Japanese
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特集 呼吸困難の病態と対策
労作時呼吸困難の病態と鑑別
Pathophysiology and Differentiation of Dyspnea on Exertion
赤柴 恒人
1
Tsuneto Akashiba
1
1日本大学医学部第一内科
1Department of Internal Medicine I, Nihon University School of Medicine
pp.239-243
発行日 1997年3月15日
Published Date 1997/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901434
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労作時の呼吸困難は,表11)に示すように多くの疾患において,極めて日常的に認められる徴候である.また,呼吸困難とは,あくまで患者の主観的症状であり,呼吸に際して感ずる不快感を総称するものである.例えば,その表現は,“息がきれる”,“空気を吸えない,吐けない”,“のどがつまる”,“胸が苦しい”など極めて多彩であり,これらの訴えを客観的に評価することが難しいことがある.呼吸困難が生ずるメカニズムについては,これまで多くの仮説があり,その詳細は他章で述べられるであろうが,未だ完全な見解の一致は得られていない.しかし,呼吸困難が生ずる状況を正確に再現できれば,主観的症状である呼吸困難をある程度客観的に把握し評価することが可能になろう.呼吸困難は多くの場合,労作に伴って出現する.心肺疾患において,運動負荷検査が重要な位置を占めているのはこの理由による.運動を負荷することにより,通常の労作でみられる呼吸困難と同じ状態を作り出すことができれば,その時の生理学的指標を測定することにより,呼吸困難の病態を分析することが可能になる.
呼吸困難と最も良好な関連がある生理学的指標として,労作(通常これは酸素摂取量で表わされる)に伴う過度の換気(量)を挙げることができる.一般的に,呼吸数の増大は換気の増大を意味し,特に肺線維症や肺うっ血の患者で著しい.しかし,頻呼吸と呼吸困難は必ずしも一致しない.それは僧帽弁狭窄の患者の頻呼吸が呼吸困難を伴わないことからも理解できる.呼吸困難は,あくまで感覚であり,いわば“慣れ”を生ずる可能性がある.したがって,客観的な評価と常に一致するとは限らないことに留意する必要がある.
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