胃と腸 11巻9号 (1976年9月)

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 腺様囊胞癌は,一般に唾液腺,気管,乳腺,皮膚等に見られるが,食道に発生することは極めて稀であり,著者らの知る限りでは本邦にはその報告例はない.われわれは食道原発と考えられる腺様囊胞癌の1例を経験し剖検により確認しえたので報告する.

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症 例

 患 者:川○季○ 63歳 男

 主 訴:発熱,胸骨下痛および心窩部痛

 家族歴:特記すべきものなし

 既往歴:20歳,頭部外傷,42歳,胃潰瘍

 現病歴:1973年12月頃より,心窩部痛,悪心が出現し,さらに38~39℃の発熱も出現したため,某医院を受診し,通院加療を受けたが軽快せず,ために1974年5月初旬,発熱を主訴として当科を受診し,5月8日敗血症の疑いにて入院した(第1回目内科入院).入院後発熱は抗生剤(Ampicillinum,AB-PC1日2g)投与により軽快し,白血球増多(13,200),CRP強陽性等の炎症所見も改善したが,食道・胃レ線検査にて,Fig.1のごとく食道下端に巨大な潰瘍を認め,食道ファイバースコープにても巨大なきたない灰白色苔におおわれた易出血性潰瘍を認めたため,潰瘍型食道癌の疑いにて2回にわたり生検を行なったが,悪性腫瘍細胞は認められなかった.しかし,レ線および内視鏡的に食道の悪性病変が強く疑われたため,6月6日当院第1外科に転科した(第1回目外科転科),転科後,外科にてさらに2回の食道生検が行なわれたが,Candida様のFungusが認められたのみでやはり悪性細胞は認められなかったため,7月25日再度内科に転科された(第2回目内科入院).外科入院時に抗生剤(AB-PC)を一時中止したところ,再び39℃台の発熱がみられたので,当科にて再びAB-PCを投与したところ,8月初旬より全く解熱し8月10日に退院した.退院後経過は概ね順調で抗生剤も中止し食道潰瘍もFig.2のごとく一時治癒傾向が認められたが,11月になり再び胸骨下痛,胸やけ,悪心,発熱等が出現し,1975年1月再度当科に入院した(第3回目内科入院).

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 胃X線診断や内視鏡診断技術の向上により肉眼的分類が不可能な早期微小胃癌まで術前に発見されるようになってきた.今回,われわれは,胃X線診断でその存在を疑い,内視鏡および生検で術前に診断し得た3×3mmという微小Ⅱc類似Ⅱb型早期胃癌を経験したので報告する.

成人の胃重複症の1治験例 島田 寛治
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 Ladd&Gross8)の提唱以来,消化管重複症の報告は急速に増加し,いくつかの総説や統計的観察がなされており,従来考えられていたほど稀なものではなくなってきた.Gross5)は22年間での68例の症例を集計し,Sieber14)は21年間に25例を取り扱っているが,そのうち胃重複症はそれぞれ2例と3例である.本邦でも消化管重複症全体については多くの集計があり31)~33),その後の報告を加えると約150例であるが,最近に至って従来きわめて稀とされていた食道34)や胃28)の重複症についてもそれぞれの集計がなされており,消化管重複症も部位別の考察がなされるようになってきた.しかし胃重複症の報告は本邦ではまだ少なく,石田32)は5例,池田33)は7例を文献的に集めているにすぎない.著者もすでに3例の消化管重複症の経験を発表しているが36),そのうちのきわめて稀な成人の胃重複症について報告し若干の文献的考察を加えてみた.

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 胃平滑筋腫は臨床的には比較的稀な疾患であるが,それに胃潰瘍の合併した症例は更に少ない.最近,著者らは筋腫と胃潰瘍が同一部位に共存したきわめて稀な1例を経験したので報告する.

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 従来,Addison病は消化管潰瘍病変の少ない疾患として知られているが,近年ステロイド治療中潰瘍が合併しやすいことが警告されている.われわれは,最近ハイドロコーチゾン維持療法中に胃潰瘍と糖尿病を合併した1例を経験し,治療上問題点も多い症例であったので,文献的考察を加えて報告する.

