呼吸と循環 45巻2号 (1997年2月)

特集 KチャネルとQT延長症候群

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 はじめに

 パッチ・クランプ法が適用され心筋細胞固有のKチャネルが単一チャネル・レベルで直接記録されるようになり,多数のKチャネルが見出され,組織や部位,さらには動物種による違い,などの多様性が明らかになってきた.一方,これが分子構造の違いによるのか,機能調節機序の差異によるのかを明らかにすることが期待された分子生物学からのチャネル構造の解析からも,各Kチャネルの構造上の多様性が次々に報告されて,固有のチャネルとの完全な機能—構造相関は得られていない.しかし,いくつかのチャネルにおいては遺伝子発現電流により固有のチャネル機能の再現も得られてきており,この分野の進歩・発展は目ざましい.

 本稿では,心筋細胞のKチャネルの機能と構造に関する最近の話題をまとめてみた.

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 はじめに

 QT延長症候群は,心筋の再分極の遅延を反映する心電図上のQT時間の延長を呈し,失神・突然死を引き起こす特有の心室性不整脈(torsade de pointes)の出現を特徴とする.病因別に先天性(遺伝性)と二次性(電解質異常,薬剤などによる)に分類され,前者には常染色体劣性遺伝で聾を伴うJervell & Lange-Nielsen症候群と常染色体優生遺伝で聾を伴わないRomano-Ward症候群がある.

 近年,分子生物学的手法を用いRomano—Ward症候群の原因遺伝子やその機能が解明されつつある.

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 QT延長症候群は比較的稀な疾患であるが,心電図や不整脈発生の様式に特徴があり,交感神経活動に基づく不整脈の解明において重要な役割を果たす可能性がある1).QT延長症候群には常染色体優性遺伝で先天性聾を伴わないRomano—Ward症候群と,常染色体劣性遺伝で先天性聾を伴うJervell-Lange-Nielsen症候群がある.QT延長症候群の心電図にはQT時間の延長とT・U波の異常,T波の電気的交互脈,小児期の徐脈や洞停止などの特徴がある.しかし,QT延長症候群の臨床における最も重要な点は,運動や精神的緊張をきっかけに心室頻拍(torsades depointes)を生じ失神発作や突然死を来すことにある.

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 はじめに

 心筋細胞の活動電位は種々の膜イオンチャネルにより構成されている.活動電位持続時間は内向き電流と外向き電流とのバランスで構成されており,特に心室筋のプラトー相レベルでは膜の電気的抵抗が高いため僅かな電流の変化でも活動電位幅は大きく変動する.内向き電流系として重要なものはNaやCa電流であり,外向き電流として膜電位を再分極させるものとしては遅延整流性K電流や一過性外向きK電流が重要視されている.最近開発されているKチャネル阻害薬はこれらのK電流を抑制することにより再分極が遅延し,不応期が延長される結果,抗不整脈作用を示すことが予測される.Kチャネル阻害薬の代表的なものはVaughan-Williams分類のなかでIII群の抗不整脈薬として知られている,E4031,sotalol,amiodaroneなどである.また,I群薬のなかでもIa群のquinidine, disopyramide,procainamide,Ic群のflecainideなどもKチャネル阻害作用を有することが知られている.

 本稿ではヒト心筋細胞におけるKチャネルの分布および,これらのKチャネルに対するKチャネル阻害薬の作用について解説する.

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 はじめに

 心臓にはさまざまなカリウムチャネルが存在し,それぞれが心臓の活動電位の各時相あるいは,ある特定の生理的条件下にのみで開口し,お互いに役割を分担して複雑な活動電位波形を形成している.その波形は,心拍数や体温などによって微妙に影響を受けながら心臓全体として正常な電気的興奮を起こすが,それらはいずれもチャネルを介して行われている.

