胃と腸 25巻7号 (1990年7月)

今月の主題 小さな表面型(Ⅱ型)大腸上皮性腫瘍

序説

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 今までわからなかったことがわかってきたとき,見えなかったものが見えてきたときほど感動することはない.

 最近,大腸でⅡb,Ⅱc病変が次々に見つかりだしたこともその1つである.腸でこんなに多くの微小なⅡ型(Ⅱa,Ⅱb, Ⅱc)の病変が見つけられようとは思わなかったからである.

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要旨 大腸の表面型腫瘍において,より平坦に近い病変が多数発見されている現状を踏まえ,自験例を基に内視鏡分類の私案を述べた.小さな表面型腫瘍の診断には注腸造影検査が有用であり,病変を意識した撮影および読影が必要と思われた.内視鏡診断に際しⅡaではわずかなハレーションや病変辺縁のラインが,低い隆起を認識するうえで重要であり,色素散布は全例に効果的であった.また,癌と腺腫の鑑別として易出血性の所見は癌のみにみられた.平坦・陥凹型病変は発赤で発見されることが多く,色素散布のコントラスト効果はあまり期待できず,逆に不明瞭となる場合も少なくなかった.処置としては陥凹性病変の一部を含め現在ストリップバイオプシーを多用しているが,今後病理学的検索に基づいた内視鏡的治療の基準を確立することが大切であると考えている.

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要旨 10mm以上の平盤状隆起を呈した64例70病変について検討し,以下の結果を得た.性別では男性41例(64%),女性23例(36%),年齢は41から88歳までで,平均年齢は64.4歳であった.発見頻度は注腸X線検査の0.75%であった.肉眼形態(長谷川らの分類に準じた)は,ポリープ集簇型36病変(51%),中心くびれ型20病変(29%),中心陥凹型8病変(11%),平坦型6病変(9%)であった.組織型は,腺腫42病変(60%),癌21病変(30%),化生性ポリープなど7病変(10%)であった.中心陥凹型に癌が多く(75%),平坦型はすべて良性であったが,他の2型は良・悪性の鑑別は困難であった.X線検査で発見されたものは46病変(67%)で,X線検査の描出能は84%であった.内視鏡所見では発赤を16病変(27%)に認めたが,良・悪性との関連はなかった.処置は手術37病変(53%),ポリペクトミー13病変(18%),生検(経過観察)20病変(29%)であった.

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要旨 注腸X線検査の立場から表面型上皮性病変の見つけ方と処置についてその検査法を解析した.最も大切なことは,これらの表面型の病変が大腸において決してまれな病変ではないという認識であり,常にこれらの病変を念頭に置いて検査することであった.次にX線装置の改良においては,徹底して散乱線を除去したことにより,カブリが少ない鮮明な写真が撮れるようになり微細な所見の描出能が向上した.更に透視画像を改良したことにより検査中に病変を拾い上げ,それに引き続いて質的診断を行うことができるようになった.検査技術について検討を加えてみると,病変発見には腸管を各区域に分け,造影剤の流れを観察することが有効であり,表面の性状の描出には圧迫法や再充盈法が優れていた.

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要旨 早期大腸癌272病変のうち微小癌73病変について検討を加えた.微小癌の肉眼形態は平坦・陥凹型(Ⅱb,Ⅱc,Ⅱc+Ⅱa)が39.7%,表面隆起型(Ⅱa,Ⅱa+Ⅱc)が43.8%であり表面型早期癌が83.5%を占めた.平坦・陥凹型早期癌の内視鏡診断には空気変形と薄層色素法による無名溝消失所見が有用であった.平坦・陥凹型早期癌は小さくともsm浸潤を来すものが多いため,早期診断が重要であり注意深い内視鏡観察が必要である.微小癌の診断と治療にはstrip biopsyと実体顕微鏡によるpit patternの観察が不可欠であると思われた.