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 1907年S. Oberndorferにより命名されたカルチノイドは初め良性腫瘍と考えられていたが,1931年Cookeはカルチノイドで転移を有する例を集めて報告し,それ以後,転移に関する報告は増加し,最近ではslow growingの悪性腫瘍という概念が一般化している.本邦における本腫瘍の報告は欧米に比し,いまだ少なく,ことに上部消化管より発生したものは稀である.最近,われわれは十二指腸粘膜下腫瘍の診断で,開腹し,組織学的に本腫瘍と確定しえた症例を経験したので報告する.

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 腸管回転異常に伴う先天性腸狭窄症例は現在まで多数の内外の文献があるが,なお稀な疾患であり,特に年長児に至るまで放置されていた症例は少ない.著者らは最近,頻回の嘔吐と腹痛を訴える16歳の患者で,消化管レ線検査を行なった結果本症であることを確認し,根治手術に成功した症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.

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 近年,消化管内視鏡の発展,普及はめざましく,胃腸疾患の早期発見,診断のみならず,内視鏡下polypectomy1),局所注射療法2),異物除去3),さらに内視鏡的乳頭切開術4)5)等の内視鏡使用による治療も試みられ,内視鏡の臨床的応用範囲は極めて広くなってきた.

 今回,筆者は内視鏡およびX線により観察しえた興味ある回虫症の3例を経験したので報告する.

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 直腸カルチノイドは本邦ではまれな疾患とされてきたが,最近報告例が散見されるようになってきた.1967年上杉1)が本邦における第1例目を報告して以来,現在まで40例を数えるに過ぎない.われわれは最近注腸X線検査,内視鏡的検査および生検にて直腸カルチノイドと診断し,手術をしえた1例を経験したのでここに報告する.

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 総胆管囊腫の症例は稀ならず発見されるが,本症に胆管癌が合併した症例の報告はきわめて少ない.最近われわれは十二指腸ファイバースコープおよび逆行性胆管造影により,総胆管囊腫に胆管癌を合併した興味ある症例を診断しえたので,若干の考察を加えてここに報告する.

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 最近われわれは,下痢で来院した19歳の男性に消化管造影検査を行ない,大腸のみならず,食道,胃,十二指腸にもポリープが認められたが,既に報告されているいずれの大腸ポリポーシスの範疇にも属さないと思われる症例を経験したので若干の文献的検討を加え報告する.

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 近年胃癌の診断技術向上にともない,早期胃癌の発見率が著しく向上し,外科的にも胃癌根治手術の方法も著しい進歩をとげた.とくに胃癌に対するリンパ節廓清術の確立は最右翼でその予後は驚くべき好成績を得ている,しかしこれを年齢別,特に若年者胃癌を取り上げてみると必ずしも上記のように良い成績とはいい難い.その理由は発生数が少なく,しかも年齢が若いということで普段から健康管理がおろそかになっていること,ことに日本において急速な発展を遂げた胃の集団検診の対象外になっているということで胃癌が見逃がされ,若い命を断っているのが現況10)16)22)である.

 若年者胃癌について1848年Dittrich24)が報告して以来多数の報告が見られるが,本邦では,1894年滝口1)の25歳の男子の例が最初の報告であるとされている.最年少例の報告は,1859年Wiederhofer25)の生後16日の新生児であり,本邦では1964年三浦11)の報告した1歳11カ月の女児である.ここではわれわれも若年者胃癌の年齢を満30歳未満14)20)と仮りに定めた.

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 膵・胆管の開口様式に関しては,古くから剖検例を中心に詳細な検討が行なわれ,いくつもの分類がなされている1)~8).このvariationに富んだ膵・胆管の末端が,主として十二指腸主乳頭(以下単に乳頭)に開口しているわけであるが,実際には内視鏡的に開口形態を厳密に分類することは,いくつかのtypeを除くと非常に困難である.その理由は乳頭の内視鏡的形態が,機能的な運動,挿鏡操作による刺激,観察時の条件などによって大きく左右されるからであり9),また剖検時に観察した形態が必ずしも機能をもっている生体の状態を忠実にあらわしているとはいえないからである.

 このように生体における膵管・胆管の開口形態を検討するには多くの問題があるが,最近,選択的な膵・胆管造影の経験が増すにつれ,この点における知識も増大してきた.特に,ある特殊な開口様式をもつ乳頭では,内視鏡的にもその形態を検討することが可能であると思われる.