 カリウムチャネルを開口する主な薬剤を例記すると,β刺激薬はアデニールシクラーゼを活性化し,Aキナーゼを介して遅延整流型外向きカリウムチャネルを活性化し,アセチルコリンはGタンパクを介してアセチルコリン感受性カリウムチャネルを活性化する.また細胞外から投与されたアデノシンはアデノシンレセプターを介してATP感受性カリウムチャネルの開口を促すとされている.

 そのなかでも最近ATP感受性カリウムチャネル開口薬としてニコランジル,ピナシジル,クロマカリムなどの薬剤が登場し,臨床的にもこれらの薬剤をみる機会が多くなりつつある.ATP感受性カリウムチャネル開口薬はもともと降圧剤として開発されてきた薬剤であるが,後述するように心筋にも直接作用がある.しかし,心臓に対するこの薬剤の臨床的意味付けは未だ一定していない.特に不整脈の分野においては,催不整脈作用があると考えられたり,あるいは逆に抗不整脈作用を示すと考えられたり意見の分かれるところである.従来のVaughan Williams分類にある抗不整脈薬の多くは,チャネルを阻害することによって効果を発現していたのに対し,開口薬を抗不整脈薬として使用するという発想は比較的新しい考え方である.

 ここでは,主にATP感受性カリウムチャネル開口薬がその病態から抗不整脈作用を発揮することが期待されている疾患を挙げ,現在の臨床的あるいは基礎研究におけるそれら薬剤の立場を述べる.

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 「名医がいなくなった.いや名医はもう必要がなくなった.」といわれる.“今日の医師はハイテク機器”に囲まれて診療を進める.「検査成績をみれば診断も治療方針も決まる.忙しい外来の3分診療では何も判断できない.」のである.治療も新しい積極療法に突っ走る傾向がある.日本人は流行りに敏感である.みんながやることは自分もやらないと気が済まない.“me-to-syndrome”とも呼ばれる.

 今日の出来高払いの保険診療制度では,現病歴,背景因子などに時間をかけても,医療機関の経営面には意味がない.自動車の車検と同じように,“人間という機械”の故障の有無をハイテク機器を使った一律の流れ作業で徹底的に調べ上げる.得られた結果をみて判断するという傾向は否めない.必然的にhistory taking,physical examinationをきっちりとできる医師がいなくなる.

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 はじめに

 心臓核医学検査は,新しい放射性薬剤の開発とSPECT(single photon emission computed tomography),PET(positron emission tomogra—phy)など,RI計測機器の進歩を基盤として循環器病学における検査法として確立されてきた1〜3).PETは,その優れた物理学的特性から高分解能,高感度画像が得られ,かつ11C,15Oなど生体構成成分で標識したトレーサを用いた血流・代謝画像診断法として優れた特長を有している.しかし,サイクロトロンやPETカメラなど巨額の設備や多くの専門的スタッフを必要とするなど臨床検査法としては限界があり,現在,わが国で約20施設で稼動しているにすぎない.一方,SPECTは,PETに比し性能および定量性において劣るが,日常診療で用いることができる利点がある.最近,多検出器型SPECT装置の開発により高感度画像が得られるようになり,種々の散乱・吸収補正法により定量評価が可能になりつつある.また,SPECT用心筋代謝イメージング製剤の開発により,PETを用いた代謝診断法に近づきつつある(表1).

 さらに,新しい手法としてPET用代謝イメージング製剤である18F-FDG(fluorodeoxyglu—cose)をSPECT装置を用いて画像化する18F—FDG SPECTが現実のものとなりつつある.本手法は,心筋viabilityのgold standardとして用いられている18F-FDG心筋PETに代わり,日常診療で大いに利用されるものと考えられる.したがって,今後の心臓核医学の分野ではPET, SPECTの境界は狭まり,PETからSPECTへの技術転換とともにE.T.(emission tomography)としての展開が期待される.

 本稿では,当分野において重要な心筋血流・糖代謝イメージングにおけるこれらの展開を中心に解説する.