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要旨 われわれは診断,治療の両面の立場から5mm以下の大腸病変を“微小”病変と定義して,これら“微小”上皮性腫瘍の実態,見つけ方,処置および形態分類について検討した.内視鏡的に切除された6,000個中微小ポリープは3,435個であった.腫瘍性ポリープは2,229個,64.9%を占め,微小病変でも腫瘍性ポリープは意外な頻度を占めていることが判明した.なかでも癌症例は36個,0.105%存在したのが注目される.微小病変を発見するためには丹念に大腸粘膜を観察し,わずかな色調差(発赤,褪色,出血,橙色,光沢など)や凹凸が病変発見の手掛かりとなった.また簡便な分類で臨床に役立つ微小病変の内視鏡的分類を試みた,具体的には,①くびれがあり,隆起の目立つもの(I型),②隆起性病変ではあるが,隆起は目立たないもの(扁平隆起性病変も含む)(Ⅱ型),③平坦な病変でわずかな色調差,などが発見のきっかけになったもの(Ⅲ型),④陥凹性病変(IV型),の4型に分類し,色調,白苔,凹凸,陥凹などの表面性状の特徴ある内視鏡所見を付記するものである.内視鏡検査は対象とする病変が小さくなればなるほどその真価を発揮する.特に粘膜面の色調差は内視鏡でしか認知されない所見であり,数多くの大腸“微小”癌が発見され,今後癌発生解明の糸口となることが期待される.

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要旨 進行大腸癌の初期病変と関連して重要視されている“表面型”病変につ

いて検討を行った.切除標本の組織学的検討から,進行大腸癌の8~9割は扁平隆起由来,1~2割は平坦・陥凹型早期癌由来であることが推測された.進行癌に発育する有茎性病変は少ないと思われた.検診受診者6,771名における“表面型”病変の有病率は1.0%で,その中の癌の割合は11.8%であった.われわれの施設で発見した“表面型”病変165病巣の形態は,Ⅱa97.6%,Ⅱa+Ⅱc2.4%であった.純枠なⅡcは認めなかった.大腸癌による死亡を減少させるには,“表面型”病変の存在の可能性を常に,頭に置いて注意深く注腸X線もしくは大腸内視鏡検査を行うことが重要である.

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要旨 大きさ10mm以下の表面型大腸癌64例について,その病理組織学的特徴を検討した.肉眼形態はⅡa型46例,Ⅱb型4例,Ⅱc型7例,Ⅱc+Ⅱa型7例である.Ⅱb型,Ⅱc型は大きさ5mm以下の微小癌に多く,Ⅱc+Ⅱa型はすべて大きさ6mm以上である.深達度別ではm癌47例(27%),sm癌17例(73%)であり,Ⅱc型,Ⅱc+Ⅱa型にsm癌の割合が多い.組織学的には腺腫部分の認められない高分化腺癌が大部分である.更に表面型大腸癌の肉眼形態が腸管壁の伸展具合により変化することを考察し,Ⅱa型とは腸管壁を十分に伸展させた状態で周囲粘膜よりわずかに隆起した表面平坦な病変であり,Ⅱc型とは肉眼的,組織学的に癌粘膜が陥凹している病変と定義した.またIs型との鑑別として,Ⅱa型は最大径に対して癌粘膜の高さが10%前後であり,その高さが3mmまでの病変とした.Ⅱc+Ⅱa型にはsm癌が多いが,深い陥凹面を有し,腸管壁を過伸展しても隆起の目立つ病変は粘膜下組織浸潤の著明な癌と推測された.小さな表面型大腸癌を集積することにより,近い将来大腸癌の組織発生ならびに発育・進展過程の問題は解決するはずである.そのためにも肉眼水準,組織水準における癌組織診断基準の新たな認識が必要である.

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要旨 従来当教室で用いてきた大腸上皮性腫瘍の肉眼型分類(旧分類)で,表面型(Flat型)と判定された病変の肉眼的特徴は“長径と高さの比≧3,かつ表面平坦(球形度≦1.2)”であり,その判定は,病変の“形”に注目して主観的に行われてきた.今回,客観的判定基準として,隆起性病変の中で3mm以下の高さのものをⅡa型と定義し,肉眼型の再分類(新分類)を行った,両肉眼型分類間で,表面型病変の出現頻度,担癌率を比較検討し,以下の結果が得られた.腺腫で,5mm以下で,旧分類のFlat型病変は22.4%,新分類Ⅱa型病変は91.3%を占めた.純粋癌では5mmより大10mm以下で,旧分類Flat型病変が58.8%,新分類Ila型病変が88.3%を占めた.5mm以下の病変の担癌率は,旧分類Flat型病変では,他の肉眼型と有意差はなく,新分類Ⅱa型病変ではI型病変より有意に低かった.5mmより大10mm以下では,旧分類Flat型病変はIp型より有意に高い担癌率を示し,Ⅱa型はⅠ型と有意差はなかった.肉眼型と担癌率との相関の点で,新旧分類の優劣はみられなかったものの,新分類では表面型の腺腫の初期形態,純粋癌の肉眼形態,の位置付けが明確となった.判定基準の客観性の観点からも,今後,大腸上皮性腫瘍の肉眼型分類を,高さの絶対値を基に行い,3mm以下の高さをⅡa型の判定基準とすることを提唱したい.