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 急性上部消化管出血に対しvigorous diagnostic approach1)2)を行なう考えは広く受け入れられた概念となっている.特に内視鏡を用いた早期あるいは緊急検査が出血源診断に安全かつきわめて有用である点を強調した報告3)~10)は多い.

 さて本邦においては消化管内視鏡検査が広く普及している反面,出血に対する内視鏡検査には保守的傾向があったものと思われる.しかし最近におけるすぐれた報告11),綜説12),また欧米学者による経験の紹介等13)~15)があり,現在急速に普及しつつあるものと考えられる.

 さて,これまでの報告の多くはfiberoptic panendoscopeの開発以前のものであったが,この型の内視鏡の開発により,食道,胃,十二指腸球部および下行脚部の観察は一層能率的かつ合理的となり,すでにpanendoscopeによる緊急内視鏡検査成績16)も報告されている.

大腸Metaplastic polypの本態 小塚 貞雄
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 大腸癌の発生に関する研究において,われわれは腺上皮の偽重層度すなわち核重層度を指標とするpolypの分類を提案し7),polypを構成する腺管上皮の分析から,いわゆる過形成腺管が腺腫へ進展し大腸癌になる可能性を明らかにし7),患者の平均年齢の増加からもこれを裏づけた9).さらにこの分類基準はその後の研究から病巣の平均直径と平行して増加すること8)および核の平均直径の増加とも一致することが明らかになった.大腸polypにおける腺腫の定義は必ずしも明確でなく未だかつて過形成と腺腫との境界を鮮明に区分しえたものはいない今日,核の重層度を指標にした客観的かつ具体的な分類基準は大腸の多発polyp発生の同時性10)や若年性polypの腫瘍としての位置づけ8)に有力な手段となりえた.しかしながら核重層度を指標にして各種のpolypを解析していくと1つの大きな疑問に遭遇した.それはMorson14)によりmetaplastic polypと名づけられたもので,Morson14),Arthur1)2)およびLaneら11)12)により,鋸歯状腺管を特徴とするpolypで腺腫へ移行することがない良性の病変であると主張されている点である.

 Metaplastic polypを最初に一群の病変として扱ったのはWattenberg17)で,彼はSchmieden&Westheus16)やLockhart-Mummery&Dukes13)が記載している癌付近の腸粘膜によくみられる局部的な過形成と同じものと考えて,focal mucosal hyperplasiaとして20例の病変の組織学的特徴に腺管の縦断面が鋸歯状になっていると記載したのに始まる.

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 「早期胃癌肉眼分類の再検討」を熟読させていただき,諸先生の考え方に接することができて非常に勉強になった.先般逝去された佐野量造先生の座談会記事は読んでいるうちに本人と直接話している様で旧懐の情がひとしおであった.佐野先生とは昭和38年来,早期胃癌の研究を行なった仲であり,当時より行なっていた胃カメラ読影会に崎田先生,市川先生とともに熱い討論がくり返されてきた.その頃,遭遇した環状型早期胃癌をⅡa+Ⅱcと呼ぶことが提案され,素直に諸先生方に受け入れられた事も思い出深い.又,悪性サイクルの一時相,即ち,早期胃癌病巣中にみられる潰瘍の縮小傾向を内視鏡で認めたことについてもこもごもの議論が行なわれたものである.

 さて,読んだあとの感想と私の考え方を次に述べさせていただきたい.

