指頭大の粘膜下腫瘍様隆起を認めた.頂部には不整形の浅い陥凹がみられ,この辺縁にⅡC様の蚕食像が認められた.陥凹からの生検で低分化腺癌の組織が得られ,EUSでは隆起部に一致して第4層まで達する腫瘤がみられたことから進行胃癌と術前診断した.切除標本の病理学的検索では隆起を形成していたのは粘膜下層を主体に発育し漿膜下層に及ぶ低分化腺癌であった.粘膜下腫瘍様形態を呈する胃癌の診断には胃X線検査および内視鏡検査による詳細な観察が重要であると考えられた.

早期胃癌研究会

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 1994年11月の早期胃癌研究会は,11月16日,望月福治(仙台市医療センター消化器内科)と長廻紘(東京女子医科大学消化器内科)の司会で開催され,6例が供覧された.

 〔第1例〕70歳,男性.食道表在癌(0-Ⅱc)(症例提供:都立駒込病院内科 門馬久美子).

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要旨 患者は43歳,男性.気管支喘息初発6か月後から腹痛,下痢を主訴に当院へ入院した.入院時から,発熱と下腿の紫斑性皮疹がみられた.消化管内視鏡検査で胃,十二指腸,大腸に浅い不整形の潰瘍が多発していた.血液検査では,著明な好酸球増加とIgE高値,RA陽性,血沈亢進を認め,消化管および皮膚生検で,好酸球浸潤を伴う肉芽腫様血管炎の所見を認め,Churg-Strauss症候群と診断した.IVHとステロイド治療によって,諸症状と多発潰瘍は速やかに消失し,好酸球数とIgE値は正常化した.広範な消化管病変を来したChurg-Strauss症候群は文献的にもまれであり報告した.

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要旨 患者は43歳,男性.突然の右下腹部痛を主訴に来院.筋性防御を伴う圧痛を認めることから急性虫垂炎穿孔による腹膜炎を疑い,緊急手術を施行した.手術所見では,虫垂周囲に大網の癒着を伴い,これを剥離すると著明に腫大した虫垂があり,ほぼ中央部に穿孔を認めた.切除された虫垂は全長5.5cm,直径3.5cmと棍棒状に腫大していた.病理組織学的には,虫垂壁は好中球とリンパ球の全層浸潤と線維化を伴う全層性炎症のため著明に肥厚し,非乾酪性肉芽腫を認めた.更に,虫垂切除後に小腸,大腸の検索を行ったが,異常所見は認めなかった.以上の所見から虫垂Crohn病と診断した.虫垂切除2か月目に回腸盲腸瘻を形成したため回盲部切除を施行した.患者は術後9年目に脳出血で死亡したが,この間Crohn病の再発の徴候は認めていない.

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欧文目次

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 この度,「分子生物学・免疫学キーワード辞典」が,永田和宏,長野敬,宮坂信之,宮坂昌之氏の編集により,医学書院から出版された.

 分子生物学,遺伝子工学,細胞生物学,免疫学で用いられる重要な言葉がキーワードとして選び抜かれ,1,600語が専門家200余名の執筆によって,わかりやすく解説されている.

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 Treatment of Crohn's disease by lymphocyte apheresis: A randomized controlled trial: Lerebours E, Bussel A, Modigliani T, et al (Gastroenterology 107: 357-361, 1994)

 predonineはCrohn病の急性期の治療に有効である.初期大量療法によると,5および7週後では緩解率はそれぞれ80%,92%であるが,ステロイド離脱後18か月ではわずか22%の患者が緩解状態にあるだけである.このことがステロイドで緩解導入後の追加治療の必要性を強調する.従来の治療法で失敗した後に,リンパファレーシスがCrohn病の臨床経過を改善し,臨床的緩解が少なくとも9か月,長くて2年間継続したといういくつかの報告がある.そこで,本研究では,ステロイドによるCrohn病急性期の治療後,リンパファレーシスが緩解期の患者の早期再発を予防する効果を評価するために,前向きの無作為試験が計画された.

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 Improved endoscopic management of severe upper gastrointestinal hemorrhage using a new widechannel endoscope: Hintze RE, Binmoeller KF, Adler A, et al (Endoscopy 26: 613-616, 1994)

 消化管出血時の緊急内視鏡での問題点に,大量の血液や凝血塊,食物残渣などによって十分な視野が得られないばかりに,出血点の同定やその後の処置が困難になることがある.体位変換や胃洗浄といった工夫が応用されてきたが,時間を要する割りにあまり効果的でなく,ときに誤嚥の危険さえある.

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 中世史家横井清の「東山文化」は,“京の町は三方を山で囲まれている.北山,東山,そして西山”の文で始まる.川井啓市教授の「胃 形態とその機能」は,“胃・十二指腸の基本構造”の胃の系統発生に始まって,“他臓器疾患と胃疾患―臓器相関の基礎から臨床”の章で終わる.

 この本の初版は1975年,それから約20年の歳月の流れは実に重かった.初版の序に,川井啓市教授が深い謝意を表した方は恩師の増田正典教授のほか,村上忠重教授,白壁彦夫教授,高田洋博士,加藤守彦博士,それに作家の秦恒平氏であった.これらの消化器病学の先学の名前が,“沖の干潟遙かなれども,磯より潮の満つるが如し(「徒然草」)”を示して,われわれを粛然とさせる.

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 Anemia in Crohn's disease: Gasche C, Reinisch W, Losch H, et al (Dig Dis Sci 39: 1930-1934, 1994)

 貧血は,Crohn病でしばしば認められる合併症であり,エリスロポエチンによる治療が試みられている.インターロイキン6がエリスロポエチン産生を抑制し,Crohn病患者ではインターロイキン6が高値であることに注目し,この関係について検討を行い,更にエリスロポチエン投与による治療効果を比較検討した.

編集後記 丸山 雅一
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 科学の絶対主義が復活してきたような雰囲気がある.しかし,一方では,進歩とは集団幻想にすぎないという見方も成り立つ.進歩ということに対する現象的なアンチテーゼとして,地球上から消滅した細菌はないことを挙げるべきか.結核菌50年周期説に先見の明ありというべきか.あるいはまた,進歩ではなく,変化したにすぎないとみるべきか.少なくとも,地球は餓えており,そこに住む多くの人類は,宗教戦争に走っていることを事実として認めないわけにはいかない.結核菌に対して無防備な体制は着々とできつつある.集団幻想に酔いしれている分だけ,われわれは退歩しているような気もする.

 現実に戻ると,結核の内視鏡所見は格段に見やすくなった.これは進歩の名に値するのではないか.X線診断について言えば,しぶとく自己主張する担い手がいまだに存在することに安堵する.結核の活動性・非活動性についてだが,これらの定義はどうなっているのだろうか.成書や権威ある論文を紋切り型に引用するのではなく,臨床診断と病理の乖離について疑問の余地はないのか.萎縮瘢痕帯といえども,その下層には炎症性細胞浸潤が存在する.

基本情報

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胃と腸
30巻4号 (1995年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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