呼吸と循環 27巻11号 (1979年11月)

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 慢性閉塞性肺疾患(以下COLD)について,日頃から考えている2,3の事柄を述べ,巻頭言とさせていただく。私が千葉大学医学部第2内科に大学院生として入局したさい,恩師斉藤十六教授からいただいた研究テーマは,肺循環,とくに閉塞性肺疾患のそれについてであった。その頃は,いわゆるCOLDという概念が未だ定着しておらず,新米の私にとっては,対象症例の肺にどの程度の肺気腫が存在しているかを判断することで頭を痛めていた。論文をまとめる段階でも結局この問題は解決がつかず,非常に悩んだ記憶が鮮明に残っている。当時斉藤教授は,現在千葉大学教授であられる稲垣義明,木下安弘両先生とともに,左心機能の力学的分析,大循環動態の血行力学分析をすすめており,これらの手法を,各種心肺疾患の右心および肺血行力学的分析に応用することを考えられた訳であるが,私の菲才もあって,肺機能面からの病態解析が不十分で,斉藤教授のすぐれた御考えが十分生かされなかったのではないかと悔んだことであった。

綜説

患者の「体力」と酸素運搬能 諏訪 邦夫
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 現に治療の対象となっている疾患の他に,それとは直接関係のない合併症を患者がもっているというのは決して稀れなことではない。この場合,医師にとっては合併疾患の正確な診断分類病態など,重要でないとはいえないとしても,より大きな関心事は,その合併疾患が原疾患をのり切る「抵抗力」,「体力」,「スタミナ」に如何に影響するか,という問題である。

 筆者の業務である麻酔の仕事において,それがただ,「いかに患者を眠らせておく」のみであったら,患者の体力をほとんど要することはないものである。ところが麻酔を施行した上で手術をし,それにはいろいろと手こずることもあり,組織器官を種々に損傷し,大量の出血を招き,ということになるとそうしたストレスを克服するためには患者の「体力」が要求される。さらに術後の修復過程においては,一般に代謝の亢進がみられるから「体力」への要求度は高いものである。

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 先天性の成因により胸部大動脈の動脈管分岐部付近に発生する定型的大動脈縮窄症に対し,これとは異なった部位にみられる縮窄を一般に異型大動脈縮窄と称しているが,その成因は単一ではない。近年いわゆる高安病を中心とする大動脈炎症候群が後天性の成因として主なものと考えられている。大動脈炎症候群は諸外国に比し本邦に比較的多い疾患であるので異型大動脈縮窄症について綜説するとともに,本邦の報告例について検討した。

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 噴霧された粒子の沈着に関連した言葉でpenetrationというのは,浮遊していた粒子が1回の吸入気流で気道の奥へ運びこまれるが,その到達する深さを意味し,depositionとは浮遊状態から落下した最終状態を意味する。また,いったん落着した粒子などを除去する過程はclearanceという。このようなpenetrationやdepositionに影響する因子として,つぎに述べるような多くのものがある。

 そもそも気道深部の内径は小さくなるが,その断面積の総和は逆に増加し,そのため気流速度は遅くなり,通過に時間を要するようになる。このこと自体,物質の沈着を容易にし,さらに肺胞でのガス交換が円滑に行なわれるような構造になっているといえる。しかし流入気体の流速が大に過ぎると乱流を生じ,壁面で落下しやすいので緩徐に吸気時間をかけて,充分量が末梢まで運ばれるようにする必要がある。

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 先に述べたA,B,C,Dの4種の見解の相異は動物の種差あるいは単に,実験結果の解釈の違いによるものではない。これらの見解の実験的根拠とされている脳幹横切断,局所破壊による呼吸運動型変化,特有な呼吸反応を起こす電気刺激部位の分布,脳幹部において呼吸性ニューロンが導出される領域とニューロンの型別分布状況などの動物実験成績自体に著しいくい違いがある(本シリーズ(3)の文献3)。実験条件,実験方法の違い等,種々の原因が考えられるが,脳幹切断実験の成績に見られるように全く相反する実験結果が得られていることの最も重要な原因は各研究者の用いた実験条件のもとで呼吸中枢を構成する呼吸性ニューロン群の活動状態に著しい差のあることであると考えられる。脳幹部の呼吸ニューロン(後述)の自発性ならびに反射性活動は実験動物の麻酔条件,換気条件,循環状態によって著しく変化することがすでに明らかにされている4)