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 早期胃癌の肉眼分類の再検討にあたり1962年に提唱されて今日に至っているⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型という分類の基本的な原則は変更しないという委員諸先生のお考えには私も賛成致します.また,この肉眼分類に限って早期胃癌であるという診断根拠のために組織学的判定の導入されることは当然であろうと思います.次に個々の細かい問題点につき若干ふれてみます.ある系統的な病変を分類整理する時,極めて現象論的に分類する場合と,逆に発生論的立場で分類する場合とがあると思います.前者の立場にたてば病変の客観的チェックは比較的容易のように思われ,また後者に従えば病変のbehavior等を考慮した分類も可能と考えられます.しかし,形態学的な分類にできるだけ客観性と普遍性とを持たせようとする場合,病変の成り立ち,behavior等の因子を余りに多く導入すると,本来の目的と相反することが屡々のように感ぜられます.このことは,胃癌研究会で先年,胃癌の組織学的分類の改訂を行なった際,その検討の過程で痛切に感じたものです.それで,実際の検討に移りますが,私はこの早期胃癌の肉眼分類においても,より目立つ方(胃癌の新しい組織学的分類で採用した優勢像に準ずる)を前に出すという基本的な考え方が大切であると思います.したがってⅡa+Ⅱcや,Ⅱc+Ⅱaの場合,環状であるか否かというより,単純にⅡaなりⅡcの広さで考慮した方がすっきりすると思います.組織発生やbehaviorまで考慮すると客観的にチェックできる分類は益々難しくならないでしょうか.陥凹型のⅡc+Ⅲに関してはⅢの明確な規定から始まるのでないでしょうか.1962年提唱されたⅢ型のシェーマでは潰瘍縁に小範囲の癌がみられるのみで,そこにはⅡc様の平坦陥凹の指摘はされておりません.かりに極く小範囲のⅡcが潰瘍縁にあっても,これらはⅢ型であると思います(所謂二重輪郭像).そうなると,一定の広さを持つⅡcのなかに潰瘍がみられるものをⅡc+Ⅲとすることには何か抵抗が出て参ります.このような場合は,ただⅡcのなかにulcerationがあるというふうに(例えばⅡc(ul),またはⅡc(uls))表現できるのでないでしょうか.組織を切ってみて潰瘍があるかどうかということに余りこだわる必要はなさそうに思います.また,Ⅲ(ul)という表現にも何か納得できないものを感じます.紙数の関係で具体的な見解はこれにとどめます.ただ,これはあくまでも早期胃癌の肉眼分類であって,そして客観的に多くの人が分類しても一致率の高まるようなものを御検討願いたいと思います.

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 第18回日本消化器内視鏡学会総会は城所仂教授の会長のもとに,4月27日から3日間,東京国立教育会館で開催された.

 シンポジウム3題,パネルディスカッション1題,一般演題は114題の多くを数え,3,500人の会員をかかえる本学会にふさわしく,盛大,かつ内容の充実したものであった.

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欧文目次

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 肝臓学の基礎・臨床面をあわせた完壁なreference sourceとなるように,との意図のもとに「肝臓」第1版が監修出版されてから早くも10年以上が過ぎた.その後,肝臓学の進歩に伴って,基礎面と臨床面とをそれぞれに関係ある項目を充実させた「肝臓」第2版と「肝臓病」とが独立して出版されたのも,そう何年も前のことではないように記憶していたが,実際には早くも5年の歳月がたっている,肝臓に関連した領域における進歩からいえば改訂すべき年月がきているが,これだけの大冊の改訂となると大変なことであったろうと思う.しかし,これだけの大著の改訂を待つ肝臓学研究者が少なからずいるということも,頼母しい限りである.

 新版を手にして,試みに第2版と比較してみると,ページ数にして実に150ページ近くもふえていることにまず驚嘆した.内容からいえば,形態学の範囲ではさほど目につくような変革がないのは当然であるが,電顕的構造の内容が充実してきたことも,この領域における進歩からみればこれまた当然であろう.肝の機能および病態生理ではかなりの改訂がなされている.肝臓の循環動態の項は著者が変った上,Ⅰ,Ⅱと分けて,ⅡではRIを利用しての各種の循環動態測定法が加わったし,肝灌流の項では人工灌流液が加えられ,この領域における進歩の跡が窺われる.逆に新版で削られた項目は肝部分切除で,一瞬訝しく感じたが,想うに動物実験的肝切除,それからの肝再生は既にその研究の時代は去って,ヒトの肝葉切除が実用化して既に久しいからであろう.ホルモンの代謝の項では新たにグルカゴンの代謝が加えられている.

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 今日広く普及発達した内視鏡診断技術の水準と成果を集大成した“消化管内視鏡診断学大系”の中の第4巻「胃―(2)胃潰瘍」が刊行された.

 胃潰瘍を含め胃疾患の診断学の近年における急速な進歩,発展は刮目すべきものがある.