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要旨 1cm以下の表面型粘膜内癌21病巣,sm癌7病巣,扁平腺腫39病巣の肉眼所見,実体顕微鏡観察による所見,病理組織学的所見を比較・検討し,これらの病巣の関連性について考察した.その結果,表面型(早期)大腸癌は高悪性度および低悪性度の早期癌に大別することが可能であり,①肉眼所見で粘膜表面に発赤を伴って陥凹を示す病巣は下方向への進展傾向が強く,高悪性度の早期癌に分類された,②実体顕微鏡観察で不規則溝紋型,不整型の表面微細構造を示し,軽度の陥凹を伴う病巣は高悪性度の癌と考えられた,③病理組織学的には粘膜深層において不整な分岐を示す腫瘍腺管により粘膜筋板の圧排・菲薄化を認める場合には高悪性度の粘膜内癌の可能性がある,④1cm以下のⅡa型粘膜内癌は,扁平腺腫と診断された病巣の一部およびⅡb型,Ⅱc型,Ⅱa+Ⅱc型早期癌との問に形態学的な類似性を認め,進行大腸癌の前駆病変として注目すべきであろう.

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〔患者〕 38歳,女性.

〔現病歴〕 胃集検で胃角変形を指摘され,査を希望して来院.自覚症状なし.

早期胃癌研究会

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 1990年5月の早期胃癌研究会は5月16日に開催され,食道1例,胃3例,腸2例の計6例が呈示され,活発な討論が行われた.なお,今回は新企画として司会を国立がんセンター病院の吉田茂昭,牛尾恭輔の両名で担当した.

 〔第1例〕73歳,男性.幽門前庭部に多発性の高度の異型性上皮を伴った多発性早期胃癌(症例提供:聖隷三方原病院消化器科 山本).

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 大腸上皮性腫瘍の肉眼形態の判定基準をテーマにすることは,それが臨床診断学(X線・内視鏡)には不可欠なものであるとの認識がある証である.大腸では,今,ある1つの肉眼形態とその肉眼形態を構成する組織学的所見には1対1の対応が存在するかどうかが問題になっている.もし,この対応が存在するのであれば肉眼形態を正確に描出するなり,内視することにより,その病変の組織学的診断を予見できるという形態診断学の一般的原則が通用することになる.

 早期胃癌の診断学にはこのような一般的原則を証明する方法を模索しながら進歩してきた歴史がある.隆起性の早期胃癌は隆起の表面の性状と胃小区像との類似性とそのかけ離れの程度に基準を置いて診断される.一方,陥凹性早期癌と良性潰瘍,あるいはその瘢痕との鑑別診断は陥凹の形,陥凹面の性状,そして集中する粘膜襞の様相に基づいてなされる.

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 1.大腸腫瘍の形(早期癌,腺腫,過形成性ポリープ)

 大腸腫瘍はごく初期には平坦であるが,やがて形態的に多様化する.癌は最終的には単一形(潰瘍限局型)に収斂する.大腸早期癌の段階では表面型(いわゆるⅡ型で陥凹,平坦,扁平),広基,有茎性と多彩である.早期癌の形態について,①形態の多彩性は本質的なものか二次的な要素の関与があるのか,②他の形態のものに対して最も異質とみえる有茎性ポリープが生じるゆえんおよびその大腸癌の発育進展における位置づけは何であろうか,そして,③早期癌一進行癌へのルートにおいて,ストレート(最も速い)なのは何か,などは検討に価する.

 大腸上皮性腫瘍の形態を決めるものに,大きさ(size)を別にすれば,次の2つの因子,①組織像と,②腸管運動がある,組織像は言うまでもなく最も基本的な因子であり,それは更に発育速度と発育方向に分けることができる.

