胃と腸 20巻3号 (1985年3月)

今月の主題 大腸診断学の歩みと展望

主題

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はじめに

 X線診断の立場に立つとき,X線診断に溺れると時代遅れになる.X線と内視鏡の両検査を行い,そしてX線診断の利用度を斟酌するのが正しい.内視鏡の診断能を横目で見ながら,評価を惜しまず,でもX線診断の主張は主張として通さなくてはなるまい.内視鏡診断家に対してもX線診断のメリットと利用の仕方を伝えなくてはならない.後述するPLA(点・線・面)の考え方は1980年に述べたが,その後も見直したりしてX線診断の進歩を求めている.

 胃の材料は手術が多いから得やすい.それより手術が少ない腸部では,胃の経験を生かし診断能率を上げるしかない.標本上で狙った病変の反省もできる.他病変に気付き診断の限界も知り謙虚な立場が取れる.だから,まず,胃で診断の基礎を固め,その実力と手法を小腸,大腸,食道の順に適用すべきであろう。病理は臓器特異性を振りかざす.組織が違うからもっともなことである.しかし,X線診断は,食道,大腸と個々の診断学があると思って診断に突入すると,甘い診断学と技術不足を,すぐ,その部の特殊性だと誤認する恐れがある.大腸を例に取ると,拾い上げたものだけで診断の話を進めたのでは,それは真相ではなく,診断学も宙に浮く.現にルーチン検査で瘢痕の診断件数が少ないではないか,などと思う.学会でよくみるように,何度も話題に取り上げながら解決がつかず話が尽きないことがある.これがよいお手本で,内容が深いとばかりは言えず,実は解明する手法に欠陥があるのではあるまいか.

 診断は隆起性病変と陥凹性病変とに分けて扱うと実際面で便利である.長年,それで慣れているし,診断を進歩させた裏付けもある.本稿では主として陥凹性病変を述べ,隆起性病変は触れるだけにした.

 隆起性病変の診断は,大きさ,側面像,表面の性状の相関で進める習わしである。そして生検に直行する.全腸管に共通して山田分類で話をする.大腸には長茎の型があるので丸山分類がある.大腸で側面像のありったけを挙げると,肉眼でわかるものは長茎,短茎,亜有茎,平盤,中心陥凹を持つ平盤の諸型である.実際面で合理的に,どれだけ少ない型別に整理できるかが課題である.隆起の写し方と読影は,胃で慣れているのと同じである.ただ,平盤状小隆起の辺縁像(食道でも同じ)の読影が,いま残されている.胃では,体位変換で即側面,正面の像が撮れるので,隆起の諸像に深入りしなくても済んだ.ところが,大腸は体位変換が自由自在にできない.また,透視能も不十分である.そこで疑像の判読にカを入れざるを得ない.

 いま,X線検査だけ,また,内視鏡検査だけで済ます人のほうが少ない.多くは,いずれかに重点を置きながら両者を併用する.論より証拠,内視鏡学会というのに,多くのX線写真が掲げられている.良いX線写真には説得力があるからである.

 欧米のX線診断は全くの当てっこである.撮り方の良悪は問わない.極端な言い方をすれば,楽書きでも絵だと言うのに等しい.日本では撮し方を決め向上を図る.理屈に支えられた,原則的な検査体系を作る.読影と切除標本との対比から合理的な,客観的な読影理論を作ろうとする.

 新しい撮影技術,手法は,効果を上げると普及するものである.そのあと,たどる道は,片や慣れによる質の低下,堕落であり,片や質の向上,芸術的志向への道である.

 本稿は,内視鏡併用からみたX線検査の利用の効果,確固不動なX線所見の大腸への適用,二重造影法を大腸に適用したときの診断理論の考察である.

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要旨 大腸のX線診断学の歴史は,X線検査法の歴史と深く相関しており,次の4つの時期に区分すると理解しやすい.すなわち,Ⅰ期:X線が発見され蒼鉛剤などが,造影剤として使用された時期,Ⅱ期:造影剤として硫酸バリウムが経口的または注腸的に用いられたが,充盈法や粘膜レリーフ法が主体であった時期,Ⅲ期:注腸二重造影法が開発・導入された時期,Ⅳ期:腸洗が不要な直接二重造影法が主流となり,また粘膜の基本像が定まり,微小・微細診断が確立した時期,である.まず,各時期における先達者の業績とX線診断学への意義について述べ,次に,本邦における大腸X線診断学の歩みを述べた.その中で白壁・市川により思想的に質的転換が行われ,わが国独自の消化管診断学確立への大きな礎となったことを明らかにした.また,過去20年間における大腸X線診断学で,世界をリードしえた主要な業績について概説した.最後に,二重造影法および形態学に対する筆者の見解を示し,今後の展望については,“X線病態学”,“X線病態生物学”を指向した私見を述べた.

