呼吸と循環 45巻3号 (1997年3月)

特集 呼吸困難の病態と対策

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 某日,若い男性患者が呼吸困難を訴えて来診した.近医で喘息の治療中で,夜間に呼吸困難がある.彼の呼吸困難には閉塞感(息が吸えない)と空気飢餓感(息は吸えるが酸素が足りない)の2種類があり,空気飢餓感は就寝時の入眠前に多く発生し,気管支拡張剤は無効だという.最近は仕事上の悩みもあるそうである.言うまでもなく,この患者は気管支喘息と過換気症候群の合併例であるが,彼は自分の病態を理解していないにもかかわらず呼吸困難を明らかに区別していることは興味深い.しかも,彼にとって最重要な事項は自分の呼吸困難の違いを他人に理解して貰うことであった.

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 はじめに

 上気道は鼻から声門下までの範囲をさす.急性の上気道狭窄が疑われる呼吸困難症例に遭遇した時,まずどの程度の緊急性を要するかを判断しつつ,検査をすすめる.緊急を要すると判断すればただちに気道の確保をしてから,検査をすすめる必要がある.少し余裕があれば,気道のレントゲン写真とfiberscopyを施行して,原因疾患を明らかにしてから対処する.気道の確保や管理については麻酔科医との連絡を密にして連携をよくしておくことが大事である.

 急性の上気道狭窄を来す疾患として最も注意すべき疾患は声門下喉頭炎,急性喉頭蓋炎の炎症性疾患である.他に異物誤嚥事故,アレルギーによる喉頭浮腫などであるが,乳児では先天性疾患,嚢胞性疾患や腫瘤もある.小児における気道の特殊性,上気道狭窄を起こす疾患,対処について述べる.

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 はじめに

 呼吸困難の定義は各人により微妙に異なり,正確に述べるのは難しい.ここでは,呼吸に伴う病的に不快な感覚を認知すること,と簡単に定義して話をすすめよう.

 定義ばかりではなく,実際の呼吸困難の起こり方も一様ではない.喉頭水腫・異物の誤飲・気胸・急性肺血栓塞栓症のように突発的に起こるもの,気管支喘息や過換気症候群のように発作性をもつもの,肺炎や肺水腫や心筋梗塞などのように急性に発症するもの,そして肺気腫や間質性肺疾患や心脈管疾患など慢性に進行する呼吸器循環器疾患に伴い徐々に悪化していくものなど様々である.

 呼吸困難を呈する際の呼吸パターンもいろいろである.多くの場合は浅くて早い呼吸を伴うが,呼気が延長し,ゆっくり深い呼吸を伴う呼吸困難もありうる.中枢性障害を伴う場合には不規則な異常呼吸を示すこともある.

 呼吸困難の訴え方ともなるとさらに難しい.息がきれる,ゼイゼイする,息がつまる,などと患者さんは訴える.筆者の住む地域では,胸がズーズーすると訴えるご老人が多く,当初はまごつかされたものである.Simonらは,健常人を対象に19通りの呼吸困難の表現方法を用意し,8種類の異なる刺激に対する呼吸困難の表現をこのなかから選ばせ,この表現方法を9個のカテゴリーにまで絞り込んでいる1).またSimonらは,翌年この呼吸困難のカテゴリーには異なった疾患が対応する可能性があることを示唆している2).El—liotらも心肺疾患患者を対象に45通りの呼吸困難の表現方法を提示し,12群に分けることができるという3)

 しかし,呼吸困難の感じ方は心理的な変容を受けやすい.慢性閉塞性肺疾患でも悪性腫瘍の患者でも,抑うつや不安感が呼吸困難を修飾していることはよく経験するところである.Boothらは,酸素吸入が末期癌患者の呼吸困難解消に有用であるか否かを検討した結果,酸素吸入は効果的であるが,その改善率は圧縮空気吸入時と同等であり,benzodiazepineがその効果を促進したという4).ガス吸入という医療行為が,患者の不安を和らげることにより呼吸困難軽減効果をもったと解釈すべき例なのであろう.

 本稿のテーマは「安静時呼吸困難の病態と鑑別」であるが,問題は,このように多様な呼吸困難の起こり方・呼吸パターン・表現方法による鑑別が,呼吸困難の受容・感受・認知という全体の系を十分説明しているかどうかである.呼吸困難自体についてなにが共通の理解となっているかをまず確認し,心肺循環系の病態でみられる呼吸困難のメカニズムについて自験例を交え考察して再度この問題に立ち戻ろう.

