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書評「腹部外科手術」
光野 孝雄
1
1神戸大学
pp.1223
発行日 1976年9月25日
Published Date 1976/9/25
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1403107441
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本書を開いてまず強く印象づけられることは,挿画がきわめて美麗であることである.175ある挿画は全部カラーで,これを見ているだけでも楽しい.この挿画を見ていると,外科医をして恰も自分が手術場で現在手術しているかのような錯覚に陥らせる.胃や腸の温かさが手に触れ腸には蠕動があり,動脈は脈を打っているようにみえる.それほど写真が真に迫っている.
一般に手術書は,挿画が白黒の写真であれば細かいところがわかりにくいために大部分が線画で説明されているので,無味乾燥のものが多いが,本書は従来の手術書のイメージをすっかり変えたものといえよう.ことに手術書は挿画が生命である.というのも長い説明文を読むよりも,挿画を見て理解するのが,理解を容易にし,しかもそれを脳裡に刻み込むのに有効であるからである.本書では,臓器や組織の区別はカラ一写真で鮮明に判別されているが,手術の手技,順序などをわかりやすくするために糸は緑や青,赤,黄,白と色わけするなど,カラー写真の利点を最大限に利用してある.好きこそものの上手なれといわれるように,書物は楽しく読まれてはじめてその内容がよく理解され,価値も出てくるであろう.
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