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はじめに
X線診断の立場に立つとき,X線診断に溺れると時代遅れになる.X線と内視鏡の両検査を行い,そしてX線診断の利用度を斟酌するのが正しい.内視鏡の診断能を横目で見ながら,評価を惜しまず,でもX線診断の主張は主張として通さなくてはなるまい.内視鏡診断家に対してもX線診断のメリットと利用の仕方を伝えなくてはならない.後述するPLA(点・線・面)の考え方は1980年に述べたが,その後も見直したりしてX線診断の進歩を求めている.
胃の材料は手術が多いから得やすい.それより手術が少ない腸部では,胃の経験を生かし診断能率を上げるしかない.標本上で狙った病変の反省もできる.他病変に気付き診断の限界も知り謙虚な立場が取れる.だから,まず,胃で診断の基礎を固め,その実力と手法を小腸,大腸,食道の順に適用すべきであろう。病理は臓器特異性を振りかざす.組織が違うからもっともなことである.しかし,X線診断は,食道,大腸と個々の診断学があると思って診断に突入すると,甘い診断学と技術不足を,すぐ,その部の特殊性だと誤認する恐れがある.大腸を例に取ると,拾い上げたものだけで診断の話を進めたのでは,それは真相ではなく,診断学も宙に浮く.現にルーチン検査で瘢痕の診断件数が少ないではないか,などと思う.学会でよくみるように,何度も話題に取り上げながら解決がつかず話が尽きないことがある.これがよいお手本で,内容が深いとばかりは言えず,実は解明する手法に欠陥があるのではあるまいか.
診断は隆起性病変と陥凹性病変とに分けて扱うと実際面で便利である.長年,それで慣れているし,診断を進歩させた裏付けもある.本稿では主として陥凹性病変を述べ,隆起性病変は触れるだけにした.
隆起性病変の診断は,大きさ,側面像,表面の性状の相関で進める習わしである。そして生検に直行する.全腸管に共通して山田分類で話をする.大腸には長茎の型があるので丸山分類がある.大腸で側面像のありったけを挙げると,肉眼でわかるものは長茎,短茎,亜有茎,平盤,中心陥凹を持つ平盤の諸型である.実際面で合理的に,どれだけ少ない型別に整理できるかが課題である.隆起の写し方と読影は,胃で慣れているのと同じである.ただ,平盤状小隆起の辺縁像(食道でも同じ)の読影が,いま残されている.胃では,体位変換で即側面,正面の像が撮れるので,隆起の諸像に深入りしなくても済んだ.ところが,大腸は体位変換が自由自在にできない.また,透視能も不十分である.そこで疑像の判読にカを入れざるを得ない.
いま,X線検査だけ,また,内視鏡検査だけで済ます人のほうが少ない.多くは,いずれかに重点を置きながら両者を併用する.論より証拠,内視鏡学会というのに,多くのX線写真が掲げられている.良いX線写真には説得力があるからである.
欧米のX線診断は全くの当てっこである.撮り方の良悪は問わない.極端な言い方をすれば,楽書きでも絵だと言うのに等しい.日本では撮し方を決め向上を図る.理屈に支えられた,原則的な検査体系を作る.読影と切除標本との対比から合理的な,客観的な読影理論を作ろうとする.
新しい撮影技術,手法は,効果を上げると普及するものである.そのあと,たどる道は,片や慣れによる質の低下,堕落であり,片や質の向上,芸術的志向への道である.
本稿は,内視鏡併用からみたX線検査の利用の効果,確固不動なX線所見の大腸への適用,二重造影法を大腸に適用したときの診断理論の考察である.
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