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 労作時の呼吸困難は,表11)に示すように多くの疾患において,極めて日常的に認められる徴候である.また,呼吸困難とは,あくまで患者の主観的症状であり,呼吸に際して感ずる不快感を総称するものである.例えば,その表現は,“息がきれる”,“空気を吸えない,吐けない”,“のどがつまる”,“胸が苦しい”など極めて多彩であり,これらの訴えを客観的に評価することが難しいことがある.呼吸困難が生ずるメカニズムについては,これまで多くの仮説があり,その詳細は他章で述べられるであろうが,未だ完全な見解の一致は得られていない.しかし,呼吸困難が生ずる状況を正確に再現できれば,主観的症状である呼吸困難をある程度客観的に把握し評価することが可能になろう.呼吸困難は多くの場合,労作に伴って出現する.心肺疾患において,運動負荷検査が重要な位置を占めているのはこの理由による.運動を負荷することにより,通常の労作でみられる呼吸困難と同じ状態を作り出すことができれば,その時の生理学的指標を測定することにより,呼吸困難の病態を分析することが可能になる.

 呼吸困難と最も良好な関連がある生理学的指標として,労作(通常これは酸素摂取量で表わされる)に伴う過度の換気(量)を挙げることができる.一般的に,呼吸数の増大は換気の増大を意味し,特に肺線維症や肺うっ血の患者で著しい.しかし,頻呼吸と呼吸困難は必ずしも一致しない.それは僧帽弁狭窄の患者の頻呼吸が呼吸困難を伴わないことからも理解できる.呼吸困難は,あくまで感覚であり,いわば“慣れ”を生ずる可能性がある.したがって,客観的な評価と常に一致するとは限らないことに留意する必要がある.

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 はじめに

 呼吸困難は呼吸器疾患の主な臨床症状の一つである.筆者らの検討によると,当科における外来受診した呼吸器患者の三大疾患は肺気腫,慢性気管支炎および気管支喘息で,うち呼吸困難を訴えた症例は肺気腫で89%,慢性気管支炎で74%,気管支喘息で54%であった1).このように,呼吸器疾患,特に肺気腫の大部分は呼吸困難を訴えて来院する.この際,患者は呼吸困難とは表現せず,①息苦しい,②息がつまりそうだ,③空気が足りない,④空気が入らない,⑤胸が圧迫されるなど種々の表現形式をとる.ときには狭心症様の痛みを訴えることもある.このような呼吸に伴った不快な感覚を一括して呼吸困難と言っている.

 本稿では呼吸困難の定量的評価と呼吸困難に及ぼす呼吸生理学的因子を中心に述べる.

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 はじめに

 従来,呼吸困難感が出現する機序としてCampbellらの長さ—張力不均衡説に基づき,慢性閉塞性肺疾患(COPD)では気道抵抗の上昇に抗して換気を維持しようとする呼吸筋の張力と,その結果生じた筋の長さおよび肺気量の間に不均衡を来すためのものと考えられていた1).最近では,呼吸困難感は換気刺激の種類によらず,呼吸運動出力の強度によって決定されるとするmotor command theory2)が有力である.すなわち,末梢の受容器から求心路を経て達した刺激によって脳幹から呼吸筋への呼吸ドライブ(呼吸運動出力)が働くとき,同時にこれと等価な呼吸運動出力が脳幹から大脳皮質感覚野へ上行性に投射される(corollary discharge).その結果として,呼吸困難感が生じるものと考えられている(図1).しかし,呼吸困難感は呼吸に関する不快感を総称するものとされており,この説のみで完全に説明されるものではない.呼吸困難感の発生には化学受容器や機械的受容器から直接に大脳皮質への求心性入力も関わっている可能性が指摘されている3)

 このように,脳幹の呼吸中枢群からの運動出力の大脳皮質へのコピーが呼吸困難感を増強させるとの理論によると,呼吸困難感を軽減させるためには,①呼吸の化学調節系を介して呼吸を刺激する低酸素血症,高CO2血症および呼吸性アチドーシスに対する治療:酸素療法 ②神経調節系を介する機序として気道抵抗の上昇に伴う代償的な換気反応(load compensa—tion)に対する治療:気管支拡張薬 ③同様に神経調節系を介する換気装置としての胸郭および呼吸筋の運動制限に対する治療:a.運動療法,呼吸筋トレーニング b.外科的治療 ④脳幹大脳部の中枢神経活動に対する治療:鎮静薬・麻薬,胸壁振動刺激などがある.これらの項目について主にCOPDにおける呼吸困難に対する対症療法の機序を中心に述べる.