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要旨 最近20年間のcolonoscopyの変遷を概観した.「胃と腸」の創刊は奇しくもcolonoscopeの誕生と時期をほぼ同じくし,その普及発展と共に歩んできたと言える.20年間の主題を振り返ってみると,大腸の主要疾患のすべてが主題に取り上げられていると共に,ポリペクトミー,健診,スクリーニング,拡大観察にまでも及んでいる.「胃と腸」は診断中心の雑誌であり,器械,検査法に関してはたとえ載っても,確立されてからのものが多い.したがってこの時期の大腸内視鏡に関するscopeの開発,挿入法は主として学会誌である「Gastroenterological Endoscopy」の論文,学会のシンポジウム,パネルディスカッションをみることによって補った.最初の10年間は内視鏡の挿入,器種の改良にエネルギーが割かれ,あとの10年ではそのscopeを実際の臨床に使って多くの成果を挙げてきたというのが大雑把な歴史である.更に近年では適応の拡大(小児スクリーニングなど)と研究面の展開(大腸生理面,動物実験など)がなされている.その間にあって,器械のたゆまざる改良・努力も見逃せない.

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要旨 大腸癌,ポリープ(腺腫),潰瘍性大腸炎,Crohn病における診断学の進歩を外科的治療とのかかわり合いの面から眺めてみた.外科的治療と最も関係が深いのはポリペクトミーの開発であり,これによって従来行われてきたようなポリープに対する手術的治療法はほとんど不必要となってしまった.また,この新しい診断・治療法からsm癌をどのように治療すべきかという新しい問題が提起されることになった.ポリペクトミーの発展以外には,診断学の進歩よりは疾患概念の正しい理解と思考の転換によって,外科的治療方針が著しく変化してきたことが示唆された.直腸癌に対して前方切除,局所切除が,潰瘍性大腸炎に対して括約筋温存術が,正しい適応のもとにより頻繁に行われ,良好な成績を収めつつあることは外科的治療学の進歩であると考えられる.大腸癌の診断学がほぼ確立された現在,より早期の癌をより多く発見するためには,high risk群の選別法,スクリーニング法の確立など,新しい分野の進歩が必要であろう.

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はじめに

 本誌「胃と腸」が創刊されて20年になる.この間,この雑誌が,日本において腸疾患の病理診断に果たしてきた役割はどのようなものであったろうか,また世界におけるそれはどのようなものであったろうか.本稿で,「胃と腸」をとおしてみた日本における腸疾患の病理診断の歩みと展望を述べてみたい.

 わが国では,消化管の診断学は胃疾患の診断学から始まった.このことは「胃と腸」の表紙の文字の大きさが対等になったのが1977年の12巻1号からであることからも窺い知ることができる.わが国における腸疾患の臨床病理診断学は,初期には症例数が少ないことや臨床側の腸診断学の遅れなどもあって,1960年代までは,多くの分野で欧米に遅れ,欧米の臨床病理診断学の紹介や模倣に終始していた感があった.それ以降,世界的な,わが国の胃診断学の手法が腸疾患へ導入されるようになって,わが国の腸疾患病理診断学はある分野では追従から追い越し,ある分野では新知見の発見と著しい進歩を遂げてきた.これらの歩みを,病理診断学の立場から,腸の腫瘍(様病変)と炎症とに大別し,それぞれの代表的疾患について述べ,各疾患における問題点を探ってみたい.なお特に断らない限り,巻号数は「胃と腸」掲載論文を示す.

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 西沢(司会) 大腸疾患にっいては,1950年代前半にX線検査のほうでは白壁彦夫先生(順天堂大学)がFischer法を使って腸結核の研究をなされておりましたし,1950年代後半に松永藤雄先生(都立駒込病院)がシグモイドカメラをお使いになっておられたという日本の歴史はあったにしても,そのころはまだまだ未熟な時期でした.それより,胃癌のほうが非常に注目されたものですから,診断学にしても専ら胃のほうに主眼がいって,そのために10年間ぐらい空白の時期があったような気がします.そして,1965年以後急に大腸のほうに目が向いてきたちょうどそのころ,1965年に本誌「胃と腸」ができて,表紙の胃の文字が大きくて腸が小さい文字だったのですが,それから12年経って,両方とも同じ大きさの文字になったという経緯があります.

