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編集後記
西沢 護
pp.1154
発行日 1981年10月25日
Published Date 1981/10/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403108247
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20年ほど前,原因不明の下血の既往歴のある患者で,1年以上も低色素性貧血という診断名で入院していた患者の検査をさせられたことがある.胃と大腸は二重造影を行い,十二指腸,空腸,回腸は充満像で経時的に追跡したが,結局診断がつかず,その後間もなく下血と麻痺性イレウスのため死亡し,剖検により十二指腸第3部位の管外発育性の平滑筋腫であった,という苦い経験をしたことがある.
前号と本号の2回の小腸腫瘍特集をみると,小腸の二重造影法が行きわたり,かなり小さなものまで術前に診断されてきている.しかし,やはり腹痛,下血,イレウスといったような愁訴が病変を見つける契機となっており,また口側に近い空腸や回腸末端付近のものが多く,小腸の中心あたりのものが少ない.検査が容易なためなのか,病変がそれらの部位に多いのか不明であるが,小腸二重造影法の普及によって,より中央部位の小腸病変が見つけられるようになるものと期待している.現在,小腸内視鏡の進歩が停滞しているだけに良い小腸二重造影像しか頼りにすることができない.
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