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 大腸上皮性腫瘍には良性の腺腫と悪性の癌とがある.ごく最近まで大腸の上皮性腫瘍は,はっきりとした隆起すなわちポリープ型のみであると理解されていた.最近の詳細な検討結果と大腸ファイバースコープの発達・普及とによって,大腸の上皮性腫瘍の中にも,わずかに隆起しているもの,隆起が認められず,むしろ平坦なもの,陥凹しているものが発見される機会が多くなってきた.1979年から隆起型をとらない大腸上皮性腫瘍の存在を主張し続け1),本誌「胃と腸」においてアウトサイダーであり続けた私たちにこの原稿の依頼があったことに対して,時代の変遷を感じ特に感慨深いものがある.

 1.私たちの肉眼形態の判定基準

 基本的には,病変のあるがままの姿を素直な目で見て分類することにしている.腺腫では有茎性,亜有茎性,無茎性,表面型と分類する.表面型の癌の場合は,早期胃癌における表面型(Ⅱ型)の定義に従っている.すなわち粘膜面からわずかに隆起しているものはⅡa型,全く隆起しておらず平坦なものはⅡb型,わずかに陥凹しているものはⅡc型としている.問題となるのは大腸粘膜の特性として髪の上に乗っている病変が多いので,陥凹型でもⅡa型に見えることがあることと,複合型の取り方である.後者に関してはⅡa型なのか,Ⅱa+Ⅱc型なのか,それとも全くのⅡc型なのかという判定が難しいことが多いことによる.

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 特集“陥凹型早期大腸癌”の発刊(1987)から,わずか3年しか経たないのに,表面型(Ⅱ型)病変が取り上げられることになった.大腸の表面型(Ⅱa,Ⅱb,Ⅱc)病変は癌,腺腫を含めて最近のトピックであり,この3年間の進歩も明らかにされると思われるので,大いに楽しみにしている.しかしながら,表面型病変の分類について,この小文を論ずるのは,いささか気が重く筆が進まない.なぜなら,筆者自身にその分類についての確たるイメージが出来上がっていないからである.分類について云々するに足る症例を経験していないし,また,全国レベルでみても,まだそれに足るだけの症例が集積されているとも,思えない.

 つい最近の日本内視鏡学会での陥凹型大腸早期癌に関するパネルを聴いても,やはりその感は拭えない.1987年に提起した問題点は決して解決しているとは思われないので,書くのは止めようかと幾度も思ったが,この問題に関する批判的な見方も,全く無意味ではあるまいと思い直して筆を執ることにした.

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 最近,10mmあるいは5mm以下の小さい大腸癌が発見されるようになり,その中には腺腫のような粘膜内隆起性病変と異なり,従来ほとんど認識されていなかった陥凹を主体とした粘膜内癌あるいは粘膜下浸潤癌もみられるようになってきた.それに伴い大腸癌の自然史,特に通常みられる進行癌の形成過程についても議論されるようになってきた.しかし,まだこれら小さな大腸癌の肉眼的特徴像は症例数も少なく明らかにされたとは言えない.最近盛んに使われている“扁平隆起性病変”とされるものは病理学的には粘膜内隆起性病変と,陥凹性病変が含まれており,この両者,さらには粘膜内癌と粘膜下浸潤癌はほとんど区別されていない1).そこで大腸進行癌と最も関連性があると考えられる陥凹型早期大腸癌の肉眼形態の特徴について,組織学的検討を踏まえたうえで述べることにする.

 陥凹型早期大腸癌は筆者らが報告してきたnonpolypoid carcinoma(NPG-ca)に相当するもので2),筆者らが現在までに集積した陥凹型早期大腸癌は粘膜内癌18例および粘膜下浸潤癌42例である.肉眼的特徴を述べる前に,まず組織学的に癌と腺腫の診断学的問題がある.この点については中村ら3)の形態計測に準じて筆者らが行った形態計測の結果に基づいて,癌と診断された症例について検討した4)

学会印象記

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 第39回日本消化器内視鏡学総会は1990年4月19日(木)から4月21日(土)まで東京医科歯科大学医学部第1外科遠藤光夫教授を会長として東京,新宿の京王プラザホテルで開催された.

 ビデオによる発表を含めて一般演題が641題,シンポジウムが3,パネルディスカッションが5,実技教育ビデオのセッションが1,サテライトシンポジウムが2,特別講演が3題,指定講演が1題,それに会長講演と,極めて多数の発表が行われた.

