胃と腸 16巻10号 (1981年10月)

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 臨床的に取り扱われる小腸良性腫瘍は,悪性腫瘍よりも一層まれな病変と考えられ,“良性”であるが故に臨床家の関心を引くことも少ない.したがってまとまった報告も多くはないが,小腸良性腫瘍に関する知識と関心が普及すれば,これらの

腫瘍が重篤な合併症を来す以前に発見されることも期待される.

 今回は前回に引き続き小腸腫瘍のうちの良性腫瘍に限って本邦報告例を集計し,主として欧米の文献を参照しつつ考察を試みた.

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 最近の小腸腫瘍に対する診断技術の進歩には目覚ましいものがある.著者らが小腸内視鏡を用いて内視鏡観察および直視下生検を行い術前に確定診断した空腸癌の1例を報告する.

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 小腸に原発するHodgkin病は,極めてまれで著者らの調べえた限りでは現在まで7例の本邦報告例をみるにすぎない.

 術前検査で悪性リンパ腫を疑い,右半結腸切除術(R3)を施行し,病理組織学的に原発性の回腸末端部Hodgkin病と診断された1例を経験したので報告する.

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 原因不明の下血を頻回に認めた,患者に対し,経口小腸造影で病変を発見し,経ゾンデ法による小腸二重造影法により,質的診断を下しえた空腸の平滑筋肉腫例を経験したので報告する.

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近年小腸病変の診断技術の進歩に伴い小腸腫瘍の報告も少なからずみられるようになってきたが,われわれは最近空腸平滑筋肉腫の1例を経験したので報告する.

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主として壁外性に増殖した空腸の平滑筋肉腫の症例を報告する.

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 小腸腫瘍は比較的まれな疾患と言われているが,われわれは最近3例の空腸平滑筋腫を経験したので報告する.

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 小腸腫瘍のなかで平滑筋腫は決してまれな疾患ではない1).本症疾患の大半は消化管出血,貧血を主訴とすることが多いが,その術前診断は決して容易ではない,最近,われわれも原因不明の下血を繰り返した本症患者に対して,小腸内視鏡検査によって腫瘍の存在診断がが可能となった1例を経験したので報告する.

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 著者らは最近,Leser-Trélat徴候に一致した皮膚症状を伴う回腸悪性腫瘍例で,その組織像がStoutの提唱したbizarre leiomyoblastomaであった稀有なる1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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 Peutz-Jeghers 症候群は特有の皮膚,粘膜の色素斑と消化管polyposisのみられる遺伝性疾患である.イレウス症状,腹痛,血便などの消化器症状がみられるが,とりわけ腸重積症は最も多くみられる合併症である.今回われわれは大きさ30mmの空腸polypが原因となり小腸重積症を来したPeutz-Jeghers症候群の1例を経験したので報告する.

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 血管性腫瘍は皮膚,筋肉,骨髄,中枢・末梢神経系には度々みられるが,消化管に発生することはまれである.なかでも小腸の血管外皮細胞腫(hemangiopericytoma)は極めてまれな腫瘍である.最近,われわれは十二指腸,空腸,S状結腸に多発した本症症例を経験したので報告する.

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 小腸の良性腫瘍は極めてまれな疾患であり,しかも症状発現の頻度も少なく,狭窄,重積,出血などの合併症が出現してはじめて発見される症例が大多数であるため十分な検査された症例は数少ない.

 われわれは,原因不明の下血のため繰り返し消化管精査を行っているうち,たまたま比較的小さな空腸のリポーマを発見し術中の内視鏡検査をも行ったので,若干の検討を加え報告する.

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 市川(司会) 本日のテーマである小腸腫瘍は非常に頻度が低く大腸癌の1/36などとも言われます.それを診断するのには,いろいろ武器はありますが,そういう武器を使用する対象として,どういう例に,どういう検査をするかが,一番の要点ではないかと思います.臨床上の対象となった例は,どうやって見つかったのか―というような話から入っていきたいと思います.

 その前に,八尾先生が前号と本号の主題で統計を書かれております.今私はただ,少ないと言いましたけれども,少し,数字を挙げてお話ししてくださいませんか.

胃と腸ノート

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 空腹期の胃や膵の外分泌は,いわゆる基礎分泌が一定の割合で持続するものと考えられている.

 一方,胃および小腸の消化管運動は食後期と空腹期では全く異なった性質を示す.特に空腹期に特異的に観察される消化管の収縮運動は肛側伝播性空腹期収縮(interdigestive migrating contractions,IMC)と呼ばれ,胃に発現したIMCが空腸から回腸へと伝播される,このことは1969年Szurszewskiによって,イヌの小腸で初めて観察され1),以後その生理的意義や調節機構の研究が多数報告されるようになった.

