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書評「肝臓―構造・機能・病態生理― 改訂第3版」
三辺 謙
1
1慶応義塾大学
pp.1140
発行日 1976年9月25日
Published Date 1976/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107423
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肝臓学の基礎・臨床面をあわせた完壁なreference sourceとなるように,との意図のもとに「肝臓」第1版が監修出版されてから早くも10年以上が過ぎた.その後,肝臓学の進歩に伴って,基礎面と臨床面とをそれぞれに関係ある項目を充実させた「肝臓」第2版と「肝臓病」とが独立して出版されたのも,そう何年も前のことではないように記憶していたが,実際には早くも5年の歳月がたっている,肝臓に関連した領域における進歩からいえば改訂すべき年月がきているが,これだけの大冊の改訂となると大変なことであったろうと思う.しかし,これだけの大著の改訂を待つ肝臓学研究者が少なからずいるということも,頼母しい限りである.
新版を手にして,試みに第2版と比較してみると,ページ数にして実に150ページ近くもふえていることにまず驚嘆した.内容からいえば,形態学の範囲ではさほど目につくような変革がないのは当然であるが,電顕的構造の内容が充実してきたことも,この領域における進歩からみればこれまた当然であろう.肝の機能および病態生理ではかなりの改訂がなされている.肝臓の循環動態の項は著者が変った上,Ⅰ,Ⅱと分けて,ⅡではRIを利用しての各種の循環動態測定法が加わったし,肝灌流の項では人工灌流液が加えられ,この領域における進歩の跡が窺われる.逆に新版で削られた項目は肝部分切除で,一瞬訝しく感じたが,想うに動物実験的肝切除,それからの肝再生は既にその研究の時代は去って,ヒトの肝葉切除が実用化して既に久しいからであろう.ホルモンの代謝の項では新たにグルカゴンの代謝が加えられている.
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