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要旨 陥凹型早期大腸癌の報告は最近多く認められるが,陥凹型腺腫の報告は現在までほとんどない.われわれは1mmの大きさの軽度陥凹の腫瘍性病変を発見,治療したので報告する.患者は48歳男性.人間ドックのS状結腸内視鏡で小さな淡い発赤で発見され,質的観察により境界不整な陥凹性病変として認識された.辺縁の正常粘膜の軽度隆起を伴っていた.strip biopsyで切除し実体顕微鏡により病変を確認し連続切片を作製,組織学的検索を行った結果,1切片でわずか10個程度の異型腺管であり,間質にリンパ球浸潤を伴っていた.形態的にⅡc型早期癌に類似しており,このような境界不整な陥凹性病変が大腸癌の発生,発育進展においてどのような役割を果たすのか,今後の症例の集積が必要である.

初心者講座 胃X線検査のポイント―私の検査法

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 胃体部から上部の胃は,いろいろの撮影体位で撮影する必要がある領域である.今回は胃体部後壁に病変の存在する症例で,二重造影像の撮り方を,胃体上部から噴門部にかけ病変の存在する症例で,透視中に注意する点,撮影体位と描写される所見について述べる.噴門部癌の二重造影像の撮り方については,本誌第24巻1号に述べたので参照していただきたい.

 1.体位変換と撮影体位

 1)胃体部後壁の病変

 Fig.1aは立位充満像撮影後,背臥位の体位から右側より腹臥まで回転させ(このときバリウムは胃体部後壁小彎寄りと胃体部前壁を洗って流れる),更に右側から背臥位に回転させ(このときバリウムは胃体部後壁大彎寄りを洗って流れる)たときの二重造影像である.胃体中部後壁に小ニッシェが描写され,その周囲にバリウムの付着が悪い領域が限局してみられる,

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 胃X線検査の基本的なポイントは,本誌第25巻第3号で説明したので,ここでは胃体部から噴門部の撮影の要点を症例を呈示して説明することにする.

 1.体位変換と撮影体位

 ルーチン検査の方法のときにも述べたが,患者を第2斜位に動かすときバリウムの流れをよく観察し,適時撮影することがまず大切である.Fig.1:バリウムが全部流れてからの撮影では大きな進行癌(Borrmann 2)もはっきりしなくなる.Fig.2:癌をバリウムで囲むようなタイミングで撮影するとよくわかる.第2斜位に体位変換するときは透視台をなるべく水平位で行うのがよい.牛角胃や漫状胃では前庭部が体上部から噴門に重なったり,バリウムが流れ落ちないときだけ患者を第2斜位にしてから透視台を立てながらバリウムの流れを見て撮影するようにしたい.

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 1.陽性造影剤(バリウム)の量

 各撮影部位に対する標準的なバリウムの量をTable 1に示した.精密検査では,Table 1に示したバリウム量を基準としながら透視下でその過不足を判定し,注入と吸引を繰り返して撮影している.

 非鈎形胃(牛角胃,爆状胃など)の前壁撮影では,まず多めのバリウムを投与し,粘膜によく付着させる.次にそのバリウムを吸引し,改めて必要量のバリウムを注入して撮影している.前壁撮影には数段階の厚さの圧迫綿を使用している.

入門講座・7

小腸X線検査の実際 八尾 恒良
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 2)Kerckringのひだの変化―[1]

 小腸のX線写真の読影に最も大切なのは描出されたKerckringひだの読影であろう.Kerckringひだの異常所見は小腸のあらゆる疾患にみられ,逆に言えばKerckringひだの異常を起こさない小腸疾患はないと言っても過言ではない.そして,その異常は大まかには,①皺襞幅の肥厚,②腸管の一定の長さあたりの皺襞数の増加,③皺襞表面の微細変化,④皺襞破壊像,に分けられるように思う.前二者は経口法による充盈像から読影可能であるが,皺襞表面の微細変化は二重造影でないと読み取れない.

 ①皺襞幅の肥厚:Kerckringひだの幅は適当に拡張した腸索で評価した場合,空腸で1.7~2mm,回腸で1.4~1.7mmで,管腔の径の大小に左右されないので皺襞山の幅が2.5mm以上であれば異常所見とされている(Herlinger,1979).

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欧文目次

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 近年,胆汁酸と大腸癌との関連性が注目されている.著者らは胆囊摘出術(胆摘術)と大腸癌の発生に関して25の文献を調べたところ,32%(n=8)が両者に関連がなく56%(n=14)が関連があるとし,3つの研究では胆囊摘出後,大腸癌の危険度の有意な増加を認めていなかった.これらの研究成果がまちまちであることより,著者らはhospital-based case-control studyを実施した.

