Japanese
English
綜説
ペースメーカ植込み患者に対する運動処方
Exercise Prescription for Patients with Cardiac Pacemaker
道下 竜馬
1,2
,
清永 明
1,2
,
桧垣 靖樹
1,2
,
田中 宏暁
1,2
Ryoma Michishita
1,2
,
Akira Kiyonaga
1,2
,
Yasuki Higaki
1,2
,
Hiroaki Tanaka
1,2
1福岡大学スポーツ科学部運動生理学研究室
2福岡大学基盤研究機関身体活動研究所
1Laboratory of Exercise Physiology, Faculty of Health and Sports Science, Fukuoka University
2Fukukoka University Institute for Physical Activity
pp.554-560
発行日 2013年6月15日
Published Date 2013/6/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404102238
- 有料閲覧
- Abstract 文献概要
- 1ページ目 Look Inside
- 参考文献 Reference
はじめに
植込み型ペースメーカは,1960年代に実用化されて以来,年々ハード面での改良が重ねられ,急速に小型化,高機能化が進んできた.また,これと並行してソフト面での進歩も著しく,房室順次ペーシングや心拍応答機能により,ほぼ生理的心拍変動を再現できるようになっている.徐脈性不整脈に対するペースメーカ植込みは,薬物治療を含む他の治療の追随を許さない確立した治療法として,循環動態の改善による生命予後の改善はもちろん,QOLの改善をもその目的として広く臨床で用いられている.循環動態の改善のためには,心房・心室の収縮の同期性が保たれること,正常な房室伝導路を介する興奮伝播により,協調的な心室収縮が得られること,運動・代謝の変化に応じた心拍数が得られることが重要となる.
心疾患患者に対する運動療法の効果には,運動耐容能や心筋虚血閾値,骨格筋でのミトコンドリアや毛細血管密度などの増加,最大下同一負荷での心拍数や心筋酸素需要の低下などが知られている1).このような運動の多面的効果を考えあわせると,心停止の既往やペースメーカの植込みを必要とする伝導障害,洞不全症候群患者においても循環動態の改善のため,積極的に運動療法に取り組む必要があると考えられる.
従来,ペースメーカの固定レートのため活発な身体活動は避けるように注意されてきたが,近年の目覚ましい医療工学の発展・進歩によって,生理的なペースメーカが普及し,それに伴い運動の安全性と効果も明らかにされてきている.今回,ペースメーカ植込み患者に対する運動処方の考え方や運動療法の適応について,近年の研究結果を含めて概説する.
Copyright © 2013, Igaku-Shoin Ltd. All rights reserved.