胃と腸 20巻4号 (1985年4月)

今月の主題 膵・胆道の形成異常

主題

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要旨 膵・胆管の形成異常のうち,膵癒合不全と膵胆管合流異常は画像診断により見出され臨床的に多くの関心を呼んでいる.膵癒合不全は,2つの膵原基が癒合せず分離したままの状態あるいは癒合しても主膵管系と副膵管系に結合のないものを言い,副乳頭よりの膵液排出不全による背側膵障害が惹起される.膵胆管合流異常は膵管と胆管が十二指腸の壁外で合流するものを言い,圧勾配により一般に膵液が胆道系に逆流し種々の病変を引き起こす.例えば総胆管拡張症では,その病因として定説化し,胆道癌でも前癌状態ではないかと注目されている.

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要旨 これまでに経験した膵胆管合流異常は33例であり,主な合併病変は胆道拡張症26例(78.8%),胆嚢癌11例(33.3%),総胆管癌2例(6.1%),胆石症9例(27.3%),急性膵炎10例(30.39%),膵石症6例(18.3%)であった.膵胆管合流異常の治療の原則は両管の交通性を断つこと,すなわち総胆管の離断を図り胆道再建術を行うことと言える.ただし,合併病変のうち胆道拡張症,胆道癌,膵石症などを明らかにみる場合は別として,総胆管の拡張の著明でない胆石症例や合併病変がなく胆管や膵管の変化が軽微な症例では,付加手術などの術式の選択はもちろん,手術そのものの適応すら問題で,今後の検討課題と言える.

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要旨 膵の複雑な発生過程から生ずる膵ならびに膵管系の形成異常を示す症例が近年膵の形態学的診断法の進歩により,徐々に認められてきている.従来から認められた輪状膵に対しては,ERCPにより膵管の走行を明らかにすることができるようになり,膵管の形成異常としての背側膵管と腹側膵管の非癒合(略して膵管非癒合)も副乳頭からの造影法の進歩により,診断が可能となり,膵管非癒合例の中に膵炎を示すものがあって,膵炎診断のうえで欠くことができないものになっている.また,背側膵管に発生した膵癌の診断に当たって,副乳頭からの造影が必要である.まれであった膵体尾部欠損症も膵検査の進歩により徐々に認められてきている.膵の診断に当たって,膵および膵管の形成異常に基づく病態を考慮することが重要である.

胆嚢の形成異常 中山 文夫
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要旨 昨今における肝胆道系画像診断の進歩により胆嚢の形成異常は術前に判明することが多くなったが,胆嚢の形成異常に関する正確な知識なくしては診断はつけにくい.胆嚢の形成異常は胎生期の胆嚢原基の異常に起因するものであるから種々ある分類の中で胎生期異常に基づく分類がより理論的で理解しやすい.先天的胆嚢欠損症,二葉胆嚢,二重胆嚢,副胆嚢,左側胆嚢症,肝内胆嚢,屈折胆嚢,砂時計様胆嚢,先天性胆嚢憩室形成,胆嚢の先天性癒着,遊走胆嚢,胆嚢壁における胃粘膜,膵組織,肝組織の迷入の病理,診断,治療法について解説した.

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要旨 63歳,女性.手術2年6か月前に心窩部の激痛があり,血清,尿アミラーゼは著しい高値を示した.胃X線検査で胃体部小彎に胃外性圧排がみられた.副乳頭挿管によるERCPで,divisumを伴う背側膵炎と診断した.手術1か月前,心窩部痛が再来し背部痛,食欲不振を伴った.血清,尿アミラーゼともに低値を示し胃外性圧排も前回より著明となった.ERCPで頭部と体部の2か所に主膵管の不整狭窄がみられ,重複膵癌と診断.CT,血管造影でも切除可能な重複膵癌と診断し,膵全摘を施行した.病理検索では体尾部から頭部まで拡がった1つの膵癌であった.膵管癒合不全例に発生し,2年6か月の観察を行った例でERCP像,胃体部圧排,アミラーゼ値の経過を中心に報告した.