巻頭言

老人呼吸器医療 佐々木 英忠
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 65歳から85歳までの20年間は0歳から20歳までの20年間と同様に人生のしめくくりとして大切な時期であることは言うまでもないが,医療費の使い方に関しては必ずしも国民的合意が得られているわけではない.呼吸器疾患で入院した患者の診療実目数は肺炎34%,肺癌20%,気管支喘息18%と,この三大疾患で72%を占めている.このうち65歳以上の患者は肺炎で62%,肺癌の73%(死亡者)および気管支喘息の43%と呼吸器疾患の大方を占めている.したがって,もし老人医療費の高騰のため何とか老人医療費を抑制するとすれば呼吸器疾患は満足な治療ができないということになるかもしれない.

 わが国の家族構成が20年前1家族5〜6人だったのに現在は3人と半分に減ったことと合わせて老年者への取組みは変わってきている.いきおい老年者独自で生活しなければならないが,成人からみて老年者は医療費を含めた単なる消費者としか映らないきらいがある.このことは老年者も敏感に感じとっており,精神的安定度は40歳の不惑をすぎた後,孔子の言うように加齢とともにますます安定するのではなく,逆に不安定になっている.極端な場合として,自殺者は人口当たりにすると加齢とともに増加し,自殺はわが国の7位の死因と上位の疾患である.

Bedside Teaching

LT拮抗薬・TXA拮抗薬の意義 秋山 一男
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 はじめに

 1992年に刊行されたInternational Consensus Report on Diagnosis and Management of Asthma(ICR)1),1993年に刊行されたわが国の気管支喘息ガイドライン(JGL)2)において気管支喘息は気道の慢性炎症性疾患であり,喘息の特徴とされる気道過敏性は炎症が原因となって発現するものであると定義された.

 さらに1995年にNHLBI/WHOワークショップレポートとしてまとめられた喘息管理の国際指針「喘息管理・予防のグローバルストラテジー」(GINA)3)では,気道炎症の主役となる炎症細胞としてこれまでのマスト細胞,好酸球に加えてJGLで定義のなかに示されたT細胞の重要性が確認されクローズアップされてきた.

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 不安定狭心症とは

 1772年,Heberden1)により労作狭心症の臨床像が初めて報告された.その後,臨床的により重症の狭心症や心筋梗塞に移行しやすく危険な狭心症を古典的な労作狭心症と区別するために提唱された概念が不安定狭心症である.その病態には冠動脈の狭窄の進行,冠動脈スパスム,冠動脈の動脈硬化病変の傷害と血栓形成,凝固線溶系の異常など多彩な要因が関与していると考えられている.

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 ミトコンドリア脳筋症は心筋疾患にも関与し,遺伝学的解析が進んでいるが,心筋代謝の検討は少ない.そこで,心筋代謝を検討する目的で,心臓ペーシング負荷時の冠静脈洞採血を施行し,乳酸とピルビン酸の代謝動態を検討した.対象はKearns-Sayre syndrome(KSS)の2例(47歳,64歳)である.ペーシング(140 bpm,5 min)前後で,血行動態測定とともに大動脈と冠静脈洞より採血した.ペーシングによりdouble productsは増加したが,冠静脈洞の乳酸とピルビン酸は増加せず,乳酸産生を認めなかった.KSSではミトコンドリア機能異常のために,運動負荷にて骨格筋の過剰な乳酸産生を認めるとされるが.心筋ではペーシングにて乳酸産生がなく,KSSの骨格筋と心筋代謝が異なる可能性があり,心筋がATP産生予備能を有することが示唆された.

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 人工呼吸下のDuchenne型筋ジストロフィー23例の睡眠時の酸素飽和度を検討した.対象は体外式人工呼吸8例(CR群),鼻マスクによる人工呼吸8例(NIPPV群),気管切開下の人工呼吸7例(TIPPV群)であった.ボランティア7名を対照群とした.酸素飽和度測定はパルスオキシメータにより行った.CR,NIPPV実施例のなかに周期性低酸素血症を来す症例があったが,TIPPV群,対照群には認められなかった.酸素飽和度95%以下となった割合は,CR群(44.6%),NIPPV群(43.0%)が対照群(1.9%)に比較して有意に多かった(p<0.05).2年間の観察期間中,4例が死亡した.全例気管切開例で,気管出血による死亡が2例あった.CR,NIPPV群では人工呼吸中にもかかわらず睡眠時低酸素血症を呈する例が認められた.したがって,定期的な睡眠時パルスオキシメータモニタリングが必要である.