 まず検査法のことから入りたいと思いますが,「胃と腸」の目次を見ますと,初めのころ丸山先生が早期大腸癌について報告されています.ほとんど同じころ,狩谷先生がnetwork patternを発表されました.お二人にまず口火を切っていただきたいと思います.

今月の症例

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 network patternの診断学的位置づけは,まず①微細病変の診断ができる.network patternを描出できる二重造影像では,大きさ1mm,粘膜の厚さの半分の所見をとらえうる.②粘膜の正常・異常についての判断の指標となる.悪性であれ炎症性変化であれ,粘膜に変化が生じた場合は,当然network patternが消失するか,そのパターンに乱れが生じるので,病変の侵襲の範囲や状態,あるいは粘膜の再生や回復の状態の指標となる.特に炎症性疾患に対する診断的意味は大きい.

Coffee Break

良い雑誌の条件 中澤 三郎
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 この間ある会合の後,ジョッキを傾けながら世間話をしているうちに,医学雑誌の話が俎上にのぼった.大凡の内容は次のごとくである.医学雑誌は現在大小合わせれば何百種類にも達する夥しい数が毎月発行されている.しかし,自分の手元に来る分だけでも何十種類なので,熟読玩味などということは不可能で,大部分は目次を見て書棚にしまってしまい,特に注意を引いた内容のものだけ目を通し,忙しいときには,要点のみを読んで,それで理解したような気分になって満足する場合が通例ではないだろうか.

 その中で,ちょっと詳しく読んでみようかなと思わせるもの,つまり読者の気を引くものは何であろうか.題名か,著者か,書出し部分の読みやすさ,すなわち,漢字が少なく難解な文章がないことか,文字が少なくて図表やイラストがカラーで数多く入っているものか,あるいは逆に,内容が高度で格調高い文章か,論旨の一貫性,簡明な結論か,などいろいろな意見が出た.なかには表紙の体裁も大きな理由にはならないかという意見もあった.

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 筆者は昼食に日替わり弁当をとっています.これは病院外の小料理屋が弁当を作って出前をしているのですが,いちいち注文しなくても済むし待たなくてもよいので便利です.そしておかずも毎日変化するのでよいものです.中身も豊富で味も料理屋だけあってまずまずです.

 値段は500円.不思議なことにこの値段は数年来据え置きなのです.この間物価はどんどん上がっているのにサービスをするものだなあと感心したり喜んだりしていました.ところが,このごろ御飯の量が少なくなったのに気がつきました.最初のころは箸を突き立てても倒れなかったのですが,次第に箸が傾くようになり明らかに少なくなってきました.

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 この“Coffee Break”の原稿,書け書けと,編集部に突つかれる.そのたびに,“よし引き受けた”とは言うものの,この欄に適当なテーマが,そう転がっているわけではない.しかし,編集委員をしていると,何度かの督目に1度ぐらいは答えないと,工合が悪くなる.こちらの雑学の加減も,たかが知れているとも思われよう.

 そこで,ウサギはなぜ○羽と数えるか,について雑文をものにしよう.と言ってもまったく受け売りである.異説があったり,真説があったら,御教示頂きたい.

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要旨 複合制癌化学療法(cisplatin, 5-fluorouracil, bischloroethyl nitrosourea(BCNU)とchloroethylcyclohexyl nitrosourea(CCNU)中の1つを選択)後,完全または部分的治癒を示した15名の胃癌患者の25回にわたる上部消化管経過観察を分析した結果,次のようなX線像の好転所見があった.(1) 腫瘍の局所的縮小91.6%,(2) 胃辺縁の平滑化91.3%,(3) 粘膜皺襞の再出現または薄化,既存の粘膜皺襞集中の消失と腫瘍あるいは腫瘍様粘膜皺襞の崩壊に伴う粘膜皺襞集中の再出現85.0%,(4) 顆粒像の細小化または消失83.3%,(5) 硬直化の減少78.3%,(6) 胃小区の再出現75.0%,(7) 胃膨張の良好化69.6%,(8) 潰瘍の縮小化62.5%.

胃と腸ノート

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 ヒスタミンH2受容体拮抗剤の開発史においては,英国の基礎研究陣の底力を見せつけられた思いである.つまり,わが国の基礎研究と臨床への橋渡しが弱体であることを痛感させられた.消化器内視鏡の世界では,1960年前後にファイバー光学系の原理の追究と実用化への努力において,当時内視鏡王国とうぬぼれていた日本が,ファイバースコープを開発する能力がなかったことを思い知らされた.