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要旨 膵・胆管形成異常は奇形であり,成人例においては直接病因となるよりは,病因的素因と考えられる.そのため,膵・胆管造影上は,像に変化をみないで経過する例がほとんどである.〔症例1〕は29歳女性で,総胆管の嚢腫状拡張を伴い,膵管末端の異常拡張部に非陽性膵石を認めた膵・胆管合流異常(CCC)であるが,嚢腫摘出術後7年目に陽性膵石を認めた.分流術が行われているため,膵石生成の原因は基礎疾患によるものか,手術によるものか明らかではない.〔症例2〕は79歳男性で糖尿病があり,膵管非癒合,そして腹側膵管の異常像から,腹側膵の慢性炎症と考えられた症例である.しかし,4年後に膵鉤状部に摘出不能な膵癌の発生をみた.この例では,むしろ初回検査時に膵癌の存在を見落としていたと思われる.

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要旨 約3年間の経過中に胆嚢癌を合併し,その後約1年3か月で死亡した先天性胆道拡張症の1例を報告した.また,先天性胆道拡張症の自験16例についても,その概要を検討した.先天性胆道拡張症では50歳以上の例に胆道癌の合併が高率にみられるが,若年者にもまれではない.先天性胆道拡張症では胆嚢・胆管切除手術が治療の原則であり,術前に癌合併の有無をPTCDによる胆道二重造影を行って診断すべきである.

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要旨 われわれは最近,膵管癒合不全に総胆管癌を合併した例と膵癌を合併した例の2症例を経験した.〔症例1〕は84歳男性.黄疸を主訴として来院.ERCPで馬尾状に終わる腹側膵管像と総胆管三管合流部に不整な狭窄を認めた.副乳頭からの造影では背側膵管には異常を認めなかったため,膵管癒合不全に総胆管癌が合併したと診断した.腫瘍は根治的に切除された.〔症例2〕は72歳女性.食欲不振,背部痛,体重減少を訴えて来院.CTで膵体尾部に腫瘤像を認め,ERCPでは樹枝状に短く終わる腹側膵管像が得られたが,副乳頭造影は失敗に終わった.死後剖検により膵管癒合不全に合併した背側膵の癌が確認された.

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 中澤(司会) 本日は学会の前日で大変お忙しいところをお集まりいただきましてありがとうございました.

 膵・胆道形成異常は,御承知のように胆道閉鎖をはじめとして日本に非常に多い疾患です.しかも同時に,最近ではそれが悪性疾患との関係が非常に深いということと,膵・胆道両方にお互いに影響し合うというので,臨床的にも大変大事な疾患になってきました.これを機会にこの方面で,現在最も活躍中の先生方においでいただきまして忌憚のない話し合いをしたいと思いますので,どうか存分に御発言くださいますよう御願い致します.

今月の症例

Caroli病 乾 和郎 , 中澤 三郎
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 超音波検査所見 右肋骨弓下走査(Fig.1)にて,肝右葉に周囲との境界明瞭なsonolucent areaが認められる(↑).内部にseptum構造も認められず,全くのecho freeな像である.更に後方echoの増強も軽度認められる.また,同様な所見を持つ小病変が肝内に多発して認められる(▲).以上の所見から,多発する肝嚢胞との診断はつくが,超音波検査法からはcystと胆管との交通の有無は不明であり,multiple liver cystなのかCaroli病なのかの判断はつきにくい.右肋間走査(Fig.2)でも,別のcystic lesionが捕らえられている.cystが小さい場合,内部にlow echoが存在するように見えることがあるが,走査部を変えて他方向から検索を行えば問題はない.

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要旨 粘膜面癌巣よりはるかに広範なsm以下への深部浸潤を来したびまん性胃癌の比較的初期像と考えられる症例を経験し,そのX線所見,内視鏡所見,病理組織学的所見について検討した.本例では胃体中部前壁のレリーフ集中があまり明瞭ではない周辺隆起を有する浅いⅡc様陥凹が特徴的であり,深部浸潤の程度とその拡がりについてX線,内視鏡検査での診断は不十分であったが,びまん性胃癌の可能性を推察し,胃全摘術を施行した.