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 急性胃潰瘍が心臓自律神経機能に及ぼす影響を評価する目的で,24時間Holter心電図法を用いて心拍変動解析を行い検討した.急性潰瘍のモデルとして胃腫瘍性病変に対する内視鏡的治療の後に形成される人工的な潰瘍8例を対象とし,内視鏡的治療前,治療直後(活動期の胃潰瘍が存在している時期),その1週間後の計3回24時間Holter心電図検査を施行した.時系列解析においては洞周期RR間隔の標準偏差(SDNN)を心臓自律神経機能の指標とし,スペクトル解析においては高周波成分(HF)を心臓迷走神経機能,低周波/高周波成分比(L/H)を交感神経機能の指標として用いた.結果は胃潰瘍形成後にSDNNの有意な低下を認めた.またHF,L/Hは有意な変化を認めなかった.急性胃潰瘍は心臓自律神経機能に影響を及ぼし,交感神経機能を亢進させる可能性が示唆された.

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 下肢深部静脈血栓症(DVT)での血管超音波検査法(VU)の診断能を検証し,診断過程におけるVUの役割を検討した.下肢の腫脹を有し,VUと下肢静脈造影(VG)を行った31例42肢を対象とした.VUでは,①静脈内部エコーの存在,②探触子による圧迫で静脈が潰れないこと,③呼吸性および下肢の用手圧迫による流速変動の消失,を陽性基準とし,その正診率を検討した.また,検査前の臨床像をスコア化し,3群(DVTの可能性が高い群:H群,中等度の群:M群,低い群:L群)に分類して,各群でのDVTの割合を比較した.VGでDVTと診断されたのは22肢で,VUの特異度は95%(19/20),感度は95%(21/22)であった.検査前の臨床像分類ごとのDVT患者の割合はH群が92%,M群が58%,L群が22%であった.DVTの診断にVUは有用であり,さらに臨床像評価法を組み合わせることで,非侵襲的かつ的確な診断と迅速な治療が可能になると考えられた.

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 症例は79歳の女性で,急性心筋梗塞(以下AMI)の診断で緊急冠動脈造影を行った.右冠動脈(以下RCA)seg3で完全閉塞を認め,経皮的冠動脈形成術(以下PTCA)を施行した.施行中血栓像と思われる不整な陰影欠損,末梢塞栓を認めたためにtissue plasminogen activator(以下t-PA)を投与したが,逆に血栓性閉塞を来したために,新たな血栓形成を抑制させる目的でDispatchTM catheterを用いて,凝固活性賦活作用の弱い選択的トロンビン阻害剤であるアルガトロバンを冠動脈内に局所投与し,血行再建に成功した.

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 心房細動に伴う僧帽弁狭窄症に左房内球状血栓が形成されることはこれまでに報告があるが,それ以外の症例に球状血栓が形成された症例の報告は少ない.今回,われわれは,非リウマチ性の軽度の僧帽弁閉鎖不全症に合併した左房内球状血栓を経験した.症例は70歳,男性で,心房細動,軽度の僧帽弁閉鎖不全で外来で経過をみていた.定期で施行した心エコー検査で左房内に浮遊する47×32mmの類円形の腫瘤を認めたため緊急入院となった.緊急手術を施行し,腫瘤を摘出した.腫瘤は左房天蓋部に茎を介して付着しており,組織学的には茎を含めて新鮮な血栓であった.非リウマチ性の僧帽弁閉鎖不全症に球状血栓が形成されたことは,きわめて稀なことと考えられ,球状血栓の形成過程を考察するうえでも興味深い症例と考えられた.

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 正常冠動脈を有する完全左脚ブロック3症例に,運動負荷201Tlシンチ(Tl),123I-MIBGシンチ(MIBG),123I-BMIPPシンチ(BMIPP)を施行した.症例1はsmall coronary artery disease,症例2は拡張型心筋症,症例3は明らかな心疾患のない症例である.左室駆出率は,各々49%,30%,68%であった.Tlは,全症例で前壁中隔の再分布を示した.BMIPPは,症例1と2は前壁中隔の逆再分布を示し,症例3は前壁中隔の持続性集積低下を呈した.MIBGは,症例1は著明なwashoutの亢進により遅延像の不明瞭化,症例2はwashoutの軽度の亢進により,遅延像で下礎領域の集積低下,症例3は正常像を呈した.正常冠動脈を有する完全左脚ブロック症例では,TlはCLBBBに特有の変化を示し,BMIPPはCLBBBの前壁中隔の脂肪酸代謝異常を,MIBGのwashoutの変化は原疾患の病態を反映する可能性が示唆された.