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 十二指腸ファイバースコープの登場により非観血的に膵管から純粋膵液を採取することが可能となった.純粋膵液採取法を用いての研究は,細胞診による膵癌の診断,膵液の生化学的分析による膵外分泌の生理・病態生理の解明,膵外分泌機能検査への応用などへ発展してきた.

 本採取法を用いて,いわゆるprotein plugの形成機序を明らかにする試みもまた興味ある研究課題の1つである.慢性膵炎確診例あるいは疑診例の純粋膵液中のHexosamine濃度,カルシウム濃度が著明に増加していることは既に報告したとおりである.この異常は特に空腹時に膵管内に貯溜している膵液において著明で,加うるに,高度膵外分泌機能障害例を除けば,蛋白濃度および粘稠度の増加をも伴っている.このような患者の純粋膵液にはしばしばprotein plugおよびゼリー状粘液浮遊物を認めるが,その数量は症例により様々である.このゼリー状浮遊物およびprotein plug を取り出して形態学的および組織化学的に検討すると,protein plugの様々な形成段階を明らかにすることができる.従来,慢性膵炎例切除膵の切片の組織化学的検討によってもprotein plugの形成機序に関して,かなりの情報が集積しているが,本採取法の長所は何といっても,①様々な形成段階にあるprotein plugを豊富に得ることがきる.②plugを切片標本に作るのみならず,そのままの状態で固定して立体的な観察を行うことができる,③多数のprotein plugを集めることができるので,その生化学的分析をも行うことができる,ことである.紙数の関係で方法論の詳細は省かざるを得ないが,様々な形成段階にあるprotein plugの観察,対比検討からその形成機序は次のごとく考えられる.

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 胃切除後に発生する病態の中で,特に重要なものは,①吸収障害,②dumping症候群,③貧血,である.それらの病態の発生機序について,Billroth I,II法などでは多くの報告がみられるが,胃全摘例については極めて少ない.胃全摘に伴う変化として,胃は当然失われるが,同時に手術によって新たに造設された消化管の走行異常がその病態に著しく影響する.胃全摘術として,食道・十二指腸端々吻台法やBillroth II法に準じた食道・空腸吻合法などがあるが,前述した病態の発生をできるだけ少なくする目的で,種々の新しい術式が考案されてきた.著者らの教室では,従前Roux-en-Y吻合法が施行されたが,最近ではほとんどの症例にRoux-en-Y法兼空腸・十二指腸吻合法(double tract法)が行われている.著者らはこれらの術式で起こる病態の一部を述べる.

研究会だより

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 みちのくの町,仙台は古くから消化器病研究の中心,東北大学第3内科があり,また胃集団検診のメッカ,宮城県対癌協会の所在地でもあります.

 しかしながら,こうした由緒ある地,仙台にこれまで恒久的な消化器病研究会が存在しなかったことは,思えば不思議な現象でした.このようないきさつのなかで誕生したのが仙台消化器病研究会「仙台いちょう会」であります.

 本会は提言者でもある東北大学第3内科後藤由夫教授を顧問とし,仙台の大部分の病院と開業医の代表者,約30名が世話人となり,構想が練られました.1977年7月に第1回の研究会が持たれ,今年6月で満4歳の誕生日を迎えたところです.

Coffee Break

癌免疫療法は今?
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 進行癌患者においては免疫能,特にT細胞機能が低下している.原因は患者血清,癌性腹水,癌細胞自体,またいわゆるサプレッサーマクロファージなどがT細胞機能を抑制するためであると言われている.

 このような一般的な免疫能の低下がみられることは極くわかりきった事実と考えられるようになった.

“Intraepithelium lymphocyte”
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 胃腸上皮の20%までは非上皮性の細胞である.そのほとんどがリンパ球である.主として基底膜と上皮の間に分布している.リンパ球ではT細胞が主体で,一部B細胞と思われるものがみられる.ただし,Selbyらの研究では,すべてT細胞でB細胞もプラズマ細胞も見つからなかったと言われている.

 この上皮内T細胞は,恐らく腸管内抗原の処理に重要な働きをするのであろうが,実際にこのT細胞内にパイノサイト小胞が見つかったとも言われておリ,腸内の抗原物質を処理していると思って間違いない.だから,この上皮内リンパ球は腸内の抗原物質に対する免疫系の最初の細胞だということになる.