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要旨 16歳の男性の直腸下部に多発した炎症性ポリープを報告した.患者は4か月前より持続する血便と排便時痛を訴え来院し,X線検査と内視鏡検査で,肛門輪に接した直腸にほぼ全周性に発生した大小様々な結節状の隆起性病変が見出された.生検の組織診では悪性の所見はみられなかったが,治療の日的で経肛門的にポリープ切除術がなされた.切除ポリープは16個に及び,多くは0.5~1.5cmの大きさであったが,最大のものは2×3cmで亜有茎性であった.いずれのポリープも組織学的には同一で,増生した肉芽組織ないし線維組織が主体で一部で過形成性腺管がみられるにすぎなかった.表層はびらん性で滲出物の付管がみられた.腺腫性細胞や悪性細胞は全くみられず,ポリープは組織障害の修復に閨連して生じた炎症性のものと考えられた.

Coffee Break

腺窩膿瘍のcrypt 竹本 忠良
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 既に御承知のことかもしれないが,私は日常,寸暇を惜しんで雑学にも精出している.そうなると,本の山に囲まれるわけであるが,辞書も必然的に集まってくる.英和辞典だけでも,一体何冊持っているだろう.最近では,26万語を誇る「リーダース英和辞典」(研究社)を2冊も持っている.

 さて,crypt abscessは腺窩膿瘍と訳されており,特に潰瘍性大腸炎で医学生もちゃんと知っている.「リーダース英和辞典」によると,cryptはn.あなぐら,地下室((特に寺院の納骨または礼拝用の));〔解〕陰窩(か),凹窩,腺窩;〔口〕暗号文(cryptogram)と説明してある.地下室の(( ))内がこの小文のみそである.宗教史学者の山折哲雄教授の「宗教民俗誌―聖と俗のトポロジー」(人文書院,1984)を読むと,ブルゴーニュ地方にある有名なシトー修道院の訪問記が載っている.そこにクリプト,地下札拝堂のことが書いてある.“司祭館と教会堂とは地下道によっても通じており,クリプトは教会堂の真下に作られている.私は,司祭館の一隅から穴倉にもぐり込むような恰好で,その修道士の後にくっついていった.真暗闇の隧道に小さな裸電球がともされると,かつての迫害時代に,そこに逃げ込んだかもしれないキリスト教徒の,うめくような激しい息づかいがきこえてくるようだ.シトーのクリプトの雰囲気は,いつのまにやら,ローマ教会やコプト教会の原始時代へと私の幻想を誘う.この地下礼拝堂は,確かに,あのローマやアレクサンドリアの地下墓場(カタコンベ)の陰惨な記憶をどこか彷彿させるのである”と述べてある.ここまで説明してあると,cryptの意味がよく理解できるし,crypt abscessという名前がうまくつけられていることに感心できるのである.

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 典型的な英国紳士Sir.F.Avsy-Gonesはダークスーツの内ポケットから直腸鏡を取り出して言った.“これは私の聴診器です.coloproctologistにとって1本の直腸鏡は内科医にとっての聴診器に匹敵します”と.

 直腸鏡検査は大腸疾患の診断にとって必要不可欠な検査であるにもかかわらず,なぜか一般に軽視されており,特に内科の先生方には不人気なようである.昔式の砕石位の体位は患者にとっても屈辱的で,この検査が不人気である理由の1つでもあろう.手間がかかるわりには検査点数が低いこともやはり不人気に関係しているかもしれない.しかし,大腸疾患がこんなに増加してきた最近では,決して軽視してはならない検査であることは言うまでもない.最も簡単な直腸指診,肛門鏡検査に次いで容易な検査であり,得られる情報も少なくない.