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 最近Berendら1)は,肺機能検査のある一定の組合せが肺気腫の存在を正確に診断するかどうか,または言葉を変えると,intrinsic airway disease (IAD)あるいは肺気腫の所見が肺機能検査の異常な結果の特異的なパターンを伴っているかをみるために,広範な肺機能検査を施行し,その結果を肺内に見出された肺気腫およびIADの程度と相関させる目的で研究を行なっている。この研究のために22名の小さな末梢性肺病変(原発性あるいは続発性肺腫瘍)をもった患者(喫煙者21名,非喫煙者1名)が選ばれ,慢性気管支炎と肺気腫以外の心肺疾患を除外するため,質問票による問診,理学的検査,胸部X線写真,心電図,生化学スクリーニング,末梢血検査などが実施された。また全患者に気管支ファイバースコープ検査が施行され,segmental levelより中枢側には気管支内閉塞がないことが確認された。

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 薬剤が市販されるまでには動物実験を繰返し慎重な薬効判定と厳密な副作用のチェックがなされる。それにもかかわらず,近年西ドイツ,スイス,オーストリアのヨーロッパ3国で食欲抑制剤服用者の一部に原因不明の肺高血圧症が流行したこともあり食餌性因子にもとづく肺高血圧が注目されるようになった1,2)

 薬剤や植物で現在まで肺高血圧を惹起することが知られているものを以下にまとめた1〜5)

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 1.急性心筋虚血

 心筋虚血により左室の機械的なポンプとしての機能不全が生じてくる。この異常を患者のベッドサイドにて診断する為に開発されたのがSwan-Ganz熱希釈用バルーンカテーテルである。このカテーテルにより人の心拍出量の測定と左室充満圧のモニターリングが可能となり心機能評価ができるようになってきた1)。そこで本法に基づく心機能評価を昭和45年以来発表してきている1,2)。本邦でも,ようやく最近に至って本法が普及してきており,心機能評価の意義が認められてきていると思う。

解説

肺癌の免疫療法 安元 公正
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 最近の免疫学の進歩によって,実験動物においては,同系腫瘍に対してのみならず,自家腫瘍に対しても,担癌宿主は免疫学的機作に基づく抵抗性を発揮することが明らかにされてきた。他方,ヒト悪性腫瘍に関しては,実験腫瘍に対する程明確にはされていないが,様々の免疫学的機能検査法を駆使して,担癌患者の免疫学的機能に関する研究がなされてきた。その結果,多くの癌で、癌細胞は癌特異(関連)抗原をもっているらしいこと,また担癌患者は癌が進行すればするほど,特に細胞性免疫能が低下していることが明らかにされた。このような事実を背景として,癌に対する免疫療法が広く試みられるようになってきた。

 ここでは,われわれの成績を中心にして,肺癌の免疫療法の現況について解説を試みてみる。

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 ヘモグロビンの酸素平衡曲線の測定は,従来熟練と長時間を要していたので,臨床的な応用は非常に限られていた。ところが1970年Imaiら1)が自動記録装置を開発して以来,この方面の研究が格段に進歩し,簡便に酸素平衡曲線を自動記録できる装置として,Radiometer社からdissociation curve analizer DCA−1®が,TCS社からHemox-Analizer®が,Aminco社からHem-O—Scan®がそれぞれ市販されるようになった。DCA−1®のわが国における使用経験については,千葉ら2),Okadaら3)にによって報告されている。今回われわれはHemox—Analizer®を使用し若干の基礎および臨床的実験を行なったので,本装置の概略と実験結果について報告する。

Bedside Teaching

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 Wegener肉芽腫症は,1936年のWegenerの報告以来,独立疾患として扱われるようになり,報告例も200例に近く,種々の臨床的病態もあきらかになっている。以前は致死的であったこの疾患も,最近はCytotoxic agentsの使用で,長期生存例が報告されるようになった。