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Factors Relevant to the Prognosis of Chronic Gastric Ulcer: D.W.Pipet, M.Greig, G.A.E. Coupland, E.Hobbin, J.Shinners (GUT 16: 714~718, 1975)

 1969年から1972年までの間にX線で慢性胃潰瘍と診断された患者は243名で,そのうち経過観察の対象となったのは105名である.郵便によるアンケートを施行し,その後の再発の様子などを尋ねた.腹部症状を訴えた者についてはX線検査を行なった.

 さて最初の入院時の方針として,3週に1回潰瘍の大きさを計測し,その後の経過との関連を追求した.治癒の判定基準は,二重造影法で,潰瘍クレーターが消失しているか,あっても退院時に1mm2以下とした.

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Colitis Proximal to Obstructing Colonic Carcinoma: G.W.Tietjen, A.M.Marcowitz (Archives of Surgery, 110: 1133~1138, 1975)

 閉塞性結腸癌の近位側に発生せる非特異性の炎症は,過去20年にわたって外科の文献に登場している.頻度は少ないが,仲々厄介な問題である.著者らは,コロンビア大学で1967年以来,5人の患者を経験し報告している.

 結腸癌に合併する大腸炎は,明らかに癌による閉塞と関係があり,潰瘍性大腸炎や大腸クローン氏病が前からあって発生したのではない.若干の報告によれば,(1) 癌の遠位側には,このような炎症はおこらない.(2) 慢性炎症性大腸疾患を示唆する臨床上の既往がない.(3) 閉塞が外科的に取除かれれば,炎症は再発しないことを示している.

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 本誌「胃と腸」は表題に胃が大文字で,腸が小文字で書かれている.これは察するに,わが国の消化管の疾患の頻度からこのような表現となったのであろう.

 しかし,食生活を主とする日常生活,習慣の変化にともない,欧米なみに大腸疾患の種類,頻度が増加しやがて上部,下部消化管疾患のバランスが逆転して「胃と腸」となる時期がくるかもしれない.すでに,その傾向はここ10年来徐々にあらわれてきている.

書評「腹部外科手術」 光野 孝雄
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 本書を開いてまず強く印象づけられることは,挿画がきわめて美麗であることである.175ある挿画は全部カラーで,これを見ているだけでも楽しい.この挿画を見ていると,外科医をして恰も自分が手術場で現在手術しているかのような錯覚に陥らせる.胃や腸の温かさが手に触れ腸には蠕動があり,動脈は脈を打っているようにみえる.それほど写真が真に迫っている.

 一般に手術書は,挿画が白黒の写真であれば細かいところがわかりにくいために大部分が線画で説明されているので,無味乾燥のものが多いが,本書は従来の手術書のイメージをすっかり変えたものといえよう.ことに手術書は挿画が生命である.というのも長い説明文を読むよりも,挿画を見て理解するのが,理解を容易にし,しかもそれを脳裡に刻み込むのに有効であるからである.本書では,臓器や組織の区別はカラ一写真で鮮明に判別されているが,手術の手技,順序などをわかりやすくするために糸は緑や青,赤,黄,白と色わけするなど,カラー写真の利点を最大限に利用してある.好きこそものの上手なれといわれるように,書物は楽しく読まれてはじめてその内容がよく理解され,価値も出てくるであろう.

編集後記 古澤 元之助
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 症例特集号を読むと,いつも思うのだが,よくもまあ,いろんな疾患と病態とがあるものと思う.永い間,胃と腸のいろんな疾患を診てきたと思っていても,一度もお目にかかったことのない疾患が本号に掲載されており,病変と病態の多様さに一種の不安と溜息が出る程である.また,今更ながら,内視鏡手技の普及が消化器病の診断と治療に大きく貢献していることも改めて知らされる.

 本号に掲載された症例は教科書ではみられない貴重な疾患で,われわれの日常診療でも滅多に遭遇することはないかも知れないが,そういった疾患の存在の認識と病態の考察とは,日常診療に極めて有益で,そのような目で診療していると,思わぬ疾患の本質を見出すこともあろう.そういう意味で,本号の意義も深められるであろう.

基本情報

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胃と腸
11巻9号 (1976年9月)
電子版ISSN:1882-1219 印刷版ISSN:0536-2180 医学書院

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