Bedside Teaching

喘息管理におけるPeak Flow 田村 弦
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 はじめに

 ピーク・フロー(Peak Expiratory Flow:PEF)とは,被験者が呼出できる最大気流速度を意味し,最大吸気位からの最大呼気フロー・ボリューム曲線において,初期に出現する尖った瞬間的なフローとして表現される.フロー・ボリューム曲線は,肺気量が肺活量の100〜80%のいわゆる努力依存性部分と80%以下の努力非依存性部分に分離されるが,PEFは前者の努力依存性部分に位置し,被験者の努力によって異なる値をとることはよく知られた事実である.図1にわれわれが行った各種の肺機能検査のcoefficient of variationを示したが,この結果からもわかるように,気道狭窄の指標として用いられる強制呼出1秒量に比べPEFのcoefficient of variationは約2倍であること,またPEFは主に中枢気道の狭窄に依存する指標1,2)であることより,これまで呼吸生理学的にはあまり重視されてこなかった.さらに,図2に示すように,これまでの気管支拡張薬を主体とした治療では,喘息患者のPEFの変動を十分管理できなかったことより,喘息管理におけるPEFの有用性は長い間過小評価されてきた.

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 起立失調症候群の皮膚交感神経機能障害を皮膚血流量測定により明らかにすることを目的とした.さらに,交感神経刺激作用を有する塩酸ミドドリンの皮膚血流量に対する影響を検討した.対象は起立失調症候群9例,健常者12例.方法は,血圧はトノメトリ法,皮膚血流量はレーザードップラー法,心電図は第II誘導で記録.安静時160秒間,head-up tilt試験1分間の測定を行った.起立失調症候群に対しミドドリンを4週間投与し,投与前後で比較した.結果は安静時は両群で差を認めなかった.head-up tilt試験では,健常者群は負荷時に血圧,皮膚血流量は不変,心拍数は上昇.起立失調症候群ミドドリン投与前は,負荷時に血圧,皮膚血流量は低下,心拍数は上昇.ミドドリン投与4週間後は,体位変換時に血圧,皮膚血流量は不変,心拍数は上昇.起立失調症候群は体位変換時の皮膚交感神経活動の反応性低下があり,ミドドリンは,この反応性低下を改善した.

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 目的:冠動脈主要分枝の血流速波形の差異を検討する.方法:狭窄性病変のない右冠動脈(RCA)14例,左前下行枝(LAD)10例を対象とした.Cardiometrics社製のドプラガイドワイヤー(FloWire)を用いて,RCA,LADの近位部,遠位部の冠血流速波形を記録した.拡張期,収縮期の流速波形下の面積比(D/S)を算出,また6例で右室枝(RV),8例で前中隔枝(SB)の流速波形を記録した.結果:RCAのD/Sは,近位部2.36±0.21,遠位部3.26±0.20で,遠位部で有意に高値であった.D/Sは4PDで3.66±0.21,4AVで2.85±0.26と,心室中隔を灌流する4PDで有意に高値であった.RVのD/Sは1.80±0.36と低値であった.LADのD/Sは,近位部5.15±0.50,遠位部5.48±0.44で差がなく,RCAの左室灌流部分(4PD,4AV)に比べて拡張期優位の波形であった.SBのD/Sは7.96±1.34で,LADより高値の傾向であった.総括:ヒトの冠血流速波形はLADでRCAに比べ拡張期優位であった.この理由として,SBのD/Sが高いこと,RCAでRVのD/Sが低いこと,およびRCAの左室灌流部分のD/SがLADより低いことが関与している可能性がある.

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 6歳,無脾症候群,心内膜床欠損,両大血管右室起始,肺動脈閉鎖,大動脈弁閉鎖不全(III度)の症例に対しtotal cavopulmonary colnnectionおよび大動脈弁置換術を施行した.集中治療室帰室後,低心拍出量症候群のため一酸化窒素(NO)吸入療法を開始した.しかし,帰室後13〜14時間前後より中心静脈圧の上昇,血圧低下(収縮期84→68 mmHg)および動脈血酸素飽和度の低下(92→68%)がみられた.肺血管抵抗の上昇がその原因と考え,NO吸入濃度を20から30 ppmに増量,その後いずれも状態悪化前の値に復し,さらに十分な尿量がえられ良好な血行動態となった.術後68時間にて,抜管と同時にNO吸入療法を中止したが,再度肺血管抵抗の上昇がみられたため,経鼻カニューレによりさらに48時間微量で吸入後,離脱に成功した.NO吸入療法は術後急性期の肺血管抵抗上昇を緩和し,その血行動態を改善させるうえで著効したと思われた.