 症状および病変は,①上気道および肺のえ死性巨細胞性肉芽腫,上気道粘膜のかいようや,骨・軟骨の破かいおよび肺うっ血,②全身性え死性血管炎,③糸球体のえ死性変化を伴う糸球体腎炎で,死亡原因は腎不全あるいは呼吸不全である。このようにWegener肉芽腫症はしばしば呼吸不全を呈し,またそれが死亡原因となるにもかかわらず,呼吸管理上の詳しい報告がない。われわれは最近,呼吸不全におちいったWegener肉芽腫症患者を治療する機会をえたので症例を報告し,呼吸管理上の問題点について考察する。

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 心臓粘液腫は比較的まれな疾患であるが,良性腫瘍であるため心臓外科の進歩により根治可能である。最近超音波検査法の普及により,術前から本症と診断されている症例が増加したが,多彩な臨床症状を呈するために確定診断の遅れることもあり,早期診断と早期手術の重要性が強調されている。

 教室では,今日まで3,361例の心臓手術を行い8例(0.24%)の左房粘液腫を経験し根治手術を行なったので,臨床上の問題点について知見を述べる。

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 HeilbrunnとWiercenskiにより骨格筋(横紋筋)の収縮反応にはカルシウムイオン(Ca2+)が必要であるとするCa説が提唱されて以来1)筋収縮のメカニズムに関する多くの学説が発表されてきたが,今日では心筋および種々の平滑筋の収縮においてもCa2+が重要な役割を演じていることはもはや疑いのない事実であるとされている。

 著者らは,Ca2+拮抗剤であるverapamil2)およびeta—fenone hydrochloride3)が種々の気管支拡張剤の作用を増強すると共に,気管支収縮剤の作用も減弱することを報告した。

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 不整脈の発生機序として興奮の旋回運動(リエントリー)が提唱されたのは今世紀初頭であったが1,2),心筋梗塞症急性期に発生する重篤な心室性不整脈が虚血心筋内で著しく遅延した興奮のリエントリーによるものであることが実際に証明されたのは比較的最近であった3〜6)。Boineau4),Waldo5),Scherlag6)らが犬を用いた実験的心筋梗塞モデルで,虚血心筋内でQRSに非同期性の不規則なスパイク(Continuous activity:連続性電位)を記録し,これが心室性不整脈の発生に先行することから,この現象がリエントリーを強く示唆する所見とされてきた。すなわち,虚血心筋内に著しく緩徐で不均一な興奮伝導が存在し,その存在が心電図T波の終末部まで及べば,不応期から回復した正常心筋へとリエントリーし心室性不整脈を引起すと考えられている。しかし虚血心筋で遅延した興奮が如何なる経路で正常心筋に広がるか,すなわちリエントリー経路については亜急性期心筋梗塞でみられる遅発性不整脈についての検討がなされている他は7,8),急性期に出現する不整脈については未だ十分に解明が進んでいない。

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 ヒス束心電図が臨床応用されて以後1),カテーテル法によるヒス束電位の記録は,不整脈に対する解析を主として多方面に用いられるようになり,特に房室ブロックなどの伝導障害を来す疾患については,治療に直結する診断法として欠くべからざる検査手段となっている。しかし,現在まで使用されてきたカテーテル電極の多くは,電極間隔が1cmあるいはそれ以上のものであり,それらは限局した電位を得るには,間隔が広すぎる欠点があるといわれている2〜6)。また,多くのカテーテルは双極であり,多数の情報を得るには,複数以上のカテーテルを挿入する必要が生じてくる。この方法は,手技が複雑となると共に,各々の双極電極間の距離は患者によって異りまた同一患者においても,心拍動などによって電極間距離は変化し,刺激伝導速度の測定など,より緻密な検査法には不適当と思われる。

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 従来ウィルス性心筋炎に伴う高アミラーゼ血症の報告はあるが充分な検討はなされていない。今回われわれは,急性膵炎の合併を示唆するAmylase creatinine clearance ratio (ACCR)の上昇を認めたウィルス性心筋炎と思われる2例を経験した。それに加えて,発症より2週以上も継続する完全房室ブロックに対し,perma—nent pace-maker植え込みを施行し救命しえたのでその臨床像を中心に報告する。

基本情報

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呼吸と循環
27巻11号 (1979年11月)
電子版ISSN:1882-1200 印刷版ISSN:0452-3458 医学書院

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