 そして,今度は電子内視鏡(electronic endoscope),video-endoscopeの登場である.アメリカのNew YorkのWelch Allyn社の製品である.すでにこれを試用した論文は,Classenら(1984)1),Matekら(1984)2),Sivakら(1984)3)と相次いで発表されている.現在のところ,gastroscopeとcolonoscopeの2種が発売されている.このような新しい内視鏡は,イメージファイバー束を使用していない.スコープの先端にソリッドステートのimaging sensorがあり,video processorにimage signalを伝える.われわれは,日本に輸入された1号器を使う幸運に恵まれた.つまり,なけなしの研究費をかき集めて購入しのであるが,予想以上の性能を持っている.スコープ全体の柔軟性は良好で,像もたいへんシシャープで,色の再現性も優れている.ただ,改良が必要なことは,ファイバースコープのアングル操作などの耐久性とモニター画面の記録写真撮影の簡易化などであろう.

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要旨 患者は72歳の男性で,主訴は慢性下痢,腹痛,倦怠感.1978年ごろより時々下痢があり放置.1981年,風邪を引いてから急に主訴が出現し,著明になったため入院した.初診時は1日十数回の粘液透明の下痢があり,多いときは2,300mlにも達した.著明な脱水,高窒素血症があり,電解質失調を来していた.水様便中のカリウム濃度が血清中より5倍も多い点が注目された.注腸造影では直腸よりS状結腸にかけてけば立ち像があり,二重造影像が不明瞭であった.内視鏡では8~25cmの大腸にビロードを敷き詰めたような平坦な腫瘍があり,多量の粘液に覆われていた.villous adenoma with severe fluid depletionの診断にて,1カ月間で電解質を補正後,前方切除術を施行した.術後経過は良好で,電解質異常,下痢も消失し,現在も健在である.腫瘍の大きさは20×14cm,tubulo-villous adenomaで癌の合併はなかった.本邦における本症の報告は6例あったが,本例がその典型例と思われる.

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要旨 患者は66歳の女性で便秘を主訴として来院した.注腸X線検査では,直腸に大小2個のポリープがみられ,内視鏡では表面に毛髪を有する2個のポリープがみられた.生検では扁平上皮組織が得られ,奇形腫を疑い内視鏡的ポリペクトミーを施行した.ポリープは,37×27×34mm,15×13×21mmで,割面では嚢胞や歯牙がみられた.病理組織学的に2個のポリープとも直腸原発の成熟型奇形腫と診断した.直腸原発奇形腫は世界で36例の報告がみられる.本例は内視鏡的ポリペクトミーで摘除した最初の報告であるが,直腸原発の奇形腫に悪性化の報告がないことから有用な治療手段と考えられる.

Refresher Course・13

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患者:72歳女性.

主訴:特になし(人間ドックのUSにてチェックされた).

〔初回ルーチンUS所見〕(上腹部横走査:Fig.1a,上腹部正中矢状断走査:Fig.1b)横走査にて体部主膵管は約4mmと拡張を示す.矢状断走査では大動脈の腹側に直径12mmと35mmの2個の腫瘤エコーを認める.内部にはびまん性に点状エコーがみられる.後方エコーの増強は認められない.

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診断

質問 X線診断と内視鏡診断の対比.

 岡部 これは長い間,いろいろ話題に上がってきて,人それぞれの立場で違った見方があるわけですが,小腸について,まず小林(茂)先生から--.

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欧文目次

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 著者は,横浜市立大学医学部公衆衛生学講座の助教授として,統計学の講義・実習を主として担当しておられたが,本書はその長年にわたる経験,知識に基づき,既刊の「統計学入門」の続篇として,特に応用面を重視して書かれたものである.

 第1章(得られたデータを解析するにはいかなる統計学的方法を用いたらよいか),第2章(計算方法)との2章に分かれているが,第1章では色々の種類のデータの例が挙げられており,これらをまず,どの値を用いて処理したらよいか,すなわち平均値で処理するか,百分率で処理するか,あるいは相関関係と回帰直線で処理するか,などを見定め,それが決まったら次にどのような方法で解析したらよいかの方向づけを示している.

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 Prospective study of alcohol consumption and cancer: Pollack ES, Nomura AMY, Heilbrum LK, et al (N Engl J Med 310: 617-620, 1984)

 一般にアルコール摂取は口腔,咽頭,喉頭,食道の癌の危険を増すと考えられてきた.一方,アルコールと結腸,直腸,肺の癌との関連は定説がなく,種々の意見がある.結腸・直腸癌はビールの消費と正の相関ありとするもの,ないとするもの,アルコール摂取がむしろ防御効果ありとするものなど様々である.また,アルコールと肺癌の関係を調べた研究では,あいまいな結論に終わっている.