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 54歳,女性.不安定狭心症のため入院した.冠動脈造影上,右冠動脈seg.1に90%の求心性狭窄を認め,同部にPTCAを施行した.径3.75 mm,長さ15 mmのcutting bal—loon(IVT社製)で拡張中にバルーン破裂が生じた.直後の透視画像でseg.1からseg.3に及ぶ冠動脈解離を認め,急性冠閉塞を起こした.そこで解離の入口部に相当するseg.1に径3.5 mmのPalmaz-Schatz Stent(stent)を留置した.次に解離が末梢側へ進展することを防ぐために,解離の遠位側であるseg.3に径3.0 mmのstentを留置した.最終的にseg.2に対しても径3.0 mmのstentを留置し,緊急離脱に成功した.取り出したcutting balloonを調べたところピンホール破裂であった.

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 症例は56歳,女性.1995年5月初旬より手のこわばりが出現するようになり,当院神経内科を受診した.筋電図,理学所見より筋緊張性ジストロフィーと診断されリハビリテーション目的にて入院した.その際,心電図上I度房室ブロックの所見(PQ時間=0.24 sec)を認め当科に紹介となった.失神,眩量などの自覚症状および既往は認めなかった.ホルター心電図検査にて洞停止を認め,最長RR間隔は4.4 secであった.電気生理学的検査(EPS)にて,PA時間25 msec,AH時間140 msec,HV時間60msecと軽度のHV時間の延長を認めた.また,洞結節回復時間は2.260 msecと延長を認めた.以上より洞不全症候群(II型)および軽度のヒス束以下の伝導障害と診断した.筋緊張性ジストロフィーは心臓障害を合併することが多く,特に刺激伝導系障害が高頻度に認められる.しかしながら,洞機能不全症候群の合併の報告は少なく,貴重な1例と考えられたのでここに報告する.

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 症例は35歳,女性.頻脈発作を主訴に入院.発作時心電図はnarrow QRS型の上室性頻拍を呈していた.電気生理学的検査では,心房早期刺激法により房室結節二重伝導路を確認し,頻拍機序は房室結節リエントリー性頻拍と診断した.心室早期刺激法では基本刺激667 msecにおいて,連結期330〜310 msec間でHis-Purkinje系における室房ブロックを認めた.さらに連結期を300 msecに短縮すると室房伝導が再開し,いわゆるII型逆行性gap現象の所見を認めた.房室結節リエントリー性頻拍とII型逆行性gap現象の合併例の報告はなく稀な症例と考え報告した.

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 27歳,男性.来院3カ月前にうつ病を疑われた患者で,1994年8月2日自殺企図にて塩酸ピルジカイニド(サンリズム®)を15錠服用し,救急車にて来院,来院時軽度意識混濁,血圧は触診で収縮期60mmHg.血液検査所見では白血球の軽度上昇,軽度の肝障害を認め,心電図ではインセサント型心室頻拍を認めた.サンリズム大量服用による急性中毒と診断.2lの胃洗浄ののち,右室の高頻度ペーシングを施行し,洞調律に戻した.経時的に観察した塩酸ピルジカイニド血漿中濃度から,患者体内に吸収された塩酸ピルジカイニドは内服量の約49%であり,胃洗浄が塩酸ピルジカイニド血漿中濃度上昇を抑制するうえで有効であったと考えられた.また,同時に施行した心電図では延長したPQ間隔,QRS間隔が経時的に正常化,これらは塩酸ピルジカイニド血漿中濃度と正の相関を示し,T波は一定で不応期に影響を与えず,塩酸ピルジカイニドのヒトにおける電気生理的作用が実証された.