Thymosin
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 Thymosinは胸腺から分泌されるポリペプタイドホルモンの総称である.1965年にGoldstein A. L.とWhite A.によって分離されてから,はや十数年を経た.ThymosinはT細胞の成熟に関係が深いが,B細胞には何ら働きかけないと考えられている.Thymosinレベルは幼時に高く,25~45歳で徐々に低下して,老年に至っては極めて少なくなる.これはT細胞数も同様である.Goldsteinによるpurificationの過程で5番目のものをThymosin 5 と呼んでいるが(これも1つのポリペプタイドではない),その物質は既に人間のphaseI臨床でOKが出ている.Thymosin 5は正常免疫能を持った人のそれを更に高めるのではなく,低下したそれを正常レベルまでもっていこうとする働きがある.そして,異常に高まっている免疫能に対しては,それを正常レベルまで下げようとする働きもある.

 米国のNational Cancer Instituteでは,肺のsmall cell carcinomaに標準的化学療法にかぶせてThymosinとプラセボとの比較試験を行った結果,Thymosin投与群では化学療法に完全反応したあとのtumor-freeの期間の延長がみられたと言う.特に,これらの患者の中で平均以下に免疫能が低下していた例に対して有効であったと言われている.この効果はThymosinが高くなったsuppressor/helper T細胞比を下げる方向に働いたためと解釈されている.Thymosinのこのような働きは,そのほかのいわゆる免疫賦活物質が,正常レベルの免疫能を有する個体のそれをより高いレベルへもっていく働きを持っているのと比べて,大分意味が違うと言えそうだ.

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小腸および大腸のクローン病患者のsigmoidoscopeの所見を次の3段階に分ける.

1. normal

2. equivocal: erythema, excessive mucus production

3. abnormal: granularity, friability, bleeding, ulceration

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 胃潰瘍の潰瘍周辺には,その修復機転の1つとして肉芽組織が発生する.今回,胃体部のleiomyoblastomaに随伴した潰瘍の肉芽組織が異常な増殖を示し,粘膜下腫瘤を形成し,潰瘍と隆起の位置関係より奇異な肉眼形態を呈したと考えられる1例について,若干の考察を加えて報告する.

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 胃腸吻合部には吻合部潰瘍,吻合部癌,吻合口炎,肉芽腫などの病変がみられるが,残胃吻合部の隆起性病変はまれである.196年,Nikolai1)の報告を初めとして約8例が報告され2)~8),術後胃,特にBillroth II法の吻合部にみられるが,その組織学的診断名についてはまだはっきりと定められていない.われわれは,38歳の男性が12年前十二指腸潰瘍のためBillroth II法による胃切除術を受けたが,吻合部より大量出血が生じたため,残胃再切除を行った.この出血は,吻合部の隆起性病変からの出血と考えられ,この病変は組織学的にはLittler2)のgastritis cystica polyposaに一致したので,文献的考察を加えて報告する.

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 早期胃悪性リンパ腫の1例を経験したので,X線・内視鏡像に若干の考察を加えて報告する.

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 最近,われわれは横行結腸から大網,腹壁に及ぶ放線菌症の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.

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欧文目次

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 Arteriovenous Malformation of the Bowel; An Analysis of 22 Cases and a Review of the Literature C. T. Meyer, F. J. Troncale et al. (Medicine 60; 36~48, 1981)

 原因不明の消化管出血に対して血管撮影が試みられ,腸管の動静脈奇形(AVM)がみつかる頻度が最近増加している.AVMは粘膜下に限局した動脈・静脈・毛細血管の不整形のクラスターから成る.AVMは血管撮影により診断され,その診断基準は,early filling vein,vascular tuft slowly emptying veinの存在である.

編集後記 西沢 護
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 20年ほど前,原因不明の下血の既往歴のある患者で,1年以上も低色素性貧血という診断名で入院していた患者の検査をさせられたことがある.胃と大腸は二重造影を行い,十二指腸,空腸,回腸は充満像で経時的に追跡したが,結局診断がつかず,その後間もなく下血と麻痺性イレウスのため死亡し,剖検により十二指腸第3部位の管外発育性の平滑筋腫であった,という苦い経験をしたことがある.

 前号と本号の2回の小腸腫瘍特集をみると,小腸の二重造影法が行きわたり,かなり小さなものまで術前に診断されてきている.しかし,やはり腹痛,下血,イレウスといったような愁訴が病変を見つける契機となっており,また口側に近い空腸や回腸末端付近のものが多く,小腸の中心あたりのものが少ない.検査が容易なためなのか,病変がそれらの部位に多いのか不明であるが,小腸二重造影法の普及によって,より中央部位の小腸病変が見つけられるようになるものと期待している.現在,小腸内視鏡の進歩が停滞しているだけに良い小腸二重造影像しか頼りにすることができない.

基本情報

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胃と腸
16巻10号 (1981年10月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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