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 The response to TPN-A form of nutritional assessment: Starker PM, Lasala PA, et al (Ann Surg 198: 720-724, 1983)

 外科患者の栄養状態と術後の合併症および死亡における関係はよく知られている.1週間以上の術前TPNは,術後合併症を減少させることは他の研究者によって報告されている.しかし,TPNの恩恵によって術後の合併症や死亡が減少したと言っても,なおかなりの患者は術後合併症を経験する.

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 Elemental diet as primary treatment of acute Crohn's disease: a controlled trial: Morain, Ó', Segal AW, Levi AJ (Br Med J 288: 1859-1862, 1984)

 この研究はCrohn病の急性期に,成分栄養投与による治療を対照試験によって検討した最初の報告である.Crohn病の急性増悪は普通prednisoloneや免疫抑制剤や手術によって治療されている.今回,Crohn病急性期21人の患者をランダムに2群に分け,10人に0.75mg/kg/dayのprednisolone治療,11人には紅茶とコーヒーのみ許可し,Vivonexの成分栄養投与で治療を行った.両群とも4週で80%の寛解を認め,成分栄養投与群もステロイド治療群に匹敵する効果を示した.両群を比較すると体重は治療開始4週後と3か月後でステロイド治療群が一貫して増加し,成分栄養投与群は減少または横ばいであった.ただステロイド群は4週後も10~20mg/dayの投与を受けており,成分栄養群は終了後治療は全く受けていない.ヘモグロビン濃度は3か月後で成分栄養群のみ維持され,アルブミンは両群とも明らかに増加し,血沈も改善した.

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 腹部の総合画像診断において肝・胆・膵疾患に関する画像診断の占めるウエイトがいかに大であるかは,日常画像診断の業務に携わっていると実感として切実に感じられるが,この領域にも診断上の盲点が少なくなく,高度に発達した現在の画像診断装置をもってしても,高度な診断基礎知識と熟練したテクニックがないと,この盲点に対して立ち向かって行くことは困難である.

 本書はまさにこの領域における正確な診断プロセスの正しい進め方と,その画像をいかに把握すべきかを懇切丁寧に解説しながら,確定診断に到達するまでの思考過程をすべて読者に認識させるに十分な内容を持つものであり,長年にわたって多くの臨床家が待ち望んでいたテキストブックと言っても決して過言ではないように思われる.また画像診断手技を用いた種々の治療法(interventional radiology)についても詳しく述べられており,最もup-todateな内容が盛り込まれている.

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 Comparison of coloncleansing methods in preparation for coionoscopy: Dipalma JA, Brady CE, et al (Gastroenterology 86: 856-860, 1984)

 大腸内視鏡検査のための前処置は通常個人的な経験や注腸検査からの応用が多く,流動食や低残渣食,下剤および洗腸の組み合わせで施行されている.しかし,これらの方法では患者の協力,処置の適切さ,強力な前処置による危険の問題があり,代わりになる前処置法の開発が待たれていたが,最近,電解質液による洗浄方法は,患者に対する苦痛が少なく有効な方法であると言われている.

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 The Natural History of Cholelithiasis: The National Cooperative Gallstone Study: Thistle JL, Cleary PA, Lachin JM, et al (Ann Intern Med 101: 171~175, 1984)

 胆石症の自然経過についてはまだ十分解明されていない,全国合同胆石調査ではケノディオールの治療効果についてplaceboをコントロールとした二重盲検試験を行ったが,これにより胆石症の自然経過を24か月観察することができた.

編集後記 西沢 護
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 学問の進歩には歴史がある.未来を夢みて未知の分野に挑戦した人,必要に迫られて最初に火をつけた人,止むに止まれぬ情熱からその時代の流れを抜け出て新しい方向に向かった人.新しいことをなすにも,それらを発展させるにも,人それぞれ異なった動機があろうが,「胃と腸」ができてから20年,現在の繁栄の基礎造りをされた諸先覚者にまず敬意を表したい.

 大腸の診断学の進歩も胃の診断学のそれと大綱において変わりない.要は学問のどこに基礎を置いているかである.医学を志すものが最初に学ぶのが解剖学であり,次いで病理学である.神が創造した人間の正常の形態と異常との違いを見付けることが,診断学の初めである.形態学の上に立って,あらゆる方面に診断学が発展してきたという厳然たる事実は,今も変わるものではない.「胃と腸」は,その意味において頑固なまで筋を通し,それが正しかったことを証明した数少ない特色ある雑誌である.

基本情報

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胃と腸
20巻3号 (1985年3月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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