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 冠動脈起始異常症は一般に冠動脈造影検査にて診断され,合併心奇形を伴わない場合も心筋梗塞や突然死の原因となることが報告されており,その予後の推定には冠動脈の走行の確認が必要である.今回,冠動脈起始異常症の2例にMagnetic Resonance Angiography(MRA)を施行し,その走行を確認することができた.症例1は回旋枝右冠動脈起始症で回旋枝は近位部のみ心エコー図でも描出されたが,末梢まで追うことは困難であった.症例2は右冠動脈左バルサルバ起始症で冠動脈は心エコー図では描出されなかった.MRAは三次元でのデータ収集や再構築が可能であるため,冠動脈の走行の評価に有用であると考えられた.

Topics Respiration & Circulation

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 ■最近の動向 気道のウイルス感染は気管支喘息増悪(発作)の主要原因である.一方,気道過敏性のない者でも気道感染時には喘鳴を聴取することがしばしば経験され,また,気道感染は慢性呼吸不全患者においても主要な増悪因子である.これらの点から,喘息を有さない者においても気道感染時に気道過敏性が亢進するかは重要な問題と思われる.最近の趨勢では,非喘息者でも気道のウイルス感染時には過敏性が亢進するという考えが主流を占めているが,ボランティアにおける研究は実験方法によって結果が大きな影響を受けるために,気道過敏性の発生は確立していない.一方,ウイルス感染による気道過敏性亢進についての新たなメカニズムについても研究が進められている.気管支喘息では,気道への浸潤細胞から放出される各種メディエーターの気道過敏性への役割が強調されているが,最近の研究では,ウイルス感染時は肺・気道の構成細胞から放出されるサイトカインも重要な役割を担っていることが報告されており,好酸球などの浸潤がなくとも気道過敏性は亢進する可能性が示されている.

 今回紹介した気道過敏性亢進を支持する論文(Trigg),支持しない論文(Skoner)ともに研究結果を—般論としては展開しておらず,健常人の気道感染時の過敏性亢進確立には,まだ多くの研究が必要と思われる.3編目のEinarssonの論文では気道過敏性を起こしやすいvirusに言及している点は興味深い.

植え込み型除細動器(ICD) 中沢 潔
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 ■最近の動向 外因性を除いた突然死の多くは心臓性である.心臓性突然死(SCD)の約80%が心室頻拍(VT)や心室細動(Vf)の重症心室不整脈である.これは,たまたまSCDを捉えたHolter心電図の検討によるものである.VT,Vfの予防に各種薬剤が試みられてきた.I群抗不整脈薬の多くについては,CAST studyその他のstudyにおいて,予後を改善せず,むしろ悪化する可能性さえあることが示され,現在では自覚症状(QOL)の改善についての研究が多い.III群抗不整脈(アミオダロン,d,l,—ソタロールなど),β遮断薬,ACE阻害薬は予後を改善し得る薬剤として注目されているが,植え込み型除細動器(ICD)にまさるものではない.現在,ICDはSCD予防の最も有効な治療法といえる.

 ICDは,1980年のMirowskiらの報告以来,欧米では多くの例に適用されている.当初,開胸手術を要したために,手術自体が原因の合併症が多く,機能もsimpleで,誤作動の心配も多かった.しかし,現在の機種は心室のリードと前胸部の皮下に植え込んだgeneraterのみで目的を達し得る機種になっており,従来のペースメーカー手術程度の侵襲で行えるようになった.日本以外の国では,すでに心内留置のリード1本とペースメーカーのように上胸部の皮下に本体を植え込むのみの機種が使用されており,本邦でも数年先には使用可能となるはずである.本邦では,本年4月から一部の施設でICD植え込みが可能になった.現在,本邦で使用可能な機種は,開胸こそ必要としないが,generaterは大きく腹部に植え込み,心血管内のリードのみならず,皮下に植え込むハッチや電極を必要とする場合が少なくない.

基本情報

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呼吸と循環
45巻3号 (1997年3月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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