巻頭言
老人呼吸器医療
佐々木 英忠
1
1東北大学医学部老人科
pp.219
発行日 1997年3月15日
Published Date 1997/3/15
DOI https://doi.org/10.11477/mf.1404901430
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65歳から85歳までの20年間は0歳から20歳までの20年間と同様に人生のしめくくりとして大切な時期であることは言うまでもないが,医療費の使い方に関しては必ずしも国民的合意が得られているわけではない.呼吸器疾患で入院した患者の診療実目数は肺炎34%,肺癌20%,気管支喘息18%と,この三大疾患で72%を占めている.このうち65歳以上の患者は肺炎で62%,肺癌の73%(死亡者)および気管支喘息の43%と呼吸器疾患の大方を占めている.したがって,もし老人医療費の高騰のため何とか老人医療費を抑制するとすれば呼吸器疾患は満足な治療ができないということになるかもしれない.
わが国の家族構成が20年前1家族5〜6人だったのに現在は3人と半分に減ったことと合わせて老年者への取組みは変わってきている.いきおい老年者独自で生活しなければならないが,成人からみて老年者は医療費を含めた単なる消費者としか映らないきらいがある.このことは老年者も敏感に感じとっており,精神的安定度は40歳の不惑をすぎた後,孔子の言うように加齢とともにますます安定するのではなく,逆に不安定になっている.極端な場合として,自殺者は人口当たりにすると加齢とともに増加し,自殺はわが国の7位の死因と上位の疾患である.
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