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 36歳,男性.日本酒1日5合,10年間の飲酒歴あり.下腿浮腫と起坐呼吸が増悪し当科受診した。心胸郭比は71%,左室駆出分画は24%と低下,左房・左室径は拡大し,拡張型心筋症の疑いで入院した.心係数は3.46/分/m2,肺動脈楔入圧と肺動脈圧はそれぞれ22,40/24 mmHgと上昇していた.左室造影では壁運動は全体的に低下していた.冠動脈造影は左右ともに正常であり,心筋組織所見では心筋線維の軽度肥大と単線維性脱落,間質の浮腫,結合織の軽度の増生を認めた.強心配糖体と利尿剤で症状は改善し,退院後,2年間の断酒をさせたところ,1年後で心胸郭比は46%,左室駆出分画は74%,2年後で心係数は4.8/分/m2,肺動脈楔入圧は14 mmHgと心血行動態改善の他,心筋組織所見も改善した.本例のように心エコー図所見を中心とした臨床経過とともに心筋組織所見を経時的に検討した報告は極めて少なく文献的考察を加えて報告する.

Topics Respiration & Circulation

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 ■最近の動向 COPD患者に対する抗コリン剤の吸入療法はこれまでにもある程度の効能が報告され,治療の一環として一定の役割を果たしているが,その長期にわたる有効性については確証が得られていない.COPDに対する薬物療法には,テオフィリン製剤,β刺激剤,抗コリン剤の吸入療法などがあるが,いずれも長期予後に関しては有効性が示されていない.しかし,近年開発された抗コリン剤のipratropiumは,COPD患者に対しては気管支拡張作用においてβ刺激剤よりも有用とされ,COPDの薬物療法としては第一選択の位置を獲得している.近年,気管支喘息と同様COPDに関してもガイドラインが欧米において発表されているが,定期的な抗コリン剤の吸入療法が推薦されている.確かに抗コリン剤吸入による気管支拡張作用はCOPD患者の呼吸困難の軽減に有効であろうが,この効果が持続し,最終的に患者の予後,QOLに対しての有効性が検証されなければならない.最近,欧米で行われている大規模studyの結果がいくつか報告されており,また,本年のAmerican Journal of Medicine誌には,COPDと抗コリン剤の特集が組まれている.これらの成績は,いずれもCOPDにおける抗コリン剤のregular use法の臨床的有用性を認めている.

No-reflow現象 赤石 誠
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 ■最近の動向 No-reflow現象とは,一定時間の虚血の後に冠動脈を再灌流しても,心筋への血流が回復しない現象をいう.その原因として,①白血球による微小血管の閉塞,②心筋の浮腫や拘縮による微小血管の圧迫,③血管内皮の膨化,④血管の攣縮が考えられている.Klonerらの古典的な犬の実験により,このNo-reflow現象は40分間の冠動脈閉塞では生じず,90分間の冠動脈閉塞で生じることが示されている.また,このNo-reflow現象が生じる部分は,心筋虚血が最も強い心内膜下領域であることも示されている.

 現在,No-reflow現象とは,心外膜上の冠動脈に閉塞がないのに微小血管抵抗が高いために冠動脈血流が得られない状態と,心外膜上の冠動脈に閉塞がなく,冠動脈血流が得られているにもかかわらず,灌流域の心筋への血流が得られない状態の両者を指している.いずれも急性心筋梗塞症における血管再疎通後にしばしば認められる現象である.急性心筋梗塞症に対する再灌流療法が,一般的な治療法となっている今日,閉塞している冠動脈をPTCAや血栓溶解療法により再疎通させても心筋への血流が回復しないというNo-reflow現象は,心筋梗塞症の再灌流後の心筋の病態にもたらす意義,治療法を含めて,私たちが真剣に議論しなくてはならない問題の一つである.

基本情報

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呼吸と循環
45巻2号 (1997年2月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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