 大腸癌と診断され9つの病院から退院したすべての患者が同定され,各症例について同じ病院で2つのcontrolが求められた.1つは良性の胃腸疾患で入院しており(対照群A),他の1つは肺癌か乳癌で入院していた(対照群B).大腸癌例と対照群は性,年齢,病院などは一致していた.大腸癌症例は569例,対照群Aは566例,対照群Bは563例であり,大腸癌症例は対照群に比し大腸癌との診断前に有意に多く胆摘術を受けていた.大腸癌の局在は胆摘術例において有意に近位大腸に多かった(ρ=0.01).また,大腸癌の危険度は年齢と共に増加した.

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 144例の食道・胃噴門部癌を対象に,内視鏡的Nd:YAGレーザー治療の姑息的治療法としての適応と限界をより明瞭にすることを目的に,長期的な転帰を予知しうるパラメーターについて検討した.

 119例の男性と25例の女性に治療を行った.平均年齢は67±12歳.94例は扁平上皮癌,50例は食道あるいは胃噴門部の腺癌であった.

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Improvement of gastric emptying in diabetic gastroparesis by erythromycin: Janssens, et al(N Engl J Med 322: 1028-1031, 1990)

 最近の幾つかの研究は,EMに消化管ホルモンであるモチリン類似の作用があることを明らかにしている.EMなど14種類のマクロライド系薬剤は胃前庭部・近位十二指腸に多数あるモチリン受容体に結合してアゴニスト作用を呈するとされている.

 糖尿病患者ではdiabetic gastroparesisによる胃内容停滞が,血糖コントロールを困難にする一因となっている.著者らは胃排出遅延が確認されたインスリン依存性糖尿病患者10例について,EMの胃排出に及ぼす効果を調べた.胃排出は99cmTc標識固形食と111In標識水の二重ラベル食餌を与え,それぞれの胃内停滞率の推移をシンチグラムにより計測して,二重盲検クロスオーバー方式により検討した.また対照として,性・年齢が一致する健常者10例を調べた.

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 この調査は1個もしくは複数個の大腸腺腫を有すると診断された患者を有効に監視する方法を求めての,無作為的臨床トライアルの骨格となるはずのものである.アメリカの7施設で内視鏡的に診断された1,867名3,371個の腺腫を対象とした.大腸癌,ポリペクトミーの既往がある者,炎症性腸疾患,家族性ポリポーシス,顕微鏡的に浸潤癌であることの判明した腺腫例は除外した.

 全員に全大腸の内視鏡観察を行い,すべてのポリープを切除し,各施設の病理学者および3名の病理委員による二重の審査を行った.腺腫は腺管腺腫,絨毛腺腫(絨毛腺腫が占める割合で,A,B,C,Dと分けた),異形成(軽度,中等度,高度と分けた)に分類した.高度異形成には上皮内癌を含んでいる.統計処理はX2法およびオッズ比による各因子の相対危険度の算出を中心に行った.

編集後記 望月 福治
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 「紙面の都合で,一般演題について多くを触れることはできないが,辻仲氏らはⅡc型直腸早期癌の1例を報告しており,注目された.」これは本誌の18巻1号に書き記した第28回日本消化器病学会他2学会合同秋季大会(1982)の学会印象記の一部である.画期的な大腸のdenovo癌の最初の報告であった.その後,この症例報告は本誌18巻2号(1983)に掲載されている.あれから8年の歳月は流れ,初めは葉ずれの音のようであった早期大腸癌の周囲は,枝鳴りが聞こえるように激しく揺れ動いてきている.

 本誌では,既に“小さな大腸癌”(1987.4),“陥凹型早期大腸癌”(1987.8)が主題として取り上げられた.本号では小さな表面型大腸上皮性腫瘍について,臨床と病理側の立場からそれぞれ詳しく述べられている.問題点をあぶり出してみよう,いろいろの見解があっていいだろうとの配慮から,各方面からできるだけ多くの論文を書いていただいた.もちろん,これをもって十分な結論の出る問題ではないが,それぞれの論文を読んでいただければ,階段を確実に上がっているのだという,確かな手ごたえを感じ取っていただけるであろう.

基本情報

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胃と腸
25巻7号 (1990年7月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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