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要旨 微小胃癌における癌発生初期の発育様式について検討した.直径5mm以下の平坦および陥凹型胃癌55病巣を選び,次の5点を中心に組織学的に検討した.①癌病巣部直下残存胃腺の萎縮の有無,②癌表面のびらん,③癌の大きさ,④癌細胞の粘膜内における局在,⑤癌の深達度,5つの所見の組み合わせのパターンは,未分化型癌では5種類(a~e),分化型癌では4種類(A~D)であり,これらは癌の形態的特徴と経時的変化を表している.未分化型癌では<パターンa>である残存胃腺萎縮無,表面平坦,直径2mm以下・癌細胞が粘膜上半分を占めるm癌の状態に始まる.次いで<パターンb>における残存胃腺の萎縮が起こる.更に<パターンc>である表面の陥凹化と直径の増大を示し,やがて<パターンd>において癌細胞は粘膜の全層を占める.そして一部は<パターンe>となり粘膜下浸潤を示す,また,以上のいずれのパターンにおいても癌細胞による嚢胞形成あるいは“二層構造”を認めなかった.他方,分化型癌では<パターンA>である残存胃腺萎縮有,表面平坦,直径2mm以下,癌細胞が粘膜全層を占めるm癌に始まり,次いで<パターンB>における表面の陥凹化が起こる.やがて<パターンC>である直径の増大が加わり,そして一部は<パターンD>となり粘膜下浸潤を示す.すなわち,分化型・未分化型癌の発生点の相違,ならびに初期発育様式の違いが示された.

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要旨 慢性胆嚢炎合併胆嚢結石506例について,光顕組織学的に胆嚢粘膜の腸上皮化生を結石の種類,年齢,胆嚢像描出の有無別に調べた.特に杯細胞のみられる腸上皮化生の出現頻度を比較検討した結果,胆嚢造影陰性胆嚢結石例では胆嚢癌周辺粘膜にみられるような腸上皮化生が高率に出現していた.更に,この腸上皮化生の特性ならびに分布をみるために慢性胆嚢炎合併胆嚢結石54例の新鮮摘出胆嚢標本を用いて,酵素化学的活性法による検討を行った結果,この腸上皮化生はALP活性を欠いており,胆嚢造影陰性例ではびまん性の分布状態を呈していた.以上の成績からみると胆嚢造影陰性胆嚢結石における胆嚢粘膜は癌発生の素地になる可能性があると推察された.

Refresher Course・14

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□症例:60歳,男性.

□主訴:特になし.

〔初回X線所見〕患者は特に自覚症状はなく,健康診断のために胃X線検査を受けた.Fig.1はその際の立位第1斜位の食道二重造影像である.Fig.1aでは上部食道が,Fig.1bでは中・下部食道が撮影されている.食道は異常なしと診断された.内視鏡に回った理由は前庭部にびらん性胃炎の所見があったからである.しかし,Fig.1を見直してみると,簡単に異常なしとするには問題がある.まず,辺縁を見てゆくと,全体的に滑らかな輪郭で描かれており,少なくとも辺縁の異常はチェックできない.次に中央部を見ると,二重造影像にはなっているものの,バリウムが粘稠すぎるため,粘膜面をバリウムの薄い幕が覆ってしまって,粘膜面の微細な変化が全く描出されていない.しかし,Fig.1bをよく見ると気管分岐部のやや下方の中部食道(A)と下部食道(Ei)の共に右側壁寄りに(B),わずかな異常陰影があり,特に下部食道のほうには,中に粘膜面のわずかな凹凸不整のようなものが認められる.

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病理

質問 ポリペクトミーの病理切片作製のとき,うまく茎が出た標本が作れないときがありますが,どのようにしたらよいでしょうか.

 渡辺 ポリペクトミー材料の茎がよくわかるようにして,ホルマリン固定してください.短茎で茎が細い場合はFig.1aのようにして,茎が太い場合はFig.1bのようにして切り出すのが良いと思います.短茎,長茎や茎の太さに関係なく,茎の中心でポリープを垂直方向に切らないことが大切です.なぜならパラフィンブロックを荒削りするときに1mmぐらいブロックを切り込むことがあるからです.

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欧文目次

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 救急疾患のみを対象とした画像診断の教科書としては本邦では本書が最初のものであると言ってよいだろう.編者の聖マリアンナ医大放射線科石川徹教授と同科の主要スタッフとが中心になって分担執筆したものであるが,救急医療に取り組む人々には参考になるところが大きいと思われる.

 救急医療の放射線診断に関するテキストとしては,従来は例えばHarris&Harrisの「The Radiology of Emergency Medicine」(Williams&Wilkins Co,Baltimore,1975)があった.ほぼ10年前に刊行されたその初版本と今回の石川氏らのテキストの内容を比較してみると,後者にはこの10年間に爆発的に起こった種々の新しい医用画像診断の進歩が鮮やかに刻み込まれていて,この分野でも大きな変革が生じたことが判然とする.特にCTスキャンの影響は頭部に限らず全身の救急診療において明らかであり,“CT前”と“CT後”では診断の進め方に根本的な変化の生じた領域も少なくないことが示されている.非侵襲的で簡便な超蹄波診断の特性も救急疾患の診断にはよく生かされ,例えば急性腹症,閉塞性黄疸,心タンポナーデなどの迅速な診断に頻用されるばかりでなく,超音波ガイド下に行う穿刺吸引や経皮的ドレナージなどの技術の役割も大きい.血管撮影とこれを利用した救急治療もこの10年間に画期的な進歩をみた.これらの新しい診断法が盛り込まれている点が本書の特色の1つではあるが,単純X線撮影を主とする従来の放射線診断の定石が軽視されているわけでは決してなく,むしろ多くの場合に最も重要なのは単純撮影や簡単な造影検査が適正に行われ正確に読影されることであるという点が繰り返し強調されている.単純撮影をちょっと工夫するだけで目的を果たしうる状況下で,不必要に高価な検査や侵襲度の高い検査を行うようなやり方を本書は“斧でハエを殺すような診断”と称して,いましめている.

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 ERCPに関連して引用すると,劇作家・評論家として著名な山崎正和教授は,近著「自己発見としての人生」(TBSブリタニカ,1984)に,次のように述べている.すなわち,“われわれは……,いわば技術的進歩主義とでも呼ぶべき,人生にたいする感受性の病弊に悩まされている.それは何でもあれひとつの仕事の達成について,さらには,ひとつの時代の歴史的な変化について,われわれがあまりにも過大な期待を抱く結果,つねに現実にたいして幻滅と徒労感と倦怠を覚える,という病弊である”と。

 この本の代表著者である高木国夫博士の手によって,ERCPが診断学の世界に登場した年は,絶対に忘れることができないのであるが,実に1969年のことであった.わが国に,Hirschowitzのファイバースコープが輸入されてから,7年後に,まだまだ改良の途上にあった国産の生検用ファイバースコープでもって,ERCPに成功したのである.ファイバースコープにアングルが付いたのが,1966年であったと記憶している.このERCPは,特に膵癌と慢性膵炎の診断に有用な診断武器として,日本はもちろんのこと,欧米に広く普及した.

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 Colonoscopic decompression for acute pseudo-obstruction of the colon (Ogilvie's syndrome): Report of 22 cases and review of the literature: Bode WE, Beart RW Jr.Spencer RJ, et al (Am J Surg 147: 243-245, 1984)

 結腸の偽閉塞は1984年Ogibieによって初めて記載された症候群である.その病態生理については,いまだ定かでない.部分症としてしばしば起こる盲腸の巨大拡張は,死亡率の高い阻血性損傷と盲腸の穿孔を引き起こす.かつての有効な治療法は盲腸切開による挿管術であった.Kukoraらが1977年に急性結腸偽閉塞に対する内視鏡的減圧術を初めて試みて以来,著者の例を含めて報告は93例にのぼる.著者らは自己の経験に文献的考察を加えて内視鏡的減圧法の効果と安全性について述べている.

編集後記 中澤 三郎
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 本号の主題である膵・胆道の形成異常は故相馬智教授が膵のdivisumを取り上げてみようと言われたのが始まりで,それならついでに膵,胆道の発生異常のすべてを入れようということになったのである.最初は時期尚早で読者の皆様には満足していただけるか不安であったが,出来上がってみると予想外に豊富な内容で充実したものとなった.相馬先生の炯眼に今更ながら敬服する次第である.

 お読みくださればおわかりのように,形成異常のすべてが書かれているが,そのほかに既成概念を越えた考え方を必要とされる時代がきたことに驚かされる.例えば膵嚢胞性疾患のごとく,先天性か後天性かの検討を含め,発生やら病態やら根本的に考え直しを迫られるなど,新たな研究材料が出現してきた.1つの文化から別の文化への変化は道具の発展によるところが大であるとされるが,医学の分野でも同様でERCP,US,CTなどの開発に伴い新しい展開が起こり,これらの疾患が身近になってきたのである.

基本情報

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胃と腸
20巻4号 (1985年4月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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